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No.16875の一覧
[0] ルイズさんが109回目にして平民を召喚しました (オリ主)[しゃき](2011/02/28 21:49)
[1] 第1話 使い魔などという意味不明な供述[しゃき](2010/04/26 20:50)
[2] 第2話 文化の違いは恐ろしい[しゃき](2010/04/26 20:53)
[3] 第3話 嘘は言っていません。誇張はあります。[しゃき](2010/04/26 20:56)
[4] 第4話 郷に入っては郷に従えと言われても限界はある[しゃき](2010/04/26 21:00)
[5] 第5話 『ゼロ』ではないという希望[しゃき](2010/03/15 13:15)
[6] 第6話 男の友情も案外脆いがすぐ修復する[しゃき](2010/04/26 21:02)
[7] 第7話 紳士(おとこ)は女性の涙に弱いのではなく、女性の笑顔に弱い[しゃき](2010/04/26 21:03)
[8] 第8話 男の夢が24時間営業とは限らない[しゃき](2010/04/26 21:08)
[9] 第9話 だから貴方は独身貴族[しゃき](2010/04/26 21:15)
[10] 第10話 君は僕にやや似ている[しゃき](2010/04/26 21:17)
[11] 第11話 空気を読み違えると大抵碌な事にならない[しゃき](2010/04/26 21:21)
[12] 第12話 意外と後ろに人が近づいてきても気づかない事はある[しゃき](2010/04/26 21:25)
[13] 第13話 一方的な勧誘にははっきりNoと言え[しゃき](2010/04/26 21:28)
[14] 第14話 分かりやすい虚飾は気の毒になるのでやめてくれ[しゃき](2010/03/10 21:53)
[15] 第15話 ストレスを発散するときの力加減は難しい[しゃき](2010/04/26 21:29)
[16] 第16話 友達友達ってしつこく言わなくてもいいんだよォ!![しゃき](2010/03/11 23:15)
[17] 第17話 いちゃつくのは勝手だが場所を選べ[しゃき](2010/03/13 00:32)
[18] 第18話 自分の言葉にはある程度責任は持て[しゃき](2010/03/13 23:43)
[19] 第19話 ラッキーヒットが一番怖い[しゃき](2010/03/15 19:43)
[20] 第20話 軽々しくおばさん呼ばわりするとブーメランで帰ってくる[しゃき](2010/03/15 00:13)
[21] 第21話 ここにもフラグを掴み損ねた漢がまた一人・・・[しゃき](2010/03/15 20:00)
[22] 第22話 未練がない人生なんてない[しゃき](2010/03/15 15:36)
[23] 第23話 わたしの王子様(前編)[しゃき](2010/03/15 21:22)
[24] 第24話 わたしの王子様(後編)[しゃき](2010/04/19 16:03)
[25] 第25話 身体検査でいちいち妙な妄想をするな[しゃき](2010/03/17 14:57)
[26] 第26話 人を陥れようとする奴はしっぺ返しを受けるはず[しゃき](2010/03/17 20:50)
[27] 第27話 裸の付き合いもほどほどに[しゃき](2010/03/18 15:25)
[28] 第28話 彼女が彼に抱く感情は恋愛ではなく親愛である[しゃき](2010/03/31 17:41)
[29] 第29話 そんな敵の倒し方があっていいのか[しゃき](2010/03/19 18:23)
[30] 第30話 祈る存在は選んだ方が良いと思う[しゃき](2010/03/20 13:02)
[31] 第31話 さらば擬似的シスター!兄の愛は永遠に!(誇張アリ)[しゃき](2010/03/20 12:59)
[32] 第32話 溢れ出る食欲に抗う事は出来ない[しゃき](2010/03/20 19:35)
[33] 第33話 テンションが上がりすぎると言葉が乱暴になる[しゃき](2010/03/25 13:12)
[34] 第34話 そんな子守唄があってたまるか[しゃき](2010/03/21 13:26)
[35] 第35話 戦争は頭を潰せば大打撃[しゃき](2010/03/22 01:51)
[36] 第36話 つまり私は伝説の女[しゃき](2010/03/23 13:20)
[37] 第37話 俺は君の友達なんかじゃない[しゃき](2010/03/23 12:55)
[38] 第38話 何でお前が其処にいるんだ(タルブの村より)[しゃき](2010/03/23 13:46)
[39] 第39話 何より強きは母の愛[しゃき](2010/03/23 16:31)
[40] 第40話 誰も気づかぬ偉業、自分たちも知らぬ偉業[しゃき](2010/03/24 08:05)
[41] 第41話 ただし聞くだけだ。受けるとは言っていない。[しゃき](2010/03/24 12:40)
[42] 第42話 堅実と特殊能力が合わさって最強に見える[しゃき](2010/03/24 21:33)
[43] 第43話 私はそんな軽い女じゃないわよ[しゃき](2010/03/25 13:14)
[44] 第44話 美女は好きだが愛する女はただ一人[しゃき](2010/03/25 17:17)
[45] 第45話 勇気の幻影[しゃき](2010/03/25 23:05)
[46] 第46話 性格だけは良い男[しゃき](2010/03/26 14:38)
[47] 第47話 雨上がりの虹[しゃき](2010/03/26 20:32)
[48] 第48話 存在自体が武器であるお方[しゃき](2010/03/27 12:34)
[49] 第49話 答えは聞いてないんじゃなくて聞けない[しゃき](2010/03/27 17:57)
[50] 第50話 暗闇を彷徨う男[しゃき](2010/03/28 00:36)
[51] 第51話 アンタの私怨に巻き込まないでよね[しゃき](2010/03/28 16:55)
[52] 第52話 母から見た成長した娘の姿の理由[しゃき](2010/03/29 00:15)
[53] 第53話 娘が男を連れてきた日[しゃき](2010/03/29 13:29)
[54] 第54話 手段を選んでいる場合じゃない[しゃき](2010/03/30 17:28)
[55] 第55話 夏休み中なので逃げたところで追われます[しゃき](2010/03/30 22:52)
[56] 第56話 パンがなければ作れ。材料がなければ作れ。[しゃき](2010/03/31 14:34)
[57] 第57話 地球外生命体とバッタと餡パン[しゃき](2010/04/04 15:08)
[58] 第58話 勝利の絶対条件[しゃき](2010/04/15 00:30)
[59] 第59話 生徒に手を出す者は等しく許さん[しゃき](2010/04/15 17:11)
[60] 第60話 騎士でしょう?貴女は[しゃき](2010/04/17 17:07)
[61] 第61話 どんだけ心の広い神様だよ[しゃき](2010/04/18 16:28)
[62] 第62話 クリスマスを一人で過ごすのは寂しいのよ[しゃき](2010/04/19 08:58)
[63] 第63話 頭脳労働派の中年女性をを舐めるなよ[しゃき](2010/04/19 12:21)
[64] 第64話 サウスゴータの悪魔[しゃき](2010/04/19 22:36)
[65] 第65話 ルイズさんが110回目にして使い魔を召喚できませんでした[しゃき](2010/04/20 13:22)
[66] 第66話 空白の間のとあるお話(完全版)[しゃき](2010/04/21 08:47)
[67] 第67話 孤児は孤児を呼ぶ[しゃき](2010/04/21 13:05)
[68] 第68話 悪夢の捜索隊追加[しゃき](2010/04/22 10:42)
[69] 第69話 伝説の遭遇と再会[しゃき](2010/04/22 17:55)
[70] 第70話 本当はここにいて欲しいよ[しゃき](2010/04/23 16:30)
[71] 第71話 まさかの左遷通告[しゃき](2010/06/09 15:48)
[72] 第72話 話は聞かせてもらった!この領地は滅亡する![しゃき](2010/04/25 01:18)
[73] 第73話 カオスの権化、現る[しゃき](2010/04/25 16:51)
[74] 第74話 憧れの人[しゃき](2010/04/25 22:41)
[75] 第75話 友人だろうと容赦なし[しゃき](2010/04/26 17:12)
[76] 第76話 幼馴染が上級生?いいじゃないか![しゃき](2010/04/27 00:07)
[77] 第77話 冷静に混乱する女[しゃき](2010/04/27 22:21)
[78] 第78話 努力派VS一発逆転派[しゃき](2010/04/27 22:35)
[79] 第79話 とてつもない修学旅行[しゃき](2010/04/28 15:30)
[80] 第80話 減っていく救出隊[しゃき](2010/04/28 23:12)
[81] 第81話 お前のような歌姫がいるか【注意!ややグロかも!】[しゃき](2010/04/30 01:14)
[82] 第82話 古城に響く俺達の歌[しゃき](2010/04/30 01:18)
[83] 第83話 やりすぎ!カリンちゃん![しゃき](2010/04/30 22:20)
[84] 第84話 真心喫茶[しゃき](2010/04/30 23:21)
[85] 第85話 クローンの襲撃【お食事中の方はご注意下さい】[しゃき](2010/05/01 17:07)
[86] 第86話 狐の嫁入り(修正あり)[しゃき](2010/05/02 18:47)
[87] 第87話 今日も因幡家は平和です(追加あり)[しゃき](2010/05/02 12:49)
[88] 第88話 その子がアンタの想い人だと言うの[しゃき](2010/05/02 21:00)
[89] 第89話 飲酒は二十歳になってから[しゃき](2010/05/05 20:03)
[90] 第90話 気合で解決するほど世の中甘くない[しゃき](2010/05/10 16:56)
[91] 第91話 腹が減っては何も出来ぬ[しゃき](2010/05/10 17:05)
[92] 第92話 大事な事なので二回言いました[しゃき](2010/05/10 22:41)
[93] 第93話 魔法媒体の天敵[しゃき](2010/05/11 17:24)
[94] 第94話 フーケさんとワルド君[しゃき](2010/05/13 17:03)
[95] 第95話 喧嘩は一対一でやろう(前編)[しゃき](2010/05/13 16:52)
[96] 第96話 喧嘩は一対一でやろう(後編)[しゃき](2010/07/01 01:06)
[97] 第97話 変態という名の紳士達[しゃき](2010/05/13 23:46)
[98] 第98話 プロジェクトZ~愚かな挑戦者たち~[しゃき](2010/05/14 18:10)
[99] 第99話 彼女は息抜きのためなら死ねるそうだ[しゃき](2010/05/14 18:11)
[100] 第100話 それはアンタの未来であり、私たちの過去だ[しゃき](2010/05/15 01:16)
[101] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「紳士たちの社交場」[しゃき](2010/03/17 02:13)
[102] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「続・紳士たちの社交場」[しゃき](2010/03/18 19:04)
[103] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「真心喫茶109」[しゃき](2010/04/22 23:28)
[104] 予告篇?【ネタ】 世界の扉の向こう側[しゃき](2010/04/12 17:11)
[105] とりあえずの技能のまとめ(102話まで)[しゃき](2010/06/11 15:40)
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[16875] 第92話 大事な事なので二回言いました
Name: しゃき◆d1ebbc20 ID:1ddacfd7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/10 22:41
故郷に帰りたいとは毎回思うが、今の所その方法がない。
月を見上げながらそう思う。
フーケは俺に故郷に帰ってやれと言ったがそうホイホイ帰れれば苦労はしていない。
だが、偶然帰れた時には告白したり、彼女出来たりとやる事はやっている。
それだけでも満足と言えはしないだろうか。

「ねえ、タツヤ」

ルイズの声である。
見れば、ルイズが側に来ていた。月明かりに映る彼女の頬には涙の跡があった。

「どうした?怖い夢でも見たのか?」

「そんな訳ないでしょう。アンタに聞きたい事があるの」

「言ってみな」

「アンタ、私を恨んでいないの?」

「・・・はぁ?」

「アンタは故郷に帰りたくても帰れない身。あの妹さんだって、アンタがこの世界に来なければ、ここに来る事もなかった。元を正せば元凶は私。アンタが簡単に帰れないのも、彼女に会えないのも・・・私がアンタを召喚したからよ、そうでしょう?」

「そうだな。お前の言うとおり、俺が簡単に帰れないのも、俺の妹がこの世界に来たのも、彼女に会えないのも、元凶はお前だな」

ルイズの細い身体がびくりと震える。
その姿は悪い事をして怒られると思った時の子どもに似ていた。

「でもまあ、ギーシュやキュルケにタバサ、姫さんにテファたちに出会えたのもお前のおかげだな」

そりゃあ、死ぬ思いもしたが、お陰で掛替えのない友人を手に入れた。
苦難や試練の中、俺は様々なものを手に入れた。
ルイズが俺を召喚した事で、俺の未来は変わってしまったかもしれない。
だが、それによって悪くなるとは限らないのだ。

「・・・寂しくないの?」

「寂しいさ」

「じゃあ、どうしてアンタは泣かないの?」

「寂しいが、楽しいのさ。だから泣かないんだ」

「楽しい・・・?」

「ああ」

「無理してない?」

「してねえよ」

「嘘」

「嘘じゃねえよ」

「嘘かもしれない」

突然、違う声が響く。
俺たちが振り向くと、其処にはタバサが立っていた。

「使い魔は、主人の都合のいいように記憶を変えられる。記憶とは脳内の情報全てのこと。貴方が無理をしていないと感じるのは、記憶が書き換えられているからだと思われる」

「記憶が・・・?そんな事は・・・」

「貴方のルーンは、貴方の心の中に『この世界に留まる為の偽りの動機』を与えたのかもしれない。この世界が楽しいからという理由で元の世界に戻るのに必死でないのもそれの効果かもしれない。本当は帰りたいと願っている筈なのに」

「タツヤ、多分タバサの言うとおりなんだと思うわ。本当に帰りたいはずなら、七万を相手にしたり、ガリアに単身突入したりしないもの」

「その効果は、時間が経つにつれて、強くなる。使い魔が徐々に慣れて、最後には主人と一心同体になるのはそういう事」

タバサは淡々と言う。
自分の事は実は自分がよく分かっていない。
だが、これまでの俺が全て偽りだとしたら?その真実の姿はどうだったというのだろう?

「まあ、タバサを助け出した際の君は可笑しかったな」

「最近は無茶ばかりしていた気がするわね」

気付けば、その場の全員が目を覚ましていた。

「戦いが嫌いって言ってたアンタが、戦いに行く・・・それだけでもおかしいことなのよ」

「タツヤ、それ本当?」

すっかり眠っていた筈のテファも俺のそばに来て言った。

「さあ?あくまで皆の憶測だからな。俺にだって分からんよ」

俺は肩を竦めて言う。
ルイズはそんな俺を悲しそうな目で見つめたあと、テファの方を向いた。

「ねえ、ティファニア。あなた、記憶が消せるらしいじゃない。その部分を消す事が出来る?タツヤのルーンが作った、タツヤの心の中の『偽りの動機』を」

「わからないわ・・・」

「虚無に干渉できるのは虚無だけだ。出来るんじゃねえか?」

喋る剣が後押しをする。

「記憶を消すとか物騒な話勝手に進めるな」

「ねえ、タツヤ聞いて。あんたの心の中には二つのメロディが流れているかもしれない。それはとっても不自然な事なのよ」

ルイズは俯いて言う。

「だから、さっさと魔法をかけられて、きっぱりすっきりと元のアンタに戻りなさい。そしてその後、帰る方法を探せば良いじゃない」

「あのなルイズよ、それってお前が探すの面倒になったからじゃ・・・」

「さあ!ティファニア!やっちゃって!」

「オイふざけんなー!?ちょ、ギーシュ、キュルケ!離せ!あいつ殴る!絶対殴る!!」

俺の腕をキュルケとギーシュが掴んで離さない。彼らは真剣な表情だ。

「僕はね、信じてるんだ」

「何をだよ!」

「君の気持ちは偽りなんかじゃないことを。それを証明してくれ」

ギーシュは小声で俺にそう言った。
俺の耳にテファが紡ぐ虚無のルーンが聞こえてきた。

「タツヤ・・・」

キュルケが悲しそうな顔で俺を見ている。

「キュルケ・・・俺は変わらない。絶対に変わらない。俺の記憶は俺のものだ。魔法なんぞで変わってたまるか」

ティファニアが俺に向かって虚無のルーンを唱え、呪文が完成した。
それと同時に俺の意識は薄れていくのだった。
左手のルーンが青白く輝いた事に気付く者は誰もいなかった。



白い、果てのないような空間だった。
俺はいつの間にか椅子に座っている状態で目が覚めた。
ぼんやりとした感じがする。頭も痛い。
目の前には白いテーブルと俺のほかにもう一人いた。
彼は俺を見ながら微笑んでいた。

「やあ、久しぶりだね。親友」

「ああ、お前がいる事で現実味が一気に吹き飛んだぜ、親友」

俺の目の前に座るのは死んだ親友、ウェールズだった。

「で、どうだい?僕の親戚の魔法を受けて?何か変わった事でも?」

「今この状況がすでに変わった事だな」

「違いないね。だが、僕が聞いているのは記憶についてだよ」

「さあ?頭は痛いが、別に変わった所はない。ただ、味噌汁が無性に飲みたいから大豆をここで作りたいという欲求はあるな。これもホームシックかね」

「味噌汁、それは興味深いな。生きているうちに食べたかったよ」

「ここで大豆を作ったらお前の墓を味噌汁まみれにしてやる」

「墓を汚すのは止めてくれない?」

笑いながら言うウェールズ。
彼はしばらく笑っていたが、やがて真剣な表情になる。

「僕はずっと、君たちを見守ってきた。タツヤ、神聖アルビオンなどというふざけた者達を止めてくれてありがとう」

「ああ、腹に据えかねてたんだな、やっぱり」

「当たり前だ。奴らがいなければ僕は今頃・・・物凄い惜しい事をしたよ」

「姫さんはお前の敵討ちに成功したぜ」

「・・・本当は敵討ちなんて彼女には似合わないし、余計なものを背負わせる事になってしまった。彼女には死んだ後でも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。更に今、また新たな脅威に彼女は直面している。ガリアだ。奴らはエルフと手を結んでいる」

「また戦争の危機かよ」

「いや、煽っているのはガリアだけじゃない」

「は?」

「タツヤ、ロマリアには気をつけろ。いいか、もう一回言うぞ?ロマリアには気をつけろ」

「ロマリアには気をつけろ!」

「別に復唱しなくてもいいんだけどね・・・」

ウェールズは呆れたように笑う。

「さて・・・タツヤ、もう一度聞くけど、本当に何も変わった事はないんだね?」

「だから今がまさに」

「いや、もういいから・・・」

「ねえよ。頭痛以外」

「そうか」

ウェールズはホッとしたような表情になった。

「君は言ったね。変わらないと」

「ん?何処まで行っても俺は俺だからな」

「君らしい意見だが、僕から見た君は変わったよ。無論良い意味でね」

「まあ、以前の俺なら七万に突っ込もうと思わないしな」

「臆病は勇気の裏返しだ。臆病なき勇気などそれは無謀と蛮勇に過ぎない。君は臆病だった。だから七万に立ち向かう勇気が芽生えたんじゃないのかい?」

「あの時はなあ・・・情が乗っかってしまったんで・・・」

「臆病に情が加わると、勇気になるとまでは言わないけど、その時の君の心は震えていたはずだ」

あの時のルイズは素直に死なせたくないと思ったな。
ワルドとの戦いのときも、タバサを助ける時も、俺の心は誰かを助けなきゃいけないと思っていた。
俺がここまで思えるような人なんて、家族や杏里以外にいなかった。

・・・そうか。いつの間にやら俺はこの世界が好きになっていたのか。
大好きとまで行かなくとも、この世界が好きになっていたんだ。
失いたくないと思える人物が多い人生はそりゃあいいものだろう。
俺は本当に良い宝物を得ていた。

「はっ、ルイズめ。何が私を恨んでない?だ」

俺は椅子から立ち上がる。

「まだ礼を言いたりねえぐらいだぜ、なあおい。偽りの動機?ねえよそんなもの!使い魔と主は一心同体?キモい!何、深刻に考えすぎてんだあの万年脳内桃色女は!帰る方法があればさっさと帰ってるわ!だがな、長いこといたせいかこの世界に愛着も湧いたんだ。いきなり全部放り出すなんてありえねえだろう!帰る一ヶ月前には申告するわ!バーカ!」

「・・・君にとってルイズ嬢は一体どういう存在なんだい?」

「義妹兼玩具」

「何か増えてない?」

「さあ?でもよ、ウェールズ」

「なんだい?」

「俺は妹も玩具も大切にする男なんだよ」

俺がそう言うと、ウェールズは満面の笑みを浮かべて頷いた。



目が覚めた。
知ってる天井である。ここはウエストウッド村のティファニアの家の部屋である。
清々しい朝の光が窓から差し込み、俺は思わず毛布を被った。
頭痛はもう治まっていた。
起き上がって肩を回して首を鳴らした。それから大きな欠伸をした。
それから気付いた。人の気配がありません。
・・・いや、空気のようだがいた。タバサが本を開いた状態でうつらうつらとしていた。
俺の気配に気付いたタバサははっとして本を見た。
・・・・・・涎で濡れていた。無言で本を閉じるタバサ。それから俺を見る。

「どう?」

「見事な涎だった」

「違う、気分」

「爽やかな朝だ。他の皆はどうした?」

「先に帰った。あの、ハーフエルフの女の子を連れて」

「歩いてかよ」

タバサは頷く。

「・・・これからどうしたい?」

「決まっているなそりゃ」

俺は当然とばかりに言う。

「メシだ」

「賛成」

まずは朝食である。一日の始まりは朝食からである。・・・先に顔を洗うか?

壁に立てかけられたデルフリンガーは呆れたように呟いた。

「何でェ。全く変わってねえじゃねえかよ」

小鳥の鳴き声が響く。
そんな中、俺は二人分の朝食を作ることにしたのだ。



一方、ルイズ達はロサイスまでの道を歩いていた。
黒ペガサスのテンマちゃんと風竜のシルフィードはそれぞれ達也とタバサの相棒である。
その主人の二人がいない以上、ルイズ達は徒歩でロサイスまで行かねばならない。

「・・・やはりタツヤが起きるまで待つべきだったのではないのかい?」

ギーシュが言うとおり、ここからロサイスまでは五十リーグは離れている。
とぼとぼ歩くルイズは肩を落として憂鬱そうだ。
キュルケから見れば、ルイズが怖がっているというのが分かるが、勝手に記憶を奪っておいてそれはないのではとも思った。
ルイズは結果を見るのが怖いのだ。もし、達也が起きた時、自分の知らない彼だったら・・・
そうなっていたら自分達が今まで過ごしていた月日は一体なんだったのだろうか?
それについてはギーシュもキュルケも怖い。ティファニアだって不安がっているのだ。
だからこそそれを見届ける役割を請け負ったタバサは凄いと思う。

前を歩くルイズは時折目元を拭う仕草を繰り返している。
ルイズは言っていた。達也は自分の宝物だと。達也が来てから毎日が捨てたモンじゃなくなったと。
キュルケやタバサもギーシュも達也に出会って何かが変われた。
達也が記憶を失い、それらの日々を忘れるのは自分達が変われたのを否定されるような気がした。
しかし、その偽りの記憶に彼が縛られているとしたら、彼を解放するのもまた友人の勤めではないだろうか?
皆怖かった。思い出を否定されるのが怖かった。

ティファニアは、忘却の呪文を達也にかけた後、涙が止まらなかった。

『テファ、君は俺の友達だ。身分証明はそれで十分だ。文句がある奴が出たら、俺を頼れ。そんな体面ばかりを気にする奴からは守ってやるからさ』

あの日の約束も彼を縛る偽りの動機だとすれば・・・
自分はもしかしたらとんでもない事をしてしまったのかもしれない。
達也は針千本飲むのか?いや、魔法をかけたのは自分だから、自分が?
そんな事はどうでもいい。
問題なのは自分は大切なお友達を永遠に失ったのかもしれないことだった。

「タツヤ・・・今度会うときは、違う貴方なの?」

彼女の呟きに答えるべき男の姿はまだない。

ギーシュは最後尾を歩いていた。
使い魔として召喚されると言う冷静に考えれば想像を絶する体験をした達也である。
『この世界にいるための偽りの動機』・・・考えてみればそんなのを探さないとやってられない状況ではないのか?
彼は故郷に愛する女性がいたという。女の子がいればいいという問題ではない。
ギーシュは達也が元の世界に戻る為に努力している姿は一回見た事がある。
ルイズの部屋で始祖の祈祷書をルイズに持たせて熱血指導していた。
・・・何をやっているのか問えば、帰る為に虚無が関係あるのではないかと考えてやっているらしいが、ルイズの顔が赤くなるだけだった。・・・努力?
ギーシュが達也の努力に疑問を感じていたその時、何かの気配に気付いたギーシュは後ろを振り向いた。そして叫んだ。

「敵襲だ!!」

ギーシュの叫びにルイズ達は振り向く。
そこには二十メイル以上はあろうかという巨大な剣士人形が立っていた。



(続く)


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