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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第参拾伍番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:a15c7ca6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/09 04:31




「ぷっは!うめー!!! 久しぶりに食べるはやてのメシはマジでギガうまだな!!!」


とある民家の一室にて、そんな少女の活発な声が響いた。


「なはは、そこまで喜んでくれるとこっちも作り甲斐があるわー。でもヴィータ、もっとゆっくりと食べな体に悪いでー」

「んぐんぐ、分かった」


手に持った食器から勢い良く白米を掻き込んで、ヴィータは上機嫌な表情を満面に浮べながらもぐもぐと咀嚼する。
そして目の前のテーブルの上にある様々な料理に箸を伸ばして、手早く自分の茶碗の上に掻き集めてそのままガツガツと口の中に放り込んだ。


「ヴィータ、久しぶりの主の食事を堪能したい気持ちは分かるが、もう少し行儀良くしろ
同じ騎士として流石に見過ごせんぞ?」

「もぐっ、んぐ、ぷはっ。わーったよ、ゆっくり食うよ」


正面に座るヴィータの姿を見据えながら、シグナムが嗜める。
カップに注がれた水をゴクゴクと飲んで、口元を拭きながらヴィータが返した。


「なははは。まあ、元気があるのはええことや。最初は急にメンテナンスが必要って聞いて驚いたけど、大した事なくて良かったわ」


隣に座るヴィータの頭を柔らかく撫でながらはやてが呟く
頭を撫でられたヴィータはあれほど忙しなく動かしていた手を止めて、自分の頭を撫でるはやてを目を細めながら見つめて



「……ゴメン、はやて。心配かけさせて」



どこか影がある表情で、小さくヴィータが呟いて


「そんな事いつまでも気にせんでええよ。ほら、まだまだ沢山あるから遠慮なく食べてな」

「……うん!」


そんなはやての言葉を聞いて、ヴィータは笑みを浮べて頷いた
そして新たな料理を食べようと、その手をテーブルに伸ばして


『ヴィータ、早速で悪いがこの後話しがある……時間を取れるか?』

『……話? 何だよ?』


不意に頭の中に響いたその声を、ヴィータは料理をもぐもぐと咀嚼しながら返して



『……闇の書に、自ら取り込まれた男についてだ……』









第参拾伍番「狩る者と狩られる者」











「……それで、どの程度まで回復した?」

「ん、大体二割から三割って所だな。まともな戦闘をするにはちぃとばっかし厳しいかな?」

「そうですか」


食事も終わりヴィータとシグナム、シャマルの三人は今から離れた別室に集まっていた
ザフィーラははやての護衛と監視も兼ねて今はリビングにて、はやてと一緒にテレビを見ている。


「……んで、さっきの話だけど」

「ああ、闇の書に自ら取り込まれた男について……だったな」

「……詳しく聞かせろ」


その言葉を聞いて、ヴィータの目が僅かに鋭くなって二人を捉える
シグナムとシャマルは互いに顔を合わせて、僅かな間を置いて小さく頷いて


「……事の始まりは、貴方とザフィーラが重傷を負わされた同日の事です。私がとある次元世界に赴いた時の事でした」


シャマルがその時の事を思い出しながら説明する。

闇の書の頁蒐集の為に、とある次元世界に赴いた事
その次元世界が、自分の目から見て明らかな異常な光景だった事

その世界にて、複数の龍種と共に血まみれの男が倒れていた事

その男が発する圧倒的力を感じながら、シャマルは男から蒐集するかどうか悩み葛藤した事
悩んだ末、シャマルは主との誓いを破るわけにはいかないと……男からの蒐集を諦めて、男に治療を施そうとした事


そして治療魔法を発動させる正にその瞬間、男の体は粒子状に分解し闇の書の中へ消えていった事


その全ての事を、シャマルはヴィータに話した。



「……というのが、今回の一件の大筋です」

「……ふーん、成程ねえ……」


その全ての話を聞き終えて、ヴィータは顎元に手を置いて何か考える様な仕草をする
そして少しの間を置いて


「んで、ザフィーラはこの事知ってるのか?」

「ああ、先日話した。ザフィーラはお前よりもダメージが少なかったからな」


ヴィータの確認する問いをシグナムがあっさりと返す
その確認を行ったヴィータは「ふーん」と頷いて、次にシャマルが尋ねる。


「ヴィータちゃんから見て、闇の書の中で何か異常を感じたりはしませんでしたか?
何分、こう言ったケースはあまり経験がないので、少し不安で」

「異常、ねえ……特に感じなかった、というよりもこっちはソレどころじゃなかったからな
一秒でも早く体を治す事しか考えてなかったし、それにヤバイ異常事態が起きてたんなら流石に気付いただろうし」

「……ふむ、確かに。ザフィーラも同じこと言っていた」

「でも確かに、シャマルの言う事も少し気になるな」


一連の話を聞いて、ヴィータもそんな風に意見を漏らす
闇の書がそんな簡単にはどうこうされる存在ではないと良く知っているが、その話を聞いて一抹の不安と不気味さを覚えたからだ。

一言で表わせば、勘
長年の体験と経験で培ってきた騎士の勘が、どうにも只事ではないと告げていた。



「……なあ、ひょっとして……『アイツ』の仕業じゃねえか?」



思考を進めていく内に、ヴィータがぽつりと呟く。


「アイツ? 闇の書の管制人格の事か?」

「ああ、シャマルの仕業じゃねえんなら……普通に考えて、それしか可能性がねえだろ?」


ヴィータが、その可能性を口にする
しかしシグナムは僅かに目を瞑って思考して、間を置いて首を横に振って


「……いや、恐らくそれはない。管制人格を覚醒状態にさせる為に必要な蒐集頁は400頁
シャマルがその時に蒐集したページを上乗せしても200頁にも届くまい。管制人格の仕業と考えるのは無理がある」

「……う~ん、じゃあこっちの線はないか」


そう言って、思い当たる可能性が大凡無くなったのか話し合いもそこで止まり、意見もなくなる
そして新たに思い当たる可能性を考えようとするが


「……やっぱ思い当たる事はねえな。闇の書の中も特に異常は無かったし、とりあえずは大丈夫なんじゃねえの?」

「だが、ソレを抜きにしても件の男は闇の書の中からどうにかして外に出すべきだろう
直接手を掛けなかったとは言え、このままその男を見殺しにしてしまっては主との誓いを破ったも同然
不安要素を取り除く意味でも、この問題はどうにかして解決するべきだな」

「シグナムに同意です。ザフィーラも同じ様にこの問題は解決すべきと言っています」

「……でもよー、肝心の解決方法がねえんじゃお手上げじゃねえ?」


その言葉を聞いて、再び場が沈黙する
何故なら、ヴィータの言っている事は正にその通りなのだ。

異常も無ければ変化も無い
その上具体的な解決方法もない

考えるにしても、判断を行うための材料が少なすぎると来ている。



「……やはり、一刻も早く蒐集を終わらせるべきだな」



静かに、シグナムが呟いて
二人の視線がシグナムに注がれる、そして更に言葉を続ける。


「我等だけで考えても、解決は難しい。それなら解決方法を知り得るモノを手に入れるべきだ」

「……確かに、『あの子』さえ覚醒状態になれば何か良い方法が見つかるかもしれませんし」

「仮に見つからなかったとしても、はやてが闇の書の主として真の覚醒をすればどうにかなるかもな
少なくともあたし達だけで考えるよりも、ずっと可能性が大きくなる」


その意見で、大凡今後の方向性が固まる
と言っても、今までと大して変わらない。

先ずは一刻も早く闇の書の頁蒐集を終わらせて、はやてを闇の書の主としての真の覚醒をさせる
全てはそれからだ

そう意見を纏めたところで





「「「!!!!」」」





そこに居る三人は、『ソレ』を感じ取る。
その力を感じ取る。


『ザフィーラ!!』

『ああ、こちらも感じた。どうやらこちらの勘違いではない様だな』

『……という事はやはり』

『ああ、魔力だ……それも、結構な大物だ』


全員が感じた力の正体、それは魔力
この管理外世界の中では希少な存在である、魔力反応だ。


「……場所は、そう遠くはないな。出るぞシャマル」

「了解です、直ぐに準備します」

「あたしはどうする? 一緒に行こうか?」

「いや、お前とザフィーラはここで待機していてくれ。治りかけの体に負担をかけるのは出来るだけ避けるべきだ
それよりも、主へのフォローを頼む。流石にこの時間に出かけるのは怪しまれるからな」

「ん、分かった。手早く済ませて来いよ」


そのヴィータの言葉を聞いて、二人の騎士が夜天の空へと飛ぶ
闇の空を駆け抜けながら、二人の体は光輝いてバリアジャケットをその身に纏う。

シグナムはその手に一振りの剣を握り締めて、シャマルはその手にペンデュラムを携えて
それぞれが得物を握り締めて、それぞれがその目に闘志を宿して


二人の騎士は、その戦地へと赴く。
















「責任をとって下さい」

「何に対してだ?」


ハードカバーの本の上からズイっと身を乗り出して、ウルキオラの顔を覗き込みながらアリシアが言う
そんなアリシアの言葉にウルキオラは淡白に返し、その瞬間アリシアの額には青筋が浮かんで


「おっぱい見られた」


ポツリと、小さく呟く


「色々見られた」


翠の瞳を覗き込みながら、涙目で呟く
そして次の瞬間に、クワっと両目を見開いて


「ここまで恥ずかしい事されて、私はもうお嫁に行けないんだよ!」

「廃品回収という言葉を知っているか?」

「それは一体どういう意味かな!!!」


憤怒と悲痛が入り混じった声が室内に響き、更に顔を近づけるアリシアの顔をウルキオラが掌で制す。


「オトメのヤワハダを見ておいて、何も責任を取らないなんて流石に見過ごせないんだよ!
ウルキオラも男ならしっかり責任を取るべきなんだよ」

「知っているか?最近は架空請求という詐欺が流行っているらしいぞ?」

「それは突っ込むべきなのかな!!!」


掌ごしにアリシアのそんな声が響く。
そしてアリシアはウルキオラの掌からスルリとすり抜けて、その場によよよと蹲って


「ううう、ひどい、ひどすぎるんだよ……ウルキオラにとって私との関係は、ただの遊びだったんだ……」

「耳にタコができるほど『遊んでくれ』と言っていた口が何を言っている?」

「……ソレを言うのは無粋なんだよ」


ムスっと、頬を膨らませてアリシアは言う。
そしてアリシアはスっと立ち上がり、トコトコと歩いてウルキオラの隣に座る。


「……今度は何だ?」

「べーつーにー……ただ座ってるだけ」

「……そうか」


その言葉を機に、場の空気は一気に静寂なものとなる。
ウルキオラは黙々と読書を続けて、アリシアはそんなウルキオラの隣でちょこんと座り続けて

時に後ろに背を倒し、時に何気なく本をいじり、時にウルキオラの顔を覗き込み。時に白い掌が顔面に食い込み
そんな時間が緩やかに流れていき


「ねえ、ウルキオラ」

「何だ?」

それは、アリシアなりの不安の表れだったのか



「……ひょっとしてさ、私と居ても……つまらない、かな?」



僅かにその表情に影をさして、僅かに顔を俯かせながら尋ねて


「…………」


小さく儚く、そんな呟きが響いて
その言葉が響いて、僅かに間を置いて





「―――さあな―――」





ただ簡潔に、ただ淡白に、ただ無機質に
ウルキオラはそう答える。


「むー、どっちさ?」

「言葉どおりの意味だ」

「……ふーん」


そう言って、再びアリシアはムスっと頬を膨らませてウルキオラに寄り掛かる
その小さな頭をその白い腕に寄りかけて、モゾモゾと後頭部を動かす。


「……何のつもりだ?」

「さあな」


不意の圧力に、ウルキオラは僅かに目を細めてアリシアに視線を移して
アリシアはそんなウルキオラに問いに、ニヤリと微笑んで


「邪魔だ、離れろ」

「んー、あと四時間」

「却下だ」


グイっと腕を動かして、アリシアの頭をどかす様に押す。


「ちぇ、ケチー」


そう言って、アリシアは再び頬をムスっと膨らませてウルキオラから離れる
そのままアリシアはウルキオラのベッドまで歩いて、ボフリと軽くダイブして



次の瞬間、その部屋に電子音が鳴り響いた。



「……っ」

「……へ? なになに? 何の音?」



その不意の音に、二人は顔を上げてその発信源に視線を移す
そしてテーブルの上においてあるソレに視線を定める。

それは、一つの宝玉型のデバイスだ。





「……動き出したか……」





宝形型のデバイスを手の中で転がしながら、ウルキオラが呟く
デバイスは魔力灯でその空間に文章を描いて、ウルキオラはその内容を確認する。

そして立ち上がる
立ち上がったその足で部屋のドアへと進んで、


「ん? どうしたの?」

「少し出てくる」

「えー、一人で? 私は?」

「留守番だ」



その言葉で会話を打ち切る
ドア越しに何か叫び声が聞こえてきたが、ウルキオラはその全てをシャットアウトした。


そのまま廊下を歩いて、幾つかのドアを潜り抜ける
そしてとある一室に入室し、そこにある転送装置の上に乗る。

幾つかの設定を操作して、入力ボタンを押す。

そして次の瞬間、ウルキオラの足元に魔法陣が現れる
魔法陣の光が一瞬ウルキオラの全身を照らし、一瞬後にその姿は魔法陣と共に消え去った。





















既に夕闇に沈んだ街中を、一人の少女がモバイル機を片手に歩いていた
年の頃は、恐らく小学校の高学年程度の年だろうか?

長い黒髪が特徴の、切れ長目が印象的な少女
薄地の紺のブラウスに下は灰色のレギンス、肩からは学生鞄風のショルダーバックを掛けている。


その黒髪の少女は、モバイル機の画面を眺めながら夜道を歩く
街灯の光に照らされた簡素な住宅街

道を歩く人間も段々とまばらになり、彼女はその足を帰路へと向けて



目の前の世界が、一変した。



「…………え…………?」



その突然の変化に、彼女は思わず呟く。

一言で言えば、異質
言い方を変えれば、異常。

見た目的には全く変わらない町並み、だが異常明らかな異質な空間

まるで世界そのものが摩り替わった様な強烈な違和感
彼女の目の前の広がる世界は、正にそんな世界だった。


「……っ!!」


その異常を目の前にして、少女は息を呑む
そして周囲の確認をしようと視線を動かして



「そこの少女、止まれ」



不意に、そんな声が響く。


「……え?」


声の発信源へと、少女は振り向く
少女の目に映るのは桃色のロングヘアーをポニーテールに纏めた若い女性と、金髪のショートカットの若い女性
そして少女のその目に、彼女達が纏う衣服が映る。

まるでゲームや映画の中で出てくる様な西洋風の甲冑に占い師風のローブ
お世辞にも普通とは言えない、あまりにも異質な服装。


「だ、誰ですか?……っていうか、え? ナニ、これ?……え?へ?」


僅かに困惑した表情を浮べながら、少女が呟く
ジリジリと後ろへ距離をとり、目の前の不審者に疑惑の視線を向けるが


「突然の事で混乱しているかと思いますが、少し大人しくしていてくれませんか? 決して悪い様にはしませんので」

「……な、ぁ、ぇ? ちょっ!来ないで下さい!ひ、人をっ!人を呼びますよ!!」


その異常事態に恐怖を覚えたのか
少女はその顔を恐怖に歪めて、ショルダーバックに手を入れながら後退する
掌サイズのモバイル機を手の中でカチカチと操作するが


「圏外!? そんな、どうして!!!」


取り出したモバイル機の異常を見て、少女は再び狼狽する
異常に次ぐ異常
その有り得ない連鎖に、少女の顔のますます恐怖に歪んでいき


「っ!来ないで! こっちに来ないでよ!!あっ!」


後退しようとした足がもつれて、そのまま転倒する。
直ぐに立ち上がろうとバタバタと少女は両手両足を動かすが、ガクガクと四肢が震えて思うように立ち上がれない。


『……シグナム……』

『……ああ、どうやら魔力資質はあるが…それに気付いていない未覚醒状態の魔導師の様だな……
事が事だ、出来るだけ手早く済まそう。余計な刺激を与える必要はない』


その少女の様子を見て、二人は手短に念話を行ってその方針を決める
そしてそのまま腰が抜けてしまったかの様に地べたを這うようにして、少女はズズズと後退する。

そしてそんな少女の在り様を見て、桃色の髪の女・シグナムは一呼吸の間目を瞑って


「すまない。我等も引けぬ事情があるのだ」


そのまま、一歩を踏み出す
恐怖に顔を歪める少女に一歩、また一歩と距離を詰めて


「……い、や……っ!! 来ないで!こっちに来ないでええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」


断末魔の様な少女の叫び声が響いて






紫電の鎖が、シグナムの全身を束縛した。





「……え?」

「……なっ……!!!」





二つの驚愕の声が響き

ユラリ、と
小さく重く、そして静かにその声が響く。





「……だーから言ったでしょ。こっちに来るな……てね」






声の発信源は、一人の少女
先程まで自分達に狼狽し、恐怖に顔を歪めていた一人の少女


「……でも、中々の猿芝居だったでしょ? 『悲劇』『恐怖』『絶望』この手の事に関しては経験豊富でね
自分の身内にも見破られない程度の自信はあるのよね」


少女の口元が、クシャリと歪む。


「……ま、でも少しだけ安心したわ
貴方達が性懲りもなく私の中に潜んでいた、微かな『甘さ』をぶち壊してくれて……」


その少女が、ユラリと立ち上がる。


「アンタ達が、私の期待通りの下種な連中で」


少女の顔の歪みはそのベクトルを変え、黒く歪んだ笑みになる。


「アンタ達が、自分の目的のためなら見ず知らずの子供にも手をかける様なクズで」


黒く歪んだ笑みを浮べたまま、少女の体が紫電の魔力光を纏う。



「アンタ達が私と同じ、己の欲望の為なら子供すらも食い物にする最低最悪な悪党で」



紫電が火花を散らし、空気を焦がす
魔力光が迸り、闇の世界を照らし上げる。



「本当に、心の底から安心したわ」


次の瞬間、紫電が弾けて風が吹き荒れて煙が舞う
その煙幕の中、その黒い女は紫電を纏って佇む。


「だから」


その瞬間、ソレは起こる



「私もこれで、心置きなく鬼畜になれるわぁ!!!!」

『skin off』



魔力が爆発する、衝撃がサークルを描く
紫電が奔る、暴風が吹き荒れる
紫電と暴風を纏って、黒い魔女はその姿を現す。


「偽造スキン!?……変身魔法!!?」

「……き、貴様は……あの時の!!?」


シグナムは知っている、その黒い魔女を知っている
その女は、嘗て自分達が獲物として狙った魔導師の一人

その絶大な魔力で、自分達の仲間・ヴィータを圧倒した魔導師



「あら、私の顔を覚えててくれたの? 身に余る光栄だわ、ベルカの騎士様」



――大魔導師プレシア・テスタロッサ――



「っ! レヴァンティン!」

『bind break』


シグナムが叫んで
次の瞬間、紫電の鎖が崩壊する。

そして



「退くぞシャマル!!!?」

「……っ!!」



次の瞬間、弾けた様に二人は動く。


……待ち伏せされていた!?……何故!?どうして!どうやって!?……


通常、今回の様な待ち伏せを行うに当たって最低限必要な物がある。

それは標的の行動範囲と、標的の目的だ
相手の行動範囲・行動パターンを知り、そこに相手の目的の物を用意して初めて待ち伏せは可能となるのだ。

だから、二人は疑問に思う。

どうして、相手が待ち伏せできたのか?
どうして相手は自分達がここに来ると分かったのか?


……拙い……これは非常に拙い!!……


頭の中に過ぎる絶え間ない疑問の声を聞きながら、二人は行動に出る。

バックステップで距離をとって、即座に演算を開始して術式を構成する
構成する術式は空間転移

今はとにかく、一刻もここから離れる必要がある。


相手は一人とは言え、自分と同格……若しくはそれ以上の魔導師
その上自分と相性が悪い、火力重視の遠距離戦闘タイプの魔導師
何の準備もなく戦闘を行えば、苦戦を強いられるのは目に見えている。


だが、そこではない
シグナムが即座に撤退を選んだ理由はそこではない。


『シャマル! 第三中継地点にまで転移しろ! そこからCルートを使って一時帰還する!!!』

『了解!!!』


二人の足元に、幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる
そのまま魔法陣は光輝いて、その魔力光で二人の体を照らし








「――そう急くな、少しゆっくりしていけ――」








次の瞬間
薄氷の様に、魔法陣は粉々に砕け散った。


「「っ!!!!」」


そのあまりに予想外の事態に、二人は驚愕で目を見開く
空間転移が発動しなかったからだ。

その構築式ごと術式を破壊され、その転移がキャンセルされたからだ


「なるほど、コツさえ掴めば存外に容易いな」


そして、シグナムは視線を動かす
術式が破壊された瞬間に感じた、魔力の発信源に目を向ける。



「久しぶりだな」



その目に映るのは、白い影
白い服、白い肌
黒い髪に、緑の瞳



「俺の顔を、覚えているか?」



忘れようがない
自分達の仲間二人を容赦なく破壊し、自分を窮地に立たした張本人


「……ぐ!」


前門には黒い魔女
後門には白い死神


「……シグナム……」

「……ああ、してやられた……っ!!!」


二人は、同時にその答えに辿り着く
ギチリと音が鳴るほどに奥歯を噛み締めながら、その言葉を搾り出す。

前後からの挟撃、それに加えて空間転移をも妨害されたこの現状


――完全に、退路を断たれた――


二人は、同時に背中合わせになって構える
その得物を構えて、臨戦態勢を整える。



「さあ、覚悟しなさい」



そんな二人を視界に納めて、黒い魔女が呟く
杖を振るって紫電が奔り、それは弾丸を形成する
弾丸の群れは徐々に弾幕となり、魔女の周囲に展開され



「誰に喧嘩を売ったのか、誰の娘に手をかけようとしたのか……その意味を骨の髄までしっかりと刻み込んであげるわ」



瞬間、魔女の双眼が獲物を捕らえる



「……あれから、一週間……と言った所か」



その緑の瞳で獲物を視界に納めて、死神が呟く





「これほど長い七日間は、初めてだったぞ」





小さく金属と金属が擦れる様に音が鳴り
死神が白銀の刃を抜いて、切っ先を標的に向ける。



――――逃げられると思うなよ――――

――――簡単に終わると思うなよ――――



――――さあ――――



――――そろそろ始めるとしようか――――



夜天の空の下、一つの闘いが幕を開く。














そこは、闇の中だった
ただ果ての無い黒い空間の中だった。

彼の意識は、その空間に漂っていた。


……イル……


闇の中に漂流していた意識が、僅かに脈動する。


……チカク ニ イル……


脈動した意識が覚醒を始めて、闇の中でその自我を取り戻す。


……コノ感覚……

……コノ気配……

……コノ霊圧……


闇の中で、それは蠢く
大いなる果て無き闇の空間で、それは己を形作っていく。



……居ル……

……アイツが……

……あのクソ野郎が……






……ウルキオラが、近くに居る……。















続く







後書き
新年あけましておめでとうございます! 今年も作者ともどもリリカルホロウをよろしくお願いします!!!

さて、話は本編
今回はバトルの序盤、色々描きたいシーンを描いていたらバトルは次回に持ち越しになってしまいました

ようやくですが、次回からバトルです
次回からは色々と動かすキャラが増えるので、頑張って描いていきたいと思います。






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