領地持ちになったはいいが、どういう場所なのかを知りたい。一応領主である以上、領地の特徴を見物して置かなければならない。アンリエッタは俺が騎士になった際に渡すべきだったと一枚の羊皮紙を手渡した。内容は召使を一人、俺に付けよというものだった。・・・・・・召使ねえ・・・?そうは言うものの、心当たりはない。シエスタは学院が雇うメイドだし、ジェシカは魅惑の妖精亭になくてはならない人材である。ルイズは主だし、キュルケは家柄は向こうが上。ギーシュは隊長だし、モンモンはギーシュの嫁。タバサは行方不明だし、テファをまだ呼ぶわけにはいかない。・・・考えてみたら友好関係は偏っているな、俺。・・・雇っても全く問題ない人材は・・・まあ、領地に行くのはまだ先だし、ゆっくり考えるか。副官の人ってどういう人だろうか?それが気がかりだな。ルイズは達也のいきなりの出世に初めは戸惑った。だが、よくよく考えれば、これは国の若返りのチャンスではないか?自分の家のように跡取りがいない貴族はトリステインには意外と多い。コイツを起爆剤として、継承権争いとは無縁だった次男以降の者達は、結果を残せばそれに見合った報酬が与えられると思うのでは?でもまあ・・・七万人を一人で壊滅させるなんて普通は無理だし・・・・・・それでも若年層の奮起の要因にはなるだろう。多分。何にせよ、使い魔は土地持ち貴族にランクが上がった。これは主としても喜ばしいことである。土地を持つことはいいのだ。問題は近衛隊副隊長という役職である。陛下直属の近衛隊とか、普通に表舞台に立つから!妙に有名になってしまうんじゃないのか?そうなるとどれだけの嫉妬を背負う事になるのだろうか?ルイズは知らない。達也の元の世界でも彼を疎む存在がいて、彼はその存在を熟知している事を。ルイズは知らない。達也はそういう相手に対してはわりと容赦なしである事を。自分を嫌っている相手を好きになる必要はないというのが因幡達也の考えである。だからと言って仲良くなる必要もないと思わないのも因幡達也という男なのだが。達也に褒美を出してから、アンリエッタは執務室で一人、物思いに耽っていた。近衛隊副隊長の座と地方の領主。同時に拝命するにはあまりにもバランスが悪い。まあ、近衛隊は本当は隊長職を用意していたのだが、達也がグラモン家の末っ子を推薦してしまった。ギーシュ・ド・グラモン。彼もサウスゴータ一番槍並びに多くの建物の解放という多大な戦果をあげている。近衛騎士隊の隊長を勤めるにはまだ経験が必要とも思えるが、そもそも戦争嫌いの達也の方を隊長にしようとする方が可笑しいことである。ギーシュはグラモン元帥の息子という後ろ盾もあるし、彼が隊長として、達也が副隊長として近衛騎士隊の顔となれば優秀な若い人材は集まってくるだろう。・・・だが、近衛騎士隊の役職のみではまだ緩い。彼をトリステインに縛り付けるにはまだ何か必要と考えた。そこで領土を与えると言う発想が出るのがアンリエッタが王族であるという証である。おそらく近衛騎士隊副隊長だけだったら彼は仮病でも何やら理由をつけて政を隊長のギーシュに全て押し付けそうである。騎士を拝命する際、『汝の魂の在り処・・・その魂が欲する所に忠誠を誓いますか』と言って騎士にしてしまったからな・・・ぶっちゃけ彼が騎士として己が信ずる行動をした所で、アンリエッタは文句を言えないのである。しかし、領地を持たせればどうだろう?簡単に元の世界に戻りはすまい。何故なら自分の城なのだ。名残惜しいに決まっている!アンリエッタは失念していた。達也最大の悲願は自分の城ではなく、自分の店を持つことである。アンリエッタは失念していた。達也には想い人がいる事を。達也はアンリエッタに、想い人の姿を見ていて、更にすでに別人として割り切っていた事を彼女は知らない。役職や位や土地を与えた所で、達也の帰る場所はいまだ三国杏里や家族のもとである事を。かつてアンリエッタは、達也にとっての杏里をこう分析していた。『恋人ではないので、自分にとってのウェールズとは違うようだ。ならば、付け入る隙はあるはずだ』実際はアンリエッタとウェールズより、達也と杏里の縁は深いし長い。要はアンリエッタは達也の想いを甘く見ていたのである。・・・実は現地妻もいいかなと思ってはいるが。それは最終手段である。彼の心のメインヒロインを何とかしないと、アンリエッタが如何しようと、達也は帰る方法が見つかれば帰る。ただ、彼の中ではテファにウエストウッド以外の世界を見せるまでは帰らないという暗黙のルールがあったりする。とりあえず最初はド・オルニエールという土地がどのような場所なのか見ておきたい。副官との挨拶を終えた後に、その副官と共にド・オルニエールに向かうらしいが・・・副官の到着を待っていると、俺の前に銀髪で整った口ひげをした老紳士が姿を現した。彼は俺を見定めるような視線で見ている。「・・・タツヤ・シュヴァリエ・イナバ・ド・オルニエール殿だな?」「・・・長い名前ですけど、その通りです」「私はこの度、君の副官を勤めるゴンドランだ。よろしく頼む」視線が「こんな若造が上司なんて・・・」という視線っぽい。まあ、恨むなら俺じゃなくて王宮の人々を恨んでよ・・・。どうやら俺はこの老紳士と共にド・オルニエールへ向かうようだ。ジェネレーションギャップが心配でならない。正に新入社員と定年間近の社員の邂逅である。団塊の世代は俺より少し上くらいの新入社員や若手とコミニュケーションとる時は殆ど酒の力を借りてやろうとすると聞くのだが、俺はそういうやり方は既に時代遅れであると思っている。それは自分が酒の力を借りないと人とコミュニケーション取れませんと宣言しているものではないのか?素面でぶつかれよ。若い奴のプライベート削ってまでする事か?交流なら昼休みとかメシの時に出来るじゃん。仕事だけの付き合いで良いのかとか言う奴いるけどそれでいいじゃん。無駄に人のプライベートに土足で踏み込むのは失礼千万だって、母方の祖父が酒飲んで熱弁していた。・・・家の親父は母のプライベートを付回してストーカー扱いされたんだっけ・・・当たり前だが。俺はこのゴンドランという人と上手くやっていきたいし、仲良くもなりたいが、それはあくまでも仕事上のパートナーとして・・・ってあれ?城に住む事になったら、この爺ちゃんとも住まなきゃならんのか?ああ、そういうことなら肩揉んだり腰揉んだりしてやらなきゃな。それぐらいはしてやろう。姫が選んだらしいからそれなりの有能な人物なのだろう。そういう人は大事にしなければならない。「若輩者ですが、よろしくお願いします」俺がそう言うと、ゴンドランは虚をつかれた様な表情になった。平民上がりだから礼儀知らずと思っていたのか?俺は先人にはある程度の敬意は払うぞ?しかもこれから色々頼む事になるんだし、印象は大切だろうよ。最初に見た時は、「何だこの覇気のない若造は」と思った。この若造が七万相手に戦ったとは信じられなかった。こんな若造が上司だなんて、かなりの貧乏くじではないのか?猛烈な不安に襲われる。陛下は何を思ってこの若造を・・・?『若輩者ですが、よろしくお願いします』・・・まあ、一応の礼儀は出来てはいるが、かなりぎこちない。貴族出身のような高貴さは感じられない。・・・まあそれは平民出身だから仕方がないのか・・・ゴンドランは溜息をつきたくなった。二人の気持ちはこの時見事にバラバラだったが、馬に乗って1時間後、彼らの心は一つになる。ド・オルニエールの領地はトリスタニアの西、馬で一時間の距離だった。「一万二千エキューの土地の筈なのに・・・見渡す限りの荒野ですね」「十年前までは豊かな畑や牧用地や養魚池がそこらにあった筈だが・・・先代領主が亡くなってから何が起こったのだ・・・?」「此処の名物は葡萄畑だった筈ですよね?何処にもそんなものは・・・あ、人がいた」雑草のみが生えた荒野で、俺達は茫然としていたのだが、とりあえずこの村の現状を知るであろう農夫に話を聞いた。此処は確かにド・オルニエールの土地であり、先代領主には跡継ぎがおらず、この土地は国管轄になったが、若い者はこの土地を見捨てて街に出て、今は老人ばかりになり、その老人達が細々と土地を耕している状態だと言う。先代領主が住んでいた屋敷も荒れ放題であり、ガラスが割れ、扉や屋根には蜘蛛の巣とツタが絡まっており、壁はひび割れていた。あまりに適当、あまりに酷い。本当に一万二千の年収がとれるのかよ!?無茶だろ!「これは酷いな」ゴンドランが呆れたように言う。彼の気持ちは痛いほど分かる。「ゴンドランさん」「む?」「領地内を見回ってみましょう」ボロボロ屋敷は今はどうでもいい。まずは領地を馬で見回る事が先だ。俺は今、猛烈な不安に襲われている。・・・ここの領主になるんだ。あいさつ回りをしてもいいだろう。「普通は領民が挨拶しに来る方なのだがな・・・」「確認したい事があるんです」俺達は馬に跨り、一通り、領地を散策してみる事にした。散策してみると、森の中の小さいが綺麗な泉や、谷、一面の花畑などが見られた。勿論、手入れされずに放置された畑や空家なども大量にあった。十年前まではここには人が沢山いたのだろう。先代領主の統治が良かったのだろうか?土地自体は豊かなのか、領民の家は平民なのにでかい。田舎の家は凄いでかいのは俺の世界の話だが、あのような感じである。この地の農業は馬鹿に出来ないみたいだな。住民達は俺が新しい領主だと知ると、気さくに接してくれた。俺が平民出身だといえば、孫の出世を喜ぶように接してくれる。なお、ゴンドランとも、先々代の国王統治時代の事を懐かしむ話で盛り上がっていた。・・・まあ、年も近いしね。ゴンドランさんも此処の空気は気に入ったようだ。領民の雰囲気は確かに良い。土地の素材も良い。・・・・・・で?肝心の素材がいない。俺とゴンドランはボロボロの屋敷を街の業者に頼んで、俺が住めるように修繕する事に決めた。「あれ?ゴンドランさんはこの屋敷に住まないんですか?」「この屋敷は領主の君の城だ。私は私でこの地に屋敷を造る。既に業者も手配している。君は心置きなくこの屋敷を使いたまえ。まあ、互いに住めるようになるには一月以上はかかるだろうがね」「それまでに召使を一人二人決めとかなきゃいけないのか・・・」「・・・何?君は土地持ちなのに、召使がいないのか?」「いやあ、戦争中で、決める暇がなかったんで・・・」「そうか。ならば出来るだけ早く決めなさい。貴族という者は体裁というものも大事だ。一国一城の主になる君は特にだ」「肝に銘じますよ。あの・・・ゴンドランさん・・・」「何だね?」「ぶっちゃけて言いますと、この領地、あと数年で滅びます」「何故そう言い切れる?」「この領地内で一番若いのは・・・俺です」「・・・・・・あ」「この領地は数年後、過疎によって自動的に死にます。見回っていて、この土地に俺と同年代はおろか、子供の姿さえありません。ゴンドランさん含めて高齢者しかいませんでした。農夫さんの話を聞いたときはまさか此処までいないとは思いませんでした。この土地を数十人の高齢者が耕せると?無茶です。若い力がある程度なければ、その地は衰えていくばかりですよ」「ではどうしようと思うのかね?この土地の強みだった葡萄は今や細々としか出荷されていない。土地を耕そうと思っても若い人材がいない。そもそも人はこのような荒地に定住しようと思わない」「やせ細った土地とはいえ、ある程度の作物はとれるようです。また、此処の土地の葡萄は通に評判がいいのでしょう?ならばそれをもっと宣伝しましょう。美味しいものがある場所に人は集まります。あと折角綺麗な泉があるのですから、そこから水を引いて治水を行ないましょう。ついでにその泉の水を『ド・オルニエールの美味しい水』とか銘打って売りに出せばいいでしょう。最初の目標は、『ここに住めば餓える心配がない土地』です。宣伝はゴンドランさんのツテや何かで、新聞社に売り込みとか出来ませんか?まずは綺麗な水と葡萄と此処で取れる作物を宣伝しましょう。後は観光地としてあの花畑および、泉を紹介して、若いカップルを呼び寄せます。この2つは観光地としては全く問題ありません。あとは・・・子供を生む事の出来る人々が必要ですね。・・・放置された空家をついでに修繕して、領地の為に働く事を前提にして家賃ゼロで釣りますか。実際こっちとしては『来て貰う』方なんですから、この程度の餌は必要だと思います。・・・第一段階はここまでですね。まずは人が集まる為の種を撒きましょう。こんな山に囲まれた土地に来る人がいるのかは運ですが」「治水の為の業者も必要ですな」「そうですね。まあ、食料と水が潤沢だったら人は集まります」「そんな好条件だったら、ならず者が出てくるのでは?」「家賃ゼロは夫婦限定です。住みたいなら嫁もセットでもってこいとでも宣伝します。独身はまだ此処にはこない方がいいと思いますし」まあ、働きたいと言う人材ならば追い返しはしないが。本当は此処まで口出しするつもりはなかったのだが、この土地に住む人たちは若い人がいなくて寂しいみたいなことを言っていた。領民の願いは領主は聞いてやるべきだろう。人が増えて土地も豊かになれば、簡易的なコンビニもつくってもいいし、平民向けの学校も作っていいんじゃないの?あと人が増えれば商業も工業も発展するじゃん。そうすれば更に豊かになるよな?まあ、指導者に問題がありすぎるが、ゴンドランさんを見る限り、間違った判断はしそうになさそうだ。ある程度人が集まればこの領地の兵を募って、侵略対策すればいい。まだ其処までの域に達してはないが。・・・まあ、高校生の俺が考えつく内政(笑)など所詮こんなものだ。よくよく見れば穴だらけだろう。でもやらないよりマシだろうよ。折角貰った領地が過疎で滅んだじゃ笑い話にもならないからな。俺は細かい事はゴンドランと軽く打ち合わせをした後、とりあえず屋敷が住めるようになるまでは魔法学院にいる事を伝え、ド・オルニエールを一旦去った。・・・・・・とりあえず、テファや子供たちが住むだろう空き家は予め『予約済み』の家第一号にしといた。忘れてないよ?さて、俺が例え領地もちの貴族様になろうが、俺とルイズの関係はあくまで『主と使い魔』である。土地を持とうがそもそも公爵家の三女とはまだ差があるわけです。俺はまだ男爵などの爵位持ちじゃない。領地を持ってるので下級貴族ではないらしいが。まあ、例え爵位持ってもかわらんだろうが。「ところでタツヤ、君は自分の馬を持っていないのかい?」「何時も借り物だなそういや」ギーシュの質問にそういえばと思った俺。だが、わざわざ買いに行くのは面倒だな・・・「それにいつまでもあの『シデンカイ』を野ざらしにしておくのかい?」「格納庫も作らなきゃなあ・・・」言えばコルベールは喜んで作りそうなので頼んでみるか。当面は馬と召使の工面である。そういえば、魔法学院に戻ってきた俺に対する周囲の反応は様々だった。いや、教師陣は皆、一応祝福してくれた。なんでも「一応生徒よりちゃんと授業を聞いていたから、そんな人が出世すると嬉しい」らしい。特にオスマン氏、ギトー、コルベール、シュヴルーズは喜んでくれた。『ようやくこちらの世界に骨を埋める決心がついたようじゃな』『いいえ、全然』『現地妻をまだ見つけていないからそんな寝言をほざくのじゃな。いや、この場合嫁さんじゃな。さっさと身を固めたらどうじゃ?くっ!ここにミス・ロングビルがいれば無理やり結婚させていたのに!』『元部下の進路を勝手に決めないでください』オスマン氏はまだフーケに未練があるようだった。『治める領地はド・オルニエールと聞きました。あそこの葡萄で作るワインは格別です。ということで格安で売ってください』『それはある程度、採算が取れるようになってからにしてください』『・・・話には聞いていましたが厄介な場所のようですね』『水は美味しいのでそれは格安で売りますよ』『有難う御座います』だからって翌日から注文するなよ。『格納庫?よいとも!』『話が早くて助かります』『で、その格納庫にはどのような装置を付けるんだい?』『・・・普通で良いんですけど』この人は作ったものに何かギミックを付けないといけないのか?『まあ、これで貴方もミス・ヴァリエールも鼻が高いですわね』『ルイズは相対的に自分の地位が向上したと言ってます』『正に貴方は彼女の幸運の使いですね』俺の幸運は吸い取られてるけどな!教師陣は良かったが、生徒陣からはやっかみの言葉も聞こえた。平民の癖にとか聞こえてくる。なお、ギーシュとの決闘の際に手伝ってくれたギーシュの友人(笑)たちは、『俺達はお前がいつかやる男だと思っていたよ』『どんな手を使って七万を懲らしめたんだ?』わりと祝福してくれたので泣きそうになった。というかマトモに戦ったとは思わないんだな。ちなみに厨房の皆さんは初めは冷ややかだったが、俺が歩んできた経緯を知ると深く同情してくれた。断っても『なれよ』の一点張りだから仕方ないじゃん。威張るつもりは毛頭ないし、貴族になったからって此処の厨房のメシが美味い事には変わりない。「坊主・・・やはりお前は何処まで行ってもそのまんまの坊主だなぁ」「立場が人を変えるとか言うけど、ありゃ嘘だね」「お前さん見てるとそう思うよ」久々の特製シチューは素晴らしく美味い。・・・さて、腹も満たされたし、そろそろギーシュのところに戻ろうかな。俺はヴェストリの広場に向かう為立ち上がった。今日は騎士隊の訓練の初日である。「・・・で、シエスタ。君は何を期待した目で俺を見てるんだ?」「タツヤさん!何故私に声を掛けてくださらないのですか!?召使を探していると聞いて今までワクワクしてたんですよ!?」「何でお前がワクワクしてんだい?お前はこの学院に正式に雇われたメイドだろうが」「はい、でも召使は女王陛下直々の仰せです。タツヤさんが望むならば・・・」「いいのか?給料はおそらくこっちの方がいいと思うがなぁ」「いいえ、いいんです。タツヤさんを助ける事が出来れば、私にとってこれ程の喜びはありません」「いや、君はそれでいいかもしれないが、タルブの実家からすればお給金は高い方がいいだろう」「正論過ぎるな・・・」「相棒、いいじゃねえか。メイドの嬢ちゃんはつまりは相棒を放っておけねえからお世話がしたいってんだろうよ。そのご好意にゃあ答えてやりなよ」「親かよ・・・まあ、シエスタに問題がないならいいよ、別に」「まあ、断られたらこの書類を突きつけただけなんですけど」シエスタが俺達に見せたのは下にオスマン氏の署名がついたアンリエッタの名前が書かれた書類だった。シエスタの話では今朝、王宮よりオスマン氏の元にこの一通が届き、メイド長に、学院内より選んだメイドを一人選んで、俺に付かせろと命じたらしい。そんでもってメイド長はシエスタを選んだらしい。仲がいいかららしい。適当である。「そんなわけで、よろしくお願いします!」ぺこりと頭を下げるシエスタ。「よーし、今度は生徒で暇そうな奴から声を掛けるか」「やめて!タツヤさん!折角の私の存在意義を潰さないで!」いや、お手伝いは一人じゃ寂しいだろうよ?(続く)【ただのボヤキ】番外編でルーンの擬人化で女体化をやって欲しい?そんな一大イベント番外編でやるわけないじゃない。