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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 幕間
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/25 18:28

漆黒の闇が支配する森林の中、その少女は走る
息を切らしながら、全力で両の足で地面を蹴って、その背後より迫る脅威から逃れようとしていた。


「助け、て……!……誰か! 誰か助けてえ!!」


涙交じりの声で、その懇願とも言える声を闇に向けて放つが、その答えは返ってこない
その彼女のSOSに応えてくれる者は、誰もいない


「……きゃ!!」


その瞬間、彼女は転倒して地面に転がる
その視界の悪さの性で、足を躓いたのだろう

即座に体勢を起こして、再び逃走を開始しようとするが……手遅れだった



「ひぃ!!!」



少女の顔が恐怖に染まる

遅かった
その脅威は目の前に立っていた

少女以上に呼吸を荒げて、目を血走らせて、彼女の前に立っている



「……い、や……来ない、で……来ないでえ!!!」



腰が抜けて立つ事も出来ないのか、少女は尻餅をついたまま後ずさるが……それは、僅かな意味も持たなかった


瞬間、目の前の脅威は動く

その熊の様な大柄の体躯で、獣の様に大きな口を開けながら叫び声を上げて、その少女に馬乗りに押し倒す

恐怖に耐え切れず泣き叫ぶその少女の細い首を、掴んで締め上げる

呼吸と声を封じながら、もう片方の腕を振り上げる

そこにあるのは、僅かな月の光を反射する得物

肉厚で巨大な何か、形状から察するに斧か鉈だろう


「ンー!ンー!!!」


少女はもがく
その恐怖から逃れる、その危機から脱出するため

必死に、それこそ命懸けで男の下でもがく


そして、そんな少女を見て……男は嗤い

その得物を、少女の顔面へと目掛けて振り下ろした。


「ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


そして、誰かが叫ぶ

その光景を、幾度も幾度もその得物が少女に目掛けて振り下ろされる光景を、
そんな惨劇を運悪く目撃してしまった、その幼い少女は叫んだ。

その恐怖に耐え切れず、とうとう叫んでしまった。


そして











「おい、少し黙れ」












目の前のテレビを見ながら絶叫するアリシアに向かって、ウルキオラは吐き捨てる様に呟いた。














幕間「彼等の一時」















事の始まりは、別段変わった事はなかった

時の庭園の闘いよりはや数日

時の庭園に変わる新しい住居に住み始めたウルキオラは、幾つかの魔導技術書を自室にて読み漁っていた

そこに、一人の訪問者がやってきた。


「おっじゃまっしまーっす!!」

「帰れ」


即答
ノックもせずに部屋に入ってきたアリシアに対して、ウルキオラは冷徹に応える

しかし、当のアリシアはおかまいなしにそのまま部屋に入室して



「ウルキオラー! 面白い物見つけたんだよ! これこれ!シアターディスク!」



そのアリシアの手の中にあるのは、幾つかの銀色の円盤状のディスク


「物置で探索してたら見つけたの! ウルキオラも一緒に見よう!」

「解った、出て行け」


そのまま、アリシアの襟首を掴み上げる
これは、いつものやり取り

このままアリシアはウルキオラに放り出されて、再びアリシアは何かしらの方法でウルキオラの部屋に突入すると言ういつものパターンだ

しかし、今日のこの日はいつもと違った。


襟首を掴んだまま窓を開ける、そしてアリシアは部屋の外へと放り出される……筈だった。


「……む?」


投げたその瞬間、ウルキオラはソレに気付いた

アリシアの服に括り付けられた、その細い紐を
アリシアと部屋の中を繋ぐように伸びる、一本の紐を


「アリシア・リバース!!」


ピンと張り詰めたその紐は、一気に縮む
恐らくはゴム製の紐だったのだろうか?

そのまま一気に縮み上がって、アリシアは小さな弾丸となってその部屋の中にダイブする様に舞い降りた。


「ふふん! 甘いんだよウルキオラ! 探偵漫画に出てくる警察の捜査ぐらい甘いんだよ!
このアリシアちゃんにいつまでも同じ手が通じるとでも思ったら大間違いなんだよ!」


その小さな胸を張りながら、アリシアは誇らしげに告げる。


「ウルキオラの取る行動なんて『見え見え』なんだよ! だからわたしは予め命綱をこの部屋に仕込んでおいたんだよ! 
尤も、繋いだのはついさっきだけどね! さあウルキオラ、大人しくわたしと一緒に映画を見るんだよ!」

「…………」


しかし、ウルキオラは無言のままに再びアリシアの襟首を掴み上げる
そして、再び窓からアリシアを投げ捨てる。


「甘いんだよ! アリシア・リバース!」


そのまま命綱は極限にまで伸び上がる、そしてアリシアの体は引っ張られる
そしてそのまま部屋に舞い戻る……筈だった。



「先の言葉を、お前に返そう」



ウルキオラは、その行動に出る。



「この俺に、同じ手が通じるとでも思ったか?」



そして次の瞬間
ウルキオラは、窓を閉めた。


「……あ……」


グイっと、僅かにその軌道を曲げられながら
アリシアの体は、そのまま吸い寄せられる様に引き寄せられて



「しまったああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



次の瞬間、アリシアの顔はこれ以上に無い恐怖で染まった。














「死ぬかと思ったんだよ!!!」

「もう死んでいるだろう?」


憤怒で顔を真っ赤にさせたアリシアに、ウルキオラはそう告げる。


「本当に死ぬかと思ったんだよ! とっさに『壁すり抜け』をしなかったら顔面ペシャンコになるところだったんだよ!」

「そうか、お前の顔を少しはマシに出来るまたとない機会だったのにな」

「失礼にも程があるんだよ!」


そのままアリシアは憤怒の表情のまま命綱を床に叩きつける。
ちなみに命綱は物体であるため、窓や壁同様にアリシアの体から外れていた。


「わたしの怒りはもはやリミット・ブレイクなんだよ! という訳でウルキオラ! 一緒に映画を見るんだよ!
と言うか、どうせウルキオラはダメって言うに決まってるから私は独断専行で動きます!」


そしてアリシアは、手に持ったディスクをウルキオラの部屋に備え付けてある映像機器にセットする。

そして、部屋のモニターにディスクの中身が一覧で映し出された。


「……おおー、何やらたくさんタイトルがある。ねえねえ、ウルキオラはどれが見たい?」

「長い金髪で赤い瞳のやたら鬱陶しいメスガキが出てこない内容のモノならどれでも構わん」

「ピンポイントすぎるんだよ!!!」


思わず叫ぶ。
その小さな体で精一杯の怒りを表現して、アリシアは再びモニターに視線を移す


「まあ、どれでも良いか。それじゃあコレにしーよう」


アリシアは適当に「十二日の木曜日」というタイトルを選んで、再生ボタンを押す

そして、時間は物語の冒頭へと戻る。








「ギャアアアアああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「騒ぐな、暴れるな、服を引っ張るな」

「恐い! 本当に恐いんだよ! ヘルプミー! ヘルプミーなんだよ!」


ウルキオラの腕にしがみ付いて、涙目になりながらアリシアは絶叫を繰り返す。

ウルキオラはウルキオラでそんなアリシアに構わず黙々と読書を続けていたが、
直接的に自分に影響が出てくる様になって来て徐々に無視が出来なくなっていた。



「恐ろしいのなら、見なければ良いだけだ」

「いわゆる『恐いもの見たさ』なんだよ!」



この瞬間、ウルキオラは割りと真剣にアリシアを消そうかと考えたのは本人だけの秘密である。


「……しかし、理解に苦しむな。そもそも作り物と解っている時点で、そこまで恐怖する感覚が理解できん」


そして、ウルキオラはチラリとモニターに視線を移して



「大体、この映像からはリアリティーの欠片も感じん。
さっきの首を斬り落とすシーンもそうだ。人間は首を切られたらそれこそ噴水の様に大量の血液が飛び散る…あんな如雨露程度の出血な訳なかろう。
それと先程の頭蓋を叩き割って脳味噌が露出するシーン。人間の脳は寧ろ灰色に近い、あんなやたら色鮮やかな桜色などではない。
……ああそれと、さっきの眼球が飛び出すシーンだが……」

「ギャアアアアアアアァァァァァァァ!!!!! 聞こえない聞こえない! 何にも聞こえない!
ウルキオラが言っている事なんか何も聞こえないもんねー!」



アリシア、大パニックである

いつの間にかウルキオラも映画に興味が湧いたのか、その映画に見入っている
そして事ある毎に、アリシアの隣でそのシーンに対しての考察を口にするのだ

知りたくも無い人間のR18情報を、アリシアの真近で口にしてくるのだ

その恐怖の相乗効果は、アリシアの精神耐久力を大きく上回っていた

まさか最大の恐怖の根源が隣の人物だという事自体が、アリシアにとっては予想外の出来事だったのだ。



そして、映画は終わりを迎えてエンドロールが流れる。

その頃にはアリシアの顔中は涙で濡れて、瞼は赤く腫れ上がっていた。


「……ひっく、ぅっく、ぇっく……ウルキオラの、っ、バカ……もう、ひっく、一人、で、廊下も、っぅ、歩け、ないよ……」

「そうか、じゃあさっさと部屋から出て行け」

「正に外道なんだよ!!!!」


涙交じりの声で叫ぶ
恐怖で蹂躙し尽されたアリシアに対してこのセリフ、アリシアはその心に巣食う恐怖を無視して叫んでいた。



「もう良いもん! 次は恐くないヤツ見るもん!!」



プイっと、ウルキオラから視線を逸らして再びモニターに向き合う。
思わぬ地雷を踏んでしまったが、今回は用心しながら選ぶ。



「……あ、アニメも入ってるんだ! ならコレ見よーっと!」



そしてアリシアは、「やまねこがなく頃に」というタイトルを選び、再生ボタンを押した。









「みぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


再び、アリシアはウルキオラの腕に縋り付きながらモニターを見て泣き喚く

正に大号泣
涙と鼻水で顔面がグチャグチャになりながら、アリシアは絶叫を繰り返していた。


「お前に学習能力は無いのか?」

「何故か目が離せないんだよ!!!」


ウルキオラはやや呆れながら呟き、アリシアは涙交じりの声でそう返して


「ヒギャあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「自業自得という言葉を知っているか?」


更なる大絶叫がその部屋に響く
モニターでは、歪に変形した人間の死体らしい物がアップで映しだされていた。


「騙された! 完全に騙されたんだよ! 可愛い女の子や格好良い男の子とかがたくさん出てくるのにこの展開は有り得ないんだよ!!! 詐欺ってレベルじゃないんだよ! モザイクのバーゲンセールまじパネエなんだよ!!!」

「そう言う割には余裕があるな」

「割とテンパってるんだよ!!!」


そして、モニターからは不吉で不気味なBGMが流れて


「……ううぅ、またあの恐い魔女が出てきたぁ……」


涙交じりの声で、ガタガタと震えながら毛布をかぶってアリシアはモニターを見る

そして、


「ギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!! もう無理! もう無理なんだよ! 流石にこれ以上は恐くて見れないんだよ!!!」


とうとう限界が来たのか、アリシアは直ぐに手に持ったリモコンを操作する。
そしてリモコンの停止ボタンを押して、その映像を消すつもりだった

だが


「……ぁ……」


それは、イージーミスだった
アリシアの指先は恐怖のあまり痙攣する様に震えて、その手元は僅かに狂って


ボタンを押し間違えた
停止ボタンではなく、隣のボタンを押していた


そして


「ホギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


恐怖再来

急に場面が切り替わって、女性の首が捻じ切れるという凄惨な場面がでかでかとモニターに映し出されていた


そして、その悲鳴は続く

その全ての恐怖を練りこめた様に声は部屋に大きく響き



(……随分と、愉快な状況になっているな……)



ウルキオラは予め用意していた耳栓を装着して読書をしつつ、泣き叫んでパニックになっているアリシアの様子を淡々と見続けていた。



















「……此処に来るのも、久しぶりね」

そこはとある次元世界のとある街道
灰色のビジネススーツの上から白衣を纏った黒髪の女は、その建物を見上げて呟いた


そして足を進めて、その建物の中へ入る。



「……これはこれは、随分と珍しいお客さんだ」



その建物の中、応接室風に彩られた部屋
壁際にはいくつもの本棚が置かれて、ハードカバーの本が隙間無く置かれている

そして部屋の中央には来客用のソファーとテーブルが置かれていて、部屋の奥には大きな窓とデスクとパソコンと幾つかの機材が置かれている

そしてその奥のデスクにて、その男は佇んでいた。



「……久しぶりね、イザヤ」

「おや、おやおやおや、少し見ない内に随分と『様変わり』しちゃったみたいだねープレシアさん」



そのイザヤと呼ばれた男は、目の前のプレシアを見据えて呟く


「エステにでも行ったの? 随分とまあ若返っちゃったもんだね、三十台前半くらいにしか見えないよ?
ああ、それとも変身魔法かなんか?」

「あら、最近の情報屋は随分と客に対して根掘り葉掘り聞いてくるのね」

「ああ、コレは失敬。まあ人間の性ってヤツさ、『物珍しいもの』にはついつい興味が湧いちゃうのさ」

「…………」


その言葉を聞いて、プレシアは思う


……相変わらず、食えない男だ……


どこにでも居そうな、中肉中背、黒髪の男を視界に納めながら思う

こんなどこにでも居そうな男が、自分が知る中でも三本の指に入る程に有能な情報屋というのだから、世の中分からないものだ。



「アレ? もしかして怒った? ダメダメ、怒ると皺が増えるよー、折角若返ったのにそれじゃあ意味がない。
ああ、コレは別に貴方をからかっている訳じゃないよ。個人的な意見を述べているだけさ」

「……とりあえず、今日の用件を言うわ」


そしてプレシアは来客用のソファーに腰掛ける。


「情報屋・イザヤに依頼をしたいの。欲しい情報は『ロストロギア・夜天の書』に関する物よ」

「……夜天の書、ね……随分とまあ物騒な名前が出たもんだ。ジュエルシードに引き続き今度はコレ、戦争でも始めるつもり?」


プレシアの用件を聞いて一瞬驚いた様に目を見張らせたが、次の瞬間には愉快気な表情に戻して言葉を繋げる。


「私が聞きたいのはイエスかノーのどちらかだけよ。引き受けるの?引き受けないの?」

「おやおや、つれないねー。まあ良いや、答えは勿論イエス。引き受けるよ」


そして男はデスクの上のパソコンを操作して、何回かキーボード操作した後


「……ロストロギア・夜天の書……現時点ではその所在及び所有者は不明、その上ここ十年間目新しい情報は無し……」


「……手掛かりなしって、わけ?」


しかし、イザヤここで一旦言葉を区切る
そしてその表情は変わる。


「……だ、け、ど……」


そして愉快気に口の端を吊り上げて、言葉を繋げる



「……一つ、面白い情報がある……」


















その男は、無言のままそこに佇んでいた。


「………………」


その男はどこか悼む様な表情で、そしてどこか悔やむ様な表情で、真っ直ぐに目の前の光景を見据えていた。


ここは、時空管理局系列のとある病院の中

そして男の目の前に映るのは、ガラス越しに映る集中治療室の中
その部屋の中にあるのは、二つのベッド

そして、そのベッドの上で……彼女達は横たわっていた。


「……アリア、ロッテ……」


ゆっくりと、そして小さく呟く

そのベッドの上で体中に包帯を巻きつけられ、チューブに繋がれ、点滴を打たれ、呼吸器を取り付けられ
更には医療器械によって、辛うじてその命を繋ぎ止めているその二人

二人の名前はリーゼアリア、そしてリーゼロッテ

その男の、使い魔の名前だ。



「……グレアム提督」



名前を呼ばれて振り返る
そこにはその男が良く知る人物が佇んでいた。


「リンディ提督、か……話は聞いたよ、今回の任務はお手柄だった様だね」

「……此度の件、本当に申し訳ありませんでした……」


そう言って、リンディ・ハラオウンはグレアムに頭を下げた。

その様子を見て、グレアムはやや困惑しながら


「……顔を上げてくれ。クライドの形見である君にそんな顔で頭を下げられては、私も申し訳なくなる」

「……いえ、今回の件の全ては私の状況及び敵勢力の認識の甘さが招いた事……。
私がもっと任務に対して、敵戦力と自軍勢力を見定めて、もっと的確な判断を下していれば……こんな事には……」


そう言って頭を下げたまま謝罪の言葉を呟き、グレアムは再び顔を上げるように促す

そして、更に言葉を続ける。


「……今回の事は、私も大凡の報告を受けている。
君には何の落ち度はない、次元断層を食い止め、ロストロギアの保管にも成功し、見事この一件を終結させた。
君の判断に誤りが無く、最善であり最適だった事は結果が証明している……君は一提督として、自分の行いに胸を張っていればいい」

「……グレアム、提督……」

「……あの娘達も、私の使い魔であり、一管理局員だ。任務に対しては常に命懸けの覚悟で望んでいる。
だから、君ももう頭を上げてくれ……あの娘達も、目が覚めた時に君がその様に沈んだ表情をしていれば、きっと悲しむだろう」

「……分かり、ました……」


そう言ってリンディは改めて顔をあげて、その表情をいつものリンディ・ハラオウンのものに形作る



「また来ます。今度はクロノも一緒に」

「ああ、是非頼む。クロノにも無茶はしないで、しっかり療養する様に伝えておいてくれ」

「はい、必ず」



二人は互いに微笑んで、リンディは一礼してその場を後にする。

そしてその廊下には、グレアム唯一人が残された。



「……これまで、かもしれんな」



一人残されたまま、グレアムは小さく呟く
グレアムは、既に二人の担当医師から告げられている。


アリアとロッテの二人は、仮に一命を取り留めたとしても……二度と闘う事は出来ないだろう……と

少なくとも、今までの様に戦闘の前線に立つ様な戦闘行為はもう出来ないだろう……と


二人ともあのウルキオラとの戦いで、あまりに血を多く流し…その体を傷つけ過ぎた

筋繊維や骨格、運動神経に残る数多の微細な傷は、現管理局の医療技術では完治出来ないレベルだと告げられたからだ。



「………………」



グレアムは一人で悩み、考える。

あの「計画」は、既にもう引き返せないレベルにまで事が進んでいる

しかし、だからと言って一人このまま計画を続行する事は難しい
この計画は自分達三人が十一年前に誓い、十年近い歳月を費やして進めてきたもの


今更、引き返す事など……出来やしない。



「……クライド、私はどうすればいい……」



十一年前、あの「悲劇」によってその命を失った部下の名を呟く

この計画を、断念する訳には行かない

でなければ、この先永劫に渡って悲劇が繰り返される事になる
自分達が十一年前に味わったあの悲劇が、再び繰り返される事になる。


故に、三人は決意した。

もう、この悲劇の連鎖は終わりにしよう

その為なら、自分達は罪を背負おう、咎人になろう


その非道とも言える行為に、手を染めよう。




「……いや、詭弁だな……コレは……」




一人愚痴る様に呟く
事情は、もっとシンプルなのだ。


自分達はただ、憎いだけなのだ

あの悲劇の元凶が、部下を死なせた自分自身が

だから、復讐したいだけなのだ


自分達の復讐を肯定し実行する為の、「理由」と「建前」が欲しいだけなのだ。







「ふむ、随分と思い悩んでいる様ですねミスター?」







不意に、そんな声が耳に響いた。


「……え?」


視線を声の発信源に移す
目に映るのは白衣の男、紫色のやや癖の付いた髪が特徴的の若い男だ。



(……この男、確か……どこかで……)



その顔に見覚えがある様な気がしたが、グレアムはこの時深く考えなかった。

白衣を纏い、どこか薬品の臭いを漂わせる事から、恐らくはこの病院に勤めている医師だろう

ならばその顔に見覚えがあっても、その人物の事を思い出せなくとも、別段不思議ではないからだ。



「おや、私の顔に何かついているかな?」

「いや失礼。どこかでお会いした様な気がしたのですが……」

「うむ、そうだね。こうして直にお会いするのは初めてだよ……ギル・グレアム提督」



その言葉を聞いて、グレアムは僅かに警戒心が芽生えた

理由は分からない……だが、この男の雰囲気が警戒に値するものと直感で捉えたからだ。



「ああ、そんなに警戒しなくても良い。お察しの通り、私は貴方に話が有ってここにやって来た。
その考えは的中だよ」



その言葉と共に、男は口元を歪める
そしてグレアムが抱いていた警戒心が、ここで更に大きくなる。


一言で言えば、不吉


この男から発せられる雰囲気は、不吉な何かを纏っていた
故に、知らず知らずの内にグレアムは身構え


そして、気付いた。




「!!?……貴様、まさか!」



グレアムは気付いた……いや、思い出した

その男の顔を、素性を……そして名前を



「なぜ貴様がこんな所に!」



その瞬間、グレアムは叫んだ。


その男は、次元犯罪者
その卓越された頭脳で、今まで数多くの違法魔導技術を発案し……その悪名をあらゆる次元世界に知らせるS級犯罪者


この病院は、時空管理局系列の物
故に此処には多くの時空管理局が常時出入りしているし、この男の様な者が出入りすれば誰かが絶対に気付く筈



「ああ、此処は病院だよ? そんなに声を荒げないでくれたまえ
まあ、貴方のその心中渦巻く疑問に答えるとするならば……まだ、気付かないのかい?」

「……な!!」



思わず声を上げる

それは結界

自分とこの男の周囲数mだけをスッポリと覆うような極小結界が、自分達の周りに展開されていた。



(……馬鹿な! 何時! どうやって!……)



グレアムとて、歴戦の勇士とまで言われた管理局員
こんな身近で発動された結界の存在に気づかない程耄碌していない。



「ご覧の通り。私はこうして正面から堂々と病院に入り、そして此処までやってきた。
ああ、ご安心を。この結界は私がつい最近発案したモノでね
そこいらの魔導師や機材程度の魔力知覚能力では、コイツの存在は察知できない様にしてるのだよ」



だから、何も心配する事は無い

男は歪んだ笑みで言うが、グレアムは未だ困惑したままだった

だが、混乱したのはほんの数秒
次の瞬間にはグレアムは冷静さを取り戻し、懐から自身のデバイスを取り出し、その男に停止命令を告げようとして




「ロストロギア・夜天の書」

「!?」




しかし、その男の呟きがグレアムの行動を停止させた。



「……言っただろう、貴方に話があると。私は貴方と敵対する為に此処まで足を運んだ訳ではない
……寧ろ、貴方に協力する為に態々貴重な研究の時間を割いてココに来たのだよ」

「……何、だと?」



その男の言葉に、グレアムは眉を顰め




「君の『復讐』に協力したいと申し出ているのだよ、グレアム提督」

「!?」




その言葉と共に、グレアムは自身の心臓が鷲掴みにされた様な感覚に陥った

この男は、知っている
自分の計画を、その全容を知っている


何故?

どうして?

どうやって?

瞬時に頭の中には絶え間ない疑問が駆け巡る
それは大凡確信に近い黒い予感、それは不吉を知らせる予感だった。



「……くくく、それでは改めて自己紹介をしよう、グレアム提督」



そしてそんなグレアムを満足気に眺めながら、男は言葉を繋げた。



「私の名はジェイル・スカリエッティ。唯のしがない探求者だよ」



























それは、とある次元世界のとある森林

そこで一つの闘いが行われていた。



「ウオラアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!」



その男は、大気を振るわせる程の咆哮を上げながら飛び、目の前の敵に襲い掛かった、

男の前に居るのは、巨大な生物
その巨躯、体中を覆う赤い鱗、空を翔ける双翼、それは世間一般では「竜」と呼ばれる種類の生物だろう。



「はあ! はあ!! ウラアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!」



体中から流れる鮮血を振り撒きその轟声を上げながら、男は再び獲物を手にして目の前の敵に斬りかかる


敵の爪を掻い潜り懐を斬り付ける

カウンターの尾の一撃を拳で殴りつける

迫る顎の一撃を、蹴撃を持って牙をヘシ折る


「ガアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!」


しかし、相手もまだ沈まない。

砕けた顎を更に大きく開いて、そこに光が収束する
それは火球

超高熱を収束した、炎の弾丸

その赤い一撃が、その男を飲み込む。


「ああ! クッソ! 熱っちいじゃねえかコラアァ!!」


だが、男もまだ倒れない
即座に体勢を立て直して、突き出すように掌を構える。



「喰らい、やがれえええええぇぇぇぇぇ!!!」



その掌から砲撃が撃ち出される

その砲撃は放たれて、その竜はその痛烈な一撃を顔面に叩き込まれて地面に倒れる。



「はあ! はあ! オラどうしたぁ!! さっさと次きやがれえ!!!」



その男の叫びと共に、上空から二体ソレは姿を現す。
そして、男は再び空を翔ける。


そして、男は拳を突き出して、得物を振るう

男は憎んでいた

ただ憎んでいた


自分の非力さに、そしてその弱さに



「……フザけ、やがって……!!」



その男の記憶に残るのは、とある二人の男

その二人の男は、圧倒的なまでの強さを有していた

その男とは比べ物にならない程の力を有していた


それが、男には許せなかった

そして、その男達に遠く及ばない自分自身がこれ以上に無い程に許せなかった。



「……超えて、やる……!!!」



気が付けば、男は此処にいた
どうやって此処に来たのかは覚えていない、気付いたら此処にいたのだ。


だが、この世界は男にとって都合が良かった

巨大にして強大な生物の楽園
ここに居れば、戦闘に不自由しなかった

ここに居れば、思う存分鍛錬が出来た

だから、深くは考えなかった

何故なら、その男が考えていたのは……唯一つだけ



「……超えてやる……ウルキオラを!……黒崎一護を!……テメエ等全員を!」



その男達を超えたい

それが、その男の唯一の望み




「絶対にテメエ等を超える! 超えてやらああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




白い死神と少女は一時の休息を過ごす


黒い魔女は次なる可能性を求めて動く


法と秩序を背負う男は探求者と出会う




そして、その男は叫ぶ
ありったけの力を篭めて、大気を震わせて、その轟音を響かせる。




そして男は誓う
必ず強くなると、その男達を超える力と強さを必ず手に入れると咆哮を上げる


そして、更なる闘いを行う為に空を翔ける。



まだ、彼等は交わらない


それはまだ先の事


彼等が交わるのは、まだ少し先の事


故に、唯の幕間


故に今日のこの一時は、唯の幕間。














続く














あとがき

 すいません! 更新が遅れました! 二ヶ月以上もの間放っておいてどうもすいません!!!

A’s編は無印編に比べるとキャラが多くて、プロットを組むのにかなり悪戦苦闘していて、あとは作者個人の事情で最近忙しくて、二ヶ月の間更新が出来ませんでした!本当に申し訳ないです!

今回の更新は作者が空いた時間を使って行ったものなので、これからは無印編程の更新速度は出来ないかもしれませんが……皆さん、何卒ご容赦して下さい!


さて、本編の話ですが……今回は幕間、故にA’s編に向けて幾つかの伏線をばら撒かせて貰いました。
リーゼ姉妹に引き続き、スカさんもフライング参戦です。

そして最後の人物……正直、コイツを使うのはリアルな話この更新をする直前まで悩みましたが……採用する事にしました。
何故なら、ぶっちゃけ自分はコイツがかなりのお気に入りだからです!

次回はなるべく早めに更新できるように頑張ります!

それでは、次回に続きます!


追伸 情報屋イザヤに関しては完全にネタキャラです、本編においては重要人物という訳ではないです(笑)




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