大怪我をしているらしい女性を背負い、俺は暗闇に包まれた通路を歩く。カンテラの光があるから暗闇の中当てもなく彷徨うよりは遥かにマシである。早く此処から脱出しないとこの女性が衰弱して面倒なことになる。歩いているとやがて光が漏れている壁がある場所に辿りついた。しばらく歩いていると突き当たりに光と人影が見えた。一人じゃない。結構いる。俺は周りを照らしてみた。水が流れている。臭いがすることからたぶん下水道を俺は歩いていたんだなと思った。ということはアレは排水溝の出口か!やっとこの暗闇の迷宮から出れる!「誰か出てくるぞー!」出口からそんな声が響いてくる。俺はその声に対して叫んだ。「すいません!女性が大怪我をしています!どなたか医者及び水のメイジの方はいらっしゃいませんかー!?」俺は叫びながら出口に近づく。出口には衛士の格好をした男が待っていた。男は俺と俺が背負った女性を見て驚いている。この人は見たことがある。確かアルビオンから帰ったときに王宮で会ったモノが違う隊長さんだ。「お前は、少年!?何故此処に・・・って、アニエス殿!?」「メイジのおっさんに暴行されてたようなんですが・・・助かりますか?」俺はアニエスとかいう女性を隊長さんの部下に引渡して隊長に聞いた。外に出て気づいたが、アニエスは本当にボロボロで、上半身は殆ど裸のような状態で火傷と切り傷まみれだった。ひでえことするな・・・。「アニエス殿はお前が思っているほど柔な人ではないさ。・・・ところで、彼女を暴行したという男は?」「この先で自分のマントに拘束されて放置されてます。生殖機能は死んでるかもしれませんが、生物学的には余裕で生きてると思います。あ、あとメイジだったようなので杖は回収しときました」俺は回収したメイジの杖を隊長さんに渡した。「どんな状態になっているのかと想像したら同情を禁じえないな。よし、では内部の捜索に向かう!目標は拘束されたままと思われるが油断は禁物だ。捜索隊、内部を捜索せよ!」隊長さんがそう言うと、彼の部下たちが続々と暗闇の通路に入っていく。これであの婦女暴行男の命運は尽きたな。そういえば姫は何処に行ったんだろうか?なんだか狐狩りするとか言ってたけど、上手くいったのだろうか?「少年、お手柄だったな。どうやって地下通路に入ったのかは知らんが」「それは俺が知りたいです。姫様はどうしてます?」「恐らく今、逃亡していた裏切り者の捜索の指揮を執っているはずだが・・・もう間もなく終わるだろうな」「そうですか。上手くいってるんですね、それは良かった。それじゃあ、俺はこれで戻ります。仕事がありますし」「そうか。ならばラ・ヴァリエール嬢によろしく伝えてくれ。道中、気をつけて」「承りました。それでは」服が血まみれなのは何とかして欲しいが、脱げばいいだけだし。お手柄といわれて気分もいいが、帰ったらおそらく怒られるんだろうな・・・。魅惑の妖精亭に戻ったら、洗い場ではルイズが皿洗いをしていた。手つきはつたないが、皿を割る気配はない。俺は本来の仕事をするために洗い場に近づいた。俺はルイズの隣に立って俺は皿洗いを始める。ルイズは俺の姿を確認すると、俺の足を蹴ってきた。「痛ェ!?地味に脛に入った!?」「おお、死なない・・・本物のようね」どういう確認の仕方だ。ルイズは俺が本物だと分かると、小言を言いはじめた。「アンタ一体今まで何してたのよ?誤魔化すのが大変だったのよ?」「いや、突然やんごとなき所から依頼が入ってさ。色々あって最終的には婦女暴行犯から一人の女性の命を救った」「その色々が凄く面白そうなんだけど」「では教えてやろう義妹よ。昨日俺は同世代の女と寝たぞ」ルイズは噴出し皿を落としそうになったが、何とか落とさずに済んだ。「アンタ情報収集に行ったんじゃなかったの!?」「情報収集?」「何言ってんのお前?みたいな顔で言うな!?」「あー、でもこの街付近で、狐狩りするって噂があったよ。もう終わったらしいが」「・・・やっぱりよからぬ事を考えてる奴はいたのね・・・」もともとこの酒場で働くのも、そんな噂がないのかを調べる為だ。ルイズがこの店に馴染みすぎて忘れそうだったが。アンリエッタとの一夜、儚き夢のようなご褒美タイム、そして婦女暴行現場遭遇・・・本当に昨日から今日にかけては色々ありすぎだろう。そういえばあの喋る剣はどうした?消えたらしい分身が持っていったのか?一体何したんだ俺の分身?達也が自分の目の前で消え去ったのを呆然と見守るしかなかった杏里は、達也が持っていた荷物を持ち、とりあえず因幡家に運んだ。「お帰りなさい、御免ね、杏里ちゃん。瑞希達も付いて行く事になっちゃって・・・」達也の母が杏里を笑顔で出迎える。しかし、杏里の様子がおかしい事に気づく。更に、達也の姿が見えないことにも気づいた。「杏里ちゃん・・・達也は・・・?」杏里の表情が死人のようになっている。杏里は顔を上げて、達也の母にぽつりと言った。「また・・・何処かに行っちゃいました・・・」「何処かって・・・ええ!?どっちに行ったの?」「・・・分かりません・・・分からないんです・・・私にだって・・・訳がわからないんです・・・今日会えたのは魔法かなにかのお陰だって・・・そんな馬鹿なことを言って・・・信じられます?アイツ、私の目の前から・・・すう・・っと消えていったんですよ・・・意味が・・・分かりませんよ・・・」「杏里ちゃん・・・」杏里は頭を抱えてしゃがみ込む。その目からは次々と大粒の涙が溢れていっている。彼女の嗚咽に気づいたのか、達也の父や妹たちが覗き込んでくる。「一方的すぎますよ・・・一方的に『大好き』とか言って返事も聞かずに消えるんですよアイツ・・・本当に・・・馬鹿・・・なんだから・・・」搾り出すように呟く杏里。その杏里の姿を見て、達也の母は彼女が嘘を言ってるとは思えなかった。消えた?どういう事だ?杏里が言うように意味が分からない。だが、杏里は消えるのを見たと言う。どうやら、また息子が長いこと帰って来そうにないということが分かった達也の母の心は悲しみに包まれるのだった。そして、兄がまたいなくなった事を悟り、妹たちが泣き叫ぶ事になるのはすぐのことである。婦女暴行騒動から三日後。俺は相変わらず皿洗いをしていた。店長からもう体調はいいの?と腰を振りながら聞かれ、吐きそうになりながらも、もう大丈夫という事を伝えた。「で、本当のことを教えて欲しいな」好奇心旺盛な店長の娘、ジェシカが俺の仕事中に聞いてきた。帰ってきた頃からこの調子である。まあ、俺がいなくなったことでルイズなどが皿洗いをしなければならない羽目になったので迷惑をかけたのだが・・・正直言うことじゃないだろう?言っても信じるか?王女とデートごっこしてましたとか、実家に一旦戻ってましたとか、婦女暴行犯を偶然撃退しましたとか。俺も自分でも信じられん。だから風邪ということにしたのだ。「あたしにだけに教えてよ、ね、ね?」俺の腕に自分の腕を絡ませて自分の胸を押し付けるジェシカ。ふん、甘いな。それで誘惑しているつもりか?俺は昨日男として一皮剥けたのだ!その程度の誘惑攻撃では俺はビクともせん!というか、皿洗いに邪魔だからどいてくれませんか?「おのれ~、この一日で何があったというの・・・!あたしの誘惑攻撃が通用しないなんて・・・!」「くくく・・・教えてやろうジェシカ!お前の誘惑には品がないのだ!」「品・・・ですって!?」「お前の誘惑には恥じらいがないのだ!教えてやろう、ジェシカ!男って奴はアホだから、恥らう女に弱すぎるのだ!それがたまにならば更に良い!」自ら弱点を暴露している気がするのだが、気にはしない。しかしながら、これはある意味真理じゃないのかとも思うのだが。「お前の誘惑は確かに誘惑としては正しいが、ストレートすぎるんだよね」ジェシカはしばらく考える素振りを見せると、急にモジモジしはじめた。「じ、実はあたしがこんな風にしてやるのは・・・アンタだけなんだから・・・他の人には恥ずかしくってできないわよ・・・」流石、魅惑の妖精亭No.1。すぐに使いこなしてきた。赤く染まった頬、俯き加減な顔、モジモジとした動作。視線が軽くこちらを向いていないのがミソである。そしてジェシカは切なげな表情で俺を見上げる。この時体の密着度は心なしか上がっている。「ねえ・・・タツヤ・・・あたしに・・・おしえてほしいな・・・」「うん、完璧。じゃあ、お仕事に戻ってね」客ならばこれでイチコロであろう。しかし俺は此処で仕事してるから、店の商品に手を出す事はない。悲しい現実だが、物事は結構シビアなのである。店長に呼ばれてジェシカは渋々と接客に戻った。ルイズは相変わらずよく働いている。おそらくもうチップの数は2番目なんじゃないか?客からはみんなの妹と呼ばれているようだが、それでいいのか公爵家の三女。「いらっしゃいませ~」ルイズが今来た二人の客の応対をしに行っている。・・・ん?何やら驚いているようだが・・・。ルイズは厨房にいる俺に向かって手招きしている。何だ?ルイズは俺に二階に来るようにジェスチャーした。何かあったのか?・・・キュルケ達がツケの分払いに来たのか?ルイズは二階の客室で緊張していた。何せ先程来たフードを被った客は、アンリエッタとその御付のアニエスと名乗る騎士だったからだ。呼んだはずの使い魔の達也はまだ来ていない。店長とジェシカに捕まっているのだ。しかしこのアニエスという女性騎士は胴着にタイツにブーツという簡素な格好だ。ルイズがアニエスの簡素な格好を気にしていると、アンリエッタが口を開いた。「ルイズ、まずは貴女にお礼を。あなたの集めた情報は、本当に役立っています。わたくしの評判を何の色もつけずにそのまま送ってくださいます。耳に痛い言葉もありましたがね・・・私は未だ若輩の身。批判はちゃんと受け止め、今後の糧としなければいけませんね」ルイズは頭を下げた。街には確かにこの姫に対する痛烈な批判もあるのだ。ルイズとしても幼い頃からこの姫のことを知っている身として、不安な所はある。「次にお詫びを申し上げなければなりませんね。すみません、勝手にあなたの使い魔さん・・・タツヤさんをお借りしていました」「ええ!?そ、そうだったんですか!?アイツ姫さまと一緒にいたんですか!?どうして私に相談しなかったんですか!?」「貴女には余りさせたくなかったんですよ、ルイズ。裏切り者に罠をかけるような汚い任務は・・・」「いや、貴女が最初に書いてた花売りも充分汚い任務ですから」「花売りは汚い任務なのですか?」ルイズは頭を抱えたくなった。知らなかったのかよ!?まあ、街の噂で裏切り者はリッシュモン高等法院長だということはルイズも知っている。リッシュモンがアルビオンの間諜であり、さらに婦女暴行犯だったことは既に街のトップニュースになっている。ルイズは溜息をついてアンリエッタに言った。「姫様、私達の間では隠し事をしないというのが幼い日からの約束ではありませんでしたか?」「・・・そうでしたね、ルイズ。黙っていた事は謝ります。これからは全て話す事に致しましょう。わたくしが心の底より信用できるのは、この部屋にいる方々とあと一人だけですからね」「あと一人?」「貴女の使い魔さんですよ、ルイズ」「ああ、タツヤですか・・・」ルイズは使い魔の少年のことを思い浮かべた。信用に値する人物かは別として、何で此処まで言われるぐらいになったのだろうか?アイツは悪い奴ではないと思うのだが、全面的に信頼と言われると疑問符がつくような奴だ。道に迷うし。アンリエッタと一緒にいるとき何かあったのだろうか?「あ、紹介がまだでしたね。この方はわたくしが信頼する銃士隊の隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン殿です。女性ですが、剣も銃も男勝りの頼もしいお方ですわ。メイジ相手に単身で臆することなく挑む腕を持つ・・・英雄の素養を持った方です」「お褒めが過ぎます、陛下。私などまだまだ未熟。今回の一件で痛感いたしました」「それはわたくしがリッシュモンの実力を過小評価していたからですわ。貴女は悪くありません」リッシュモンはあの後、チェルノボーグの監獄に連行されていった。連行されるリッシュモンがアンリエッタに言った言葉がアンリエッタの脳裏に焼きついて離れない。『陛下。あの貴女の犬を見て思いましたよ。遠からずこの国は貴女の馬鹿げた想いによって・・・死ぬとね』何を馬鹿なと思った。しかしリッシュモンの自信に満ちた表情がアンリエッタの目に焼きついている。実際こちらの被害は酷いものだ。しばらく銃士隊は機能できないまでにやられたのだから。それもリッシュモンと数人のメイジによってである。アニエスもまだ鎧を着れるまでに回復できていない。歩くのがやっとの状態なのだ。悪いイメージばかり頭に浮かぶ。国が自分のせいで滅ぶ?そんな事はない、そんな事はないと思うが、どこかに漠然とした不安があるのだ。あのリッシュモンに言われたときから。ウェールズの敵を討つのが何が悪いのだ?国土を汚した者達に鉄槌を下すのがいけないというのか?アンリエッタがそのようなことを思っていたら、部屋のドアがノックされる。「ルイズー?ここかー?」気のぬけたような声がする。ルイズが立ち上がり、来訪者の対応をする。扉を開けたルイズの顔は怒っていた。「遅かったじゃないのよ!姫様を待たせるなんて打ち首モノよ!?」「店長とジェシカに捕まった。お前も知ってるだろうよ。あの人たちの漫才は長いんだよ・・・って、姫様?何やってるんですかこんな所で?」俺は今になってアンリエッタの存在に気づいた。「タツヤさん・・・お邪魔していますわ」俺を見て微笑むトリステイン女王。「いや別にここに住んでいるわけじゃないからいいんですけど・・・」俺は視線をアンリエッタの隣に座っている女性に向けた。あ、この人、あの婦女暴行の被害者の・・・「どうも。怪我の具合はどうですか?」「・・・何故貴様はあの時あの場所にいた?」いきなり殺気を込められる筋合いはないんだが。そういえばこの人、気絶する前にあの男を殺さなければとか物騒な事を言っていたな。「わけも分からずに暗闇に放り込まれて彷徨っていたら火が見えたから灯りを灯す為に来て、火をくれと言った相手は少し前に自分が下敷きにしたメイジだった。驚いた拍子に彼の生殖機能は破壊され、俺の松明用の木は折れ、絶望してた所にカンテラが都合よく落ちていて、嬉々として拾ったら死にそうな貴女がいたんです。貴女こそあんな暗いところでナニやってたんですか。殺さなきゃとか物騒な事言ってたし」「・・・何故・・・貴様はあの男を・・・殺してくれなかったのだ・・・!」親の仇を見るような目とはこのことのような目でアニエスが俺を見る。おいおい。この女は何を言っているんだ?アンリエッタは止めようとしないし。と、思ったらルイズが口を挟んだ。「ばっかじゃないの?何でコイツがリッシュモンを殺さなきゃいけないのよ?アンタが何をリッシュモンにされたかは知らないけど、アンタの私怨に私の使い魔を巻き込まないでよね」「私怨・・・だと」「見れば分かるわよ。今の貴女、どう見ても普通じゃないわ。話を聞いていれば、アンタはコイツに感謝をすれど、恨む筋合いはないでしょう?だから言ったのよ、ばっかじゃないとね。殺してくれなかった?何言ってんの。これからどうせあの男は国を売ろうとした罪で公的に裁かれるわよ。何でそんな奴を何の関係もないタツヤが裁かなきゃいけないのよ。アンタの個人的な恨みなんてこっちからすればどうでもいいの。同情はすれどね」「いいじゃんもうさ。あのおっさんはどうせ社会的には死んだも同然なんだから。俺とすれば貴女が生きてて良かったとしか思ってないよ」「アンタの話なのに、アンタは本当にどうでも良さそうね」「もう解決した話を蒸し返して嫌な空気になってどうする義妹よ」「この場で義妹発言は空気が凍るとは思わないの?」「お前だけの空気が凍るだけでそれ以外の空気は和むだけだ」「和むかーー!!この!この!いい加減義妹扱いはやめなさいよね!」「そーだねルイズちゃん」「ちゃん付けも辞めろー!このー!頭に置いてる手をどけなさい!殴れないじゃないのー!うがー!」ルイズは先程から両手両足をぶんぶん回してムキー!と言っている。俺が右手で彼女の頭を抑えている為攻撃が届いていないのだが。俺の世界の伝統芸能である。これも主と使い魔のスキンシップではなかろうか。戦争やら復讐やらきな臭い話なんて俺やルイズには似合わない。こうして平和に日々を過ごせれば本当はいいんだけど。というか、一学院生のルイズが戦地に行くとかあるのか?アンリエッタが俺たちの様子を見て微笑む。アニエスもそれにつられたのか優しげな表情になった。そうそう、女性はそういう顔の方がいいんだよ。暗い表情や憎しみに満ちた表情なんて美人が台無しだ。まあ、ルイズは怒った方が面白いのだが。その日は俺たちはゆっくりと祝杯をあげる事になった。なお、喋る剣は姫から返還されたことを追記しておく。その際、謎電波も来ました。『「歩行」レベルが上がった!ついでに「格闘」レベルも少し上がった!『歩行』レベルが一定値に達したので、新技能『空中走り』を習得しました。うん、空中を走れるよ。歩数にして10歩ぐらい。走り方は普通に空中を走るだけ。え?分かり難い?気にするな。滑空するような奴じゃないよ?勿論足音なんてないよ』・・・役に立つのか立たないのか判断に困るな。空中を走るといっても10歩なんてすぐやがな。祝杯をあげた翌日のことである。いつも通り俺は皿洗い。ルイズは接客に興じていた。今日もルイズは大人気である。いつもの光景となってしまったのが悲しい。『魅惑の妖精』亭前に、馬車が一台停まった。馬車からは一人の女性が降りてきた。女性は魅惑の妖精亭の羽扉を勢いよく開けた。「いらっしゃい・・・・ま・・・せ!??」ルイズの表情が固まる。「なかなか帰ってこないから学院に連絡しても不在・・・そうしたら最近話題のピンクブロンドの髪をした、妹系の酒場女の名前が自分の娘と同じ名前という噂を聞いたので来てみたら・・・まさか本人とは・・・」「・・・・・!!!・・・・・!??」ルイズは彼女を指差したまま開いた口が塞がっていないようだ。「ええ、驚きましたよ、ルイズ。実家に帰らず、何をしているかと思えば・・・このような場所で何をやっているのです?」「ひいぃ~!?これは事情があって~!」「事情は馬車の中でゆっくり聞かせてもらいますよ」「いやあああああ!?助けてーー!?タ、タツヤ!」「逝ってらっしゃい、ルイズ」「助けんか馬鹿者ー!?」「あら、彼もいるんですね。丁度良かった。彼にも用があったのです」突然店に現れたルイズの母親、カリーヌはルイズの首根っこを掴んだまま、笑顔で俺に手招きをしていた。こうして半ば強制的に俺たちはルイズの故郷、ラ・ヴァリエール家に強制連行されたのである。(続く)