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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 序章
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/25 18:30






そこは、どこかの庭園だった
周りは手入れされた鮮やかな緑の木々に囲まれ、視線を移せば四季の彩りを放つ花畑が目に映った。

そして、そんな自然の色彩の美に溢れる場所に彼女はいた。


「……いい風ね」


その自然の空間に備え付けられた白い丸いテーブル、そして白い椅子
女はその椅子に腰を下ろして頬に当たる心地よい風を感じ、ゆっくりと手を伸ばす。

そこにあるのは白いティーカップ、薄く透明なブラウンの液体が注がれたティーカップ
薄切りにされたレモンの香りが合わさって、その香りは女の鼻腔を優しく甘く刺激する。

そして、一口ソレを口に含む。


「……ふぅ」


思わず吐息が漏れる
思えば、こんなにゆったりとゆっくりと、リラックスしながらお茶を楽しむのなんて何時以来だろう?


久しぶりの休息
その女は、プレシアはその休息を心から噛み締めてその時を過ごす。



「あー! 一人だけズルーイ!」



そこに、一人の小さなお客が現れる。
長い金髪の小さな少女
翠の髪留めでその長い金髪をツインテールに纏め、翠のワンピースに身を包んだ小さな少女

それは、プレシアが良く知る少女。



「ふふ、大丈夫。心配しなくても、貴方の分もちゃんとあるわ」



そう言って、プレシアは小さく優しく微笑みながらティーポットと新しいカップを出す
そしてお茶菓子として用意しておいたクッキーとチョコレートを少女の前に差し出す。


「どうぞ、召し上がれ」


プレシアは微笑みながらそう言って
その金髪の少女はパアっと、輝くような愛くるしい笑みを浮べて















「うん! ありがとう『おばあちゃん』!」
















……



…………



……………………………



…………………………………………………………



………………………………………………………………………………………………what?




その瞬間、完全に時が凍り付いた

その瞬間、完全に世界が停止した

その少女が発したその言葉に、プレシアの時間は完全に止まっていた。


「……うん、聞き間違いね。やっぱり少し最近疲れて」

「どうしたの『おばあちゃん』、からだの具合が悪いの?」


ズブリと
言葉という名の刃が、その胸を貫く。

返す刀で、その金髪の少女が心配げな表情と共に言葉を放つ
どうやら聞き間違いではない。


そして気付く。


その顔、その金髪の長い髪は確かに自分の最愛の娘の物

しかし



(……アリシアは、こんなに肌が白かったかしら?……)


その少女の肌は白い、自分が知る娘の肌よりも更に色素が薄い

……ソウ、自分ガ知ルアノ男ノヨウニ……



(……アリシアの瞳は、こんなグリーンな瞳だったかしら?……)


自分の娘の瞳は赤だった筈、こんな鮮やかな翠色の瞳などではない

……ソウ、アノ男ト同ジ瞳ノ色ナドデハナイ……



そしてその瞬間、彼女の頭にとある男の顔が過ぎる。



「……ま、まさ、か……」



体が凍る

頭が冷たくなる

血の気が失せる



……まさ、か……

……まさかマサカ……

……まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか?……



書き上げる

そのストーリーを

その可能性を

一気に彼女は頭の中で書き上げて脳髄に叩き込まれる。



……イヤ待て!……

……有り得ない!……

……そんな事、有り得る訳が無い!……

……そんなものは、何かの間違いに決まっている!……

……コレは何かの間違いに決まっている!!!……



汗が滝の様に流れる

ガチガチと歯の根が噛合わない

体がガクガクと震えて痙攣する

心臓が痛い程脈打っている


そして




「こらーダメでしょ、一人で勝手に行っちゃあ」




ソノ声が響いて
ドクンと、心臓が一際大きく脈動する。



……今ノ、声ハ……?



その声を知っている、プレシアはその声を知っている



「だってー、おかあさんとおとーさんが遅いんだもーん!」



その単語を聞いて、彼女はまるで壊れたからくり人形の様に首を動かす

ギギギと音を立てて、その声の発信源に向けて首を動かす。



そして




「あらお母さん、こっちに来てたの?」




少し不思議そうな声が耳に響いて、彼女はソレを視界に納める。





――彼女ノ目ニ映ッタノハ――


――娘ノ面影ヲ宿ス金髪ノ女性ト、ソノ隣ヲ歩ク自分ノ協力者ノ姿ダッタ――







「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」






飛び起きる

跳ねる様に身を起こす

その轟音を響かせて、その顔に様々な感情を宿してプレシアは身を起こす。



「はぁ! はあ! はあ!……ゆ、め……!?……」



息を荒げて、周囲を確認する。

その目に映るのは、見慣れた自分の研究室
その目に映るのは、義骸に入った自分の体

霊体とて、疲労が蓄積されれば睡眠という休息を取る
どうやら研究をしている内に、いつの間にか転寝をしていた様だ。


「ったく……今日は、大事な実験の日だって言うのに……何て悪夢……」


顔に手を当てて、呪う様に重く呟いて




「……まあ、あの地獄に比べればマシかもね……」




最後にそう呟いて、プレシアは改めて身を起こした。













序章「終わりを告げる一時」















――久しぶりだな、負け犬――

「目覚めの一番にそれですか?」


とある世界の中にて、彼女は目を覚ました
青い空、果ての無い海、そこから突き出る大樹と草原

彼女は、その空間を良く知っている
何故なら、それは自分を形作る世界だからだ。


――では逆に聞こう、勝ったのか?――

「……負けました」


その世界の王である彼女は項垂れる
その白い男の前で正座をして、顔を僅かに俯かせて向かい合っている

目の前の白い男の言葉に対して、何の言い訳も出来なかったからだ

そして、男は更にソレを取り出す。


――コレは何だ?――


その男の手の中にあるのは、一振りの刀
但しそれは、以前と姿が異なる

その刀は中腹にてポッキリと折れて、その刀身は半身しか残っていない


――どうしてこうなった?――

「…私が、折ったからです」

――何故折れた?――

「……私が、弱かったからです……」


明らかな怒りを含ませた語気
明らかに不機嫌なその雰囲気
その男から滲み出るその威圧感に、彼女の身は徐々に狭くなり、縮こまっていく。


――俺はこの刀を王に献上した時、何と言った?――

「……大事に、扱う様にと、言いました」

――何か言う事はあるか?――

「……申し訳ありませんでした」


チクチクとその白い男の言葉が彼女の心に突き刺さり、彼女は耐え切れず頭を下げた

そして男は、その一連の彼女の行動を見て


――前に言った筈だ。俺はお前、お前は俺だ。お前の死は即ち俺の死となる――

「……はい」

――愚劣な王の愚生で消えるのは、俺は御免だ――


そして、その白い男はその刀を投げ渡す
その半身を失った刀を、王のその手に再び返す。


「……わ! ちょ! 危ないじゃないですか! 抜き身の刀を投げないで下さい!」

――黙れ――


瞬間、空気は変わる
その世界に暴風が吹き、大樹が軋んで、海が荒れる

その男に同調する様に、その世界は変わっていく。


――構えろ――

「……え?」

――言っただろう? お前は王、俺は臣下だ――


そして、その白い男の背から黒い翼が生える
その手には翠の光剣が形成され、その切先が彼女に向けられる。



――貧弱で脆弱な王を鍛えてやるのも、臣下の仕事だ――

















「やっほー、クロノくんユーノくん、お見舞いに来たよー」

「あ、エイミィさん。ありがとうございます」

「お見舞いはありがたいが、もう少し声を抑えてくれ。ここは病院だ」


とある次元世界のとある病院
そこにクロノとユーノは入院していた。

あの時の庭園の闘いから、既にかなりの日数が経ち、二人の傷もかなり回復していた
クロノとユーノはお互い骨折を初めとする怪我負っていたが、既に折れていた骨は殆どくっつき、あとは静養するだけとなっていた。

クロノは現場復帰したがっていたが、それをエイミィとリンディの二人に止められて、完治するまで病院で入院生活を送る事になったのだ。


「……それで、仕事の方はどんな感じだ?」

「んー、先ずはフェイトちゃん達の事だけど、上の人達の説得も概ね順調、これなら裁判でもかなり有利になると思うよ」

「……そっか、なら良かった」

「うん、安心しました」


エイミィの報告を聞いて、二人はそっと安堵の息を吐く
二人共、フェイトやアルフ、リニスに対しての処遇にはかなり気にかけていた

母の愛情を求めて、求め続けた一人の少女の……あまりにも報われなかった結末

その報われなかった結末が、少しだけでマシになった事に対する安堵だ。



「……それで、リニスの方は目を覚ましたのか?」



思い出した様に、クロノが尋ねる。


「……まだみたい。お医者さんが言うには、何時でも目を覚ましても良い筈なんだけど……
なんか、まるで自分の意思で眠り続けてるみたいだって言ってた」

「自分の意思? どういう事ですか?」


ふとその言葉に疑問を感じ、ユーノが尋ねる。


「リニスさんには、大抵フェイトちゃんかアルフさんが傍で様子を看てるんだけどね
今まで何回か、目を覚ます兆候があったらしいのよ。でも目を覚まさないの
何かこう……二度寝?が一番近い表現なんだけど、それとはまた違う感じらしくて……詳しい事は良く解ってないみたい」

「……そう、ですか」

「リーゼ達もまだ目を覚ましてない事から考えると、やはりウルキオラとの戦いで相当の無茶を負わせてしまった様だな」


クロノが呟く
未だに目を覚まさない三人に対して共通で言える事、それはウルキオラとの戦闘だ。


自分達を事件解決の為に、三人はウルキオラの足止めを買って出た
あの三人は、あの時のメンバーの中で最も過酷な戦いを強いられてきた

そして、あの三人がウルキオラを足止めしてくれたからこそ、自分達は次元断層を防ぎ、事件を解決できた


だが、その代償がコレだ


その代償、三人が払った対価は自分達とは比べ物にならない程に大きく……重かった

その事を三人は改めて噛み締め、思い知った。


「はいはい、辛気臭い話はここまで! 二人がそんな様子じゃ、体を張ったあの三人だって報われないでしょ!」

「……エイミィ……」

「……エイミィさん……」


そんな空気を察してか、エイミィは努めて明るく、それでいて真剣な声を上げる。



「あの事件は、皆が頑張ったからこそ解決できた! リーゼさん達も、リニスさんも、クロノくんもユーノくんも、なのはちゃんもフェイトちゃんもアルフさんも、皆が頑張った!
だから解決できたの!
だから、二人もそんなに落ち込まない。落ち込む暇があったら、三人が目覚ました時にする恩返しの内容を考えた方がよっぽど建設的だよ!」



そう言って、エイミィは柔らかく二人に微笑みかける
そのエイミィの言葉を聞いて、二人は僅かに考えて


「……確かに、その通りかもしれませんね」

「まさかエイミィに諭されるとはな、確かに大分気を病んでたみたいだな」

「あ、クロノくんひどーい!」


むくれた様にエイミィが言葉を繋ぎ、その病室の空気は僅かに暖かくなった。












「……神経接続、完了……魔力ライン開通、霊体接続開始……」


その研究室の中、プレシアは自身のデバイスを握り締めながらその作業を行っていた。

そこはプレシアの研究用の一室
今その空間は床、壁、天井の合わせて六面に、六つの魔法陣が展開されていた。

そして、その部屋の中央の一際大きな魔法陣
紫の淡い光を放ちながら、その魔法陣の上に浮かぶ長さ2m幅1m前後の大きなカプセルを光で包み上げている。



「……同調率……70……80……90……」



プレシアは更に詠唱を続ける
光は更に激しく輝き、それは螺旋の渦巻いて収束し光球となってカプセルを包み上げる。



「接続率……75……80……85……!!」



そして、そのカプセルに罅が入る
それはまるで卵の孵化。ピシリピシリとカプセルに小さな罅が入り、そして砕ける。



「魂魄……定着!」



砕け散ったカプセルの中から、ソレは現れる
それは一人の少女、長い金髪と赤い瞳が特徴の小さな少女



「…………」



プレシアは、ゴクリと唾を飲んでソレを見る。

自分の理論に、絶対の自信を持っている
その研究成果にも、絶対の確信を持っている

既に、「自分」という成功例を出している

だが、ソレとコレとはまた別問題だ
世の中には、絶対という言葉は存在しない

過去に成功したからと言って、次も成功するとは限らない
過去に百の成功を出したとしても、次の一が成功するとは限らない

故に、プレシアは息を呑み、押し黙った
その加速する鼓動を止められなかった



そして、変化は現れた。



「……!!」



その少女の指先が、ピクリと動いた。
そして、それを切っ掛けに次々と変化は起きた。

その四肢には段々と力が篭められ、徐々に活動を始める
その腹部は一定のリズムを刻みながら小さく膨張と収縮を繰り返す

やがて、その咽喉が動いて、口が開く
「う~ん」と気だるげな呻くような声を上げて、徐々にその体を身を起こす。


そして、その少女は上半身を持ち上げる。
両の目が完全に開かれる。



「……う~ん……ん?……んん?……おおー……」



そして、その顔に表情が表れる
どこか驚いた様な表情を浮かべ、そして感心したかの様に声を上げる。


その様子を見て、プレシアの鼓動は一気に加速する
頭の中は茹るように興奮していく。



「……アリ……シ、ア……」

「なーに、おかあさん」



そのいつもの言葉
そのいつもの表情

そのいつもの「アリシア」を見て、プレシアは確信した。



「……驚いたな。まさかこの短期間でここまで義骸を完成させるとはな」



今までずっと事の成り行きを見ていた、自分の後ろの協力者が感心したかの様に声を上げる。



「……やった……!」



その万感の想いを篭めて、プレシアは呟く


コレは、まだ初期段階

アリシアは、まだ霊体
言ってしまえば、魔力の着ぐるみを体に纏っている様な状態だ

今のアリシアに、食事に意味はない

年を取らない

体は成長しない

新たな命を宿す事も出来ない

自分が思い描く完成形の、十分の一程度の完成率でしかない

言わば、はじめの一歩だ


しかし



「……ついに、やった……」



だが
だが、それでも


その一歩は、自分が二十六年間……ずっと自分が求めた一歩なのだ

この一歩は、自分がずっと心の底から欲し続けた「一歩」なのだ。



「ついに、やった……ついに、私はやったわ!」



ありとあらゆる想いと感情を篭めながら、プレシアは己の躍進を心から噛み締めていた。












「体の調子はどうアリシア?」


一通りの感動を味わい終えたのか、プレシアはアリシアに尋ねる
そして、アリシアは手を軽く握り、ピョンピョンと軽くジャンプして


「えーとね、ちゃんとおかあさんの顔もウルキオラの顔も解るし、声を聞こえるよ。
ちゃんと色々な物にも触れるし……なんだろう、「触ってる」っていう感覚もちゃんとあるよ」


自身の肉体の感想を、改めてアリシアは告げる


「今までと比べて、少しおかしい所とかない? 体が動かしにくいとか、ちょっと感覚が鈍いとか?」

「……う~ん、そういえば、ちょっと体が重いかな? あと、何か口の方の感覚が変っていうか……ミカクって言うんだっけ?
それがちょっと無くなってる感じがする……あとは、手とか体とか、耳とかになんかこう、
薄いビニールが張り付いてるみたいな感じがする」

「……身体機能の低下……いえ、コレは実体化における筋肉への負荷かしら……?
それと味覚及び触覚と聴覚の接続と同調に問題有りか……思ったより、改善する点は少ないようね」


その結果を、プレシアは自身のデバイスに記録していく
粗方の記録を終えた所で、プレシアは再びアリシアに向き合い、そして抱きしめる。


「……おかあさん、どうしたの?」


突然の母の行動に対して、アリシアは頭の上に疑問符を浮べながら尋ねる。



「……アリシア、色々と不便な思いをさせてごめんね……」



そしてそんなアリシアに対して、プレシアは自身の気持ちを改めて口にする。



「……でも、でもね……もう少しだけ待ってて……」



プレシアは呟く
最愛の娘を抱きながら、自分が得ようとしているその新たな「可能性」を頭に思い浮かべながら言葉を繋ぐ



「……お母さんが、必ず貴方の『こんな筈じゃなかったこれから』を取り戻して上げるから……」



ぎゅっと、最後にほんの少しだけその肉体を抱きしめて、プレシアは少し顔を放してアリシアを見つめながら呟いた。


























ソレは夜の帳の中、魔法陣の光に照らされて其処に降り立った。


「…………」


そしてソレは無言のままにその町を見下ろす
点々と幾つかの明かりが蛍火の様に光る町の中、ソレはゆったりと町に降り立つ。

ソレの形は、細身の人型だった
白を基調とした布地に青いアクセントが入ったスーツ、青い髪
そしてその顔を隠す様に装着されたシンプルな白い仮面

その仮面の存在は、そのままゆったりととある民家に降り立つ
そして足を進めて、その民家の前に立つ。


「……セキュリティ読み込み……コード解析、プログラム解除……」


瞬間、その男の目の前に幾何学模様の魔法陣が形成され、そして「パリン」と薄氷が砕ける様な小さな音と共に消える

そして男は、そのままその民家に侵入する。

そこは、とある少女の私室だった
幾つかの本が納められた本棚、簡素な机、そして少し大きめのベッド、どこにでもあるありふれた部屋だ。


そしてそのベッドの中、二人の少女が眠っていた。


一人は栗色のショートカットが特徴の少女
そのあどけない寝顔から察するに、年はまだ二桁にも達していないだろう

もう一人は、赤いロングヘアーが特徴の少女
外見から察するに、年はその栗色の髪の少女と同年代かそれ以下だろう

二人は、目を覚まさない
その男の侵入に気付かず、未だ安らかな寝息を立てている。


「……先ずは、安心か」


その声が響く
それは仮面の存在の声、声から察するにどうやら若い男の物

そして、その仮面の「男」は思う。


……第一の関門は突破した……


男は視線を移す
其処に映るのは、分厚いハードカバーの本

表紙に銀十字の様なものが取り付けられた、一冊の本

男は懐からソレを取り出す
それは銀色に輝くカード、それをその本にかざす。


そして、ソレは起こる。


そのカードが紫の光を宿し、その光は圧縮して凝縮して一つの光球となる
その光球は収縮し続けて、ビー球程度の大きさになる。


「さあ喰らえ、そして吐き出せ」


その紫の光球は、本の中に浸透していき……ソレと同時に、本はソレを吐き出す

それは、銀色の光球
掌に収まる程度のソレは、淡い光を放ちながらその本から吐き出される


その銀色の光球を、男は掌に収める

そして次の瞬間、そのドアが勢い良く開かれた。



「主!!」



その部屋に、乱入者が入る
それは一人の女、桜色の長い髪をポニーテールにして纏めた一人の女。



「……ん、んんー……どうしたん?」

「……ふあーあ…なんだよ……って、まだ夜じゃんかー?」



その女の入室に反応して、その二人は瞼を擦りながら気だるげに身を起こす
そのポニーテールの女の目に飛び込んできた光景は、いつもの光景だった。


「……安眠を邪魔してしまい、申し訳ありません主……どうやら、私の勘違いだった様です」

「……そう、なん?……ほな、オヤスミー……」

「……たく、あい……かわら……ず……シグ……ム、は……」


その眠気に耐えかねてか、二人の少女は瞬く間に眠りに落ちた
ポニーテールの女は二人の体にかかる毛布の位置を直して、再びその部屋を見渡す。

一通り部屋の中を見回すが、やはりコレといった異常は見つからず



……気のせい、か……



女はそう結論付けて、その部屋からゆっくり退出した。












そして、月日は流れる

季節は廻る

彼等は、彼女等は、それぞれの時を過ごす


それぞれの思いを交えながら
それぞれの想いを育みながら

それぞれが日常を過ごしながら
それぞれが平穏を過ごしながら


ゆっくりと

少しずつ

だが確実に、時は流れる



そして、終わりは来る

それはどこかで起きる



一つの日常が終わりを告げる

一つの平穏が終わりを起こす

一つの安寧が終わりを迎える



そして、新たな物語が幕を開ける

新たな闘いが幕を開ける


一つの魔導書を廻る

一つのロストロギアを廻る


ロストロギア・夜天の書を廻る、新たな闘いが幕を開ける。











続く













あとがき
 最近はお盆で色々とゴタゴタしていましたが、やっと作者の事情が落ち着いてきたので更新しました!
まだ以前の速度で更新は出来ないと思いますが、それでも自分なりの更新速度は保っていきたいと思っています!

さて、それでは本編
のっけからプレシアさんの悪夢から始まりましたが、皆さん的にはどうだったでしょうか?
ちなみにコレはあくまでプレシアさんの夢なのであしからず(笑)

あと、プレシアさんはこの時点では夜天の書の探索と自分の研究を同時に進めています。
プレシアさんの性格なら、ただ不確定要素に対して座して待つというのは考えにくかったので。
故に、これは前回の幕間より時間の流れは前という事はありません
その辺の所は了承願います。


次回からはとうとう本編もA’s編に突入します!
ぶっちゃけ最初から原作とはかなり違う始まり方をすると思いますが、どうか皆さんには生暖かい目で見守って貰いたいと思っております

それでは、次回に続きます!








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