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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第四拾参番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:a15c7ca6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/20 01:03




「…………」

「…………」

沈黙が、空間を支配していた。
静寂が、時間を掌握していた。

白い男は呆けた様にベッドに寝転がる銀髪の女を見つめて
少女はそのまま時が凍りついたかの様に表情が固まって


「……う、う~ん……」」


小さく静かにその声が響いて、長い銀髪がベッドの上で揺れる
ベッドで寝転がるその女は軽く寝返りをうって、


「……あ、ぅ……」


その瞬間
二つの大きな何かが揺れて、アリシアは呻く様に呟く

仰向けになった女の、黒いスポーツブラジャーの様なボディスーツに包まれた
その細身な体に似合わないサイズの、二つの母性の塊がアリシアの瞳に映りこんで


「……あ、ぅ……う、う……ウゥゥ……」


凍りついた口元が若干引き攣ったかの様に動いて、その声が零れる
長い金髪が小さく揺れて、頬がピクピクと痙攣する様に震えて


「……う、ううぅ……ウ……っ!!!」


何かを堪える様にその小さな体躯が震えて、ワナワナと空気が歪曲して


「浮気者おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」


一気に、ソレは弾けた。


「私というものがありながら! コレはなに! どういう事! なにがどうして一体全体どういう行程をもってこんな状況になってるの!!!」

「喧しいぞ、少し黙れ」

「そんなに大きいのが好きか! そんなに大きい胸が好きかぁ! そんなにバン・キュ・バンが好きかああああああぁぁぁぁぁ!!!!
ウルキオラのバカ!アホォ!!浮気モノ!エロスの権化!巨乳大好きエロキオラああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

「意味が解からん」


ベッドを飛び越えて迫るアリシアの顔面をウルキオラは鷲掴みにするが、それでもアリシアの言葉は止まらない。

そして


「ちょっと、何を騒いでるの? 朝っぱらから五月蝿いわよ」


小さく欠伸をしながら、薄地の黒シャツタイプの寝間着を来たプレシアが顔を出した。


「……こっちは昨日寝るのが遅かったんだから、もう少し静かに――」


だが、不意にその言葉を途切れる
その両目に映りこんだその光景を見て、プレシアの表情は固まって


「……ォォゥ……」


僅かに頬を窄めて、唸るように呟く
そして次の瞬間に、プレシアは「全てを悟った女の表情」を形作って


「……あー、ゥン、ゴメン、コレは私の落ち度だわ……そうよね、考えてみればアンタも若い男だもんね
そりゃ色々なものが溜まったり、ムラムラっとする時もあるわよね……」

「何を勝手に解釈している」


何やら一人で結論づけてウンウンと納得しているプレシアを見て、ウルキオラが答える。
だがしかし、尚もプレシアはウンウンと頷いて


「……そうね、コレは『そういう事情』にまで頭が回ってなかった私の落ち度よね
いや、ホント……ごめん、素直に謝るわ……
でもほら、その、ね?ウチにはアリシアも居る事だし、今度からは『そういう事』は外で済ませてくれないかしら?」

「勝手に話を進めるな」

「いやーでも、ちょっと安心したわ。いつもアリシアと一緒にいるから『最悪の万が一』の事も考えてたけど
どうやら女性の好みに関しては、アンタも一般的なソレだったみたいわね」

「……力ずくで黙らせてやろうか?」


空いた片手を腰の斬魄刀に置いてウルキオラが呟き
その言葉を聞いたプレシアは「あら残念」と悪戯っぽく口元を僅かに歪めて微笑んで


「で、その娘は誰? 一体何処から拾ってきたの?」

「? お前の客ではないのか?」


プレシアの言葉を聞いて、ウルキオラは即座に返す。

自分達が今居るこの家は活動拠点であり、本拠地である
故にそのセキュリティや警備システムも相応に質の高いモノである。

もしも賊や侵入者の類がこの家に攻め込んで来ても、数分と持たずに軒並み撃退できるだろう
少なくとも、そんな存在が現れた時点で警戒を知らせる警笛が鳴り響く。

そしてこの女の、あまりにも無防備にして無警戒なこの現状
侵入者や賊の類として見るには、あまりにもその判断材料が乏しかった。

その事からウルキオラはプレシア、若しくはアリシアが招いた客人の類だと思っていた。


しかし


「……はあ? アンタの客じゃないの?」
「知る訳ないだろう?こんな女」


その瞬間、二人の空気が変わる
その瞬間、二人はその可能性に気付く。

今までの緩やかな空気が一転して強張った、剣呑的な空気になる。


「……ん? どうしたの?」

「何でもないわ。それとアリシア、こっちに来なさい」


二人の空気の変化に気付いたのか、アリシアは首を傾げながら二人に尋ねて

プレシアはアリシアの問いに応えながら、そっとアリシアを自分の体に後ろに
万が一の事態が起きた時にも、迅速な対応ができる安全圏へと移動させる。


『――どうする? 拘束するか?それとも排除か?――』

『そうね……やっぱり、無難に動きを封じて『お話』するのが妥当ね』


次いで二人は念話を行い、行動の算段を行う
どういう事情なのかは知らないが、どうにも楽観視できる状況ではない様だ。

とりあえず、最低限の安全策は取っておくべきだろう。

そう言って、プレシアは未だ寝息を立てている銀髪の女に掌をかざす
次の瞬間、掌が紫光の魔法陣を形成され、そこから紫光の鎖が射出し女の体を束縛して



次の瞬間、その鎖の全てが消滅した。



「なっ!!!?」
「――!!?」


プレシアが驚愕の声を上げて、ウルキオラが僅かに息を呑む。
デバイスを用いなかったとはいえ、それでもプレシアのバインドは並の魔導師のバインドの性能を遥かに凌駕する。

そしてそのバインドの全てが、目の前の完全無防備な相手に全て防がれたからだ。



「……う、ん……ん、ん……?」



ピクリと、女の体が動く。

その寝息のリズムが変わって、徐々に言気がハッキリとしていく
リラックス状態だった四肢に徐々に力が巡っていき、だんだんと活力を帯びていく。

その銀髪の髪が揺れて、その両の瞼が開く。
そしてその女はゆっくりと身を起こし、僅かに周囲に視線を走らせて


「……どうも……」


短くそう言って、銀髪の女は軽く頭を下げる。
そして徐々にその女の容姿が視界に入る。



(……キレイな娘ね……)



自然に、簡潔に
その女の姿を見たプレシアは、思わずそんな感想を漏らす。

長い艶やかな銀髪、整った造形の顔、少し鋭い切れ長な目、赤い瞳
細身な体、スラっと伸びる手足、自己主張の激しい母性の固まり、同姓でも憧れる様な整ったプロポーション

顔には化粧の類の存在は感じられず、服は露出の多い黒いフィットネススーツ……
というか、もはやこれは黒い下着姿と言っても良いだろう。


改めて見ると、この女性は一般で言う『美女』の部類の人間だろう。

ファッション雑誌のモデルと言っても通じる程に、その容姿は美しいものだった。

その女の態度を見て、プレシアが言葉を返す。


「……おはよう、起き掛けで早々悪いけど……少し質問を良いかしら?」

「??? はい、何でしょうか?」


女は首を小さく傾げて答えて、
特に慌てる素振りも、動揺する素振りも見せず、平常を保っている。


「貴方は一体どこの誰かしら? 一体どうして、いいえ、どうやってこの家に入り込んだのかしら?」


プレシアが詰め寄る。
銀髪の女からは何かアクションを起こす素振りや兆しはないが、やはり警戒は解けないだろう。

物腰こそは柔らかいが、その語気には確かな威圧感と圧迫感がある
その語気に圧されてか、銀髪の女は特に抗う様子を見せる事もなく


「……そうですね。その問いに簡潔に答えるとするならば」


その銀髪の女は、その赤い瞳の照準をウルキオラに定めて



「――私は昨晩、そこの方に『お持ち帰り』された者です――」



特大の爆弾を落とした。










第四拾参番「集まる欠片」











「何か言い訳はあるエロキオラ?」
「何か弁明はあるかしらエロキオラ?」

「誰がエロキオラだ」

二つの怪訝な視線を受けながら、ウルキオラが返す。


「もう証拠は挙がってるんだよ、私はこれ以上ウルキオラを追い詰めたくないんだよ、自首して自供して自白して欲しいんだよ」

「お母さんは貴方をこんな往生際が悪い子に育てた覚えはないわよ。もう全部ゲロっちゃいなさい、全部吐けば楽になれるわよ」

「……今更だが、お前等が親子である事を実感した……」


その語気、その空気、正に取り調べ室の刑事と犯人のソレと非常に酷似している。

先の爆弾発言から空気が一転して、どうにもウルキオラに分が悪い流れになりつつある
そしてそんな空気の中で、ウルキオラが考える。


(……俺が昨晩、この女を連れ帰った?いや、持ち帰った?……)


その言葉について、ウルキオラは考える。
勿論、ウルキオラはこの銀髪の女の事も知らないし、この家に連れ帰った覚えもない。


(……昨夜、俺が……持ち帰った……)


その時、ウルキオラの脳裏にとある物が過ぎる
ウルキオラが昨夜、外から内へ持ち込んだ”モノ”

その唯一のモノが、ウルキオラの脳裏を駆け抜ける。



(……まさか……)



次いでウルキオラは懐の中に手を入れる、そしてある物を取り出そうとするが


(……無い、『アレ』がどこにも無い……ならば、やはり……)


やはりと言うか、まさかと言うか
ウルキオラは自分の中の仮定が事実である可能性を考える。


「簡潔に答えろ、お前は何者だ?」


故にその裏付けに出る
銀髪の女に一歩詰め寄って、ウルキオラが問い掛ける。


「私? 私ですか?……私は……アレ?」


銀髪の女がウルキオラの問いに応えようとするが、不意に口が止まる。


「……私は……」


その表情が僅かに困惑を帯びて


「……わたし、は……」


そのまま銀髪女は言葉に詰まって





「……わたしは、ダレ?……」





小さく静かに、そう応えた。




















次元航行艦アースラ、そのとある一室にて


「……はあ、はぁ……はっ……」

「どうした、フェレットもどき……もう、限界か?」


幾何学模様で埋め尽くされた戦闘訓練室にて、二人の少年が向き合っていた
その二人は互いに大きく両肩を上下させ、額から汗を流し、息を大きく荒げながら呼吸して


「はあ、はぁ……くそ、また負けた……」

「こっちも伊達で執務官をやっている訳ではいからな。
少なくとも、守るべき『民間人』に遅れを取らない程度の実力はある」


汗で額に張り付いた前髪をかき上げながらユーノが呟き、それをクロノが返す
そんなクロノの言葉を聞きながら、ユーノは考える。


(……ダメだ、どうしても力押しの展開になるとボロが出る……単純な魔力のゴリ押しじゃ格上には通用しない……)


先の戦闘における展開を思い返しながら、ユーノは考える。
いくら実戦経験があるとはいえ、所詮は民間人での自分とニアSランクの執務官であるクロノとの力の差は大きい。


(……やっぱり魔力の底上げが必須事項か?……いや、地力を上げても『ヤツ』相手には高が知れてる。
……『ヤツ』の攻撃に対処するには魔力と魔力「以外」の部分を磨く必要がある……)


例えるなら、嘗てクロノが考案し編み出した改良型ラウンドシールド
単純な力技で対処しても「ヤツ」相手にその効果は見込めない。

自分以上の魔力と技術を持ったクロノやリニス、リーゼ達でも有効的な対処は出来なかった
つまり、「ヤツ」相手には力以外の何かが求められるという訳だ。


(……現にクロノのラウンドシールドは効果があった、だったら他にも可能性がある筈だ……
なら考えるんだ、単純な力押し以外の……力以外で対抗できる『何か』を……)


その新たな可能性を求めて、ユーノは静かに思考を進め


「エイミィから見てどうだった? 今の模擬戦は?」


手に持った杖を待機フォームに戻して、クロノが尋ねる
するとエイミィは少し間を置いて考えて


『そうだねー、何回かクロノくんも危ない場面があったよー
今だって息切らしてるし、汗をかいているし』

「……む」


そんなエイミィの声が室内に響いて、クロノは僅かに顔を曇らせる
どうやら、クロノ自身も思う所がある様だ。


(……エイミィの言う通りだ、確かに幾つか対処を誤ってピンチになりかけた場面があった……)


先程までの模擬戦を思い返しながら、クロノは考える。


(……結果としては何とかなったが、それは地力の差で強引に押し返したに過ぎない……)


地力の差で押し返す、それは簡潔に言えば格上には通用しない戦法だ
自分が目指すモノとは真逆の戦い方

自分が身に付けたいのは、格上相手と互角以上に渡り合うための戦術


(……コレではダメだ……この程度じゃ、『ヤツ』には届かない……)


クロノは思い出す。

嘗て闘った白い魔導師の姿を
圧倒的実力と絶対的戦力で自分達を蹴散らした存在を


(……ヤツが相手なら、甘い対処から生まれるミスはそのまま敗北に繋がる……
やっぱりもっと判断力と集中力、そして想定外の事態にも予想外の展開にも対応できる技術と手札を身に付ける事が今後の課題だな……)


改めて、クロノは今後の方針を結論付ける。
あの白い魔導師と、いつまた巡り会うか分からない。

故に、その来るべき時に備えて十分な手札を揃えておかねばならないだろう。


そして、二人は訓練室から退出する
クロノはその足で再び執務官の職務に戻ろうと足を進めて


「クロノくん、おつかれ様―。ちょっといいかな? 少し目を通して貰いたい書類があるんだけど」


執務官室に向かう途中にエイミィに出くわす
そのままエイミィは持っていた書類の束を見せ付けて


「目を通して貰いたい書類?」

「うん、最近すこーし局内で話が上がってる案件に関してなんだけどねー
執務官であるクロノくんには、なるべく早めに目を通して貰っておきたいと思ってさー」

「分かった、貸してくれ」

そう言って、エイミィは手に持っていた書類の束を渡し



「成る程、最近局内で何かと噂になってる……連続魔導師襲撃事件についてか」



その書類にざっと目を通しながら、クロノは呟いた。











「艦長、お茶をどうぞ」

「あら、ありがとうランディ。頂くわ」

アースラのブリッジにて、リンディ・ハラオウンは航行指示を行っていた。
粗方の指示を出し終えたのを確認した後、手元の緑茶にお気に入りの味付けとトッピングを施して一口含み


(……時の庭園での一件から四ヶ月、未だウルキオラ・シファーに関する有力な情報は上がって来ない……)


ズズズと、お茶を啜りながらリンディは考える。
あの時の庭園での戦いから既に四ヶ月、リンディを含む当時の捜査員は出来る限りの調査と捜査を進めてきたが
未だウルキオラの動向、素性、所在に関する有力情報は未だに集まっていなかった。


(……あまりにも静か過ぎる、アレだけの事件を起こした被疑者を取り逃がし、その所在を掴めない事は多々有るけど……
……ここまで時間と手間を費やして、素性と背後関係が掴めないのは明らかに不自然過ぎる……)


あまりにも、情報が少なすぎる
それこそ、全くの0と言っていい程に

時空管理局は、多くの次元世界の垣根を越えて形成される組織
そしてその世界を超えて形成されるネットワークも並大抵のものではない。

仮に情報の隠蔽が行われていたとしても、ここまで来ると異常だ
如何な人間・生物でも、その生を歩んだ痕跡は簡単に消す事はできない。

両親、家族、知人、友人
住居、資産、教養、仕事

如何に自分という存在を隠そうとしても、それらの痕跡全てを消す事など到底不可能
少なくとも、アレ程の力を持つ魔導師がその存在を完全に隠蔽するなど絶対に不可能

ウルキオラが、『今』のウルキオラに成るまで至った過程と環境、その痕跡は必ず何処かに残されている筈

だが


(……全く情報が上がって来ない。管理局の情報収集力を持ってしても、最初の戦闘以前のウルキオラの情報が何一つ掴めない……)


そう、まるでウルキオラがそれ以前に世界の何処にも存在していなかった様に
ウルキオラという存在の痕跡が、全くと言って良い程掴めないのだ。


(……一体、どういう事?……)


思考の海に溺れながら、リンディは考える
口元に手を当てて考えるが、やはり今一つ考えは進展しない。

情報収集の網を伸ばすという手段もあるが、これ以上網を拡大しても正直言って期待はできないだろう。


『艦長、少し宜しいでしょうか?』


不意にリンディの目の前に空間モニターが展開された。
モニターはリンディの部下であり、アースラの搭乗員の一人である管理局員の顔が映し出されていて


「どうしましたか?」

『今しがた艦長宛に次元通信が入ってきたのですが、繋いでもよろしいでしょうか?』

「次元通信? どこから?」


部下からの報告を聞いてリンディは尋ね
僅かな間を置いて、その問いに応えるかの様にその返事は帰って来た。


『発信元は第97管理外世界、発信者は管理局の民間協力者・高町なのはさんからです』












「……あーぅー、流石に目が疲れてきた……」


もう何時間経っただろう?何度その映像を見直しただろう?
どこか疲れた様に、フェイトは己の瞼を擦りながら呟いた。


「……流石に、一日考えたくらいじゃ……攻略方なんて分かりっこないか」


考えてみれば、自分よりもずっと前から対ウルキオラの戦術を練っていたクロノ達でさえ
未だ効果的な方法が練れていないのだ。

一日や二日程度、自分が考えた程度では効果的な方法を思い付く方が無理だろう。
あのジュエルシードを巡る戦いとは違って、今回は特に明確なタイムリミットが用いられている訳ではない。

この数ヶ月、あれっきりウルキオラも何のアクションも起こしてない事も考えると
ここで焦って根を詰める方が、寧ろ逆効果かもしれない。


「……ふぅ……」


フェイトは一息ついて、手に持ったリモコンを操作してモニターの電源を切る。
そして部屋に備え付けていたベッドに、ごろんと寝転んだ。

仰向けのまま天井を見つめる、そして重く鈍った思考を再び展開させる。


(……仮に攻略方が分かった所で、果たしてソレを私達は実践できるかな?……)


なんとなく、フェイトは考えてしまう。


(……仮に、ウルキオラの攻略方が分かったとして、ウルキオラの裏をかけたとして、それでウルキオラの隙をつけたとして……)



――果たして、自分達はあの男を攻略できるか?――



「…………」


フェイトが思い出すのは、巨大な黒い翼
漆黒の双翼を宿したウルキオラのもう一つの姿

アレは正直桁違いだ、自分達とは完全に異質な強さだ。

仮にウルキオラの隙を突けたとしても、あの鉄壁の防御力
ユーノとロッテの補助を受けた、自分達三人の全力魔法でさえ……あの姿のウルキオラには通用しなかった。

つまり現時点では仮に攻略方が見つかったとしても、それが「机上の空論」で終わる可能性が高いのだ。


「一番現実的な方法としては、やっぱりウルキオラが黒い翼を出す前に決着をつける事だけど……」


だが、それが出来れば苦労しないだろう。
時の庭園の突入時でも自分達は既に同じ作戦を試みて、失敗していたのだから。

そして、ウルキオラは黒い翼がない状態でもSSランク級以上の実力を有している。
そのウルキオラを黒い翼を出す暇すら与える事なく仕留める方法なんて、自分には到底思い付かない。

つまりウルキオラとの戦闘=黒い翼を出したウルキオラとの戦闘と考えた方がいい。


……と、言うよりも……



「……黒い翼を出してない状態って……文字通り、『相手にもならない』実力差って事だもんね……」



自分の感覚で言えば、デバイスもバリアジャケットも用いずに生身のままで戦闘する様なモノだ。
やはり、ウルキオラからあの黒い翼を出させる程度の実力が無ければ話にならない。

結局の所、絶対的に力不足なのだ。
ウルキオラから見れば、自分達は明らかに力が足りない。

全く恐さを感じない、微塵も脅威を感じない。
ならばどうする?


「……一番単純な対処方法は、攻撃力の強化……」


前にも考えた、ウルキオラに脅威を感じさせる最も現実的で単純な方法
それは、ウルキオラにダメージを与えられる「攻撃」をこちらが身に付ける事

しかし、こちらもそう簡単には行かない。


「……なのはとクロノ、そして私の全力の魔法でもダメージを与えられなかった……」


単純計算であの時の一撃は自分の全力の攻撃の三倍以上
つまり、自分に求められるのは現在の三倍以上の攻撃力


「……それだけの攻撃力を捻り出す手段……」


考えられる方法としては、大人数を用いた集中砲火か
アースラの様な武装艦が用いる大規模火力による攻撃か
母が用いた様な大型魔導技術を用いた攻撃か

若しくは予め莫大な魔力を何らかの方法で貯蔵しておくか――



「―――え?―――」



その瞬間、脳裏の奥底で火花が散った。
何かが、フェイトの頭の中を過ぎった。


「……予め、貯蔵?……」


その考えを切っ掛けに、フェイトの中で閃きにも似た何かが生まれた。


(……確か前に、ずっと前にどこかで、そんな技術が書かれていた本を読んだ気が……)


フェイトは身を起こして静かに考える。

何かが、今一瞬……見過ごせない何かが脳裏を過ぎった。
そのままフェイトは口元に手を置いて、その思考を展開させていく。


「……もしかしたら……」


――自分は今、もの凄く重要な『何か』を掴んだのかもしれない――


そう思って、フェイトはベッドから降りる
そのまま部屋から出て、アースラの資料室に向かおうとして


――Prrrr――


部屋に取り付けられていた、電話が鳴り響いた
フェイトは一旦足を止めて、壁に取り付けられてある受話器を取って


「はい、もしもし……ああ、クロノ。一体どうしたの?」


電話の主はクロノからだった、そのままフェイトはクロノからの連絡を聞いて




「…………え?…………」




小さく静かに、そんな声が響く
その表情は驚愕に歪んで、クロノから告げられた内容を思わず口に出して呟いた








「……リニスの意識が、戻った……?」








散らばった物語の欠片は、徐々に集まりその片鱗を表していく


――破面――

――魔導師――

――闇の書――

――守護騎士――

――時空管理局――



―――そして―――
















「……記憶が、ない?……」

「はい、それはもう綺麗さっぱり」


とある次元世界の、とある建物の、とある一室
そこでプレシアは目の前に銀髪の女に尋ねて、その女はあっさりと返す。


「それじゃあ、さっきのお持ち帰り云々の下りはどういう事?」

「正確に言うと、昨晩より以前の記憶が一切ない状態です」


プレシアの問いに、女は淀みなく答えていく。
その銀髪の女との問答を繰り返しながら、プレシアは考えていく。

そして携帯していた宝玉型のデバイスを取り出して、この隠れ家の警備システムに繋げる。


(……セキュリティ、メインシステムにこれと言った異常はなし……隠れ家の内・外共に何かをされた形跡は確認されていない……)


隠れ家内とその周囲にこれと言った異常はない。
その事を確認して、隣の白い協力者に念話を飛ばす。


『……ウルキオラ、本当にこの娘は貴方が連れ込んだの?……』

『……心当たりはある、だがそれは人ではない、『物』だ……』

『……どういう事……?』


念話越しに、ウルキオラはプレシアに簡潔に昨晩の自分の行動について説明する。
その大まかな説明を聞き終えて、更にプレシアは考える。



『……成程、大体の経緯は分かったわ……』



事の大凡は、大体把握できた。

もしもこの女が、何らかの『邪な目的』を持ってこの家に侵入したのなら、幾らでも目的達成のための手段と時間とチャンスはあった筈

少なくとも、この隠れ家の警備網に一切の痕跡を残すなく侵入する程の賊なら、何をするでもなく未だこの隠れ家に居座り
堂々と、よりににもよってウルキオラと同室で眠り、挙句の果てにこんな『ふざけた手段』を用いるメリットも、意味も、理由もない。


もしもこの女が賊や侵入者と言った存在なら、あまりにも行動が矛盾と無駄だらけだ。


ならばやはり、この女は自分達に対しては害意や敵意はない。

だから、この銀髪の女は嘘をついていない
ウルキオラの説明から考えられる、その『可能性』が正しいと捕らえるべきだろう。

しかし



(……でも、問題はそこじゃないのよねー……)



そう、重要なのはそこではない
この女の言っている事が本当かどうかではない。

重要なのは、この女が敵なのか否か
自分達にとって、害悪な存在なのかどうかだ。


(……本来なら、ホロかイザヤ辺りに任せてしかるべき対処をしてもらう処だけど……)


扱いに困る
それがプレシアの抱いた、端的な感想だ。

『疑わしきは罰せよ』のスタンスで行動しても良いが、現状ではあまりに判断材料が少なすぎる


(……ウルキオラの説明から察するに、どうにも『見過ごせない』存在なのは確かな様だし……)


それに、この女自身の利用価値も未知数だ。
一連の事の流れから、この女はあのベルカの騎士と名乗った連中の関係者である可能性が高い。

その事から、下手に外に放り出すにも排除するにも行かない。


(……でも、不穏分子の芽は摘んでおくに限るしねー……)


冷徹な眼光で女を見る。
確かに利用価値はあるかもしれないが、それと同時に不安要因……不穏分子であり危険分子でもある事には変わりは無い。

あのベルカの連中や仮面の魔導師との一件もある、楽観的な考えはしない方が良いだろう


やはり、ここは『万が一』の可能性も潰しておくのが無難かもしれない。


プレシアがそう判断しかけた

正にその瞬間だった。




「そういえば」




不意に、銀髪の女が口を開いた。


「先程から、妙に頭の中にこびり付いて……頭から離れない単語があります」

「離れない単語?」

「はい、それにやたらハッキリと頭に響いている感じなので……多分ソレが、私が覚えている言葉だと思います」


女の言葉を聞いて、ウルキオラが聞き返す。
女は頷いて、目の前のウルキオラとプレシアの瞳を真っ直ぐ見て










―――夜天―――










その言葉を呟く。


「………え?………」


その言葉は、小さく静かに響いて。



「……その言葉だけは、ハッキリと覚えています……」



銀髪の女は、ここに来て初めて
確かな意志を宿してその言葉を呟く。


そして、その言葉が
一切の虚偽を含まない言葉が


魔女の天秤を、傾ける

運命の歯車を、ゆっくりと回す


故に、欠片は徐々に集まる

散らばった物語の破片は、見えない何かに引き寄せられる


――破面――

――魔導師――

――闇の書――

――守護騎士――

――時空管理局――



―――そして―――




―――『夜天』―――




罅の入った物語は、徐々に加速する

歪み狂った歯車は、そのまま回り続ける



――くるくる――


―――狂々と―――。

















続く








後書き
 どうも皆さん、お久しぶりです!作者です! 今回は更新が大分遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
せめて生存報告だけでもしときたかったんですが、作者も例の震災以降ばたついていて、中々更新ができませんでした!

とりあえず作者は無事です、東北で暮らしている兄貴も無事でした
この一月の間に、作者も大分状況が落ち着いてきたので、今回はこうして本編を更新させていただきました!
本当に遅くなってすいませんでした!


さて、話は本編
今回はA’s編における「中締め」的な部位の話を描かせて貰いました

最近はかなりご無沙汰だった管理局サイドの話や、フェイトやリニスに関して、置いてきぼりにしがちだったモノを纏めて描いた感じです

そして、何と言ってもテスタロッサ家サイド
次回も多分、テスタロッサ家でのイベントが続くと思います!


それでは次回に続きます!




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