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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第参拾捌番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:a15c7ca6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/29 19:24




夜天の下、そこには蒼と翠の二つの光があった。

蒼の光は旋風を纏いながら竜巻の様に渦巻いて
翠の光は暴風を巻き上げながら光の柱を造り上げて

その衝撃は空間内を瞬時に蹂躙して、爆煙を巻き上げた。


僅かな間を置いて、光が止み煙が晴れ上がる
そして『ソレ』は、徐々に姿を現す。


蒼の竜巻が消え、最初に映るのは長い青髪
腰元にまで届くほどの長い青髪を靡かせて、その男の全容が映る

男の全身を薄く覆う白い装甲、四肢に備え付けられた白い鋭牙、腰から生える一つの尾
そのフォルムは人型から猫科動物を思わせる様に進化し、「獣人」という呼称がしっくり来るその体躯

額に装着された白い装甲、目元から耳元まで延びる青の仮面紋
耳は獣のソレを思わせる様に鋭く長く生え変わり、口からは獰猛な肉食獣の様な牙が映った



翠の光柱が消え、初めにそこに見えるのは黒い双翼
その片翼のみで3m以上は巨大な漆黒の翼、ロングコート状に変化した衣服

その男の頭部には巨大な双角を生やした兜、目元から頬に掛けて爛れる様に肥大化した翠の仮面紋

その姿、正に「悪魔」と形容するに相応しい異形


「…………」

「…………」



互いがその存在を確認する。
二つの瞳が交差する、互いの瞳にその姿が映りこむ。


「……お、ぉ……」


その声が漏れる
白い牙の隙間から、その男は微かに呻く様にその声を漏らし



「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!」



轟音が炸裂し、男は吼える。
青い髪を振り上げて、その声帯を極限まで震わせて、男は有らん限りの力を込めてその咆哮を上げる。


「……相変わらず、喧しい声だ……」


その咆哮を聞きながら、白い男は冷ややかに呟く。
鼓膜と肌をビリビリとその咆哮で刺激され、尚もその瞳を逸らさず獲物を見続けて



――響転――



黒い双翼が羽ばたく
青い髪が靡く


疾風を追い抜く迅速で、白い魔手が撃ち出される
高速を抜き去る超速で、黒い鋭爪が撃ち込まれる

翠の瞳がその獲物を捉えて、その光剣を形成して振り下ろす
蒼の瞳がその怨敵を映して、肘鉄と共に鋭牙を突き込む

翠光が指先から撃ち出され、赤光が掌から射出される
爆発が暴風を生み出し、衝撃が肉体を掛け巡って、その衝突は空間を軋み上げる。



「ハ!ヒャハ!クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアァァァァ!!!!!」



そんなやり取りの中で、その男は笑う。
愉快気に口元を歪めて、笑うように吼える。


「いいぜ!いいぜウルキオラアァ!」


翠の光剣を黒の鋭爪で弾く。
白い掌撃を白い蹴撃で撃ち落す。


「その眼だ!その眼が気に喰わねえ!てめえのそのナメた視線が心底気に喰わねえ!」


青の髪を揺らして、グリムジョーが叫ぶ。


「だから潰す!徹底的に!壊滅的に!絶対的に!てめえという存在を根こそぎブッ潰す!」


そんな叫びを聞いて


「相変わらず、馬鹿げた声量で喋るヤツだ」


黒翼を羽ばたかせて、ウルキオラが呟く。


「耳障りだ、少し黙れ」

「黙らせてみろよ!力づくでなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」













第参拾捌番「夜天の戦い 黒翼大魔VS豹王」














闇夜に浮かぶ月に照らされて、二つの影が疾走する。
連鎖的に衝撃が炸裂し、閃光が瞬く様に空間内を翔け抜ける。

二つの影の衝突は空間を揺らし、地鳴りの様に大地を軋み上げる。

鈍い衝突音と共に、肉体が軋む
風斬り音と共に、鮮血が飛び散る


「……ちぃ!!!」


『ミシリ』とグリムジョーの頭蓋に衝撃が走り、肩口の肉が裂けて赤い雫が跳ねる。


「――っ!」


『メキリ』とウルキオラの腹部に鈍痛が響いて、胸板が減り込んで体が弾ける様に後方に飛ぶ。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!」

後方に飛んだ白い影を、青い影が翔けて瞬時にその懐に潜り込む。

「貰ったあああぁぁぁ!!!!」

グリムジョーが吼える。
その拳に溢れんばかりの霊力を練り込んで、一気に撃ち下ろす
撃ち放った拳に衝撃と硬い手応えが走り

その眼は驚愕に見開かれる。


「っ!」


その拳は、白い影に届いてない
黒い拳は、黒い翼に止められて


「調子に乗るなよ」


翠閃が横一文字の軌道を描いて、鮮血が飛び散る。
一閃二閃三閃と翠剣が振るわれて、その体が朱色に染め上げられる。

更に翠光が放たれて、グリムジョーの体を一気に飲み込んだ。


「……ぅ!っ!!」


瞬時に両腕を十字に組んで砲撃に備えるが、その衝撃を殺しきれない。
両腕がメキメキと軋んで、肉が焦げる不快な臭いと痛みを感じながら、その体が飛ばされる。

そして更に、ウルキオラは『ソレ』を振りかぶる
格好な隙に晒される獲物へ向けて、その翠剣を投擲する。


「クソがあぁ!」


だが弾く
グリムジョーとて、只ではやられない。

空中の霊子を瞬時に固めて踏み止まる、次いで我が身に迫る翠剣を拳で弾いて



背後より、白い閃光が走る。



……隙だらけだ、莫迦が……



頭の中で呟いて、ウルキオラがその掌に翠剣を形成する。
グリムジョーは未だコチラを見ていない、仮に気付いていたとしてもこのタイミングでは絶対に避けられない。

如何な行動をしようとも、確実に先に自分の攻撃が届く。

そうウルキオラは結論付けて、その隙だらけの背中目掛けて一気に翠剣を振り下ろし


その一撃は止められる。


「――っ!」


その眼が『ソレ』を映して、驚愕を帯びる。
己の一撃を縫い止めた、その予想外の要因を視認する。


翠剣を白い手首ごと絡め取る、その白い尾の存在を確認する。


「……っ! こんなもの」
「遅ええええええええぇぇぇぇ!!!!!」


衝撃音が鳴る。
ウルキオラの頬に拳が減り込んで、横薙ぎに弾け飛ぶ
即座に返しの一撃が放たれ、その顎を跳ね上げる。


「……く、ぐ……っ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!!」


だが終わらない
グリムジョーは尚もその手を緩めない。

顎が跳ね上がりガラ空きになった懐に潜り込んで、一気に鳩尾へ殴り込む。

拳の弾幕

両腕を駆使して火を噴く様な機関銃の様に拳を掃射して、その腹部に連続で殴りつける。

鈍く重い、拳が肉体に減り込む音が連続的に響き渡り


「少し、効いた」


硬い衝突音が響く。
白い肘鉄が青い髪に減り込んで、その頭蓋に撃ち込まれる。

「がっ!!!」

頭蓋が揺れる、脳天がミシミシと軋む。
頭上からのその衝撃にグラリと視界が揺れて、肘の一撃で頭が沈み込んで更に白い拳を撃ち下ろす。

その衝撃にグリムジョーの体は地面目掛けて弾ける様に墜落して





白い指先に、黒い閃光は収束する。





「……っ!っっ!!!」

その力を感じ取り、蒼の眼が見開かれる。
このままでは拙いと瞬時に判断し、揺れる視界を必死に制御して墜ちる体を支えて向き直り



「黒虚閃」



黒い砲撃が放たれる。
全てを飲み込む圧倒的破壊力を持つ黒い奔流が放たれる
虚閃を遥かに凌駕する大砲撃が、地に落ちる獲物目掛けて放たれる。


「――!!!!」


黒い一撃は降り注がれる。
黒い閃光は、その獲物を瞬時に飲み込む。

その霊力、その圧力、その威力、飲み込まれたグリムジョーの体はその黒い暴力に瞬時に蹂躙されて


「……ぐ、く……」


その黒い砲撃は瞬時にグリムジョーの肉体に喰らいつき、その鋼皮を焼き、その肉体を嬲り


「……う、お……っ!!!!」


その黒い一撃は、飲み込んだグリムジョーごと地面目掛けて落ちていき



「ウオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!」



黒い閃光は、止まる
黒い砲撃は、停止する
黒い一撃は、その獲物に塞き止められる。



「……な……っ」
「返すぜ!丁重に受け取れやあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」



次の瞬間、その一撃は夜天を昇る。
グリムジョーはその両腕で抱え込んだ黒い閃光を、その怨敵目掛けて投げ返す。

黒い一撃は、跳ね返る。
そのベクトルを180°変えて、黒い一撃は夜天に立つウルキオラに襲い掛かる。


「……チィ」


舌打つ様に呟いて
ウルキオラは我が身に迫る黒い砲撃を空中で避ける。

漆黒の双翼を羽ばたかせて、滑るように安全圏へと翔けて



蒼い閃光が翔ける。



「――っ!!!」
「ッシャアアァ!!!!」


甲高い衝突音が鳴り響く。
翠の光剣と黒い鋭爪が互いにぶつかる。

互いの瞳が敵を捉える。
互いが互いに、その間合いに敵を捉える。


そしてそのまま、乱打戦に縺れ込む。


獣の様な咆哮を上げて、グリムジョーは一気に攻め込む。
四肢を駆使して、打撃と蹴撃をもって、黒い鋭爪と白い鋭牙を振るって、その敵を逃すまいと果敢に攻める。

野獣の様に迫るグリムジョーを、ウルキオラは冷静に迎撃する。
漆黒の双翼で攻撃を弾き、翠の光剣が閃光の軌道を描いて、その獲物の攻めを悉く捌く。


(……妙だな……)


全てを薙ぎ倒す暴虐の攻防の中で、ウルキオラは考える。


(……やはり、戦闘力は俺の方が上だ……霊力も速度も与えたダメージも、全てにおいて俺が優位だ……)

「ちょこまか動くんじゃねえ!殴りづれえじゃねえか!」

(……なのに何故、コイツを仕留めきれない……)


グリムジョーの肉体は黒虚閃で大きくダメージを負い、鋼皮も大部分が破損している
その肉体も所々が傷つき、その出血量も決して少なくない

最初は己が知るグリムジョーとの戦闘力のギャップに対応しきれずダメージを負ったが、それを含めても自分の方が依然優勢の筈だ

だが仕留められない。
仕留めきれない。


(……一体、何故……?)


ウルキオラがその疑問に囚われて、僅かに考慮したその瞬間


「っラアァ!!!」
「っ!!!!」


白い頬に、再びその一撃は突き刺さる。
その頭蓋をミシミシと揺らして、ウルキオラの体は跳ねる様に後退し


「随分と高え授業料を払ったが、その甲斐はあったみてえだな」

「…………」

「ようやく慣れてきたぜ、てめえのスピードに」


口の端から流れるその鮮血を舐めて
口元を狂喜に歪めながら、グリムジョーは告げる



「……成程……」



プっとウルキオラは赤い唾と欠けた奥歯を吐き出して、小さく呟く。



「……どうやら、大分評価を改める必要がある様だな……」



思い上がっていたのは、どうやら相手だけでは無かったらしい
その評価を少々過小評価していたらしい

ウルキオラはそう頭の中で纏め上げる。


「いいぜ、良い感じだ……やっぱ戦いってのはこうじゃなきゃ面白くねえ」


そして、尚もグリムジョーは笑う
明らかに不利な状況で、一瞬の油断が破滅を招くこの状況で尚も笑い続け





「とことんやろうぜ、ウルキオラァ」





その戦いを心から噛み締める様に、グリムジョーは愉快気に呟いた。


















そこは結界の一角、黒い魔女は杖をクルクルと手の中で転がして


「気付いてない、とでも思ってたかしら? 私も舐められたものね」


不気味な静寂な中、ギラリと一つの視線が光り
黒い魔女はゆっくりと背後を振り向いて、口元を愉快気に歪めて呟く。


「居るのは分かっているわ、さっさと出てきなさい。早くしないとこのお嬢さんがお嫁にいけない体になっちゃうわよ?」

「がぅ!!!」


杖の先端が僅かに輝いて、拘束されたシャマルの体が僅かに跳ねる。
その顔を苦痛に歪め、呼吸を荒げて



その影は、ゆっくりと姿を現した。



「成程、流石だな」



白と青を基調としたバリアジャケット、青い髪、その顔を隠す白い仮面
その姿を見てプレシアの中で、とあるキーワードが浮かび上がる。

どうやらこの男がウルキオラの言っていた「仮面の男」で間違いないだろう。


(……声と体格から判断するに男……と判断するのは早計ね……少し探りを入れてみましょうか……)


その人物を、丹念に丁寧に観察する。

自分が使っていた変身魔法の例もある。
仮面なんて物をつけて顔を隠しているくらいだ、見た目だけの情報には惑わされない方が良いだろう。

先ずは集められる情報だけでも収集すべきとプレシアは判断して、その言葉を投げ掛ける。


「あらあら、随分なご趣味をお持ちの様ね。覗きは立派な犯罪よ? このお嬢さんの喘ぎ声を聞いて興奮しちゃった?
だったらそのリビドーはお家に帰って、『大人向け』なビデオやら道具やらを使って発散する事をオススメするわ」


ククっと口元を歪めてプレシアは言うが、仮面の男は答えない。


「……その女を渡して貰おう……」

「丁重にお断りするわ、このお嬢さんにはまだ『お話』があるの。それに幾ら『人でなし』な私でも、通りすがりの変質者の言う事は聞けないわ
それに若しかしたら、性犯罪者の片棒を担ぐ事になっちゃうかもしれないしね」


男の呟きと魔女の言葉が交わると同時に、空気が変わる。
仮面の男はその両手に魔力光を宿し、プレシアは周囲に紫電の弾丸を形成する。



「…………」

「…………」



何かが、軋む
何かが、歪む
何かが、罅割れる

感じるのは戦慄、ただ狂おしい程に奏でられる狂気の旋律
無機質な仮面と魔女の瞳が交差し、互いの魔力と威圧が姿無き攻防を繰り広げて


「……最後通告だ……」


男の呟きと共に、見えない何かは一瞬動きを止め





「その女を渡せ」
「寝言は寝て言え、ぶち殺すわよ変態仮面」





次の瞬間、衝撃と轟音が空間を支配した。



「フォトンランサー・ジェノサイドシフトオォ!!!!」



魔女が吼える。
閃光と爆発が周囲をする最中、煙幕越しに魔女は尚もその攻撃の手を緩めない
紫電の光弾は弾幕を形成して獲物に掃射され、その暴虐の弾丸は唸りを上げて


「全弾着火」
『explosion』


次の瞬間、更なる衝撃が巻き起こる。
連鎖的に爆発が起り、数珠繋ぎに暴風と轟音が発生して螺旋状に吹き荒れる。

灰色の煙幕は渦巻いて、そのまま漂う様に展開されて



その拳は、煙幕を切り裂いて放たれる。



「へえ、アレを凌ぐなんてやるじゃない」



紫電の盾が拳を止める。

だがその攻撃は止まらない
紫電の盾に更なる拳打が撃ち込まれ、その盾は亀裂が走って崩壊し


「遅い」
『counter bind』


魔女が呟く。


「……な!!」


仮面の男が驚愕の声を漏らす
崩壊した紫電の盾は、そのまま男の腕を、脚を、紫電の鎖となって絡め取る。

そして、更なる紫電が唸りを上げる。


「――っ!!」

「くたばりなさい」
『thunder smasher』


零距離から、その砲撃は放たれる
魔女の杖からその紫電の砲撃は放たれて、ソレは瞬時に仮面の男を飲み込んだ。








「……いったい、なに…が?」

突然の状況の変化に、シャマルは思わず呟いた
黒い魔女と仮面の男との間に起きた、突然の戦い

その闘いが生み出した閃光と爆発、衝撃と轟音に、理解が追いつかなかったからだ。


だが次の瞬間、シャマルは気付く
これはチャンスだと


「クラール、ヴィント」
『bind break』


全身から魔力を搾り出して、その命令を実行させる。
次の瞬間、紫電の鎖に罅が入り、その鎖は砕け散ってシャマルの体は地面に落ちる。


ドサリと音を立てて地面に落ちて、その衝撃に僅かに顔を歪めるが


「……何とか、だっしゅつ、を……」


這いずる様に手足を動かすが、その体を立たせる事が出来ない。
先ほどまで受けた魔法の影響で、未だ体中の感覚が麻痺していたからだ。


「……う、ぐ……っ、ぅ!!!」


だがそれでも、シャマルは諦めない。
歯を食いしばりながら、麻痺した手足を死に物狂いで動かして前へ前へと這いずり



「シャマル!無事か!!!」



その声が響く。
シャマルが声の発信源へと振り向くと、そこには見慣れた桜色の髪が映りこんだ。


「……シグ、ナム……?」

「すまない、助けに来るのが遅くなった……立てるか?」

「……あはは。すこし…厳しい、かも……」

「そうか、なら少しジッとしていろ。安全圏まで担ぐ」


そう言って、シグナムはシャマルの体を担ぎ上げる。
シャマルの両腕を首に回してしっかりと固定し、簡単にはずり落ちない様にして背負う。


「……シグナム。あな…たも、怪我…して、るんじゃ?」

「心配するな……と言いたいところだが、私も手酷くやられた。あまり余裕があるとは言えんな」

「……ごめん、なさい……」

「謝るな、こういう時はお互い様だ」


そう言って、シグナムは背負ったシャマルに微笑みかける。
その笑みを見て、シャマルもまたシグナムに小さく笑って頷いて





「――だーれが逃げて良いって言ったかしら?――」





天上より、紫電が奔る。


「……っ!!!」

「なっ!!!」


二人の目が驚愕に見開かれる。
二人の視界に映るのは虚空に浮かぶ黒い魔女、紫電の奔流を携えた黒き魔女。


「悪い子にはお仕置が必要ね」
『satellite canon』


豪雨の砲撃が、二人に放たれる
紫電を纏ったその雨は一斉に襲い掛かる。

シャマルは動けない
シグナムもレヴァンティンを振るおうとするが、ダメージが影響して動けない

故に、二人はソレを防ぐ術はない。


「……くっ」
「万事、休すか…っ!!!」



そして紫電の砲撃は二人に降り注ぎ


一つの盾が、その全てを塞き止めた。



「「「――!!!?」」」



その予想外の事態に、三人は驚愕する。
砲撃を防いだ盾と、その盾を形成した人物を見つめて、その眼を見開く。


「お前は、あの時の!!」

「仮面の男……?」


その人物を、二人は知っている。
シグナムは一週間前、シャマルはつい先程、その人物との出会いを果たしている。


「…………」


仮面の男は、何も答えない。
そして懐からカード型のデバイスを取り出し、二人に投げ放つ。


「……え?」
「……な!」


その瞬間、二人の足元に幾何学模様の魔法陣が形成され、二人の姿は消える
魔法陣の光に照らされた瞬間、二人の姿は煙の様に消え去って




「……成程、そういう事かー……」




一連のやり取り見て、魔女は呟く
何処か納得した様に、その結果に得心が言ったかの様に表情を歪めて

次の瞬間、男の足元に魔法陣が形成され


「さっきはしくじったけど」


紫電が奔る。


「簡単には逃がさないわよ」
「……!」


その砲撃は仮面の男の足元を撃ち向いて、魔法陣を粉砕する。

仮面で表情こそは読み取れないが、その仕草から仮面の男の動揺が伝わる。
そして尚も魔女は杖の先に紫電の光を収束させて




「さて、それじゃあ第二ラウンドと行きましょうか」




黒い魔女はその瞳に戦意を宿して、再び仮面の男を見て宣言する。


「貴方『達』全員、まとめて相手してあげるわ」









夜天の戦いは、尚も苛烈さを増す

黒翼を持つ男と豹王の名を持つ男の戦いは更に激烈なモノとなり

黒き魔女と白の仮面の戦いの火蓋は切って落とされる








……そして……








――また、傷ついている――

――また、苦しんでいる――

そこはどこかの一室
そこはどこかの牢獄

赤い檻に幽閉された銀色の光球は、尚も火花を散らしてその光を瞬いていた。


――たすけ、なくては――

――あのコ達を、助けなくては――


銀色の光球は、まるで意思を持つかの様に荒れ狂って光を放つ
荒れ狂った光はそのまま赤い檻に襲いかかり、バチバチと火花を散らす。



――いカなくてハ――

――主のモト、ニ、行カナクテハ――



火花が咲き乱れる
光がスパークする様に激しく瞬く。

そして、ソレは起る。

「ピシリ」と音が鳴り、その赤い牢獄に罅が入る
その音を切っ掛けに、ピシリ、ビシリと、連続的にその音は奏でられる。


――オ、ぉ――


火花が爆発する。


――ウ、お――


赤い牢獄に亀裂が入る。



――オオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!――



銀の光球が吼える
その咆哮が響き渡る

その衝撃が空間を揺らして、閃光を吐き出し黒煙を撒き散らす。

次の瞬間、壊れる。
その赤い牢獄は瓦解する。


そして、辺りは静寂に包まれる
嵐が過ぎ去ったかの様に、その空間は静寂に支配される

僅かな間をおいて煙が晴れる。
だがそこには何もなかった。


赤い牢獄も

銀の光球も


そこには、何も残されていなかった。










続く











後書き
 どうも作者です。今回は少々時間が掛かりましたが、まあ二週間以内は書き上げる事が出来たので、段々と以前の執筆速度を取り戻せる事が出来て安堵しております。


さて話は本編
今話から開戦となった黒翼大魔VS豹王ですが、本編でも書いてありますが現時点での戦闘力で言えば
完全に「帰刃ウルキオラ>帰刃グリムジョー」の構図です。
最初はウルキオラは結構グリムジョーにやられていましたが、それはグリムジョーと嘗てのグリムジョーの戦闘力のギャップが原因……と脳内補足でお願いします。


そして、次の議題は我等がプレシアさん
今回プレシアさんは割りとあっさりシグナムとシャマルを逃がしたと思う方もいらっしゃるでしょうが……

この作品のプレシアさんは、そこまで詰めが甘い御方ではないという事だけを頭の中に書き留めておいてクダサイ。


あまり書き過ぎるとネタバレ発言をしてしまいそうなので、今回はこの辺にしておきます
それでは次回もよろしくお願いします!!


追伸 気がついたらいつの間にか参照数が50万超えてて素で驚きました。
この作品を読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます!



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