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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第壱拾伍番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/10 18:38



「出来たー!!」


時の庭園のウルキオラの私室にて、アリシアは声を高らかに上げてそう言った
そしてそのアリシアの言葉を聞いて、ウルキオラは読んでいた本から視線を一旦外して


「そうか、ならさっさと出て行け。邪魔だ」

「ふふん、コレを見てもまだそんな事が言えるかなー?」


ウルキオラの言葉を、アリシアは不敵な笑顔と共に返す
そして、手に持っていたソレをウルキオラに見せた。



「ジャジャジャーン! これなーんだ!」

「ゴミ」

「違うよ!! 腕輪だよ! う・で・わ!!!」



そう言って、アリシアは頬を膨らませてウルキオラに抗議をするが、当のウルキオラは既に読書の体勢に戻っている

そしてそのウルキオラの正面に回りこんで、アリシアは再び手に持っていた腕輪をウルキオラに見せ付けた。



「えへへー凄いでしょー、良いでしょー。これね、私がビーズで作ったんだよ」



ニッコリとウルキオラに笑いかけて、アリシアは自慢げに誇らしげに語る。

その腕輪は、赤と黄のビーズで作られた腕輪だった
恐らく、金髪と赤い瞳のアリシア自身をイメージした物なのだろう

プレシアの『研究』の成果により、アリシアは限定的ではあるがこう言った行動も出来る様になったのだ
先ほどまでは、恐らくこれを造る作業に没頭していたのであろう。



「それでね、これがおかあさんの分」



そう言って、アリシアはもう一個の腕輪を見せる
その腕輪は青と紫のビーズで造られた腕輪だった。



「本当はね、紫と黒にしようと思ったんだけどねー、黒ってなんか暗いでしょ?
だから、おかあさんが大事にしているあの蒼い石と同じ色にしてみたんだー」

「そうか、俺なら赤一色にするがな」

「??? なんで?」

「あの女は血生臭い事が好きそうだからな」

「そんな事ないよー!! もう、ウルキオラはいっつも意地悪言うんだから!」



そう言って、アリシアは再び頬を膨らませて僅かに怒った表情をするが



「でも良いのです。わたしは立派な『れでぃ』なので、大目に見て上げるのです」

「ああ、確か実年齢三十過ぎの年増だったな」

「年増じゃないもん!! 『れでぃ』だもん!!」



ウルキオラの言葉に、アリシアは顔を赤くしながら反論する
人間の女性にとって、三十歳周辺と言うのはいわゆる『複雑な年頃』である

やはり実年齢三十過ぎ(五歳+死後二十六年)と言うのは、幼子のアリシアとは言え少しショックだった様だ。


「そうか、ならさっさとここから出て行け。好い加減喧しいぞ」

「もう! そんな事言ってたら、ウルキオラには腕輪上げないよ!!?」


そう言って、アリシアはソレをウルキオラに見せた。


「……何だソレは?」

「腕輪だよ、ウルキオラの分の腕輪! どう、良く出来てるでしょ! 色もね、ウルキオラの白い肌と目の色に合わせたんだよ!」


そう言って、アリシアは「ふふん」と鼻を鳴らして笑う
その手にあるのは、白と緑のビーズで作られた腕輪

ウルキオラの白い肌と緑の瞳をイメージした色合いだった。



「これもね、わたしの手作りなんだよ。だからウルキオラに上げるね!」



そう言って、アリシアは強引にウルキオラに腕輪を手渡すが


「要らん、必要ない」

「何でー! 別に良いじゃない、上げるってばー!!」

「要らん物は要らん」


そんな問答が数回続き、アリシアは「うー」と唸るようにウルキオラを見つめて
次の瞬間



「今だ、隙ありー!!」



そう言って、アリシアはウルキオラに飛び掛るが



「ああ、隙だらけだ」

「あり?」



ガシリ、と
ウルキオラはアリシアの顔を鷲掴みにして、窓を開けて


そのまま、中庭へとブン投げた。



「みぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



アリシアの声が響き渡るが、その姿と声はどんどん遠ざかっていき


「ほわわあぁ!!」


という声と共に、アリシアは中庭の池の中へとダイブした


「……これで暫くは落ち着けるか」


そう言って窓を閉めて、ウルキオラは再び本に視線を置いて




その霊圧に気付いた。










第壱拾伍番「狂い始めた計画」










「……がぼ! ご!!」


突然の胃の軋みを感じると共に、プレシアは咳き込んだ

その手で咄嗟に口元を覆うが、気がつけばその手は赤い血で染まっていた。


「……ち、ぃ……無駄な、時間を……」


服の中から薬品ケースを取り出して、そのままジャラジャラとカプセルタイプの薬を取り出して
適当に掌にぶち撒けて、そのまま煽る様に飲み込んだ


そして、少しの間を置いて体中に蔓延していたドス黒い唸りは沈静し、落ち着いていった。



「……ここの所の、無理のツケね」



思い返す様に、プレシアは呟く
プレシアは元々重度の病に冒されている

フェイトやアリシアの前では平常を装っていたが、その症状は既に定期的な薬物摂取なしでは
その命を維持できないレベルにまで達している。


最近は研究、そしてアリシアとの時間の為にまともな睡眠など取っていなかった

これら二つの事に比べたら、睡眠に割く時間そのものが勿体無いとプレシアは判断したからだ
そしてこれは、それ故の反動という訳だ。


だが、睡眠という物はとても大事だ
プレシアもそれは理解している

故にここ数日は十分な睡眠を取って、万全な体調で今日を望むつもりだったが……
やはり己の体に巣食った病自体はどうする事もできない。



「……コレばっかりは、どうしようもないわね」



プレシアは、己の体の事を十分に理解した上で今日のこの準備をしていた

そして、プレシアは胸元のソレのスイッチを入れる


次の瞬間、プレシアの体には活力が満ちていった。


プレシアの胸元に取り付けられているのは、逆三角形の銀色の小さなプレート
そしてそのプレートには、蒼い宝玉が埋め込まれている

ジュエルシードだ。



「……ああ、もう……時間をロスしたわ」



僅かに惜しむ様に呟く
ここで無駄な事に時間を割きたくはないが、自分が倒れてしまったら元も子もない

現在手元にあるジュエルシードは十二個、これはその内の一個

そしてプレシアの胸元のプレート型のデバイスは、ジュエルシードを用いた生命力増幅装置だ


嘗てのウルキオラとの会話の際に思い付いた、ジュエルシードの使用方法

ジュエルシードの魔力を生命力として、弱った体に注ぎ込む
これはその体現だ

この十日にも及ぶ研究の過程で、プレシアが考案し造り上げた物の一つだ。


「……もう、良いわね」


そう言って、プレシアはスイッチを切る
そして体の調子を確かめる様に、手を軽く握る

これにはプレシアの病を治す効果は無い
あくまで、弱った体に生命力を流し込む……それだけだ


言ってしまえば、穴の開いたバケツに水を注ぎ込むのと一緒だ
肝心の穴を塞がなくては、意味が無い


そして、この魔力は……プレシアには大き過ぎる、強すぎる
実用可能な段階にまで来たとはいえ、ジュエルシードの魔力そのものが強大なのだ

黒い絵の具が、他のどんな色の絵の具も飲み込んでしまうのと一緒だ


黒は、如何に薄めようとも黒
今のアリシアにこれを使えば、アリシアは一瞬にして飲まれてしまうだろう


そして余りに長い時間使用すれば、プレシアですらも死に追いやりかねない代物

穴の開いたバケツでも、一度に大量の水が注ぎ込まれれば……当然溢れる


その溢れた魔力は、他ならぬプレシアを死に追いやる……そういう事だ。



「だけど、もうすぐ……もうすぐよ」



そして、プレシアはソレに視線を移す

その目に映るのは、ベッドの上に寝かされた少女……フェイトだ

今までの苦痛も苦悩も、全てはこの日の為のもの

最愛の娘を生き返らせる為のもの

そして、こんな筈じゃなかったこれからを取り戻す為のもの



プレシアは再び、準備に没頭した。











彼女は、時の庭園のとある一室に居た

そこは、時の庭園の核とも呼べる部屋
配電設備、汚水浄化ポンプ、セキュリティー操作、魔力還元動力システム……その他全ての
時の庭園の命とも言える全てが、そこでコントロールできる部屋だ。


もちろん、ここにもそれ相応の警備と守りはある

頑丈なセキュリティーと、自律動作で敵を迎撃する傀儡兵

その警備システムをその筋の専門家が見れば、間違いなくこう評価するだろう


正に、難攻不落と……。



「…………」



しかし、その警備の内に彼女は居た
セキュリティーと傀儡兵が守るラインの内側に居て、その部屋の端末に向き合っていた。


力で突破したのか?
いや違う

その部屋には、戦闘の痕跡すらなかった


では、構築しているシステムそのものを破壊したのか?
いや違う

警備システムは、依然完璧に近い状態で今も動いている


では、どうやって彼女は侵入したのか?


答えは、簡単だ。


そもそも、彼女はそこに侵入すらしていない

正面から、堂々とその部屋に入室したのだ。


どんなに完璧なセキュリティーでも、そこが重大な意味を持つ部屋なら……当然、必要に応じて入室できる様にしなくてはならない

それは必要不可欠な処置



彼女は、知っていたのだ。

そのセキュリティーを通過する為の、時の庭園の『マスターコード』を

彼女は、初めからここに侵入する必要などなかった

既に門を開けるための鍵を持っていたのだから、無理にこじ開ける必要はなかった



では、なぜ彼女がそんな重要な鍵を持っていたのか?
では、なぜ彼女がこの時の庭園の『マスターコード』を知っていたのか?


これも、答えは簡単である。


彼女は、教えられたからだ
重度の病に冒され、それでも研究に没頭する主に、教えられたからだ

時の庭園の『マスターコード』を知る者から、時の庭園の主であるプレシア・テスタロッサから教えられたからだ

自分の代わりに、貴方に此処を任せると……この部屋に関する全権を、嘗てプレシアから任されたからだ。



「……思った通りです。ここも、パスワードは以前のままですね」



彼女は、安堵したかの様に呟く
ここに入る前に確認はしたとはいえ、それでも一抹の不安はあった

嘗てのプレシアは、彼女に対してはそれなりの信頼を寄せてはいただろう

何故なら、相手は自分を決して裏切れない存在なのだから

何故なら、相手は自分に決して逆らえない存在なのだから



「……皮肉なものです」



自分は彼女を裏切らない、裏切れない
自分は彼女に逆らわない、逆らえない

だから、その秘密を他言する事はない

そう思ったからこそ、プレシアはここのパスワードも、マスターコードも変えなかったのだろう


今の彼女は、嘗ての彼女ではない
プレシアによって命を支えられていた、プレシアが知る彼女ではない


だからこそ、彼女はこうして堂々と攻め入る事が出来た

もはや消えた筈の存在が、こうして動けるからこそ……彼女は、こうして行動する事が出来た。



「……でも、もはやこれ以上は見逃せない」



もはや袂を別ってしまったとは言え、彼女は今でもプレシアに感謝しているし尊敬している

出来れば、こんな真似はしたくない……真っ向から対面して止めたい
それが、彼女の気持ちだった


でも、それでは守れない。


もはや、今のプレシアは言葉では止まらない。

そして、今の自分の力でも真っ向から立ち向かって確実に止められるとは思えない


プレシアの実力と魔力は、他ならぬ彼女自身が良く知っている
ましてや、ここの本来の主はプレシアなのだ


戦闘になれば、この時の庭園の全てが彼女の敵になるだろう


だから、彼女は隠れて動く
自分が守りたい者を守る為に、自分が救いたい者を救う為に、彼女はその牙を静かに研ぐ


そして、全ての準備は整いつつある。



「……まだ、フェイトは無事ですね」



別の端末から、時の庭園のサーチャーに接続してその映像を映し出す

フェイトは未だベッドに寝かれていて、その傍ではプレシアが忙しなく周囲の機材や機械の動作チェックをしている。



「……もう、あまり時間はありませんね……」



時計を見て確認する

もう少しで約束の時間になる。



そして彼女は、端末を操作していくつかの設定を改竄する

本来はマスターコードそのものを変えてプレシアの介入自体を防ぎたい所だが、流石にソレは無理だ
マスターコードの変更は、プレシアだけにしか出来ない

それに、下手な事を行えば……今のプレシアは本当に何をするか、彼女には想像がつかなかった。


藪を突いて蛇ならぬ、大蛇を出す様な事態は避けたい


故に彼女は、自分に出来る最善を行う。



「……これで、よし……」



必要な事を全て終えて、彼女はそこから退室する

そして彼女も、その闘いへと赴く。















「よし、こっちの動作も問題ないわね……シミュレーターの方は、よし、問題ない」


プレシアは、依然その行為を続けていた
準備と確認、その機材の動作の一つ一つのチェックをして、万が一の失敗の危険を排除する


プレシアは、過去に二度大きな失敗を経験している


一度目は、次元航行駆動炉『ヒュードラ』

二度目は、プロジェクトF.A.T.E


そのどちらも、回避できた筈の失敗だった
そのどちらも、本来は失敗しない筈の失敗だった


故に、彼女は怠らない
その危険性を徹底的に排除をして、万に一つ……いや、億に一つの失敗の可能性も許さない

もはや、それは狂気とも言える感情

だが、プレシアはその事に……決して苦痛を感じていない

それどころか、高揚し昂ぶる精神を無理矢理に抑え付ける為の行動にも見えた。



「……ふ、ふふ……もうすぐ、もうすぐ……やっと、取り戻せる……」



今まで、何度も絶望した
今まで、何度も挫折した

愛しい娘を生き返らせる為に、愛しい娘を再びこの手で抱きしめる為に、何度も何度も絶望と挫折を繰り返した


何度も絶望した、何度も挫折した
だが、一度も諦めなかった

自分は決して諦めることなく、ありとあらゆる可能性を探った



そして、とうとうその転機は訪れた。



ウルキオラ・シファーとの出会い

そして、アリシアとの再会

二十年以上の雌伏の時を超えて、やっと自分はその可能性を手に入れた



アリシアとの再会は、自分からあらゆる苦痛も絶望を取り除いてくれた

ウルキオラとの出会いは、自分の頭脳に新たな可能性の光をくれた

この二つのいずれかでも欠けてしまっては、今の自分は存在しなかっただろう



ああ、やっとだ

やっと、取り戻せる

こんな筈じゃなかった未来を、こんな筈じゃなかったこれからを……やっと取り戻せる



そして、プレシアは次の機材の点検に移ろうとして






時の庭園の、全ての明かりが消えた。






「……停電?」



突然の暗闇に、プレシアはそう呟く

一瞬、電力を消費しすぎたか? とも思ったが
今日これから行う事は、その全ての事を実行しても時の庭園の電力・動力には、十分な余裕がある事は確認済みだ



そして、プレシアは思う

おかしい、と



もしもこれがただの停電、漏電、電力の過剰消耗の類だったのなら、直ぐに予備電源に切り替わる筈

だが、幾ら待ってもそんな気配は一向にない



僅かに生まれた疑念




「……まさか……」




そう思った瞬間、プレシアの行動は早かった

即座に手に持ったデバイスから、魔力灯を燈して部屋の中の確認し

そして



「んな!!!」



思わず、声を上げた

プレシアの目に映るのは、空になったベッド


先ほどまで寝ていた筈のフェイトの姿が、忽然と消えていた



……消えた!!?……

……何で!? どうして!!? あんな一瞬で!?……

……さっきの停電は!? 今のこの状況は!!? なに、何!……


……一体、何が起きている!!!……



数秒のパニック


そして直ぐに冷静さを取り戻して、手に持ったデバイスから時の庭園のメインシステムに繋げる。


そして



「……な!!!」



再び、プレシアの驚愕の声が上がる

誰かが時の庭園のシステムの一部を、改竄した痕跡があった。



「誰が、一体誰が!!!」



このシステムに介入するには、マスターコードとパスワードの認証が必要な筈
そして、その二つを知るのは自分だけの筈

即座にその疑念について考えるが、直ぐにその思考は置く


今は他にする事がある

直ぐに明かりを復活させて、時の庭園の全てのサーチャーを起動させる


そしてプレシアの目の前に、幾つものディスプレイが浮かび上がり
その二つに、ウルキオラとアリシアの姿を見つけてプレシアは一瞬安堵する


だが






「あの駄犬があああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」






これ以上に無い憤怒の形相で
それだけで人を殺せる程の音量で、プレシアは叫んだ


全ての怒りと憎しみを凝縮した様な叫びだった

浮かび上がったディスプレイの一つに映ったのは、フェイトを抱えて走るアルフの姿だった

どうやって牢獄から抜け出したかは知らないが
恐らく停電で自分が動揺していた隙を突いて、この部屋から静かに連れ出したのだろう



「逃がすかあぁ!!! 逃がしてたまるものかああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



再び彼女は叫び
彼女は即座に、その追撃を行った。














「……ちぃ! ここまで来れたのに……!!」


悔やむように、アルフは呟いた

あの自分を治療してくれた声の主に従って、自分はこうしてフェイトを取り返せた

だがやはり、プレシアもそのままでは終わらなかった。


アルフの目の前に、まるでその道を閉ざすかの様に何体もの傀儡兵が立ち塞がった

そして次の瞬間、それらはアルフに襲い掛かった。


「……ぐ!!」


攻撃を避けて、サイドステップで移動するが
その瞬間、アルフは苦悶の表情を浮べた。


ミシリと、プレシアにやられた傷が痛んだからだ

如何に痛みが引いたとはいえ、それは一時的なものに過ぎない

まだアルフの傷は完治していない、如何に薬と治療を受けたとはいえ
たかだか三時間の休養では治る程の傷ではなかったのだ。


そしてその痛みを切っ掛けに、傷がズキズキと痛むが



「そこを、どけええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」



アルフの拳が、傀儡兵を打ち抜いて砕く

アルフの足が、傀儡兵を薙ぎ倒して沈める

アルフの鎖が、傀儡兵をそこに繋ぎとめる

アルフの魔力弾が、傀儡兵に風穴を空けて撃ち抜く


ここまで来て、アルフは負けられなかった。


片手でフェイトを抱えて、足と片手と魔力弾で傀儡兵を迎撃する。



しかし



「……ちぃ! 何体いるんだいコイツらは!!」



次々と、傀儡兵は増えていく
倒しても倒してもキリが無いし、自分は万全の状態ではない


まさにジリ貧、段々とアルフは追い詰められていった。



「……くそ! くそおぉ!!!」



だが、諦める訳にはいかない

フェイトだけは、主だけは絶対に守る

その意思を込めて、再びアルフは闘志を露わにする



そして、その声は響いた。






「よく、ここまで頑張りましたねアルフ」


「……え?」






次の瞬間
アルフの目の前に、一つの影が躍り出て

自分に襲い掛かった傀儡兵は、一瞬にして切り裂かれていた



「……な、あ……え?」



アルフの目の前に現れたその人物

突然自分の前に現れて、敵を切り裂いたその人物


その突然の事態に、アルフは思わず唖然としながらもその人物を見る


白い上着、足元にまでかかる長い裾の服、黒い靴
顔は見えないが、肩に掛かる程の長さの薄い茶髪、その頭の上にある白い帽子


その瞬間

アルフの頭の中に、とある人物が過ぎった



「……まさか……」



その人を、アルフは知っていた

なぜなら、その人は嘗てずっと一緒にいた人

自分とフェイトに、少しの厳しさと大きな優しさで接してくれた人

フェイトにとって、その人は師であり、姉であった

自分にとっては、その人は師であり、姉であり、母の様な人だった



「……まさか……あ、アンタは、まさか!……」



動揺を隠し切れず、アルフはその人物に問いかける


自分とフェイトに、心からの愛情を注いでくれて

自分とフェイトが、心の底から大好きだった人




「……あらあら、今頃気付いたんですかアルフ?」




アルフは知っている、その声を知っている

何で、気付かなかったんだろう

どうして、分かんなかったんだろう


アルフは、そんな風に自分に問いかけた


その“彼女”が振り向く

その目に映ったのは、アルフが思った通りの人物だった




「……リ、ニ…ス?」




そのアルフの言葉を聞いて、“彼女”は微笑んだ。



「はい。ただいまです、アルフ」















続く











あとがき
 何気に今回も中々の修羅場でした、何とか物語を収束出来る様に頑張りたいと思います。

さて、本編では遂にリニスも参戦。今回のフェイト奪還戦にだけで言えば、間違いなく一番の功労者です

小説版のなのはを読んで、プレシアは時の庭園の殆どの事をリニスに任せていた様な描写があったので、あんな感じになりました


あと、本編でも描いてありましたが……リニスにはマスターコードの変更はできません、これが出来るのはあくまでプレシアだけです

なので、リニスも本当は色々と妨害工作をしたかったのですが、結局はそういう事をしてもプレシアには通用しないし、
下手な事をすれば、プレシアが何をしでかすか分からなかったので、少し自粛した感じです


さて、次回はフェイトの奪還戦・第二話。次回はウルキオラも色々と動き出す予定です

そして管理局側にも、少し新しい動きが出るかと思います

それでは、次回に続きます



追伸 最近は無印編も終わってない癖に、A’s編のプロットを組み始めていた事に少し反省しました。



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