<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[17010] 第参拾四番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/19 20:30


意識は既に消えかかっていた

体中の感覚は麻痺していた

呼吸をするたびに鉄の臭いがした


……オレ、ハ……消エル、ノカ?……


混濁する思考の中で、そんな考えが頭を過ぎる。


……ココマデ、ナノカ?……


痛覚は悪寒に、疲労は眠気へと変わり、苦痛は微睡へと変わっていった。



……ココガ、限界ナノカ?……

……ショセン、俺ハ……コノ程度ナノカ?……



その言葉を脳裏で呟いた瞬間、頭の奥で何かが弾けた。



――フザケルナ――

――フザケルナフザケルナフザケルナ!!――

――フザケルナああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――



茹る様に怒りが湧く
魂が焦げる程に熱を帯びる。

麻痺した痛覚が激痛を取り戻す
止まりかけていた血流が、吐血となって巡り始める
闇に落ちかけていた意識が、再び浮上する。



……終われるか! 消えてたまるか!……

……このまま、くたばってたまるかああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!……



思い出す
嘗て闘った宿敵の事を、自分が心底気に入らなかった男の顔を


……この程度で、終われるか!……

……一回死んだ分際でありながら、また死ぬのか!……

……アイツ等が超えた壁を越えられず、このままくたばるのか!?……


怒りが湧く。
自分自身の弱さに対する怒りが、自分の無力さに対する憎悪が
魂の奥底から湧き始め、燃える様に自我を取り戻す。

バラバラになった力を、体中から掻き集める
掻き集めた力で、必至にもがいて足掻く。



……ある……

……力なら、そこにある!……

……俺の、すぐ傍にある!!!……



その力の存在を感じ取る
禍々しく強大な、自分が求める力の塊が、すぐ傍にある。



……手を伸ばせ!掴み取れ!……

……終わりたくなかったら、手に入れろ!……

……生き延びたかったら、手に入れろ!!!……

……ウルキオラや黒崎一護の様な……否!……



……ヤツ等を超える力を、圧倒的力を!……
……今この場で、掴み取りやがれえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!……



その瞬間、何かが蠢く
蠢いた何かは力を求めて脈動する。

魂が脈動し、一気に力を解放する
力を解放させて、飛び込むように手を伸ばす。


大いなる闇へ手を伸ばし、その男の姿はその場から消え去った。















第参拾四番「狩り」














「……で、お前は何をしている?」

「ひざまくらー」


手に持った魔導書に視線を落としつつ
ウルキオラは自分の膝に頭を乗せて寝転がるアリシアに呟く。

そしてそのままアリシアは枕代わりの白い膝に、スリスリと頬擦りしつつ緩んだ笑みを浮べている
もしもアリシアが猫なら、今頃は小気味良くゴロゴロと咽喉を鳴らしているだろう。

しかし勿論、ウルキオラがそんなアリシアの行動を許す筈がなく。


「二秒待ってやる。さっさと離れろ」
「あっゴメン、よだれ垂らしちゃった」

「それが遺言か?」


ミシリ、と何かが軋む音が鳴り


「みぎゃあああああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ごめんごめん!冗談! 冗談なんだよ!」


顔面を鷲掴みにされたアリシアは宙吊りにされる
バタバタと両足を動かしながらアリシア痛烈な叫び声が室内に響き渡り


「……ふん」


そのままウルキオラはアリシアを投げ捨てる
投げ捨てられたアリシアはそのままベッドの上に着弾し、ボフリと柔らかい衝撃音が鳴って


「ううぅー、軽いジョークだったのにー。ウルキオラはもっと大人な対応を身につけるべきなんだよ!」

「成程、三十路の年増が言うと説得力があるな」

「年増じゃないもん! まだピッチピチなんだよ!!!」


間髪入れず、アリシアの叫び声が痛烈に響く
更にアリシアはその小さな胸を張りながら、ビシリとウルキオラを指差して


「大体ウルキオラは普段私の事を子供扱いしてるのに、更にその上年増あつかいは流石に酷いんだよ!
せめてどっちかに統一する事を所望するんだよ!」

「知っているか? 世間では『合法ロリータ』という単語があるらしいぞ」

「まさかの合わせ技!!」


その思いもよらぬカウンターを受けて、アリシアは思わず驚愕の声を上げる
だがしかし、アリシアのターンはまだ終わっていない。


「とにかく! 前にも言ったけど女の子に対して『クソガキ』とか『年増』呼ばわりは酷いんだよ! きちんと『れでぃ』として扱ってくれることを希望するんだよ!」

「胸と背中の区別がつくようになったら考えてやる」

「極めて遺憾だよ!!!」


『ムッカー!』と、その顔を朱色に染めてアリシアはウルキオラに食って掛かるが
ウルキオラは依然、手元の魔導書に視線を置いたままである。

そのウルキオラの現状を見て、アリシアは額に青筋を浮べて頬をピクピクと震えさせて


「これでもキチンと区別はつくもん! そもそもウルキオラは見た事ないくせに、いい加減な事は言わないでよね!」

「お前こそ何を言っている、見た事あるに決まっているだろう」

「……へ?」


その有り得ない一言を聞いて

アリシアの時間が、一瞬ピタリと止まる。
脳の許容範囲の限界突破
そのウルキオラの返事を聞いた瞬間、アリシアは思わず凍りついた。


「……あ、あのー、しょ、しょれは一体いつの話で?」


ガチガチに固まった口元を何とか動かして、搾り出す様にアリシアは尋ねる。


「初めてプレシアと会った時だ」


そしてその問いにウルキオラは即答して
アリシアは頭の中の記憶を掘り進めて、自分が始めて母親と再会した数ヶ月前の光景を掘り起こして



――直に見て確認した、アリシアの因果の鎖は未練や思い入れの類ではない――



その時の事を思い出して
あの時の自分の体が「どんな状態」で保存されていたのか思い出して


――直に見て確認した――

――「直」に「見て」「確認」した――


その時のウルキオラが放った言葉を思い出して


「……あ、わ……あ、あば、あばばばばばばばばばばばっ……!」


ボン、とその顔は一気に完熟したトマトの様に染まって

困惑と動揺で思わず声が不気味に漏れ出て
溢れんばかりの羞恥心で顔が燃える様に熱くなって、口元がワナワナと震えて


「何だ、頭の螺子でも飛んだか?」


その無神経な一言で、アリシアの中の何かが「プチン」と切れて


「う、う、うあっ!ウワあああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
ウルキオラのバカ!えっち!スケベ!ヘンタイ!セイヨクマジン!うああああああああああああああぁぁぁぁぁん!
みられたあああああぁぁぁ!ウルキオラにおっぱい見られたあぁ!!いろいろ見られたあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!まだみせるつもりなかったのにいいいいいいいいいいぃぃぃ!!!」

「……お前はさっきから何を言っている?」


そんなアリシアの悲痛な叫びが室内に響き渡り
この日の事が切っ掛けで色々と騒動が起きたとか起きなかったとか、それはまた別の話だったりもする。












そこは、四方の空間が幾何学模様で覆われた奇妙な空間だった
そしてその空間内にて、黄金の閃光が飛び交い、白い影が翔けていた。


「……か、はっ!!!」


翠光が乱射する様に弾けて、黄金の閃光が爆発する様に炸裂する。
轟音が縦横無尽に駆け巡り、衝撃が遠近無視で発生していた。


「……はっ! はあ!……せりゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」


長い金髪が暴風で靡く
漆黒の外套を身に纏った少女は空高く翔ける。


そして次の瞬間、翠光の砲撃が放たれる。


「……ぐ! ふっ!!」


砲撃を黄金の盾で押さえ込み、その隙に魔力をブースターの様に噴出させて横に逃げる。

だが、即座に迎撃が放たれる
翠の弾丸が機関銃の如く少女に掃射され、少女は迎撃・回避しきれない判断して防御幕を展開する。



「……っ!ぅ、ぐ!!」



幕越しに衝撃が走る
攻撃の衝撃が幕を伝って彼女に襲い掛かり、その負荷が全身に広がっていく。

そしてその防御幕に罅が入る
小さな罅に絶え間なく弾丸が射出されて、徐々に亀裂が走って幕が崩壊していく。


「バルディッシュ!!!」

『blitz action!!!』


幕の崩壊と同時に、即座にサイドへと回避する
弾幕の射程範囲から離れて、距離を取って、遠距離戦に持ち込む。

近接・中距離では自分に分が悪い
だが遠距離戦に持ち込めば、自分にも活路がある。

そう判断して砲撃と射撃を繰り返し、距離を取るつもりだった。


そして次の瞬間、白銀の閃光が放たれる。



「……え?」



気が付けば、敵は目の前にいた
その白い魔導師は少女に目掛けてその刃を振り下ろし、その一撃は叩き込まれて

二人の勝敗は決した。






『game set……record time 2min 49.55sec』

「……うー、またダメだった……」


次元航行艦『アースラ』のとある客室にて

落胆する様に呟いて、フェイトは閉じていた両目を開く
その手に持った金色のデバイスが告げる内容を聞いて、がっくりと肩を落とす。


「さっきから随分と静かだと思ったら……またイメージトレーニングかい?」

「……うん、少しでもあのスピードとパワーに慣れておこうと思って……」


赤い毛並みの狼がフェイトに言葉をかけて、フェイトは視線を移す
そのまま一回背筋を伸ばして、テーブルに置いてあったお茶を一口飲む。


「……んで、今回はどのくらい闘えたんだい? 五分?十分?」

「……三分ももたなかった、大分あのスピードとパワーには慣れてきたけど
調子の良い時でも五分もつかどうか……やっぱり一人のままじゃ厳しいかも……」


手の中でバルディッシュを転がしながら、フェイトは呟く
先程までフェイトが行っていた事、それはデバイスを利用した仮想空間でのイメージトレーニング

そしてフェイトがトレーニングの相手として選んだのは、嘗ての強敵であるウルキオラだ


フェイトが持つインテリジェント・デバイスであるバルディッシュは、嘗てのウルキオラとの戦いの際にその戦闘データを記憶しておいたのだ。


「……ウルキオラって、確かに基本性能がズバ抜けて高いけど……攻撃手段は主に近接格闘と剣術で
遠距離攻撃は基本的な砲撃と射撃だけだから、遠距離戦に徹すればそれなりに闘えると思ってたんだけど……」

「……ダメだったのかい?」

「……うん、すぐに距離を詰められちゃう。
それにバルディッシュが記憶してあるウルキオラの戦闘データもあくまで基本的な魔力値とスピードと攻撃手段だけ
ウルキオラの技術や戦術・思考パターンなんかまでは再現できてる訳じゃないから……その事も考えると、やっぱり厳しいかも」


スピードは、フェイトが持つ最大にして最強の武器の一つだ
そこで負ければ、雪崩の様に戦術が崩れていってしまうのだ。

近接では対処が追いつかず
距離を取ろうとすれば追いつかれる。

だから打つ手がなくなり、雁字搦めになる。


「あー……そういえば、最近似たような事をクロノとユーノも言ってたっけ?
あの二人、暇さえあれば考案したプログラムを試運転するために訓練室に入り浸っているみたいだからねー」

「あの二人も、凄く頑張ってるよね」


そう言って、再びフェイトは紅茶を口に含む
先程までの戦いを思い返して、反省をし、対策を考える。



「……やっぱり、スピードを上げた方が良いかな?」



ポツリと呟く。


「……スピード?」

「うん。正確に言えば、全体のレベルアップは勿論だけど、その中でも特にスピードを重点的に底上げしようと思ってる」


フェイトが今までのイメージトレーニングで学んだ事
自分がどうして、ここまで一方的にウルキオラに敗北するその要因


それは、自分の一番の武器と攻撃が通じないという事実だ。


「ウルキオラは私より速い……それに私はリニスやリーゼさん達に比べて、技術は劣るし戦術の引き出しが少ない
攻撃にしろ防御にしろ陽動にしろ、やっぱりどうしてもスピードが必要になってくる
だから少なくとも、スピードの底上げは必須事項だと思うの」


ウルキオラと同等……までは行かないまでも、その対処が追いつく程のスピードが得られればそれだけ戦術の幅が広がる。

少なくとも、ある程度の距離を保つくらいのスピードが得られれば、自分の土俵で戦える

そのフェイトの言葉を聞いて、アルフも「うーん」と小さく唸って


「確かにその通りだとは思うけどさ、アイツのスピードが桁外れなだけでフェイトのスピードも相当なもんだよ?
アレ以上のスピードアップなんて出来るもんなのかい?」

「うん、幾つか案はある。使いこなすのは難しそうだけど、そこは何とか出来ると思う
あと欲を言えば……当たる当たらないは別として、攻撃力に特化した魔法を身に付けたいかな?
直撃すればタダじゃすまない……多少使い勝手が悪くても、そうウルキオラに思わせる武器が一つあるだけで、ウルキオラの行動も制限できると思うんだ」


例えばの話だが、人は自分の周囲に蚊が飛んでいれば……殆どの人間は手で潰そうとするだろう

……なら、もしソレが毒を持つ虫だったら? スズメバチやサソリの様に強い毒を持つ虫だったら?

恐らく、殆どの人間は気軽に潰そうなどとは思わないだろう
少なくとも、軽はずみな行動はしないだろう

つまりは、そういう事だ。


生物というのは、「恐さ」が無い敵にはとことん強気の姿勢でいる事が出来るものだ
ウルキオラが自分達に対してああも強気の姿勢を維持できたのも、そう言った要因が大きいだろう。

だが逆に言えばたった一つでも「恐さ」を持っている敵に対しては、どうしても慎重にならざるを得ないものだ。


「……でもさ、それって……すっごい、ハードル高くない?」

「そうだね。まあそこはやっぱり、努力かな?」


粗方の今後の方針を決めて、フェイトは力強く頷いて微笑む
新たな力を手に入れるべく、その頭の中で今後のプランを組み立てていく。


「……ねえ、フェイト……一つだけ、聞いてもいいかい?」

「なに、アルフ?」


フェイトの思考を遮って、アルフが声をかける
フェイトはアルフに視線を移して





「もしかしてフェイトはさ……『一人』で、アイツと闘うつもりかい?」





その言葉を聞いて、フェイトは一瞬呆気に取られて
その空間が静寂に包まれる。


「……え? どうして?」

「いや、何となく……今までのイメトレでも、一対一でやってきたみたいだし
さっきの話を聞いても、他にサポートする人間がいない……フェイト以外、闘う人間がいない時の戦闘を想定している様に聞こえたからさ」


どことなく自信なさげな表情で、物憂げな口調でアルフが語る。

確かに、時の庭園で共闘したなのはやクロノ、ユーノやリニスは、フェイトといつも一緒に居る訳ではない。

クロノは打倒ウルキオラを目標としているが……基本的には執務官の仕事に日々追われている
ユーノも管理局と協力関係があるとはいえ、基本外部の人間だ

なのはは、今は遠い次元外世界でこれまでの日常に戻っているし

リニスは療養中であるし、出来れば……もう、危険な事はして欲しくない


だが、自分は別だ。



「あたしはさ、フェイトの使い魔だよ? パートナーだよ? あたしはフェイトから離れたりなんかしない、フェイトとずっと一緒だよ
……だからさ、その……何かさっきの事を聞いてさ、ちょっと寂しいかなーなんて思ったりしてさ……
……あはは、ゴメン。少し考えすぎだったみたい」

「……ううん、そんな事ないよ。ごめんねアルフ……それと、ありがとう」



そう言って、フェイトはアルフの頭をそっと撫でる
そしてアルフの頭を撫でながら、その言葉の意味を考える。


……確かに、アルフの言う事は……当たっているかも、しれない……


……多分、私は……もう一度、会いたいと思ってる……


……多分私は……もう一度、ウルキオラと……会いたがっている……


……出来れば、二人だけで会って……話をしたいって、思ってる……


フェイトは、己の心の内を改めて確認する
棘の様に自分の胸に小さく引っ掛っている、その事実を確認する。


……もしかしたら、『コレ』はただの気のせいなのかもしれない……

……もしかしたら、何の意味も無い事なのかもしれない……

……多分いま私が考えている事は、すごく危険な事なんだと思う……

……でも、それでも……


その引っ掛りを、フェイトはどうしても無視する事は出来なかった
その引っ掛りの正体を、出来れば他者の介入無しで明かしたかった


……私はもう一度、ウルキオラに会いたい……


ウルキオラに、聞きたい事がある
ウルキオラに、確かめたい事がある

だから、フェイトもその道を歩むと心に決めた。














――そして、物語は次の局面を迎える事になる――

――彼女達が良く知る場所にて――

――彼女達にとって、少なからず因縁がある世界にて――

――まるで一つの意思に導かれる様にして、新しい物語は展開されていく――


















第97管理外世界――遠見市――

陽の光は既に西の地平線へと姿を消し、その空は夜の帳が下りて月の光が淡く大地を照らしている。

そして、夜天の空に一つの魔法陣が現れる
紫色の発光する幾何学模様の魔法陣は輝いて、そこに一つの影が現れる。


「……ジュエルシードといいウルキオラといい……つくづく、この世界には縁があるようね……」


物思いにふける様に、その影は呟く
その影は夜天に溶け込む様な黒い外套に身を包み、眼下の街を見下ろしながら自分が入手した情報を思い出す。



――頼まれていた例の件、あの運動靴の出所――

――靴のメーカーの名前は「テイアイ・シューズ」、第97管理外世界の日本という国の超大手「テイアイ・グループ」が経営する会社の一つさ――

――第97管理外世界・日本・東京の池袋には、ウチの支部が一つあるからね……思いの他早く調べがついたよ――


「……件のデパートは、あそこね……」


眼下の街の、一際大きな建物を見ながら呟く。

情報屋の男は語った、あの靴はこの遠見市にあるデパートで売られていた物だと
流石に購入者までの特定は出来なかったが、コレでも手掛かりとしては十分すぎる程だ。

少なくとも、あの靴は通信販売等で買われた物ではなく、購入者が直に店にまで赴いて買われた物だと分かっている。


つまりは、そういう事
通常、日用品というのは余程の事がない限り自分の住居の近くで購入するものが大半だろう。

特にヤツ等の様に「後ろ暗い」事を行っている人間は、知らず知らずの内に神経が過敏になるものだ
なるべくこの手の事に関しては、無駄な動きや移動は避けたい筈だ。

余程の状況でもない限り、買い物等は余計な手間暇をかけず拠点の近場で済ませようと考える筈だ。


つまり、ヤツ等はこの近くにいる
少なくとも、ヤツらの活動拠点の一つに近い筈だ。


そこまで考えを纏めて、影は歪に口元を歪ませる
あの忌々しい連中が近くにいるかもしれない、そう考えるだけで脳が沸騰する様に茹って、血管が音を立てて切れそうになり



「……っと、ここでキれちゃあ前回の二の舞ね。あくまでクールよ、クールに冷静に落ち着いて『切れ』ないとね」



茹った脳を冷ます、熱くなった思考を瞬時に切り替えて冷えた状態にする
そしてその右手に杖を握り、左手には三つの宝玉を握る。


「さて、それじゃあ始めるとしましょうか」


影は大きく振りかぶって、三つの宝玉を夜天に向けて一気に投げ放つ
握った杖は紫電を宿して、激しく鳴動して魔力が収束される。



「サンダー・スマッシャー!!!」



夜天の空に、紫電の砲撃が昇る
その砲撃は雄々しく咆哮しながら上空に昇り、三つの宝玉を一気に飲み込み。


夜空に、大輪の花が咲く
大輪の花は炸裂する様に花開き、イルミネーションの様に輝いて夜空に咲く。


そして、大輪の花が散って……小さな、とても小さな無数の『何か』が、街に降り注ぐ
その様子を見て、影が叫ぶ。



「さあ始めるわよ……狩りを!」



夜天の空に光の大輪と、紫電の魔法陣が形成される
そして次の瞬間、頭上から溢れんばかりの光を浴びて影は消える。


――準備は終わった――

――仕込みは済んだ――

――後は待つだけ、あの忌々しい獲物を待つだけ――



――さあ――



――楽しい狩りを、始めましょう――
















「ふむ、これは早い展開だ。『魔女』が一歩、『騎士』と『主君』に近づいた」


コトン、と
その男は口元を愉快気に歪めながら、盤上の駒を動かす


「だが、これは少し意外だね。この段階まで来るのにあと一月は掛かると踏んでいたのだが……いやはや、これは嬉しい誤算だ
やはり、物事を首尾良く進めるコツは心から楽しむ事だね。こうして想定の範囲外、予測の範囲外の事が起きるから実に楽しむ事ができる」


紫の髪を揺らしながら、男は仰々しく大きく両手を掲げながらその盤上を見つめる
両手を掲げて、愉快気に咽喉を鳴らして声を上げて笑い、そのまま椅子に腰を降ろす。



「楽しそうですね、お父様」



そして不意に、その声が響く
男は声の発信源へと椅子ごと回転させて、視線を移す。

そこに居るのは、一人の若い女性
男と同じ紫の長い髪と金の瞳、白いブラウスにグレイのタイトスカートと黒いタイツ

どこかやり手のキャリアウーマン風の衣服を身に纏って、女はその部屋の居た。


「うむ、楽しい。実に楽しい。やはりこう言った事は心が躍る」

「楽しそうで何よりです。では事のついでにこちらも目を通して下さい」

「ふむ、貸してくれたまえ『ウーノ』」


ウーノと呼ばれた女性は手に持ったカード型のデバイスを男に手渡す
男はそのカードを手に取り、カードが空間にモニターを展開させて文字が羅列していく。


「……うむ、あちらも概ね順調の様だ。ウーノから見てどうかね、あの二人の仕上がり具合は?」


報告書の内容に目を通して、男はウーノに尋ねる
男の問いにウーノは淀みなく自身の答えを口にする。


「報告の通りです。元々が一級品の素体、テスト実験もオールクリア、その稼動状態に何も問題はなく何時でも実戦投入できます」

「なら安心だ。あの二人は『先方』から預かっている大切なゲストだからね
ゲストの持成しに不備があっては、それがどこで影響が出るか分からないからね」


男が小さく何かを呟くと、男の手元に小さな魔法陣が形成される
その魔法陣の上に男はデバイスをポンと置いて、魔法陣が淡く輝く。

淡く輝いた魔法陣はデバイスを飲み込んで、そのまま空中にて霧散し消えた
そして男は、再び盤上の駒を見つめる。


「盤上において、傷ついた『騎士』が二つ、完全な『騎士』が二つ『主君』が一つ。
それに対して『死神』と『魔女』は依然無傷……う~む、やはりこれは少々バランスが悪いね」


思考を展開させながら、男は盤上を見つめる
このままでは、戦力の均衡が取れない。

前哨戦で傷ついた二つの「騎士」は、まだ万全の状態ではない
それに対して、『魔女』と『死神』は万全の状態を整えて、自身が用いる事の出来る最大戦力で戦闘に望むだろう。

やはり、このままでは少々厳しい。

このままでは、下手をすれば『魔女』一人の力で『騎士』を討ち取り、その牙は王座に位置する『主君』の咽喉元にも届き得るだろう
そして盤上から『騎士』と『主君』は消え、全ての闘いが終結してしまうだろう。


「それはそれで実に興味深いが、やはりいけない……こういう事は、長い時間を掛けて丁寧に丹念に楽しむべきだ」


そして男は、盤の隣にある箱に手を伸ばす
そのままゴソゴソと手を動かして、新たな駒を取り出す。



「ここは一つ、私も少々『横槍』を入れさせて貰おうか」



タンタンタンと、新たに盤上に駒が置かれる。

新たに置かれた駒、それは『仮面』
新しく配置された、三つの『仮面』



「――さてウーノ、一つ頼まれてくれないか?――」



楽しげに愉快気に口元を歪めて、男は嗤う。

そしてまた、盤上の駒を手早く動かす
その男が脳裏に描く「とても面白いモノ」になる様に、盤上の駒を配置する。

配置を終えて、男は再び「ククク」と口元を歪めて盤上を見る。

そして、改めて声高らかに宣言する。


――舞台は整った――


――双方の戦力も揃った――


――さあ――


――次の幕を開こうか――。













続く











後書き どうも作者です。今回はこれまでと比べるとやや早めに投稿できました。
最近は無印編の時はどうやってあの執筆速度を維持できていたのか、自分で自分の事に疑問を持つようになってしまいました(汗)


さて話は本編、スカさんに続いてウーノ姉さんもフライング参戦しました!
確かウーノ姉さんを始めとするナンバーズはこの頃には稼動していた筈なので、作者の都合上フライング参戦させて貰いました!
そういえば、ウーノさんの口調はこんな感じであっていますかね? もし不自然な点があればご指摘お願いします。

とりあえず、あまりにキャラが増えすぎると扱いきれなくなる心配もありますが、とりあえず作者が扱い切れる範囲で活躍させていきたいと思います!

そしてその一方で、フェイトがウルキオラに対して色々と思う所がある様です
原作ではフェイトが闇の書事件に介入するのは12月過ぎの予定でしたが、ここも少々変わるかもしれません


次回からは再び戦闘パートになる予定です
次の戦闘でA’s編での重要シーンになる予定なので、上手く描いていきたいと思います!

それでは、次回に続きます!






前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025881052017212