元々、アーハンブラ城は、砂漠の小高い丘の上に、エルフが建築した城砦をハルケギニアの聖地回復連合軍が千年近く前に奪取したものらしい。連合軍はその先に国境線を制定し、『ヒャッハー!ここは俺たちの土地だぜー!』と宣言した。エルフには国境と言う概念がなかったが、人間は国境を決めなければ欲望のままに土地を切り取っていく事を知り、『仕方ねえな』とばかりに人間達が引いた線を国境として認めた。だが、人間達は其処でやめとけばいいのに、アーハンブラ城を拠点に、幾度となくエルフの土地に侵攻しようとしたため、流石に鬱陶しくなったエルフが返り討ちにして行き・・・そのたびこの城は取ったり取り返したりを繰り返していた。で、数百年前の戦いで連合軍がその主となって今に至る。城砦の規模が小さいのですでに軍事上の拠点から外され、城砦は廃城状態だったが・・・そのお陰で逆に栄える事になったらしい。城が立つ丘の麓にはオアシスがある。水の周りには人が集まる。オアシスの周りには小さな宿場街が出来始めて、城周辺は軍事拠点から旅人が立ち寄る交易地という転身を遂げたのである。アーハンブラ城はエルフが建築しただけあってハルケギニアの人々にとって、立派な観光名所と化していた。何せ城壁は見事な出来栄えで、幾何学模様の細かい彫刻に彩られている。それが夜の月明かりを受けて幻想的に白く光る。エルフの技術かぁ・・・上手く懐柔できたら村興しも楽だろうな。俺たちはとりあえずこの地で情報収集する為に二手に別れた。キュルケとシルフィードは聞きこみ調査をするつもりらしい。キュルケはともかく、シルフィードは出来るのか?俺はと言うと、分身を一体出して、そいつと共に城の調査を行なっていた。適当に一周して、侵入方法を探るのである。やがて分身と合流した俺は警備が甘そうな場所があったか言い合う。「無駄に厳重な警備の配置だったよ」分身が溜息をつきながら言った。俺も全く同じ事を思った。正攻法で侵入など出来るわけがないので、警備の穴はないのか探っていたが・・・そんな場所は全然なかったぜ!「ただ、本当に無駄に厳重だった」「ああ、おそらくタバサ達は此処にいる」それだけ分かれば良いんだ。同じ場所に何時までも居たら警邏の騎士に怪しまれる。俺たちは忍び足を駆使してその場を離れた。旅人達が集まる交易地ということで色々な物品が売ってある。此処で補給を完了して、砂漠の旅を再開すると言うわけだ。食料品、薬に水・・・本当に色々なものがある。そのエリアを抜けて俺は小さな居酒屋、『ヨーゼフ親父の砂漠の扉』亭に入った。其処にはキュルケが待っていた。彼女の隣には男が一人酔いつぶれたように眠っていた。「やっぱり、この城に間違いないわ」「ああ。城の方も無駄に警備が固い。何かを守っているような感じだった」「街のほうも噂で持ちきりよ。ここにやって来た兵士達が守っているのは没落した王族の親子とか。この商人が兵隊から聞いたから信憑性は高いわ」「駐屯しているガリア軍は少なく見積もって二個中隊はいた。随分と豪勢なことだよ」俺たちは最初からその兵士たちと戦うつもりはない。騒ぎを起こせばこっちが不利である。あくまで静かに敏速にタバサを救出しなければ意味がない。しかし、その方法は限られる。「魔法の睡眠薬でもあれば良いんだけど・・・」「この土地には薬は売ってあるが、そのような睡眠薬は売ってないなぁ・・・」「侵入は簡単よ。あの兵士達は娯楽に餓えている。だから適当な娯楽を提供してあげればいいんだけど・・・」現在、シルフィードは人間形態のまま二階の宿の一室ですやすやお休み中だ。人間形態は体力を結構消耗するらしいのだ。「まず兵士にお酒を提供すると言って、旅芸人の格好で侵入する。実際酒を持って行けばいいんだから、其処まではいいでしょう。問題はそれからよ」キュルケ曰く魔法の眠り薬さえあれば時間稼ぎをしてれば兵隊達は眠りこけると言うが・・・問題はそんな強力な魔法薬など売ってはいないということである。せめて不眠症の人が飲んで効くか効かないかというレベルの薬があるだけである。結局俺たちは侵入後、何とかして時間を稼ぎ(主に俺とシルフィードが)、その間にキュルケがタバサを助けるという作戦を立てるしかなかった。とりあえず明日に向けて今日は休む事になった。俺の部屋とキュルケたちの部屋は分かれている。俺は部屋で一人、ベッドに寝転がり、眠れない時間を過ごした。ここまでノリで突っ走って来たが・・・俺は大変な事をしている。アンリエッタにマントを突き返して貴族を辞めると宣言し、脱走、逃亡。立派な犯罪行為である。平民に戻ったから問題ないよねじゃなくて、平民が元で国家間の戦争になった事もあるのだ。軽率すぎる行為だ・・・と理屈では分かる。政治的には断罪されるべき行為だろう。アンリエッタも大層失望したろう。レイナールが俺を慎重な人間だと評してくれたが、俺は臆病なだけだ。「堂々とトリステインには帰れないな。あはは・・・」「そりゃあお尋ね者だからねえ。まあ、いいじゃねえかよ、相棒。のんびり気ままに根無し草的な旅人暮らしもよ」デルフリンガーは気楽に言う。ただし、旅には追跡者が付いて来そうだが。「ところで相棒」「何だよ?」「ずっと気になってたんだがよ、お前さんの横で寝転がってるその薄着の幼女は一体何者だ?人間とは思えねえんだが」「何!??」「いや、誰も突っ込まなかったから俺も黙っていたがよ、どうしても気になるんだわ」ちょっと待て、何でこの無機物にはこの擬人化ルーンが見えてるんだ!?俺以外には見えないんじゃないのか!?『だって私は今まで無機物の紫電さんと無銘の剣さんと会話してたんですよ?無機物のデルフリンガーさんと会話できるし、姿も見えるに決まってるじゃないですか。ただ、デルフリンガーさんは喋るし、わざわざ私と意思疎通しなくても良かったですから』「お前は・・・何モンだ?俺が今まで感じた事のない雰囲気を感じるぜ」『自己紹介致しましょう。私は彼のルーン。今はこんな姿をしていますが、立派なルーンです。人は私を萌え世界の異端児と呼びます』どの萌え世界に属してるんだお前は。『誰も私に突っ込まないのは簡単な事です。基本的に有機生命体には私は認識出来ませんからね。例外は私が憑いている、因幡達也君と、彼の愛天馬のテンマちゃんだけですよ。今の所は』「擬人化して喋るルーンなんて見た事ねえぞ・・・?」『自分が知っていることが世界の理と思うとかwwww』草を生やすな!?「・・・相棒も大変なモンに取り憑かれちまったな」確かにそうだが、コイツの恩恵で今まで助かっていたのも事実である。「・・・しかし、明日は如何しようかな?かなり綱渡りになりそうだ」「アルビオンの戦のように戦えば、あの眼鏡の嬢ちゃんたちは別の場所に移送されるだろうな。それを回避してエルフと対峙しても勝ち目は薄いぜ。何せ人間の遥か先の技術を持ち、強力な先住魔法を持った存在なんだからな。誤魔化しはきかねえだろう」「暴れずに足止めをして、エルフに見つからずにタバサを助けろ?何と言う鬼畜ゲー」『何、簡単に諦めてるんですか?諦めたら面白くないじゃないですか』「お前の娯楽の為に戦ってるわけじゃないんだけどね」「流石にエルフ相手はきついぜ?俺もあいつらの魔法は全部吸い込めねえよ」幼女ルーンは俺たちの弱気な発言に肩を竦めた。『人間の遥か先の技術とか、この世界の人間の話でしょう?』ルーンは俺を指差して言った。『貴方はこの世界におけるオーバーテクノロジーの結晶を持っているはずです』「オーバーテクノロジーの結晶・・・?あ」俺はズボンのポケットの中から、科学技術の結晶『携帯電話』を取り出した。左手のルーンが輝きだした。そして久々の武器説明を擬人化ルーンが読み上げた。『【携帯電話】:移動しながらの通話を可能にした電話機。電話機自体がこの世界にとってはオーバーテクノロジー。カメラやインターネット閲覧、おサイフケータイ、防水、太陽充電、ワンセグ、音楽プレーヤーといった付加機能がついているが、この世界ではほぼ役に立たない!太陽充電機能付きなのでバッテリーの問題は異世界でも少し安心。でも少し安心な程度。高度文明の武器と言える存在。だが、文明レベルが高くないこの世界においては投げて使うぐらいしか出来ない。ちなみにド●モ』お守り代わりに持っていた携帯電話だが、この世界ではクソの役にも立たない。太陽充電もすぐ切れるし。そもそも圏外だし。電話すらできません。・・・携帯の料金ってどうなってるんだろうか?『貴方もエルフと同等、それ以上の文明レベルのものを持っているんです。持ってるだけですが』「持ってるだけじゃどうにもならん。バッテリーも切れてるしさ」せめてカメラのフラッシュ機能で「死ね!」と言えば怯ませる事もできるだろうが・・・所詮こけおどしである。「結局、エルフを避けて行かなきゃならねえのには変わりねえな」「まあ、其れに越した事はないな」「そうと決まれば寝ろよ。明日の英気を養えよ」「ああ」俺はデルフリンガーを鞘ごとベッドの下にしまって、ベッドに再び寝転んだ。・・・何故だろうか。全然眠れない。不安とかのせいじゃない。『きっと、この世界で初めて自発的に行動するからでしょう』俺の隣にちょこんと座る幼女が言う。この世界での俺は、受身的だった。下手に動けば命が危ないと思ったからだ。だが今の状況も下手に動けば死ぬと言うのに何故俺はここにいる?・・・決まってるじゃないか。タバサを助ける為だろう。友人を助ける為だろう。キュルケのように親しくはないが、だからと言って助けなくていいと言う道理はない。助けに行かなきゃならないという道理もないが。でも、約束してしまったからな。ノリとはいえ、シルフィードにさ。誓ったからには助けようと思ってます。ただ、助けるにも順序が必要だったな。「郷土料理ハンターには、まだ食べてもらわなきゃいけない食べ物があるよな」肉じゃがとかアイツは食べた事あるのだろうか?ウエストウッドの子供たちの反応を思い出す。見た事のない食べ物を恐る恐る口にしていた。口にした瞬間、はっとした表情になっていたな。携帯電話を握り締めたまま、俺は窓の外に見えるアーハンブラ城を見つめた。城壁が夜の月明かりを受けて幻想的に白く光っている。その光景を見て素直な気持ちが俺の口から出た。「綺麗だな・・・」あの綺麗な城の中にタバサはいる。此処まできたら怖がっている場合じゃない。どうせ戻っても地獄!だったら前進して活路を切り開く!おお!?何だか熱血っぽいぞ!やべえ、深夜帯のせいかテンションも若干おかしいぞ?そう思っていたら、楽しそうな様子の幼女が口を開いた。『気力が一定値を突破しました。武器名『携帯電話』専用の特殊能力が発動されます・・・』俺の携帯電話の電源が突如ONになった。おい、ちょっと待てよ。バッテリーは0なはずだが・・・『プロテクトがかかっています。解除の為、10桁の暗証番号を入力下さい。なお、今回は初の能力発動の為、先に暗証番号をお教えします。メモのご用意を』「プロテクト!?」初めてのパターンである。メモと言われても急には・・・ああ、待て待て、今、探すから!・・・よし、いいぞ!『暗証番号を発表致します・・・』幼女の声が静かに部屋に響く。その夜、『ヨーゼフ親父の砂漠の扉』亭の二階で一瞬眩い光が見えたと証言する者が続出した。翌日の夕方。作戦と言うにはおざなりだが、とにかく侵入計画の実行の時である。俺たちは旅芸人の変装をして酒樽がたっぷり入った荷車を引いた。といっても荷車を引くのは俺と俺の分身(昨日の一体と今日作った一体)だが。キュルケとシルフィードは踊り子衣装に身を包み、俺と俺の分身はそれぞれ違う衣装に身を包んでいる。俺は道化師の格好だった。他の分身も付け髭をつけたり、僧服を着たりしていた。・・・僧服が良かった。娯楽の少ないこの地での娯楽の一つが酒である。昨日のうちにその酒を買占め、酒と共に『踊りと歌』を売る名目で城内に侵入しようというのだ。キュルケの色香によって城への侵入は成功した。更に都合のいい事に、この城に駐屯する部隊をまとめるミスコールという隊長がキュルケを大層気に入った様子だった。ミスコールは俺たちがよからぬ事を考えていないか調べる必要があると言ったが、キュルケが、「お疑いならば、個人的にあたしの踊りを披露してさしあげますわ」などと言うと、ミスコール男爵は芸が終わってから取り調べると言った。周りの貴族が「このスケベ野郎め!羨ましい!」という表情で見ていた。「何、これも隊長の職務だよ。はははは!」「では、わたくしたちは早速準備をさせていただきますわ」「その前にお前たちが運んできた酒を一杯貰おう」酒をやる分には全然問題なかった。何故なら酒自体には何も混入していないからである。ミスコール男爵は酒を一杯飲むと、首を振った。「安物だな。まあ、仕方ないか。後は全部兵士にくれてやれ」この場にはとりあえずエルフはいない。だが、何処かにいるかもしれない。とはいえ、第一関門は突破だ。城の中庭にはすでに退屈を嫌う兵士たちが300人以上も集まっていた。そもそも、砂漠のど真ん中の城で訳の分からない警護任務を命じられて、兵達は退屈で死にそうだったのである。隊長のミスコールでさえも、エルフと共同の警護任務に不満大であり、腹を立てていた。現ガリア王、ジョゼフの評判はすこぶる悪い。彼もジョゼフが大嫌いだった。彼の鶴の一声で、城を警護する兵のほぼ全員がこの中庭に集まっていた。仮面を被った俺の分身たちが松明に火を放りこむ。兵達の野次の中、分身たちは楽器を構えた。可もなく不可もなくといった演奏なので、兵達は盛り上がりに欠けたが、キュルケとシルフィードが出てくると凄まじい歓声と拍手が鳴り響く。・・・分かり易いな・・・ホント。だが、そっちの方が好都合である。俺は携帯電話片手にキュルケ達の踊りを舞台袖で見ていた。・・・カメラで撮ろうかな?一時間以上過ぎた。キュルケの踊りは見事であったが、シルフィードはマイペースに楽しそうに暴れていた。一時間も踊るその根気は凄い。ダンスを見ている兵士達の酒もどんどん進んでいく。やがて、奥に腰掛けたミスコール男爵が席を立つ。彼の御付の兵隊がこちらへ向かってくる。それを見たキュルケはダンスを終了させた。拍手が鳴り響く。駆け寄ってきた兵隊が、キュルケに二言三言呟く。キュルケは微笑んで頷き、ミスコール男爵を追った。・・・さて、此処からは俺の時間だ。ガリア兵士諸君、夢の時間はどうだった?最高だったのではないでしょうか?踊りの次は歌などいかが?俺の分身が、兵達に次の出し物の説明をしている。「えー、次は我が一座の歌姫の歌謡ショーです。ごゆっくりお楽しみください」分身はシルフィードと共に俺が待つ舞台袖に駆け寄ってくる。「大丈夫なのか?」分身が俺に聞いてくる。俺はニヤリと笑った。「多分な」俺は光る左手で携帯のボタンを押した。暗証番号を入力してくださいと携帯の画面に映る。俺は昨日覚えた番号を入力した。3・9・3・9・2・4・1・0・8・4完了。携帯が光り輝き、光が飛び出してくる。光は俺たちの前で大きくなり、人の形を作り出す。シルフィードが目を大きく開けてその光景に見入っている。俺たちの前に現れたのは、黒い長いツインテールの髪と真紅の眼。そしてセーラー服姿で・・・その右手にはマイク。左手には何故かネギ。『初●ルンです』「お前、どう考えてもあの変態ルーンだよね?」分身の突っ込みににこりと微笑む初音さん。携帯から出てきた歌姫(笑)は兵士達が待つ舞台に立った。『ガリア兵の皆さん、いつもお仕事ご苦労さまです。皆さんの疲れを癒す為、私、歌います!皆さんも一緒に踊ってね!1曲目はご存知『キン●の大冒険』~!!』あえて言っておこう。容姿はいい。容姿はいいんだ。声が少し電子音声っぽいのが気になるが、容姿はいいんだ!!そのためなのか、歓声も上がっている。歌姫(笑)もノリノリで唄い始める。彼女が歌う歌は、ある少年の冒険を歌ったものである。少し我侭な姫を守るため知略を尽くして悪人を倒し、安全な場所に行く為に冒険するという内容だ。それ以上に何があるというのだ?歌詞に出る主人公は姫を守ったかどうかはわからない。その歌は途中で終わるのだから。想像を掻き立てる上手い手法だと思う。そう、歌詞をちゃんと読めば、少年は姫を守るため必死なのだ。俺は彼のそんな姿勢を賞賛する。ピンポンパンポ~ン♪※まことに残念ながら、大人の事情で歌をフルで聴かせる訳にはいきません。 皆様は中庭で行なわれた盛大な踊りと悲劇をダイジェストでお楽しみ下さい。物凄い光景だった。三百人以上の兵士達が全員、己の股間を持っている。何故持っているのかは兵士達には分からない。ただ、自分の息子を何故か持っていた。突如、兵士達は自分が持っていた息子に違和感を覚えた。何人かが自分の息子を確認していた。酔ってるとはいえデリカシーがない。「うおっ!??モッサモサになっとる!?」自分の股間を見て驚愕の声をあげる兵士。実に見苦しい。「ぎゃあ!」「おうふ!?」突如兵士達は自分の近くにいた同僚の股間を蹴り始めた。突然蹴られて悶絶する兵士達。酒に酔っての喧嘩はもはや風物詩である。「や、やめろ!やめてくれ!うわあああああ!!」ついにその喧嘩は剣を持ち出すまでになった。追い詰められ悲痛な叫びをあげる兵も出てきた。バチーン!!という音が一斉に響く。自分で自分の息子を痛めつけ悶絶する兵士たち。何故俺たちは今になって息子の訓練をしているのだろうか?「ぐわアアアアアアアアアアアアア!!!!」中庭を悲鳴が包みだすが、歌姫の声と音楽でかき消される。突然兵士達は自分の息子を刃物で痛めつけだした。何の苦行だろうか?痛いと分かっている。なのに何故そんなことをするのよ・・・「見てくれよ・・・これ・・・これが俺のだよ・・・」呻きながら自分の目の前に転がるモノを見る兵士。その声を聞くものは誰もいない。そして彼は意識を失い、目の前に転がる自分のモノが顔につくのだった。兵士達の呻きは既に聞こえず、中庭は阿鼻叫喚の地獄絵図とかしていた。すでにキュルケ達の踊りで興奮していた彼らのゲイボルグは使い物にならなくなっていた。彼らは何故か、その使い物にならなくなった槍をしっかりと掴んで倒れていた。ダイジェスト、終了。『それでは、みなさん、さようなら~』歌姫の歌は終わった。兵士達は、彼女の歌に感動して失神している。・・・股から血を流しているのが大多数ではあるが。歌姫は満足した様子で俺たちのほうに戻ってきた。基本はルーンの奴なので、彼女は俺を見て言った。『私の歌は、ガリア兵士に届いたようですね。流石私』「曲のチョイスがえぐ過ぎる・・・」シルフィードはガクガク震えて涙目で、俺の分身は股間を押さえて震えている。『携帯電話』の特殊能力。それは内蔵された曲をこの歌姫が歌ってくれるのだが、歌ごとに効果がある。俺に効果があったり、味方に効果があったり、敵に効果があったり・・・今回の歌の効果は、対象に『歌の通りに踊る』ことを強制する効果があった。・・・どう考えても対男性用兵器である。「・・・まあ、これで兵士のほうはどうにかなったな」「・・・どうすんのこれ?死ぬんじゃねーの?」『ああ、歌の効果自体は1日経てば治りますので、あの人達は今日一日タマなしですが、夜が明けたらタマは復活するようにしてますよ。生命の神秘ならぬ歌姫の神秘です』なんだーそれなら安心だね!俺たちは気絶した兵士達を放置し、着替えてアーハンブラ城の天守へと向かったのだった。(続く)【ボヤキのようなもの】『いくら私がフリーダムでも、最低限の常識は弁えているんですよ』「今回は酷すぎる・・・お股が痛くなる」