<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.16996の一覧
[0] ゼロのペルソナ使い[雪化粧](2015/05/08 17:18)
[1] プロローグ『平賀才人』[雪化粧](2015/05/08 17:25)
[2] 第一話「契約」[雪化粧](2015/05/08 17:25)
[3] 第二話『ゼロのルイズ』[雪化粧](2015/05/08 17:25)
[4] 第三話『ゼロの使い魔』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[5] 第四話『ペルソナ』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[6] 第五話『コミュニティ』 [雪化粧](2015/05/08 17:26)
[7] 第六話『大人の憂鬱』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[8] 第七話『オールド・オスマン』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[9] 第八話『土くれ』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[10] 第九話『ヴァリヤーグ』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[11] 第十話『主従』[雪化粧](2015/05/08 17:26)
[12] 第十一話『オリヴィエ』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[13] 第十二話『運命』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[14] 第十三話『ボーイ・ミーツ・ボーイ』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[15] 第十四話『フリッグの舞踏会』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[16] 第十五話『閃光と魔剣』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[17] 第十六話『二人のお姫さま』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[18] 第十七話『アンリエッタの頼み』[雪化粧](2015/05/08 17:27)
[19] 第十八話「暗転」[雪化粧](2015/05/08 17:25)
[20] 第十九話「新たなる力」[雪化粧](2015/05/08 17:25)
[28] 第二十話「暗雲」[雪化粧](2015/05/12 05:02)
[29] 第二十一話「伏魔」[雪化粧](2015/05/15 04:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16996] 第七話『オールド・オスマン』
Name: 雪化粧◆cb6314d6 ID:a3eb6a18 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/05/08 17:26
 シエスタに連れて来られて、火の塔にあるコルベールの研究室の扉の前に来た。木製の扉を三回ノックすると、中からコルベールが顔を出す。

「やあ、目が覚めたのだね、サイト君」
「はい、おかげさまで。リハビリがてら、荷物を取りに来ました」
「中に入りなさい。君の荷物に固定化を掛けていた所なんだ」

 コルベールは俺の顔を見ると嬉しそうな顔をした。不思議に思っていると、コルベールは俺とシエスタを研究室に招き入れてくれた。
 随分と機嫌が良いみたいだ。コルベールの研究室に脚を踏み入れると、そこには俺の好奇心を満たす、不思議で怪奇な物が沢山あった。不思議な色の液体が入っていて、湯気を出しているビーカー、変な管が沢山付いている鉄の箱、色んな種類の茸や葉や動物の骨、美しい色の鉱石。
 コルベールの研究室はとても大きかった。高校の教室が四つ入りそうな程だ。俺は辺りをキョロキョロと眺めながら、コルベールの言った言葉に首を傾げた。

「固定化……?」

 俺が聞き返すと、コルベールはかなり広い研究室の一角に俺の手を引いた。シエスタもその後ろをついて来る。
 そこには、シートが敷かれていて、その上に俺の荷物が並べられていた。
 固定化の呪文を掛けると、あらゆる化学反応から護られる様になるらしい。それに、掛けたメイジよりも実力が低いメイジの魔法もある程度弾いてくれるらしい。火のトライアングルだというコルベールが掛ければ、火の中にダイブしようが、水の中に沈もうが、雷に撃たれようが、ラインメイジの錬金だろうが問題にならなくなるそうだ。
 俺は素直に凄いと思った。どんな物だって、時間が経てば腐敗したり、錆びたりする。それが普通なのに、この星の魔法は食べ物をいつまでも腐らせず、鉄を錆びさせない様にする事が出来るらしい。
 俺が感心していると、コルベールが緊張した面持ちで自転車を指差した。

「時にサイト君……、あの物体はもしかして乗り物かね?」

 俺は首を傾げた。自転車は乗り物に決まっている。そう考えてから、この星には自転車が存在しないのだ、と気が付いた。

「自転車の事ッスか? そうですよ」
「もし……、よかったらあのジテンシャ? に乗ってみてもいいかね?」

 俺は思わず凍り付いてしまいそうだった。コルベールは手に汗を握りながら頭を下げているからだ。

「勿論いいですよ。コルベール先生にはお世話になりっぱなしだし」

 俺が了承すると、コルベールは子供の様に瞳を輝かせた。この星にとって、自転車は未知の存在なのだ。未知の存在への好奇心は俺にも理解出来る。
 俺はコルベールにスタンドの外し方、サドルの座り方、ハンドルの握り方、ブレーキの使い方、ペダルの漕ぎ方を教えた。コルベールは俺の言葉を真剣に一言一言聞きながら慎重に自転車の上に跨った。
 大人が子供のようにはしゃぐ姿というのは、人によっては醜悪に映るものだけど、コルベールの知識への欲求は清々しくて、一緒に共有したいと感じるものだった。コルベールとの間に、ほのかな絆の芽生えを感じる。
 …………!? ……頭の中に、不思議な声が囁く――。

『我は汝……、汝は我……。汝、新たなる絆を見出したり……。絆は即ち、真実に至る一歩也。汝、“刑死者”のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん……』

 俺はコルベールとの絆に呼応する様に、“心”の力が高まるのを感じた。
 コルベールはペダルに脚を乗せ、颯爽と走り出すと、ほんの一メイルも行かない内に横に倒れてしまった。
 俺とシエスタは慌ててコルベールに駆け寄った。

「痛っつぅぅぅ」
「だ、大丈夫ですか、コルベール先生!」
「ミスタ・コルベール!」

 コルベールは地面にぶつけた腕を擦りながら苦笑いを浮かべていた。
 俺は思い出していた。そうだ、自転車に乗るって、難しいんだ。俺も子供の頃、初めて自転車に乗った時は何度も転んでしまった。父さんに後ろを押さえてもらって、何度も何度も練習した。

「サイト君、これは本当に乗り物なのかい?」
「本当ですって! えっと、手本を見せますよ」

 バランスが全然取れない、そう言うコルベールに俺は手本を見せる事にした。ちゃんと教えてあげたいと思ったのだ。俺が初めて自転車を一人で乗れる様になった時は、とても感動した。
 コルベールにも味わって欲しいと思い、自転車に跨る。
 広いコルベールの研究室の中を軽く走り回った。シエスタが本当に走ってます! と感動している。コルベールはどうかな、俺はコルベールに目を向けて、凍り付いた。

「素晴らしい……」

 コルベールは涙を流していた。感動している、自転車なんて、俺にとっては当たり前の存在なのに、コルベールにとっては涙を流す程に感動を与える物だったらしい。

「サイト君、そのジテンシャを私に調べさせてはくれまいか?」

 コルベールが頭を地面に擦り付ける様に俺に頼み込んだ。俺はギョッとして、慌ててコルベールに立ち上がる様に言った。
 自転車から降りて、スタンドを降ろして立たせたまま、俺はコルベールが立ち上がるのを助けた。
 こんな人が居るんだな、俺は少し感動していた。未知への好奇心を満たす為には子供にも必死に頭を下げる。その姿はどこまでも清々しくて、かっこよかった。
 どうせ、夕方までは時間を潰さないといけないんだ。俺はコルベールの質問に答える事にした。コルベールは自転車の材質から設計まで、事細やかに俺に聞いて来た。
 俺は分かる範囲で出来る限り答えた。コルベールはどうやら、自分の力で自転車を作ろうとしているらしい。もし、コルベールが自転車を作れたなら、一緒にサイクリングをするのも悪く無いかもしれない。
 結局、夕方になるまで俺はコルベールの質問に答え続けていた。よく、こんなに次から次へと質問が湧いて出るものだと、俺はむしろ感心してしまった。
 コルベールという男は、骨の髄まで研究者なんだな。

ゼロのペルソナ使い 第七話『愚かな賢者』

 夕方になり、俺はヘッドホンを首に掛けて、ヘッドホンから伸びるコードの先に繋がっているMP3をパーカーのポケットに仕舞いこんだ。ノートや漫画、ノートPCとバッテリーの充電器は紙袋の中で右手に持っている。携帯電話と財布はポケットの中だ。
 久しぶりに、りせちーの歌やお気に入りのグループの歌を聴きながら、ルイズを保健室で待った。何だか、とても懐かしい思いがした。
 まだ、一週間しか経っていない。殆ど寝ていたから、一週間が経過した実感も無い。だけど、俺は地球が懐かしい気がした。
 未だ、封を切っていない漫画を読もうと紙袋から取り出そうとした所で、ルイズが保健室に入って来た。何だか、少しご機嫌斜めらしい。

「よ、ルイズ」

 俺はMP3の電源を切って、ヘドホンを外して首に掛けた。途端にマリコルヌの鼾が耳を苛んだ。よく一週間もこんなのの隣で眠れたな、俺は我が事ながら呆れた。

「それは何?」

 ルイズは片方の眉を上げながら俺に聞いた。

「MP3だよ。音楽を聴く機械。聞いてみるか?」
「音楽を聴く機械……? 意味が分からないわ」

 この星に音楽を物に記憶させる、なんて事は出来ないんだろう。俺はヘッドホンを首から外すと、立ち上がってルイズにヘッドホンを掛けさせた。
 MP3のスイッチを入れると、ヘッドホンから軽快なリズムが流れ始めた。

「…………え?」

 ルイズは目を丸くした。周囲をキョロキョロと眺め回した。

「だ、誰!? 誰の声なの!?」

 ルイズは耳元から聞こえて来る聞き慣れないメロディーに乗せた聞いた事の無い言語の歌声に目を見開いた。周りを見渡しても誰も居ないのに、キョロキョロと忙しなく視線を巡らせる。

「う、歌だけじゃない……。インテリジェンスでも無いって事……? 何なの、一体……」

 俺がヘッドホンをルイズから外すと、ルイズはさっきまでの機嫌の悪さはどこかへいってしまったらしい。心底不思議そうにヘッドホンを見ている。

「言ったろ? 音楽を持ち歩ける、俺の星の機械だよ」
「音楽を持ち歩けるですって……?」

 ルイズは呆気に取られた様な表情を浮かべたまま、ヘッドホンをジッと見つめた。

「他のも聞いてみるか? 結構、色んな曲が入ってるぜ?」
「嘘、何曲も聴けるの!?」

 ルイズは更に驚いて眼を丸くした。コルベールにしろ、ルイズにしろ、こういう反応は凄く楽しい。まるで、自分が博識にでもなったかの様な気分だ。
 俺はルイズにヘッドホンを被せると、幾つかの曲を聞かせた。ルイズは『Pursuing My True Self』を特に気に入ったらしく、食堂に着くまでずっとループさせて聞いていた。
 どうも、りせちーの声は何故かお気に召さなかったらしい。そう言えば、ルイズの声はりせちーの声にどことなく似てる気がするな……。
 食堂に到着すると、中は既に大勢の生徒達で賑わっていた。混雑した食堂に俺は入るべきか悩んだ。

「~~♪ ~~~~♪ ~~♪ あら? 何で来ないのよ?」

 歌を口ずさみながら食堂に入ろうとしたルイズが食堂に入ろうとしない俺に首を傾げた。

「ん、この前みたいな事があったら嫌だからさ。別の所で食べられないか?」

 俺が言うと、ルイズも難しい顔をした。マリコルヌとの衝突みたいな事がまたあったら嫌だ。
 俺とルイズが食堂の前で唸っていると、廊下の向こうで声が聞こえた。

「私、スフレを作るのが得意なんですよ?」
「それは是非に食べてみたいな」

 廊下を曲がった所で、ギーシュが焦げ茶色のロングヘアーの茶色いマントを纏った少女と密会していた。
 ルイズは不思議そうに首を傾げている。

「ギーシュはモンモランシーと付き合ってた気がするんだけど……」
「え? 二股掛けてるって事か? さすがはギーシュ、ちょっと憧れちゃうな……」
「……ギ、ギーシュは男には興味無いと思うけど……」
「ち、違うよ! 変な勘違いするな!」

 頬を赤らめて言うルイズに俺は慌てて誤解だと叫んだ。どうしてそっちなんだ! 二股掛けられる程モテる事に対して、俺は憧れるな、と言ったんだ。ギーシュ“に”憧れるなんてつもりで言ったわけじゃない。
 頼むから、変なところで理解を示そうとするな……。

「え? 本当ですか!」
「勿論だよ、ケティ。君の瞳に僕は嘘を吐かないよ」

 どうして、お菓子を食べるってだけなのにあんな言葉が出て来るんだろう……。

「ギーシュ様……」

 ケティという少女は顔を赤らめてギーシュを見つめている。その姿は正しく恋する乙女だ。

「君への思いに、裏表などありはしないよ」

 二股を掛けている男の台詞とは思えないな、俺は感心してしまった。隣を見ると、ルイズは呆れた表情を浮かべている。
 そして、その更に隣には恐ろしい鬼が立っていた。

「……どちらさま?」

 俺が首を傾げると、ルイズが顔を引き攣らせた。

「モ、モンモランシー……」
「把握した……」

 どうやら、俺とルイズが廊下で騒いでいたのが気になって見に来たのだろう。よりにもよって、見に来たのがギーシュに二股掛けられているモンモランシーだったのはギーシュの不幸だろう。
 俺はどうしようか迷った。目の前には青筋を立てた女の子。少し離れた場所では自分の不幸を知らずに絶賛二股中の命の恩人……。

「ギーシュゥゥゥゥゥゥゥ!」

 モンモランシーの怨嗟の叫びに、漸くギーシュがモンモランシーに気が付いた。分かり易いほどに顔を青褪めさせていく。
 ギーシュが救いを求めて俺とルイズを見る。ルイズは付き合ってられないわ、と食堂の方に歩き始めている。俺はギーシュを見た。助けてくれ、彼は視線で訴えていた。

「あ、その……、ギ、ギーシュは下級生の子の道案内をして……たり……その……ごめんなさい」

 俺はギーシュに首を振った。これは無理だ、諦めてくれ……と。モンモランシーは俺の話なんか聞いてない、どんどん眼が据わっていくだけだ。

「ちょ、使い魔君! もうちょっと、粘ってくれてもいいのではないか!?」
「すまない! 命の恩人だから頑張ったけど、無理だ!」

 俺は踵を返して走り出した。俺は戦場に一人、仲間を残して逃げ去る敗残兵だ。背後から聞こえる悲痛な叫びに耳を塞ぐ。俺には何も出来ない。

「ち、違う、これは誤解なんだ、モンモランシィィィィィィィィ!」

 俺はただの一度も振り返らずに、一直線にルイズの後姿を追った。ああ、ご主人様。使い魔はとっても怖かったよ……。
 ルイズは白い眼で俺を見て来たけど、俺は体の震えを抑えられなかった……。
 食堂の前で俺とルイズはシエスタに遭遇した。

「そうだ、シエスタ」
「はい? なんでしょう、サイトさん」

 シエスタに挨拶を交わして、俺は食堂以外に夕飯を食べられる場所が無いかを尋ねた。やはり、また貴族と一悶着起すのは面倒だからだ。
 メイジの怖さは、前回のマリコルヌとの事で少しは理解している。何せ、ギーシュが居なかったら、俺は潰れたトマトになってたのだから……、俺は何となく、ギーシュを置いてきてしまった事に罪悪感を感じた。さっきから廊下の向こうから悲鳴が絶えず木霊しているのだ。

「でしたら、使用人用の食堂がありますので、そちらにご案内いたしましょうか?」
「ああ、助かるよ。じゃあ、ルイズ……」
「ん、いってらっしゃい」

 俺に軽く手を振りながら、ルイズは再び音楽を聴き始めた。また、同じ曲を聴いてる。
 俺はルイゾの頭からヘッドホンを取り上げた。

「な、何するのよ!」

 ルイズが憤慨しながら言う。

「あのな、食事中にヘッドホン着けてたら食べ難いだろ。それに、電池だって無限じゃ無いんだ。充電するのに手間も掛かるし。たまには貸すけど、ずっとは駄目だ」
「言ってる意味がさっぱりよ! まったく、ケチね」
「ケチって言うなよ! ちょっと可愛いって思っちゃったけど、充電は本当に手間が掛かるんだぞ!」

 膨れっ面で食堂に入って行くルイズに俺は溜息を吐いた。シエスタはクスクスと楽しげに笑みを浮かべている。
 シエスタに案内されて、俺は重い紙袋を持ったまま、使用人用の食堂に通された。
 木製の大型のテーブルとテーブルを取り囲む様に沢山の椅子が並べられている。
 シエスタがスープや消化に良さそうな食べ物を持って来てくれた。俺の体はコルベールの研究室に行った時には自転車に乗れるくらいに回復していたんだけど、シエスタが気を使ってくれたみたいだ。

「おいしいけど、ちょっと寂しいかな……」

 使用人達は忙しく動いていて、食堂には俺以外は誰も居なくて、シエスタが持ってきてくれた料理はどれもおいしかったけど、少し寂しかった。
 食べ終えると、俺はアルヴィーズの食堂に向かった。食堂の中を覗くと人の数がかなり減っていた。

「あら? ルイズの使い魔じゃない」

 後ろから声が聞こえて振り向くと、そこには赤毛の女が立っていた。誰だろう……。

「貴方、私の事、覚えてないわけ?」

 冷たい眼差しを向けられて、俺は記憶を掘り返した。どこかで会った覚えはある。だけど、なかなか思い出せない。

「キュルケよ。二つ名は“微熱”。微熱のキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー」
「すみません、長過ぎて覚えられません……」

 ここの貴族は名前が長過ぎる……。ギーシュはギーシュ・ド・グラモンだけで短くて覚え易いけど、ルイズの本名は未だ完全に覚えていない。
 キュルケは呆れた様に溜息を吐いた。

「ま、キュルケでいいわよ。それより……」
「ん?」
「貴方、この前のヴェストリの広場での事件の当事者なんでしょ?」
「そうだけど?」

 俺が頷くと、キュルケがニヤリと笑った。

「ねぇ、あの広場で起きた事、教えてくださらない?」
「なんで?」
「だって、気になるじゃない。遠目に巨大な怪物が見えたっていう子が居るのよ。それを、ゼロのルイズとギーシュ、それにただの平民である貴方が倒したっていうじゃない」

 好奇心に満ちた瞳でキュルケは聞いて来た。教えてもいいのか、俺には分からなかったけど、教えちゃいけないとも言われて無い。
 ……俺は正直に話す事にした。

「マリコルヌが突如、巨大な怪物に変身したんだ。それに向かってルイズが魔法を使い、見事に怪物を転ばしたんだ。その隙を突いて、怪物の放つ凶弾をギーシュが防ぎ、俺が殴り飛ばした」
「……そう、マジメに答える気は無いってわけ、平民が」

 キュルケの眼が途端に冷めた。イラついた表情を隠そうともせず、俺を睨みつけた。

「これでも、譲歩したつもりなんだけどね。けど、間違いだったわね。平民が貴族の問いにふざけた答えを返すなんて……」

 キュルケは指揮棒の様な杖を取り出して、俺に突き付けた。

「本当の事を言いなさい」
「お、俺は嘘なんか言ってない」

 キュルケの顔が歪んだ。俺は嘘を一つもついていない。だけど、キュルケは全く信じていない。
 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。怖い。目の前の自分と対して背の高さの変わらない女の事がとても怖かった。

「さっきのお返しに、助けずに見過そうかとも思ったけど……」

 すると、そこに救世主が現れた。顔中に痣を作り、少しよろけ気味のギーシュだった。

「使い魔君の言っている事は本当だよ、キュルケ」

 ギーシュが言った。その視線は真っ直ぐにキュルケの眼を捉えている。

「嘘を吐くにも、もう少し頭を捻った方がよくなくて?」

 キュルケは苛々した表情を浮かべながら言った。

「どうして、嘘だと思うんだい?」
「嘘だからよ。マリコルヌが怪物になっただとか、ゼロのルイズが魔法を使っただとか、平民が怪物を殴り飛ばしただとか、一つも真実が無いじゃない」
「まあ、信じるも信じないも君の自由だ。だが、メイジの使い魔に対し、一方的に暴力を振るうのはどうかと思うよ? 君は帝政ゲルマニアの貴族だろう? そして、彼はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔だ。あまり、賢いとは思えないね」
「……フン」

 キュルケは鼻を鳴らして、どこかへ行ってしまった。俺は漸くキュルケから解放されて崩れ落ちる様に地面に尻餅をついた。

「まったく、あんな話を馬鹿正直に話すなんて、君はやっぱり馬鹿だね」

 ギーシュがヤレヤレと肩を竦めながら呆れた様に言った。
 俺はムッとして立ち上がりながら唇を尖らせた。

「もう少し、早く助けてくれても良かったんじゃないか?」
「さっき、僕を見捨てた人非人はどこの誰だったかな? むしろ、助けてもらってありがとうが言えない君はやはり馬鹿だね、使い魔君」

 俺は言い返せなかった。馬鹿馬鹿言われても、助けてもらったのは事実だ。それも、二回目だ。

「その……、ありがとう」
「どういたしまして」

 ギーシュは気障っぽく笑みを浮かべた。

「でも、さっきのお前のは自業自得だろ……。二股掛けたら可哀想じゃないか」
「僕は薔薇なんだよ。女の子を惹き付けて止まない魔性の薔薇なのさ」
「棘が鋭すぎるんだよ、好きだったお前の事、そんなにボロボロにしちまう程好きだったんじゃないのか? 凄い傷ついたんだよ、きっと……」

 気障な事を言うギーシュの言葉に俺は少しムッとした。恋愛経験の乏しい俺はあんまり上手く言葉に出来なかった。だが、ギーシュはトンカチで頭をガツンと叩かれたかの様に目を見開き、青褪めた表情を浮かべた。

「僕は彼女達を傷つけてしまったのか……」
「モテ過ぎて分からなかったのか? 謝っとけよな」
「あ、ああ……。そうだな、謝らないといけないな」

 ギーシュは深く反省したらしい。きっと、今迄女の子にモテ過ぎて、女の子の気持ちが分からなくなってしまっていたのかもしれない。俺には一生掛かっても理解出来そうに無い心理状況だ……。

「それで、君はもう大丈夫なのかい?」

 切れ長のサファイアの瞳を細めて気さくな笑みを浮かべ、ギーシュは言った。
 キュルケの事じゃないな、恐らくは怪物の件だろう。俺は頷いた。

「ああ、おかげさまでな。あの後、お前は大丈夫だったのか?」
「僕もルイズも君のおかげで無傷だったよ。改めて、お礼を言っておこうと思う。ありがとう」

 ギーシュは俺に頭を下げた。俺はあの時、ギーシュとルイズが居たから撃退出来たんだ、俺の方こそありがとう、そう言って、俺も頭を下げた。
 俺はついでに気になっていた事を言った。

「なあ、使い魔君っての、止めてくれないか? 俺は平賀才人。こっち風だと、サイト・ヒラガだ」
「サイト・ヒラガ……、いいだろう。サイト、僕はギーシュ。二つ名は青銅。青銅のギーシュ・ド・グラモンだ」
「よろしくな、ギーシュ」

 俺は右手を差し出した。ギーシュはキョトンとした表情を見せると、クッと相貌を崩して笑みを浮かべた。俺の右手を取って、言った。

「ああ、よろしく頼むよ。……僕が思うに、君はそうとうな変わり者だね」
「お前に言われたくないっつうの。お前だって、そうとう変わってるぜ? 卑しい平民にフレンドリーに接してさ」
「ああ、それは違うよ。僕が君の態度を許すのは君だからさ。君以外に許すつもりは無いよ」
「ん? どうしてだ?」
「僕は思ったのさ。あの時、怪物からルイズを護ろうとする君が……、“かっこいい”ってね。それに、さっきの君の言葉のおかげで少し眼が覚めたよ。モンモランシーやケティに殴られて、僕はムカムカしていただけだった。ちゃんと、彼女達の気持ちを考えるべきだったのにね」

 苦笑いを浮かべながら言うギーシュに俺は、そっか、とだけ言った。俺程度の言葉をちゃんと受け止めて、自分を見つめなおせるギーシュは、やっぱりかっこいいな、と思った。
 俺は握ったギーシュの右手に温もりと鼓動を感じながら、ギーシュとの間に、ほのかな絆の芽生えを感じる。
 …………!? ……頭の中に、不思議な声が囁く――。

『我は汝……、汝は我……。汝、新たなる絆を見出したり……。絆は即ち、真実に至る一歩也。汝、“魔術師”のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん……』

 俺はギーシュとの絆に呼応する様に、”心”の力が高まるのを感じた。

「さて、僕はモンモランシーとケティに謝って来ようかな」
「んじゃ、俺はご主人様のお迎えに行きますか」

 俺とギーシュをお互いにニヤリと笑って、食堂の中へと入って行った。
 ルイズは直ぐに見つかった。特徴的なルイズの髪の色は入口に入って直ぐに分かった。
 ルイズは一人で食事を摂っていた。他はグループを作って、和気藹々と食べているのに……。

「うっす、ルイズ」

 ルイズの隣の椅子に腰掛けながらルイズが食べ終わるのを待つ。どうやらデザートをご賞味中らしい。パイの様なデザートで、一口食べる度に幸せそうに頬を綻ばせるルイズに、俺は思わず頬が緩んだ。
 相変わらず可愛いご主人様だ。
 俺は視線を泳がせて、ギーシュを探した。ギーシュの姿は直ぐに見つかった。金髪の巻き毛の少女に頭を下げている。確か、モンモランシーとかいう子だ。

「なにニヤけてるのよ」

 ルイズが知らず頬を緩ましていた俺を怪訝な顔で見てくる。

「ん、さっき、ギーシュと色々あってさ。お、許してもらえたみたいだな」
「モンモランシー? ああ、さっきの修羅場の事ね」

 ルイズも食べ終わったみたいだし、そろそろルイズの部屋に行こうとした時だった。食堂にコルベールが入って来た。コルベールは一直線に俺達の所へやって来た。

「コルベール先生?」
「やあ、ミス・ヴァリエール、サイト君。オールド・オスマンが君達を呼ぶ様に言ってね。食堂の外で待っていてくれないか? ミスタ・グラモンも連れて行くから」

 俺はルイズと一緒に先に食堂を出る事にした。食堂の外の廊下から中を覗いていると、ギーシュはケティに頭を下げていた。少し離れた場所でコルベールが待っている。
 しばらくして、ギーシュがコルベールと一緒に出て来た。その顔は爽やかな笑みを称えていた。

「許してもらえたんだな」
「ああ、君のアドバイスのおかげだよ」

 俺が言うと、ギーシュは嬉しそうに笑った。許したどころか、惚れ直されているんだろうな、と俺は思った。
 俺も女の子と仲良くなりたいな。そんな事を考えながら、俺はルイズとギーシュと一緒に食堂から少し離れた場所にある螺旋階段を上がった。
 学院長室は最上階にあった。重厚な作りの両開きの扉をコルベールがノックすると、中から渋い老人の声が聞こえた。

「失礼します」

 コルベールの言葉にルイズとギーシュも続き、俺も慌てて言いながら入室した。
 学院長室はかなり広かった。見事な調度品の数々は素人目に見ても高級な物だと分かった。

「あれ……?」

 見間違いかな……?

「どうしたんだい?」
「オールド・オスマンの前よ、変な声だして、恥をかかさないで」
「いや、窓の外に変なのが……いたような……」

 ギーシュとルイズが首を傾げながら窓の外を見る。そこには何も居ない。さっきまで、何かが窓の外から覗き込んでいた様な気がしたんだけど、気のせいだったらしい。

「ほっほっほ、盗み聞きの好きな風竜でもおったのかのう」

 愉快そうに笑うオールド・オスマンの声に、窓の外からキュイキュイという鳴き声が聞こえた。窓の外を見ると、慌しく白銀の鱗の竜が逃げ出した。

「あれは、ミス・タバサのシルフィードだったかな……」

 白銀の竜が逃げる姿を見ながら、コルベールが顔を顰めて言った。

「盗み聞きなんて、貴族として恥ずべき行為だわ!」

 ルイズが憤慨しているが、コルベールが宥めた。

「あの怪物の件は秘密にしているからね。気になってしまうのは無理ないのさ」
「だからって、風竜で覗き見なんて、私に喧嘩売ってるとしか思えませんわ!」
「それって、俺を使い魔にした自分に対してドラゴンを見せびらかすのは許せないぃぃぃぃ! ……と?」

 俺が顔を引き攣らせながら尋ねると、ルイズはキョトンとした顔をした。

「よく分かったわね?」
「分かりたくなかったけど、分かり易かったからな……」

 俺は肩を落とした。あんなドラゴンと比べられても困る。それにしても、ファンタジーな星だとは思っていたが、ドラゴンまで居るとは思わなかった。
 俺は少し感動していた。ドラゴンを実際に見れるなんて、夢にも思わなかったからだ。

「仲良き事は良い事じゃな。さ、本題に入るとするかのう?」

 俺は保健室でルイズに語った事を話した。ペルソナの事、イゴールの事。分からない事だらけだって事も話した。
 俺の話を聞く内にギーシュは胡散臭げな表情を浮かべたが、コルベールとオールド・オスマンは険しい表情を浮かべながらも、あからさまに疑う様な表情を浮かべなかった。

「ペルソナ……、ローラン……、イゴールと名乗る夢の中に出る謎の老人か……」

 オールド・オスマンは一つ一つ、俺の言った事を吟味する様に呟いた。疑う事無く、俺の話を真摯に受け止めて、オールド・オスマンは考えているらしい。
 なるほど、プライドの高いルイズが“偉大な”なんて付ける人間なだけはある。この人は偉大だ。メイジとして、貴族として、ソレ以前に、人間として、ああ、これは敵わないなって思わされた。

「分からん事だらけじゃな。サイト君、無闇に使うでないぞ、そのペルソナ能力とやら」
「え?」

 俺は間抜けな声を出してしまった。そもそも出し方が分かりません。そんな間抜けな答えを返してしまうくらい、オールド・オスマンの言った言葉は理解不能だった。
 あんな凄い力、どうして使うな、などと言うんだろうか……。

「その顔は分かっておらんな……」

 オールド・オスマンは呆れた様に言った。俺はカチンときて、オールド・オスマンを睨んだ。馬鹿にされた様な気がしたからだ。
 オールド・オスマンはたっぷりとした顎鬚を撫でながら俺を鋭い眼光で貫いた。

「使いたいから使う。それでは力に呑まれてしまうぞ? それに、君のペルソナは君自身ですら理解出来ていない。そんなもの、無闇に使って、何を奪われるかわからん」
「奪われるって……」

 意味が分からない。確かに、一週間も眠ってしまったけど、俺の体には異常は見当たらない。
 ナニカを奪われると言われても、実感が湧かなかった。

「等価交換というのは魔法にも当て嵌まる。魔法には精神力を使う。何も使わずに振るえる力なんぞ、信用せん方が良い。静かに、密やかに、最も大切なモノを奪うかもしれん」
「……でも、ルイズを護るのにあの力は便利だと思うんですけど」

 俺は思わず反論した。俺はマリコルヌを相手に手も足も出なかった。ギーシュが居なければ、今頃は死んでいたかもしれない。
 メイジの力はもう理解している。メイジに対抗するには、あの力以外に無い。

「便利かもしれんが、楽な方に逃げているとも言えるのう。剣でも学んでみんか?」
「逃げてなんか……。それに、剣なんて、握った事も無いですよ」

 俺はオールド・オスマンの言い方にムッとしながら言った。どうしても、あの力を使わせたくないらしい。でも、だからと言って、剣なんて使った事が無い。

「だから練習するんじゃよ。理解も出来ず、出し方もよく分からん力よりも練習した分、結果が残る剣術の方がいいと思うんじゃがのう?」
「でも、俺は剣なんて持ってません」

 俺がそう言うと、オールド・オスマンは対面する様に座っていたソファーから立ち上がると、暖炉の横に立て掛けていた一本の剣を俺に放った。
 銀色のシンプルな装飾の鍔の同じくシンプルな装飾の鞘に納められた西洋剣だ。

「あれば、学ぶのう?」
「い、いいんスか?」

 放られた剣は、凄く重い。俺は思わず鞘から抜いて確かめた。本物だ。鏡の様に磨き込まれた両刃の真剣だ。
 俺は思わずオールド・オスマンを見た。俺は剣の相場なんて知らないけど、日本で真剣を買おうと思ったら、何万円もする。本当にいいんだろうか、俺はルイズを見た。ルイズも目を丸くしている。
 俺はオールド・オスマンに貰った剣に視線を落とした。ゴクリと唾を飲み込み、剣の柄を握り締めた。俺は吸い寄せられる様な感覚を覚えた。まるで、運命の相手と出会った様な気がした。
 立ち上がると、体が嘘みたいに軽い。長い階段を登り、たくさん喋った後だと言うのに、疲れが一気に吹き飛んでしまった。
 気分が高揚し、俺は名前も知らない剣を鞘から一気に引き抜いた。羽の様に軽い。隣に座っていたルイズは鞘に戻せと怒鳴る、ギーシュは何をする気だと絶叫する。コルベールは落ち着きたまえと宥める、オールド・オスマンは失敗したとばかりに溜息を吐いた。

「凄いぜ! なんか、誰にも負ける気がしない!」

 俺は軽く振ってみた。まるで重みを感じない。視界も広がって、耳も研ぎ澄まされている。雑音のシャットアウトまで自由自在だ。
 この状態なら、例えメイジが相手でも負ける気がしない。

「それなら、ペルソナに頼らんと誓えるのう?」
「へっへっへ、そんなの知るか! 今の俺は誰にも止められないぜ!」
「それを儂の前で言っても儚いだけじゃよ? 誰であろうとな」

 俺が最高に気分が盛り上がっていると、突然、俺の持っていた剣がオールド・オスマンの手の中に飛んで行ってしまった。

「あれ?」
「あれ? っじゃないわよ! 何、いきなりわけわかんなくなってるのよ!」

 ルイズに殴られて、俺は一気に冷静になった。体は一気に重くなり、気分は下降していく。

「ごめんなさい……」

 謝った。冷静になると、凄い馬鹿な事したって気付いた。一気に熱が冷めてしまった。恥しい。死ぬほどに恥しくなった。惨めになった。何してんだよ、俺は……。

「かなり、しっくり来たようじゃな?」
「穴があったら入りたいくらいには……」

 顔が真っ赤に染め上がり、俺は顔を上げられなかった。

「ほっほっほ、そこまでかのう? 直感に従ってみるのも悪くないぞい? 剣を握れば誰にも負けない、そう直感したなら、極めてみるがとよい」
「止めてくださいぃぃぃぃぃぃ! 恥し過ぎて死んじゃいますぅぅぅぅぅぅ」

 この老人はサドなのだろうか、触れられたくない所をアッサリと触れてくる。

「恥しがる事なんぞないぞ。直感とは重要な物じゃ」
「でも……」
「この剣は君に上げよう。代わりに、覚えておくんじゃ。技術と体を鍛えると同時に、心も鍛えるんじゃ。さすれば、さっきの様にはならんじゃろう」
「…………はい」

 頷いたけど、分かってるのか自分でも分からない。オールド・オスマンから剣を受け取るとき、ルイズとギーシュとコルベールがギクリとしたけど、今度は落ち着いていた。
 鞘から剣を引き抜いても、もう気分がおかしくなる事は無かった。剣を鞘に戻す。シャキンッという音が耳に心地良い。

「貰います、この剣」
「それを渡すのは君を信じるからじゃ。儂の信頼を裏切るでないぞ?」
「分かってますよ。裏切ったら、殺されそうだ」

 冗談じゃなく、そう思った。さっき、俺は冗談じゃなく思ったんだ。剣を持った瞬間、誰にも負けないって。だけど、負けた。アッサリと、俺の手からオールド・オスマンは剣を奪った。
 他のメイジが同じ事を出来るかわからないけど、オールド・オスマンには勝てない事は理解した。オールド・オスマンとの間に、ほのかな絆の芽生えを感じる。
 …………!? ……頭の中に、不思議な声が囁く――。

『我は汝……、汝は我……。汝、新たなる絆を見出したり……。絆は即ち、真実に至る一歩也。汝、“隠者”のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん……』

 俺はオールド・オスマンとの絆に呼応する様に、”心”の力が高まるのを感じた。

「銘は無いが、業物じゃ。大事に使うんじゃぞ」
「ありがとうございます」

 話はそれで終わりだった。俺は腰にオールド・オスマンから貰った剣を提げた。ルイズがジロリと横目に見て来る。後で何か言われそうだな……。
 学院長室を出て、ギーシュと別れて、ルイズの部屋に向かった。腰に重みを感じる。この重みは、きっと大切な重みだ。漫画でそんな話を聞いた事がある気がする。
 女子寮に入る時、相変わらず、視線が痛かった。ルイズの部屋に入るのはこれで二回目だ――――……。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.027247905731201