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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第弐拾漆番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/09 16:13


ただ、不快だった

ただ、不愉快だった


理由は解からない

始まりも曖昧だった



気に入らなかった

目の前のゴミ共が気に入らなかった


ゴミ共を見ているだけでノイズが流れた

ゴミ共が喋るだけでノイズが響いた

ゴミ共が居るだけで、ノイズが止まらなかった



――苦痛だった



それは、確かな苦痛

まるで自分の体を内側から食い破られている様な、そんな痛み



だから、消そうと思った

この不快な「何か」を消すために

この黒い「何か」を取り去るために


そうする事でしか、この不快感は消えない

そうしなければ、このノイズは消えない

そう思っていた





『ウルキオラー、わたしの声が聞こえますか? 聞こえたら返事をして下さい、オーバー?』





――そう、思っていた。











第弐拾漆番「決戦の終わり」











それは、不意の出来事だった。



『もっしもーし、ウルキオラー聞こえますかー? あり? ありあり? 通じてないのかな?』



その声は、良く知っている声

その声は、自分が良く知っている声

その頭の中に直接声が響く様な感覚
脳から声が浸透していく様なその声


ウルキオラは、ソレに心当たりがあった。


(……念話、というヤツか?……)


指先に宿る黒い輝きを留まらせたまま、ウルキオラは考える。


(……なぜ、アイツが使える?……)


その頭の中に響く、その声の主の姿を思い浮かべながらウルキオラは考える。



『うーん、やっぱり通じてないのかなー? 壊れてるのかなー、コレ』



現状把握
その言葉で、大凡の現状を把握し理解できた。

恐らく、ヤツは避難先のプレシアの隠れ家で何か通信系の道具を見つけて、何気なくいじったのだろう

そして何かの弾みで、自分との会話のラインが繋がったのだろう。



『……何の用だ?』



ウルキオラは応える。
念話の詳しいやり方は知らないが、プレシアから色々不便だからと手習い程度に扱いは教えられた。

そのやり方を頭の中で思い起こして、声なき声を送信させて



『ほわぁ!! ビックリしたー!! ってあれ、今の声は……もしかしなくても、ウルキオラ?』

『……随分と、楽しそうだな』



コロコロと変わる声色を聞きながら、ウルキオラは呟く。

どうせ、アレの事だ
たった一人の『お留守番』をする事に、とうとう我慢の限界が来たのだろう。

そして適当に周りの物を漁り、興味が湧いた物を片っ端から弄くっていたのだろう。



『むむ、そのフリーズでドライな反応は間違い! ウルキオラー! わたしは今大いにご立腹なんだよ!!』



会話の相手がウルキオラと判って安心したのか
その声は勢いと力を身に付けて、更にウルキオラの元へと放たれた。

次々と自分の頭の中に流れ響いてくる、矢継ぎ早な言葉責めを受けて


『……そうか、俺も大いにご立腹だ』


僅かに疲れた様に、少しだけ緩やかな響きを纏わせてウルキオラは応えるが



『ウルキオラー! わたしは退屈なのです! つまらないのです! 面白くないのです! 一人でお留守番はもうウンザリなのです!!!』



……人の話を聞かないヤツだ……

まるで機関銃の様に放たれるその言葉を聞きながら、ウルキオラは思った。

その言葉は留まる事を知らず、次々とウルキオラの元に放たれた。



『……で、用件は何だ? 好い加減に切るぞ?』



その愚痴という名のマシンガントークを粗方聞き終えた所で、ウルキオラは溜息交じりで呟く。

今は戦闘中だ
相手は今の所自分の出方を伺い、防御体勢を整えてこちらを見ている。

下手な動きをするのは得策ではないと判断したのだろう
恐らく自分が念話中だと言う事も、あちらは気付いているかもしれない。

そこまでウルキオラは考えを纏めた所で




『寂しいのです!!!』




キッパリと、その声の主は断言する。


『一人でお留守番は寂しいのです! もう嫌なのです! テレビも絵本も! 一人じゃ何をしても楽しくないのです!!』

『………………』

『むむ! 何も応答がない! それでもわたしは喋るをやめないのです! 
何故ならずっと一人のお留守番は寂しかったから、止める理由は無いのです!!! ウルキオラが返事をしてくれるまで! わたしは喋るのをやめないのです!!!』

『………………』

『とまあ、色々な事を喋った訳だけど……
これ以上はウルキオラの邪魔になってしまうかもという事を踏まえた上で、わたしの言いたい事は唯一つ!』


そして声の主は、スーと息を溜め込んで







『ウルキオラー、早く帰ってきてねー!』







その声は
ウルキオラの頭に

耳に

胸に

体に

透き通るように響いて



『それじゃあ、一通り思いの丈を喋ってわたしは満足したので、こっちは切ります!オーバー!』



その言葉を最後に、そのラインは切れた。


「…………」


ウルキオラの行動は、しばし止まっていた。

何の前触れも無く現れて、自分の邪魔をして、自分の思考を引っ掻き回して
好き勝手に喚き散らした後は勝手に過ぎ去っていく。

そんなイレギュラーを体現したかの様な、そんな一方通行なやり取りを行ったウルキオラは
呆れに近い感情を抱いていた。

しかし



……本当に、鬱陶しいガキだ……



気がつけば

あの不快感は消えていた

あの黒いノイズは消えていた


簡単に言えば、頭の先から水を掛けられた直後の様な心境だった。

そして、ウルキオラの頭は完全に冷静さを取り戻していた
熱は消えて、頭は冷えて、いつもの思考能力を取り戻して



……俺は、何をしていたんだろうな……



考えても見れば、随分と無駄に時間を消耗した。
思い返して見れば、随分と無意味な労力を使った。

余りにも自分らしくない、普段の自分の行動から余りにも逸脱した行動だった。


しかし



……本当に、奔放なガキだ……



不思議な、感覚だった
今まで体感した事の無い、経験したことの無い感覚だった。


いや、正確に言えば違う

それに似た感覚を、過去に一度自分は経験している。



……あの時も、こんな感覚だった、か?……



胸の辺りが、ジンワリと淡く熱を帯びるような

頭の中で、急に淡光が燈ったような

体の全てが、僅かな活力を帯びるような


そんな感覚だった。


……いつもいつも、あのガキは俺に要らぬ労力と時間を使わせる……


思い返せば

初めて出会った時から、今日のこの時まで
自分はあのガキに幾度と無く行動を狂わされ、思考を邪魔され、要らぬ労力と時間を強いられてきた。

頭の中で、ウルキオラはそう言って愚痴を吐く。


だが




……早く…帰ってこい…か……




それは、不快ではなかった

そのノイズは、嫌ではなかった


自分でも上手く表現できないが、『ソレ』は他の何かとは違っていた。



……此処に居ても、こいつ等に関わっていても……不快感が増すだけだな……



腹の中の黒い唸りは消えた

胸の中の不快感も消えた

頭の中のノイズも消えた


それなら、これ以上の戦闘に意味は無い

それなら、これ以上ここに留まる意味は無い

ならば、さっさとやる事を済まそう


だから、ウルキオラは決めた。




















「気が変わった」


指先に燈った黒い閃光を掻き消して、ウルキオラは目の前のフェイト達に告げた。


「……どういう、意味ですか?」


その言葉に、フェイトは思わず聞き返す
自分達に向けて砲撃が放たれるその矢先、ウルキオラは手を止め、砲撃を中止したからだ。


「言葉通りの意味だ。気が変わった、お前等に撤退のチャンスをくれてやる」

「……撤退?」


その予想外の言葉を聞いて、クロノは思わず呟く
そして更にウルキオラは言葉を続ける。



「俺は今からやる事がある、助かりたければ邪魔をするな」


――響転――


その言葉を最後に、ウルキオラはクロノ達の前から姿を消した。

フェイトも、クロノも、ユーノも、その余りの事態に頭がついていけてなかった

思考も理解も追いつかず、その余りの状況の変化についていけてなかった。


「……助かった、のか?」

「……かも、しれません」


ユーノとフェイトが、どこか信じられない様に呟く。
そしてその言葉を切っ掛けに、クロノは自分達の状況を改めて思い出す。



「って、呆然としている場合じゃない! 直ぐに怪我人をアースラに移送しないと!!」



その言葉を聞いてユーノとフェイトも自分達の状況を思い出し、直ぐに倒れ伏す怪我人に駆け寄る。

クロノはアースラとリンディに連絡を入れて、直ぐに状況を伝える
相手の思惑は分からないが、今はこのチャンスを無駄に出来ない。

そして全ての準備を終わらせて、数多の魔法陣がそこに形成されて
クロノ達全員はそこから姿を消した。





















彼女は、その空間に佇んでいた

彼女は、その空間で待っていた

そこは、とある建物の中の一室
彼女が”生前”所有していた、隠れ家の一つだ。


「…………まだ、感覚が今一つね……」


彼女は、その手を見つめながら呟く。

何度か手を握っては開いて、足の踵で床を軽くタップする様に動かし、体の調子を確かめる様に呟く。


「……まだまだ、改善が必要みたいね」


その感覚は、どこか違和感がある。
まるで感覚そのものが薄い膜に覆われている様な、そんな違和感を覚える様な感覚だ。

そして、違和感は感覚だけではない。

その体も、どこか鈍く、そして重い
まるで全身鋼の甲冑を着込んでいる様な、そんな重量を感じる。


そして、彼女は改めて実感する
自分の現状に対して、本当の意味で理解をする。



「……ま、あの煩わしい投薬生活とオサラバできるのは喜ばしいわね」



彼女が口元を僅かにそう呟くと、その空間に一つの魔法陣が浮かび上がった。

そしてその魔法陣の光に照らされて、その男が姿を現した。
その男は、彼女が今正に待っていた人物だった。



「……ご苦労様、首尾はどうだった?」

「俺がしくじるとでも思うか?」



そう言って、その男・ウルキオラは手に持ったソレを彼女に見せる。

それは、一つの杖
彼女が愛用していた、彼女の『体』と共に時空管理局に回収された、彼女のデバイスだった。


なぜ、ソレをウルキオラが持っていたのか?

それは、ウルキオラが彼女に頼まれたからだ。


何故なら、彼女は既に生きていないのだからだ

何故なら、彼女は在るべき筈の、持っている筈の肉体を既に失ってしまったのだから。

だから、彼女はウルキオラに頼んだ
肉体を無くした自分の代わりに、時の庭園のシステムを利用して彼女のデバイスを転送させる様に、ウルキオラに頼んでおいたのだ。


「貴方がどこまで暴れるかは、私にも想像できなかったから不安だったのよ
 コレが無いと『今』の私は物理干渉が殆ど行えなくなってしまうからね」


そして次の瞬間、その杖の宝玉が光を宿す
光と共にその杖は魔力を放出して、彼女の体を包み込む。

そして、その光は彼女の体に活力を与える。
その虚ろな肉体に溢れんばかりのエネルギーを注ぎこみ、彼女の体を魔力で包み上げる。

そしてその一連の様子を見て、ウルキオラは尋ねた。







「調子はどうだ、プレシア・テスタロッサ?」







その問いを聞いて、彼女は応える。



「ええ、悪くないわ」



その女、プレシア・テスタロッサは応える

プレシアは、口元を歪めて呟く。




「寧ろ、最高の気分よ」




その言葉と共に、彼女はその空間の中央にある円柱の様な台座に歩み寄る。

そしてその台座の中に、ソレは光輝いていた。


台座の中に在る、六個のその蒼い宝玉は……『ジュエルシード』は、輝きを放ちながら其処に眠っていた。




「……私は、勝った……!」




万感の想いを篭めて、プレシアは呟く。
そして、確信する。

自分は、勝ったと

自分は、とうとう乗り越えたと

彼女は、その勝利を確信した



そう、全ては彼女の計画だったのだ。

プレシア・テスタロッサがその命を賭けた、壮大な計画だったのだ。



プレシアは、考えた
どうすれば、管理局からの追っ手を振り切れるか?

どうすれば、管理局にジュエルシードを渡さずに済むか?

どうすれば、自分もジュエルシードも管理局の手に落ちずに、その追跡の手を振り払えるか?


彼女は、その方法を考えて……そして、思い付いた。
その悪魔の策を思い付いたのだ。


彼女は、思い付いたのだ
管理局に捕縛されない絶対の方法は、捕縛される前に死ぬ事だと

管理局にジュエルシードを奪われない絶対の方法は、奪われる前に奪う事だと


そして、彼女は気付いた。
自分とウルキオラのみが知る、絶対のアドバンテージ……死者の魂の存在

そして、死者の魂の実体化。


先ず、プレシアが思い付いたのは死者の魂の存在によるアドバンテージだった。

人間は死しても、その存在が直ぐに消える訳ではない
個人差はあれど、その魂のみの存在としてこの世に留まる事は出来るというその情報

そして、リニスの魂の情報の秘匿
これで、プレシアの下準備は大凡整っていた。



今までの事の大凡の経緯はこうだ。

管理局は、自分の元から逃亡したリニスとアルフの情報によって時の庭園の所在を突き止める

その後、管理局は自分がアリシアの蘇生から次元断層に目標を切り替えた事を知り、その解決に乗り出す

彼等は自分の確保の為に動き、途中でウルキオラと交戦……そして戦力を分断して再び自分の確保に動く

そしてその後、自らも戦闘に出ざるをえなくなった自分は管理局と交戦し、病の影響で戦闘続行が不可能となる

そして自分は追い込まれて、次元断層発生を早める為にジュエルシードを破壊する

だがその次元断層も管理局に阻止されて、もはや勝機は無いと悟った自分は管理局の前で自決をして、その命を閉ざす



つまりは

そういう、『筋書き』と『演出』だったのだ。



娘の蘇生を夢見たプレシア・テスタロッサはその狂気の末に次元断層を引き起こそうとし、ジュエルシードすらも破壊して、その目的を完遂しようとする

だがその目的は管理局によって阻止され、プレシア・テスタロッサは全てに絶望して、自決という形でその幕を退き下ろす



そういう、『シナリオ』だったのだ。



先ずプレシアは、煽りの方法として次元断層の発生という手段を取った。

理由は至って単純、それが一番相手を騙し易かったからだ
次元断層を引き起こす程の魔力を自分が所有しているとしたら、ソレはジュエルシードの魔力しかない

だから、自分が持っているジュエルシードは本物だ
だから、自分が持っている『十二個』のジュエルシードは、『全て本物』だ


そう相手に十分に印象付けて『誤認』させる必要があったのだ。



――流石は一級品のロストロギア、一個『暴発』させただけでここまでの力を発揮するなんてね――



あの時、プレシアが破壊したのはジュエルシードではない。



――しかし、大した技術だ。これ一つで十刃クラスの霊力が込められている――



あれは、『カートリッジ』……即ち、『贋物』だ。



ジュエルシードに外見を似せただけの、ジュエルシードの魔力を篭めただけの、『本物』のジュエルシードの暴走を助長させる為の、只の贋作だったのだ。

勿論、それはただ外見を似かしただけの贋物
如何に外見が同じであろうとも、ジュエルシードの魔力を篭めようとも、その場を凌ぐ為の紛い物だ。

ソレを回収されちょっとした検査と解析を行えば、直ぐに贋物だと判ってしまう代物だ。



だから、プレシアは破壊したのだ。



管理局の前で、その力を見せ付けて、全てのジュエルシードが間違いなく本物であるという事を十分にアピールし

そして、自分がジュエルシードを破壊してもおかしくない状況を用意した上で
プレシアは、その贋物を破壊したのだ。

管理局にその贋物を回収させない為に、自分が破壊したのは本物のジュエルシードであると信じさせる為に
プレシアはそのジュエルシードの贋物を破壊し、その真実を闇の葬ったのだ。


そして、死と言う絶対の逃亡手段を用いて、自分はこうしてあの場から逃げ遂せたのだ


無論、これを成功させる為にも幾つかの条件があった。


先ず一つ
相手に戦力を分断させ、その上でウルキオラがリニスを足止めする事

事前情報から、リニスは死者の魂の存在を知覚できる事は既に確定的だった

だから、プレシアはウルキオラに足止めを頼んだ
自分の死後の動きを悟らせない為に、ウルキオラに足止めを依頼した

そしてウルキオラが足止めに出れば、管理局はきっと足止めと戦力の分断を選択する
そしてその選択を取れば、リニスがウルキオラの足止めをする確率は非常に高かった

何故なら、リニスは唯一自分とウルキオラを出し抜いた経験のある存在だ
故にリニスがその役を買って出る可能性は非常に高いと、プレシアは考えていた。



そして二つ目
それは、リニス以外の管理局の人間が確実に自分の元に現れる事。

ウルキオラの戦力なら、あの場でリニスを含めた人間を全て戦闘不能にする事など簡単だった

だが、それでは意味がない。

重要なのは、自分が管理局の前でジュエルシードを破壊する事と、死と言う絶対の結果を管理局に確認させる事なのだから


彼等に全滅されても、撤退されても、自分の前に姿を現して貰わなければ、プレシアには不都合だったからだ
だから、ウルキオラは最初手を抜いて戦うようにと釘を刺しておいた。


『勝つのは無理だが、足止めくらいは出来る』


相手にそう思わせる戦力程度に力を抑えて、ウルキオラは闘っていたのだ。



そして三つ目
それは、次元断層を絶対に引き起こさせない事。

次元断層を引き起こすのは、あくまで管理局を誘き寄せる為の只の撒き餌
本当に次元断層を引き起こすつもりは、プレシアには毛頭から無かった


だから、絶対に次元断層を引き起こす訳には行かなかった。

だから、そのタイミングを計っていた。


強大な魔力を持った、次元断層を抑える事の出来る魔導師が庭園内に現れるタイミングを、プレシアは計っていたのだ。


時の庭園は、プレシアの本拠地だ
庭園の装置を使えば、その内部にいる魔導師と質と量くらいは簡単に測れる。


そしてプレシアは強い魔力を持つ魔導師(リンディ)が庭園の内部に侵入し、ディストーションフィールドを形成した事を察知した後
体内の生態魔力を刺激して、病の症状を人為的に発症させたのだ。

自分の肉体に巣食った病とは、数年来の付き合いだ
どの部分を、どの程度に刺激を与えれば、病の症状を引き起こせる事なんかはプレシアは熟知している。

そして『管理局と病の発症によって追い詰められた』プレシア・テスタロッサを演出して、最後の最後に『ジュエルシードを破壊による次元断層を試みた』という筋書きを完成させたのだ。



そして四つ目
それはあの場で、自分の霊体化を成功させる事。


プレシアは、厳密に言えばただ死んだ訳ではない
今のプレシアは『魂魄剥離』の状態だ

プレシアが自害の際に使用したデバイスのアナザーフォーム『アランカル』
あれは、只の魔力刃などではない


あれはプレシアに魂魄剥離を行い、その霊体を高密度の魔力で覆う為の物だった。


嘗て、プレシアはウルキオラからリニスの蘇生の秘密を知った
そしてその秘密を知ると同時に、その方法を思い付いた。

肉体が死した霊体は、他人の肉体、他の肉体を受け入れる事は出来ない
だから、プレシアはソレを思い付いた。


では、霊体ならどうか?


リニスも、ウルキオラも、共に肉体を持っていないにも関わらず
アリシアと同じ霊体であるにも関わらず物理干渉が出来る。

それは何故か?
答えは簡単だ、それは『密度』が違うからだ。

リニスもウルキオラも、魔力の粒子によって構成されたその霊体は、生身の人間とも遜色が無い程の霊子密度を誇る霊体だ。

故に、両者は物理干渉を行える
魔力の素質を持った大凡の魔導師でも、その存在を知覚できる。


だから、プレシアは気付いた
何も霊体が物理干渉を行うには、必ずしも肉体が必要な訳ではない。


霊体を『魔力』で包み込んでしまえばいいのだ。


プレシアの頭の中に、既にその技術の下地は出来ていた
アリシアの存在を知覚する為の装置とそのプログラム、コレを少々改変させるだけで良かった。


だが、ここで一つの問題があった。


人間は霊的なモノに対しての抵抗力が低い
では肉体の守りを失った剥き出し状態の霊体を、そんな高密度な魔力を包み込んで大丈夫なのか?

そんな強すぎる魔力を霊体に直接付加させて、霊体には何も影響は出ないのか?



だが、プレシアはこの問題を乗り越えた。



例えばの話だが
毒蛇が自身の毒牙を用いて仕留めた獲物を食して死ぬ事はあるか?

蜂が自身の中にある毒が原因で死ぬ事はあるか?



答えは、否。


そう、つまりはそういう事
それはとても簡単な事だった。


自分が生来的に持つ、『自身の魔力』で霊体を覆ってしまえば良い。

生まれついて自身と共にあった魔力なら、それは拒絶する事も、相反する事もない。


だから、プレシアは気付いた。


ウルキオラからリニスの死神化の話を聞かされた時、プレシアはそれを理論と理屈で解釈しようとした

アリシアの為に造り上げた装置の技術も手伝って、その理論を造り上げたのだ

そしてジュエルシードの特性である『願望に対しての最適な魔力』を繋ぎにして
今の自分の状態、『擬似死神化』の理論を造り上げたのだ。



そして、最後の条件
それは事後処理、証拠の隠滅だ。


プレシアはアランカルフォームを使用した時、かなりその出力を低めにした
出力を上げて、高密度の魔力で霊体を覆ってしまえば、フェイト達に気付かれてしまうからだ。

だから、あえてかなりの低出力と低密度で、自身を包んだ。

しかし、ここで一つの問題があった
それは、自身のデバイスを回収できない事だ。

あの杖には、自身が使用したアランカルフォームの詳細のデータが入っている
管理局の手によって回収され、調べられれば、自身の現状について気付かれる危険性もあった。


だから、その回収をウルキオラに頼んだ。


管理局にその存在を知覚されない為の、低出力のアランカルフォームの状態では、デバイスを回収できる程の物理干渉は行えなかった。

故にプレシアは自身が霊体化した後は、玉座の間に密かに設置しておいた霊体用転移装置を利用して、時の庭園から離脱したのだ。


そして、プレシアの死を知った後はウルキオラが動いた。

プレシアのデバイスは、プレシアの予想通り管理局の手によって回収されていた
勿論、プレシアもその事は予想が付いていた

だから、勿論デバイスの方にも保険を掛けていた。


――フェイト、このデバイスを持っていきなさい――


それは、嘗てフェイトに渡したデバイスに施した同種の仕込み
起動させれば大抵のジャミングとクラッキングにも対応でき、空間転移できる保険


その仕込を施したデバイスは、時間を置いて再び時の庭園に帰還転移するようにプログラムされていた。

直接ここの隠れ家にまで転移させても良かったのだが、万が一管理局に逆探知されてしまう危険性も考慮して、庭園内に転移させたのだ。


後はウルキオラが庭園内に転移されたプレシアのデバイスを回収して、プレシアと同じ転移装置を使って此処まで戻ってきたのだ。


そして、ウルキオラはデバイスを持って此処に帰還した。

それが意味する事は一つ



(……しかし、大した女だ……)



ウルキオラは、ソレを見て改めて思う。



(……まさか、本当に義骸を造り上げるとはな……)



正確に言えば、その土台と基礎骨子だが
多分に独学と独自の技術が入り混じっているもの、それは紛れも無く死神が利用する義骸


今は開発初期の段階の為に幾分不安要素があるが、それでもその完成度は高い

こうしてプレシアが物理干渉を行い、尚且つ独立した霊体としてその個体を維持できているのが何よりの証拠

後は擬似血脈を内蔵させた有機化合された人工皮膚でも被らせれば、それで義骸は完成だ


嘗てのウルキオラは、プレシアは義骸の存在を知った所でソレを造り上げるのは無理だと判断したが


プレシアの頭脳が


プレシアの執念が


プレシアの可能性が


ウルキオラの予想と予測を、上回ったのだ。


プレシアは自身が持つ技術と知識と
ウルキオラが齎した技術と知識で

この難題を、実現させたのだ。



「貴方にも改めて礼を言うわ。貴方が居なければ、この闘いには勝てなかったでしょうからね」



自身の手の中でその杖をクルクルと回転させながら、プレシアは呟く。

その眼光は、確かな光と力を宿していた

その姿は、今までに無い程の覇気と自信を纏っていた

その言葉は、絶対の事実と結果を物語っていた。



管理局は、プレシア・テスタロッサの遺体を回収している
故に、その死亡という事実を疑いすらもしないだろう。

プレシアは、管理局の前でジュエルシードの贋物を全て粉々に破壊し、全ての本物のジュエルシードは回収させた
故に、自分達は全てのジュエルシードを回収したと思っているだろう。

そして、ウルキオラは此処まで帰還してきた
ウルキオラが逃亡という手段を取る可能性は低い、恐らく真っ向から管理局の全ての人間を叩き潰して、ここまで来たのだろう。




「……さて、最後の仕上げと行きましょう……」




そして、プレシアは自身の持つデバイスを操作して、ある命令を庭園に送る

最後の仕上げを行う為に、全ての証拠を隠滅する為に、その指令を実行させる



故に、プレシアは思う。

その事実を、結果を、

胸で、心で、魂で、噛み締める。


この勝負


この決戦


この闘い





勝ったのは、自分達だと――。



















続く
















あとがき
 今回は、もう一話更新します。



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