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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第弐拾伍番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/20 22:46



数百にも及ぶ雷撃の弾幕

幾百にも及ぶ宝剣の群れ

そして、圧倒的閃光の奔流

それら全ては一つの獲物に唸りを上げて殲滅に掛かり、白い死神を飲み込んで


鼓膜を粉砕する様な轟音と、体を凪ぎ飛ばす様な衝撃、そして目を焼く様な閃光が、その場を支配した。



……仕留めた……

……今度こそ、確実に、全ての攻撃が直撃した!!……



その光景を見て
その手に伝わる必殺の手応えを感じとって、そこに居る誰もがそう思った。



「……終わった、と思うかい?」

「……それは分からない、だけど確実にダメージは負った筈だよ」



アルフの問いに対して、ユーノは答える。

Sランク級の攻撃魔法の三重直撃

三連ではない、三重の直撃だ
瞬間的な破壊力は、それこそSSランクすらも超越した筈


今は先程の攻撃によって発生した煙幕の所為でその結果を確認できないが、そこに居る全員が相応の手応えを感じ取っていた。


全ての攻撃は、間違いなく直撃した

しかし、だからと言ってそこに居る誰もがこれで終わった等とは思っていない。


寧ろ次の瞬間には、煙幕越しからの反撃があるんじゃないのかと
灰色の壁の向こうから、翠の光は輝くのではないかと

そんな風に身構えて、尚も警戒を怠っていない。


だが、死神は現れない。

翠の光も、白銀の脅威も襲ってこない。


「……まさか、今ので本当に仕留めちゃったとか?」

「それは楽観しすぎ……と、言いたい所だけど……」


ロッテとアリアが呟く。

反撃の予兆は、未だに確認できない。

余りにも、静か過ぎる
静寂な空気が場を支配し始めて、尚も煙の向こうからは何の反応も窺えない。



「仕方ない。少々危険だが、この煙を薙ぎ払って……」



自分の目で直接確かめなければ、どうにも判断できない
クロノはそう判断して、手に持った杖を未だ晴れない煙幕へと向けて




ゾクリ、と




鳥肌が立った。





「……っ!!!!?」

絶対零度のプレッシャーに全身を襲われて
クロノは、思わず身構える。

その悪寒が落雷に撃たれた様に痛烈に全身を駆け巡る
鉛の様な重圧感が全身を襲い、その威圧感で胃が締め上げられて嘔吐しそうになる。


反射的に膝がガクガクと震える
手に持った杖は、痙攣しているかの様に狙いを定める事が出来ない。


そして、クロノは悟る

なのはも、フェイトも

ユーノも、アルフも

リニスも、リーゼも


そこに居る全員が、ソレを悟る。



決着は

まだついていない。



















……俺は、何をしている……


呆然として意識の中で、ウルキオラは考える。


……ダメージは、ある……


先程の自分が受けた攻撃によるダメージを見て、己の現状を確認して、ウルキオラはそう思う

通常の状態なら、それ程のダメージは受けなかっただろう


だが、今は違う

意識が戦闘から離れた所に
殆ど奇襲に近い状態で、全ての攻撃が直撃した


その攻撃に対する鋼皮の霊圧が足りず、衝撃を殺しきれず、その結果ダメージを負った


これは、自分の過失だ


もしも、今この場で追撃を受ければ……自分も只では済まない

相手には、まだ援軍も居る

下手を打てば、相手側に確保される可能性だってある

しかし



……なのに、なぜ……


……なぜ、俺は動けない?……



ウルキオラは、自身に対してそんな疑問を投げ掛けた。

その意識は、どこか霞み掛かっている
その自我は、天秤の様にユラユラと揺れている。


ダメージは、小さくない。

だが、四肢は動く
行動を起こすには何も問題ない

ならば、直ぐに自分も早急に此処から動く必要がある。


だが、動けない
ウルキオラは動けない

その足は止まって、その手は宙を漂っていて、その目は床の一点を見ていた。


ウルキオラの視線の先
そこには、特に何もない。

ただ、白と緑のビーズが数個散らばっているだけだ。


そしてソレは
自分が貰った……アリシアの腕輪『だった』もの


そして、その事を理解した瞬間

ウルキオラの頭の中に、胸の中に、腹の中に、ソレは生まれた。



……何だ、この不快感は?……



それはノイズ

ウルキオラが初めて体験する、黒いノイズ



……何だ、この不愉快な気分は?……



それはウルキオラが初めて感じる、黒い感情

まるで全身の体液の全てが、粘度のある汚水にすり替わった様な感覚

頭の中の脳髄を締め上げて、ギリギリとその細胞の一つ一つを磨り潰されていく様な、そんな耐え難い感覚

腹の中で黒い獣が唸りを上げて、其処から這い出ようと爪を立てて牙を剥いて、暴れ狂っている様な感覚



そして、ウルキオラはソレに手を伸ばす

地面に散らばった、緑のビーズに手を伸ばす


……コレが、原因か?……


ウルキオラは、思う。
明らかに自分は、目の前のコレに対して不快感を抱いている。


だが、厳密に言えば……ソレは違う。

ウルキオラはその腕輪に対しては、特に思う所はなかった
思う所が在ったのは、目の前の光景


腕輪の破壊という、一つの光景



……ソレがどうした?……

――不快――

……ゴミが造ったゴミが、正真正銘のゴミに還っただけ、ただそれだけ……

――不快、不快――


……では何故、俺は手を伸ばしている?……

――不快、不快、不快――



……なぜ俺は、コレを拾い集めている?……

――不快、不快、不快、不快、不快――




……なぜ俺は、コレを作り直そうとしている?……


――不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快、不快――




全てが、不快
全てが、不愉快

そんな気持ちを抱いて、ウルキオラは自分の掌にあるソレを見る

手の中で転がる罅割れたビーズと、千切れた紐屑



……なぜ、直らない?……

――壊レタカラダ――


……なぜ、壊れた?……


――壊シタ奴ガ居ルカラダ――



ウルキオラの頭の中で、ソレは囁く

ウルキオラの疑問に対して、ソレは簡潔に答えていく

ウルキオラの中で、ソレは黒く犇めいて膨れ上がっていく



……じゃあ……



そして、その疑問に辿り着く。



……誰が、壊した?……

――決マッテイルダロウ――



何かが、頭の中でカチリと噛み合う。

その瞬間、ソレは生まれる。

その黒い奔流は黒いノイズを撒き散らして、一瞬でウルキオラの脳内を支配する

黒いノイズはドス黒い咆哮を上げて、その黒い感情は赤子の様に産声を上げる



だから、ウルキオラはソレを解き放った。





――鎖せ、黒翼大魔ムルシエラゴ――


















第弐拾伍番「最終決戦・vs黒翼大魔ウルキオラ」

















「「「「「「「「!!!?」」」」」」」」


八人がソレを感じ取った、正にその瞬間だった。

圧倒的魔力の咆哮、圧倒的魔力の暴風

そして鉛の様な重圧、海の底にいるかの様な閉塞感



庭園が震える

空間が軋む

その天蓋に閃光の奔流は昇り立つ

煙がその波動に掻き消されて、翠の光柱が聳え立つ

翠の光はそのまま津波の様に広がって、八人の下に降り注ぐ。


「……何だ、コレは?」


そこに全員は、それぞれがプロテクションを形成してソレを遮断する。


「……コレは?」

「……魔力の、雫?」


なのはとフェイトは、自分達に降り注がれるソレを見て呟く。

気がつけば、あの煙の壁はいつの間にかその存在そのものが消滅している。





そして

其処に、ソレは立っていた。





「……黒い……」

「……翼?……」



リニスとアルフが呟く

八人の視界に先ず映ったのは、巨大な黒い翼
その片翼だけ3m以上はあろう、漆黒の双翼


やがて、その白い死神の全貌が視界に映る
そして、気付く。


あの白い袴の様な衣服は、上下一体のロングコートの様に変化していて
頭に在ったあの白い防具は、巨大な双角を生やした兜となってそこに在る

そしてその眼の下にあった緑の紋様は、僅かに肥大化していた


そして、更に気付く。


「!!?って、まさか!!?」

「無傷、だと!!?」

「!!?…そんな! あの攻撃を直撃して!!?」


ユーノとクロノとなのはが驚いた様に声を上げて、他の五人もソレに気付く

目の前のウルキオラの体は、それこそ傷一つ染み一つ存在していなかった

全くの無傷


そして尚も変わらない
否、それ以上に感じる魔力の波動、鳴動、威圧感

そのウルキオラの在り方からは、とても自分達の攻撃がダメージを与えた様には思えなかった。


『……いや、攻撃は通じていなかった訳ではなさそうです』


リニスは、そのウルキオラの姿を見て全員に念話を伝える
リニスは知っている、そのウルキオラの姿を知っている

そして、リーゼもそのリニスの言葉に同意を示す


『同感、さっきの光、そして今のアイツの姿、その事から考えると』

『アレは、多分ウルキオラの切り札。
そして切り札を出さなければならない程に、ウルキオラも追い詰められていたという証拠です』


リニスとリーゼがその事を結論付けて、クロノやなのはも僅かに安堵する

自分達の攻撃は、通じていない訳ではなかった
ウルキオラに切り札を出させる程に効果があった

それが解かっだけでも、大きな収穫だったからだ。




「……動揺するなよ……」




そして、その声が静かに響く。

その瞬間、ゾクリと背中に冷たい何かが流れる。



「……構えを崩すな、意識を張り巡らせろ、一瞬も気を緩めるな……」



その声は、八人の耳に静かに確実に浸透する。

そしてその言葉を理解して、クロノが叫ぶ。


「来るぞ!! 皆、構えろ!!?」


声を荒げてクロノは叫んで、その声に応じて皆も杖を、刀を、拳を構える。

その背筋に悪寒が流れる
その胃袋は締め上げられる。

心臓は性急な脈打ちをしている
頭の中には、五月蝿い程に危険信号が鳴り響いている。


ポタポタと、汗は止め処も無く流れている
呼吸は、知らず知らずの内に荒くなっている。


そして、頭の中で誰かが囁いている。


逃げろ、と

アレには勝てない、と


絶えずクロノの頭の中で、誰かが囁いている。



そして、相手が動く

黒い両翼を背負った白い死神が、此方を向く



クロノとウルキオラは向き合う、そしてその緑の瞳と目が合い

次の瞬間、ソレは起きた。




クロノの両腕は弾けた。





「……え?」



その余りの光景に、クロノは目を見張る。

腕が、鮮血を噴出す
失くした両腕の代わりに、紅い両腕が生える。


「……あ、あぁ……!!」


だが、ソレで終わらない。


「あああ、ぁぁあ!ぁぁあぁ!!!?」


両足が消し飛ぶ

胸が貫かれる

体が両断される

内臓が引き摺り出される

首が引き千切られる

頭を踏み砕かれて、眼球と脳漿が飛び出す





「何を怯えている?」





その声で、クロノは我に返り


「!!!!?……ぅっうぅ、ぐぅあぁ!!!?」


我に返ったその瞬間、クロノは嘔吐した。


口元に手を置いて、膝をついて、ビチャビチャと口から胃の内容物を吐き出して
まるで倒れたゴミ箱の様に中の物を全て吐き出して、先程のアレを思い出す。


……何だ!!?…今のは何だ!!?……

……僕の首は!!? 腕は!!? 足は!!? 体は!!?……

……一体何が起きた!!? 一体ヤツは何をした!!!?……


思わず首に手を置く、体を見る、四肢の存在を確認する

結果から言えば、自分は何もされていなかった

首は繋がっていた、体も存在していた、両腕両足は無事だった。



……幻覚?…いや、違う!?……

……アレは、そんな生易しいモノじゃない!!?……


汗が、滝の様に流れている
心臓が痛い程に脈打っている

体中の全ての骨と血液が、まるで氷に摩り替わった様に体中が冷え切っている。

口元を拭いながら、クロノはウルキオラを見る。

そして、気付く。



……何だ、この魔力は…!!?……



肌で感じる、直感で捉える、本能で理解する。

それは天をも突き穿つ魔力の奔流

それは洪水にも似た圧倒的ボリューム

それは激しく雄々しく唸りを上げて、大気すらも焼き切ろうとしている。


……出鱈目、すぎる……


その魔力を感じ取って、クロノは結論づける。

その量、圧力、濃度、全てが違い過ぎる
あのプレシア・テスタロッサでさえ、天秤の対に成り得ない程の強大な魔力の唸り


……勝てる、のか?……

……僕達は、この男に本当に勝てるのか?……


ポタリポタリと、額から汗を垂らしてクロノは思う

そして、ウルキオラもクロノも見る。




「……四人、か……」




その言葉を聞いて、クロノは直ぐにその意味を悟る。


「……んな!!?」


気がつけば、其処に立っていたのはアリアとロッテとリニス、そして自分を含めての四人だけ
そしてその四人も、膝を付いて息を切らして体を青くさせている。


じゃあ、他の四人は?


「なのは! フェイト! ユーノ! アルフ!! どうした!!? 一体どうしたんだ!!!?」


声を荒げて呼びかけるが、応えはない
四人は応えない。


「……ぁ、あ……」

「……ウ、ゥゥ、ぁ……」


四人は床にその体を倒していて、顔を青くして瞳は虚ろなまま宙を彷徨っている。

自分が吐いている間に襲撃を受けたのか? とも思ったが、ソレは違うと直ぐに分かった。

四人は新たに攻撃を受けたような箇所はない
そしてそれ以上に、体から活力も覇気が感じられない。

今までクロノも数回しか見た事が無い状態だが、クロノはソレを知っている。


言ってしまえば、生きた屍
精神が、屈している状態だ


だから、クロノは自分に問いかける。


……自分達は、何をされた?……


そして思い出す
自分の記憶の中にある、最後の記憶を辿る。


そして、その答えに辿り着く。



……まさか、アレだけで?……

……目が、合っただけで?……



クロノは、戦慄する。
どんなに記憶を辿っても、自分の最後の記憶はウルキオラと目が合ったところまでしか記憶にない。

そして、体にはどう見ても襲撃を受けた様な跡は無い

つまりは、それが証拠。



……馬鹿な!!!?……

……アレだけで、たったアレだけで!!!?……

……角度的に目が合うのは不可能だった人間も居るはずなのに!!?……

……有り得るのか!!? そんな事が有り得るのか!!?……



「正直、拍子抜けだ」



クロノの思考を遮って、その声は響く。



「まさか、霊圧を解放しただけでこんなザマになるとはな」



どこか失望した様に、どこか落胆したかの様に、ウルキオラは呟く。

結論から言って、ウルキオラは誰にも何もしていない

ただ、軽く霊圧を解放しただけだ。

それだけで、十分だった
それだけで、この結果を生み出せたのだ。



「まあいい、事のついでだ。少々此方も『無駄』な手間を掛けてやろう」



ポツリと、ウルキオラは呟いて
次の瞬間、クロノの体を襲っていた重圧感と威圧感が突然薄れていった。


「……う、ぅぅ、ん?」

「……う、ぁ、ん? 僕達は、一体?」


その影響は、倒れていた四人にも出たのだろうか?

なのはやユーノ、フェイトとアルフも続いてその身を起こした。


「……く、ぅあ、フェ、フェイト、大丈夫かい?」

「ぅ、うん、なん、とか……」


ヨロヨロと彼女達も身を起こして、現在の状況を再び思い出して


「気が付いたのなら、早く構えた方が良い……あちらの気が変わらない内に」

「どうにも、ちょっと洒落にならない事態になったみたいだよ」


アリアとロッテも、額の汗を拭いつつそう答える
二人とも平常を装っているが、その顔の表情からはとても平常とは言い難い

彼女達はなのは達の様に地面に伏せる事も、クロノの様に嘔吐する事も無かったが、
それでも心情面のダメージでは大差はない

現に彼女達も、ウルキオラが霊圧を下げるまでは本当に何も行動を起こせなかった
倒れないだけで、床に伏せないだけで精一杯だったのだ


そして、八人全てが再び戦闘体勢に入った事を確認して




「……初めての、感覚だ……」




ウルキオラが呟く。



「簡潔に言おう。俺は今、非常に不快だ」



自然と、その視線がウルキオラに集まる。


「その気になれば、今のでお前等を殺す事も十分に可能だった。
だが、そうはしなかった……何故だが分かるか?」


その問いに、誰にも答えない
しかし、その耳は、その目は、確かにウルキオラに捉えている。


「答えは簡単だ。それでは不釣合いだからだ」


ウルキオラもその事を認識して、その上で言葉を繋げる。


「魂が死ねば、そこで終わりだ……不快も、恐怖も、絶望も、そこで全てが終わる」

「……何が、言いたいのですか?」


刀を構えながら、リニスが尋ねる。




「それでは俺の不快は消えん、だから精々足掻け」




そして次の瞬間、八人の視界から死神は消えて




リニスの腹部に、何かが減り込んだ。




「っっっっっっっっっっ!!!!!!?」


声すら、出なかった。
桁違いの、衝撃だった。

その激痛が体中に流れて、痛烈な叫び声が響く
リニスの脇腹に減り込んだソレは、メキメキと音を立てて内部を破壊する。

そして次の瞬間
リニスは赤い塊を口から吐き出して、その体は弾丸の様に飛ばされて壁を叩き破った。


「リニス!!!?」

「リニスさん!!!?」


フェイトとなのはが声を上げる。

理解が追いつかなかった
その動きは、目に映りすらしなかった

ウルキオラが姿を消したその瞬間、リニスが血を吐いて壁まで飛ばされていたのだ。



「てめえええぇぇぇぇぇ!!! よくもリニスを!!!?」



獣の咆哮を上げて、橙の影が飛び出す
死神の恐怖よりも、身内を傷付けられた怒りの方が勝ったのだろう

アルフは四肢にありったけの魔力を篭めて、疾風の速度でウルキオラに襲い掛かった。


「よせ!!! 無闇に飛び出しちゃ駄目だ!!!?」


クロノが咄嗟に声を荒げて叫ぶが、ソレは届かない


「ちぃ!!! アリア、サポートをお願い!!!?」

「!!? 待ちなさいロッテ!!!」


このままでは、アルフも確実にやられる
そう思って咄嗟にロッテも飛び出す。


「そうだ、それでいい」


その光景を見て、ウルキオラは悠然とそこに立つ。

自分は此処に居る
自分は逃げも隠れもしない

そんな風に、それを態度で示していた。


「ああもう!ユーノくん! 私に合わせて二人のサポートをお願い!!」

「あ、はい!分かりました!!」


アリアとユーノが同時に頷いて、二人はサポートのスタイルを変える

もはや自分達程度の魔力では、今までの様に防御面ではサポートは出来ない

今までは防御主体のサポートであったが、ソレを攻撃主体のサポートに切り替える
そしてその魔法を展開させる。


「ブーストアップ・アクセラレイション!!!」

「エンチャント・ディフェンスゲイン!!!」


二人の補助魔法は同時に完成する。

その瞬間、閃光が二人の体を包み込む
そして二人の速度は跳ね上がり、体は強固な守りを得る。


「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「せりゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


倍化された速度で、二人はウルキオラに迫る。

拳打が唸って、蹴撃が吼える
二つの四肢が、合わせて八の猛威の牙となって死神の命を刈り取ろうとする。

その暴風は荒れ狂う様に吹き荒れて、そこにある全てを蹂躙する。


だが



「俺は今、非常に不快だ」



死神は、迫るその一撃を掴み取り




「だから、簡単には潰れるなよ」




その瞬間、ズドンとそれは響く。



「が!!!!?」


沈む様に、アルフの体に拳は減り込む
魔力防御膜がメキメキと音を立てて破壊されて、アルフの体にソレは食い込んでいき


「があぁ!!」


顔面を鷲掴みにされて、そのまま投げ飛ばされて壁に叩き付けられた。


「くそおおおおぉぉ!!!」


ロッテが拳を振り上げる
そしてそれに合わせるように、ウルキオラも拳を突き出して


メキリと
ロッテの拳は破壊された。



「ぐああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



焼ける様な激痛が襲う。

拳が歪に歪んで、鮮血が流れる
指は折れ曲がり、爪は弾けて、手の甲からは骨が肉を食い破って突き出る。


「あぐぁ!!!!」


その激痛に、ロッテは思わず蹲り
そのまま頭上から、ウルキオラに床へと叩き潰された。


「アルフ!! ロッテ!!!」

「くそ!!!?」


クロノとアリアが同時に吼える
青い弾丸と青い宝剣は流星の様に射出される。


「スティンガースナイプ!!!」

「スティンガーブレイド!!!」


そして、青い閃光は降り注ぐ
ウルキオラの背後から、その絶対の死角から、必殺の奇襲をかける。


だが
ウルキオラは背後からのソレを、一瞥する事無く掴み取って


「返すぞ」

「「なっ!!!?」」


青い閃光は、そのまま二人に跳ね返る
その思わぬ反撃に、二人は動揺しながらもソレを回避して


「なのは、合わせて!!」

「分かった!!」


その瞬間、二つの影は飛び出す
二つの影はウルキオラを挟み込む様に降り立って、その杖に閃光を収束させる。

桜色の閃光が収束して

黄金の魔力はその砲門を合わせる。



「ディバイン・バスタアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」

「サンダー・バスタアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」



二つの砲門が、同時に閃光を撃ち放つ
そしてその砲撃は挟撃となってウルキオラに唸りを上げて襲い掛かり


「「っ!!!!?」」


黒い双翼が、ソレを迎え撃ち
二つの砲撃は、その軌道を直角に曲げた。


「……そんな……!!!?」

「翼、だけで!!!?」


その砲撃は、ウルキオラに届きすらしなかった
漆黒の翼が羽ばたいただけで、その軌道は曲げられたのだ。



「が、あぁっ!!!」

「アルフ、しっかり!!」



壁に叩きつけられたアルフは、そのまま蹲って赤い液体を吐き出す
近くにいたユーノは治療をしようと、アルフに駆け寄って


……マズイ……


その顔は、再び青く染まる。


……折れた肋骨が、内臓に突き刺さってる!?……


ユーノは結論づける
アルフの吐血も、恐らく内臓損傷によるもの

幾ら戦闘用の使い魔と言えども、この怪我は決して軽くない
直ぐにでも此処から撤退して、治療をする必要がある。



『ロッテ! ロッテ!! お願い、返事をして!!?』


アリアが床に伏せるロッテに念話で話しかけるが、返事は無い
その体もうつ伏せたままで、ピクリとも動かない。



「さあ、次は誰だ?」



死神は呟く

だが、動けない
その死神の猛威に、誰も動けない。



「……成程……」



その現状を見て、



「……だが、まだだ……」



ウルキオラはゆっくりと歩みを進めて距離を取る

そしてクロノ達との距離が十分に開いた所で



「撃って来い」



そこに居る全員を視界に納めて、そう宣言する。


「……何?」

「最後のチャンスをくれてやる。
俺は今から此処から一歩も動かない、だからお前等の最強の攻撃を俺に撃て」


その言葉を聞いて、クロノ達は息を呑む。



「どうした? これはお前等にとっての最後のチャンスだぞ?
それとも…このまま死に損ないのゴミ三匹を抱えた状態で闘って、俺に勝てるとでも思っているのか?」

「……っ!!?」



相変わらす無機質な言葉だが、それでも誘う様な響きを纏わせた言葉を放って
クロノ達は、「確かに」と心の中で同意する。

この誘いは、ウルキオラにとって何もメリットはない
このまま普通に闘うだけで、ウルキオラは間違いなく自分達全員を倒せるだろう


つまりは、そういう事


ウルキオラは、確信しているのだ

自分達の攻撃では、ウルキオラを倒せないと

そしてその事を他ならぬ自分達の手によって立証させて、心をヘシ折るつもりなのだろう。



「…………」



クロノは考える。
この位置関係と距離なら、味方を巻き込むことは無い

それにこのまま戦い続ければ、勝機は限り無く薄い
武装隊の応援も、まだ時間を要する

ならば、取るべき道は一つ



「……なのは、フェイト……」



クロノはそう呼びかけて、二人に視線を送る
そしてクロノの意を感じ取り、二人も同時に頷く。

三人は杖を構え、魔法陣が形成される
その先に魔力が鳴動し収束し、凝縮されていく。


そして、その二人も動く。


「……ユーノくん、いける?」

「ええ、大丈夫です」


二人は同時に視線を合わせて、詠唱を始める。

ウルキオラは、恐らく……いや間違いなく全ての攻撃を受け止める気でいる
ならば、自分達はその攻撃の威力を底上げする。

先程までは時間と余裕が無かった為にコレは出来なかった
ウルキオラが完全に受身になっている今だからこそ可能な方法

そしてその二人も詠唱を重ねて、その魔法を完成させる。



「「ブーストアップ・バレットパワー!!!!」」



魔力の閃光が、クロノ、フェイト、なのはの三人を包み込む

そしてその魔力の咆哮は、爆発的に膨れ上がる。



「そうだ、それでいい」



その魔力を真正面から視て、ウルキオラは尚もそこにいる

その姿に迎撃も防御も、回避の予兆すらもない。



「貴様等の最強の技で、最強の力を用いて、俺を撃て」



黄金の魔力が、青い魔力が、桜色の魔力が、爆発的に膨れ上がって急速に圧縮されていく。



「力の差を、解かり易く教えてやる」



その言葉が、合図となった。

三人が咆哮を上げる。



「フォトンランサー・ファランクスシフト!!!!」

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!!!」

「スターライト・ブレイカアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!」



黄金の弾幕が

宝剣の群が

閃光の砲撃が

先刻の一撃を大きく上回る、正真正銘の最強の一撃が

それぞれが唸りを上げて、死神に襲い掛かって





その全てが直撃した。





音が爆発して、鼓膜が揺れる

衝撃が四散して、肌が痛む

閃光が弾け飛んで、瞼を焦がす


爆発と爆炎が入り混じって、炎の柱がそこに立つ


そして、そこに居る誰もが思う。



……頼む……


……これで、終わってくれ…!……


……これで、倒れてくれ!!!……



炎の柱を眺めて、五人は思う。

正真正銘、今のが最後の攻撃だ

もう、魔力は空だ
体力も底をついている

先程以上の攻撃は、もう撃てない


だから、終わってくれ

これでもう、終わってくれ!!














「……所詮は、人間のレベルか……」













その瞬間

望みは、砕け散る

黒翼が、羽ばたく

炎の柱を切り開いて、それは悠然と姿を現す。



「……そ…ん、な……」

「……嘘、でしょ?」



クロノとアリアが呟く。
信じられない様に、信じたくない様に、目の前の光景を見て呟く。



死神は、無傷だった
その体に、傷一つ存在していなかった。



「……どう、やって」

「防いだ、とでも言いたげだな?」


動揺を隠し切れない口調でクロノが呟いて、その言葉をウルキオラが続ける。


「結論から言おう、俺は何もしていない」


そして、その言葉を更に続ける。


「力と力のぶつかり合いにおいて、強い方が生き、弱い方が死ぬのは当然の事だ」

「……っ!!」

「つまり、だ」


その言葉を聞いて、クロノ達の背筋はゾクリと冷える。




「お前等が俺を斃そうと練り上げた力よりも、俺が無意識に放っている力の方が強い」




何かに、罅が入る

何かが、折れる


誰かが、膝をつく

誰かが、折れる


その光景を見て、ウルキオラは呟く。



「……まだ、だな…まだ消えない……」



その言葉を聞いて、クロノは即座に通信を行う。



『エイミィ! 僕だ! 空間転移を頼む! 僕達は一時撤退する!!』



魔力は底をついた
勝利の可能性は、完全に潰えた。



『フェイト! ユーノ! アリア! なのは! 他の三人と共に僕達は一時アースラに撤退する!!』



クロノは、歯軋りをしながらその念話を送る。


甘かった
自分達は、完全に甘かった


ソレの評価を、過小評価し過ぎていた。


完全に、想定外の事態だった
そしてその事態の深刻さを理解するのに、時間を消費しすぎた。


ウルキオラを逃す結果になるかもしれないが、このまま戦闘を続ければ結果は火を見るより明らかだ。


ならば、もはや撤退するしか道は残されていない
その事を即座に判断して、クロノはアースラに撤退の報告をする。

そして次の瞬間、クロノ達の足元に空間転移の魔法陣が浮かび上がる
魔法陣の光がそこに居る八人を包み込み、時の庭園から離脱する


――筈だった











「逃がすと思うか?」











次の瞬間、空間が揺れた。


ウルキオラがその手に翠剣を形成して、それを床に突き立てる

その翠の魔力は瞬時に広がって、ソレを破壊する
クロノ達の足元に形成された魔法陣は、薄氷の様に砕け散った。



「……な!!!」

「そんな!!!」

「魔法陣が!!!」

「まさか、ジャミング!!?」



魔法陣が砕け散って、空間転移が阻止された

その信じ難い事実に、五人の顔は驚愕に染まり



「……一つ言っておこう、俺はもうお前等を逃がすつもりはない……」



その手応えを確かめつつ、ウルキオラは呟く。

ウルキオラがやった事は、そう難しい事ではない

砲撃も、防護も、空間転移も、如何にタイプは違うモノであっても
ソレは魔力を用いた……霊子を用いたモノには変わり無い


だから、ソレを外部から介入して乱してやれば……それは容易く崩れる。


土台が崩れれば、建物は崩壊する様に
骨格が破壊されれば、生き物が支えを失う様に

だからウルキオラは自身が形成した翠剣を介して、場の魔力とその構築を乱したのだ。

翠剣をその空間に突き刺して
魂吸の要領で魔力の構成を乱して、虚閃の要領で一気に構築そのものを破壊したのだ。


ザエルアポロの見様見真似であったが、技術が足りない分は力で補った。

その結果、力に任せた荒業となったが……結果は見ての通りだ。



だから、五人は悟る。

その絶望を、心から理解する。




……ウルキオラからは、逃げられない……




ウルキオラも五人を見る
その瞬間、頭の中にノイズが流れる。


「もう、終わりか?」


未だ、その不快感は消えない

未だ、その不愉快な何かは消えない


「それなら」


その現状を見て、ウルキオラは言い放つ。





「そろそろ、死ぬか?」





黒い唸りは、止まらない

黒い感情は、止まらない

黒いノイズは、止まらない



故に



ウルキオラは、止まらない。












続く













あとがき
 今回の更新は、もう一話投稿する予定です。


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