前置きは抜きで結論だけ言います。
転生しますた。いわゆるトリップ系SSのお約束のアレです。
転生先はタルブ伯(予定)アストンでした。
原作で死亡報告1行しか出番がなかったあの御仁です。
つまり存在自体が死亡フラグという不穏当なキャラです。
どーしましょー。
で、とりあえず内政チートは無し。つか俺の知識量が足りん。
道路はあった方が便利だったので、両親を拝み倒したり、空飛ぶフネがある以上不便な道路なんて防御の役には立たないよと理屈を並べて説得したりして、道路整備はやってもらえる事になったけど……
他には精々、「牛の糞が肥料になるんなら、人間のでも肥料に出来ないですか?」と進言して「人糞=肥料の元=それを捨てるなんてとんでもない!」という意識を持ってもらって衛生環境を改善させる位しかやってない。
まず俺がした事は、タルブ村在住の佐々木さんを拝み倒してゼロ戦を飛ばしてもらう事だった。
あの爺さん、ゼロ戦はもう飛ばせないみたいなことを言ってたけれど、ゼロ魔本編の時点でもガソリンがあれば飛ぶ状態だったんだし、なんとかガソリンを用意するから飛ばしてくださいと拝み倒して飛んでもらった。
いやあ、子供の特権ってーの?
「スッゲー、これ飛ぶんだー!!」
ってーオーラを纏ってお願いしたら、佐々木さんは思ったより簡単にゼロ戦を飛ばしてくれた。
つか生でゼロ戦が飛ぶ様子を見るのは、元日本人として熱くなるシチュエーションだったからオーラも嘘じゃなかったし。
さて何故に俺は、こんなもんをこの時点で飛ばしたのか?
一重にタルブ、ひいてはトリスティンの航空戦力の増強の為である。
ここタルブは「敵の降下部隊の降下ポイントになる可能性がある」と警戒されている割に、航空戦力は貧弱も良い所である。
何しろ竜騎士が一人も居ない。
いくらなんでもこれは拙い。
航空戦力無しで、降下部隊とは戦えません。
「降りてくる前に母艦ごとヌッ殺す」が降下部隊に対する最良の対策なのに、それが出来ず、また制空権も敵に握られっぱなし。どーしろと。
なのでゼロ戦が早くて強い事を両親やタルブ村の人々にも知ってもらい、そのデッドコピーを作ると言う流れで航空機を開発してしまおうと思ったのだ。
無論、一人産業革命と異名をとるチートキャラ・コルベール先生をもってしても乗り越える事の出来なかった機銃生産やエンジン生産といった壁を、俺如きが乗り越えられるはずもない。
「ひたすら回り続けるだけの車輪のガーゴイル」なんてのを作ってエンジンの代わりにするとか、弾丸の構造が簡単で済むコイルガンで機銃を作ってみるとか、色々考えているが、俺一人の浅知恵などでは恐らくどうにもならないだろう。
そこで知識階級の増加を目的に、街道同士が交わる交差点に商人を中心とした平民階級相手の学校の設置を進言してみた。
この学校、行き場のない貴族の次男坊三男坊や爵位剥奪を喰らった貴族を教師という職を与え、山賊やらスリやらといった犯罪者にならないようにするための物でもある。
俺はこの犯罪抑止の目的をカムフラージュに学校設置を両親ひいては王宮に認めさせ、また子供を学校に通わせる商人や教師が住む住宅も整備される事になり、タダの交差点は学校を中心に学園都市の様相を呈してきた。
こうやって領内の知的水準を引き上げ、皆で実用レベルの飛行機を作ろうという目論見だ。
佐々木の爺様には
「これが俺たちの目標なんだ!!」
という共通の目標を領民に持ってもらうために、度々ゼロ戦でタルブ上空を跳びまわってもらい、その途中で山賊やらオークやらを見かけたら報告してくれるよう頼んでいる。
そんな根回しをしたのが5歳の頃。さぞや不気味な5歳児だったろう。
気味悪がって放り出さなかった両親には、本当に感謝。
十年後、俺が15歳になり魔法学院送りになる頃には、なんとかエンジンもモノになり(コッパゲ先生が魔法学院ではなくこちらに流れてきた為らしい)、複葉機の実験機が危なげなく空を飛べるレベルにまで達していた。
そして3年後、タルブに帰ってきた俺の前に一人の男が土下座をしている。
青い髪はまごう事なきガリア王家の証。
つまりコイツは……
「頼む!! 助けると思って俺をタルブの食客にしてくれ!!」
「帰れパンチホッパー。」
ガリア地獄兄弟のパンチホッパー(弟)、シャルルか。
「んな連れない事いうな! お前が俺と同じトリッパーなのは分かっているんだ!!」
そーゆーこと、ぶっちゃけて良いのかねえ。
「お前が動力機関の研究をしてもロマリアに睨まれないよう根回ししたの、俺なんだぞ!」
「いや、頼んでないし。」
「でも俺がやってなかったら、お前死んでたぞ!!」
「ぐ……」
多分コイツの言うとおりだ。
ロマリアは狂信者集団だからねえ、自分たちの権威を否定しかねない物には無差別に噛み付く。
ハルケギニアでエルフが忌み嫌われているのも、多分奴等の長年にわたるプロパガンダの結果だろうし。
「ゼロ魔の展開は知ってるだろう?
俺、このままガリアの王宮なんぞにいたらジョゼフに殺されちまうよ!!」
「……いや、奴のコンプレックスを刺激しなけりゃ無事で済むんでねーの?」
「コンプレックスに押しつぶされそーなのは俺の方だっつーの!
つかジョゼフって、ありえねーハイレベルの君主だろ?
元凡人の俺が敵う相手かよ!」
「ま、そりゃそうだが……」
「アイツが普通に王位を継承できるよう、オルレアン派を少しずつ削っていったっつーのに、なんで俺なんかを持ち上げる奴等が次から次へと……
どいつもこいつもそんなに俺の死亡フラグを立てたいのか、そんなに俺を殺したいのかーーーーー!!!」
大分追い詰められてるなあ、コイツ。
つか、自分を持ち上げる派閥を積極的に削ってたのかよ。
「で? お前はここでどうしたいんだよ?」
「決まってる。
王位継承権争いに付き物の流血沙汰を避けるため、王位継承権を放棄し一介の位落ちメイジとしてタルブで慎ましやかに……」
「帰れパンチホッパー。」
「き、貴様ぁぁぁぁぁっ!!
この人でなし! 俺を見殺しにする気か!?」
「人を巻き添えにするなっつーてるんだよっ!!
お前をここで受け入れたら、間違いなく外交問題じゃねーか!!
俺だってまだ死にたくねェェェっ!!」
ああ、メンドクサイ奴に目をつけられた。
これからどないしよ。
なんか本編が始まるまで生きていられる自信がない……
くそっ、ヴァリエール公爵とかグラモン元帥とかと魔法学院で知り合って、これで空母機動艦隊が作れると思った矢先に……
? そうだ!!
コイツをヴァリエール公爵になすりつけよう。
確かアイツもトリッパーだったはず!!
そう思った矢先に、見覚えのある男が俺の前に現れた。
つかコイツはヴァリエール公爵!? 何のようなんだ!!
「アストン……俺の代わりにカリーヌと結婚してくれェェェェ!!
ゴジラ並みの戦闘力を持ったツンデレなんて嫁にしたら、命が幾つあったって足りねえぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「貴様もかぁぁぁぁっ!!」
ああ、もうホントどないしよ……