因幡達也(いなば たつや)。高校2年生の16歳。運動神経、球技なんてなくなれば良いよ。成績、平均点をキープするのは凄い能力と思わんかね?先生の評価は『3』親の評価は『やはり旦那の(妻の)子だと思えるほどの性格』二人の妹の評価は『やさしいけど意地悪もする』友人の評価は『悪い奴じゃないが、最近裏切ろうとしている』『本人は否定しているが中二病である』・・・全てにおいて喜ぶべきか判断に迷う評価である。「名字が因幡だからラビットなんて呼ばれるんだ。せめて稲葉が良かった」とは本人の談。どうしろと。物事においてあまり動じず、順応性も早め。空を飛ぶ人々を見て「ドラゴン●ールの世界だと!?おのれディ●イド!」という反応だったのも、彼の早すぎる順応性あってのことである。すごいね順応性。・・・実際結構慌てていたのだが。人は彼を「変な奴」と評価するが、達也にとっては「変なのは俺ではない、世界の方だ!・・・とでも言えば良いのか?」と、その評価に結構傷ついているようである。「紳士は女受けが良い」という何処で取り入れたのか不明な情報を真に受けたせいでやたら「紳士的」に拘っているが、何か勘違いしている・・・というのが彼の友人たちの大方の評価である。そんな彼だが、この度、女の子とデートをすることになった。相手は幼馴染の三国杏里(みくに あんり)。高校2年生の17歳である。幼馴染とはいえ、女の子との初デートは、童貞坊やの達也にとっては大人の階段を上る事と錯覚してもおかしくないことである。デート当日、達也は意気揚々と自宅を出た。・・・・・・そこまでは覚えている。「俺はかつて他人の評価を気にしていたんだ。でも、クールに振舞えば中二病扱い、熱く振舞えば「ウザイ」と言われ、リーダシップを発揮しようとすれば集団によって潰され、かといって、黙ってれば「根暗」とか評価される。人の意見に同調すれば「自分の意見を言え」と言われ、言えば言ったで「生意気な奴」と評価される・・・そんなんだから、俺は評価など気にせず好きに生きるようにしているわけだ。そう言う訳だから、今すぐ使い魔の契約を外せ」「無理」「どうしてそこで諦めるんだよ!?そんなすぐにやる前から諦めるのはどうしてだよ!」「無理なモンは無理なのよ。アンタさっきから『ウザイ』わよ」「あーもうウザくて良いですー!粘着質な男と呼ばれようが、俺は契約破棄を主張する!」「開き直った!?」このような口論を帰ってからずっと続けている。時刻はとっくに夜になっている。俺は酷い男だと『アイツ』は思うだろう。女性を待ちぼうけにするなんて、紳士的ではない。今まで積み上げてきたフラグはバッキバキどころか粉砕レベルだ。だけどこれは不可抗力だろ常識的に考えて・・・いや、今まさに非常識的体験を俺は体験している訳なんですがね。窓から見える風景も日本ではまず見られないものであるし・・・何で月が二つあるのか。観光で来てみたいところとは思うが、何分緊急事態である。このトリステイン魔法学院についても思うところがある。石造りのアーチの門、石造りの重厚な階段・・・地震でも来たら多大なダメージを受けそうだと思うのは、余計なお世話だろうか。全寮制の学校である以上、耐震構造はしっかりしないといけないんじゃないのか?まあ、ここの方々には魔法という便利そうな力があるからいいのか?俺にはありませんが・・・「それにしても信じられないわ」それは俺のセリフでもある。「別の世界だなんて・・・」ルイズや俺が口論の末に辿りついた一つの仮説である。俺がいた世界に空を自由に飛ぶ魔法使いなんていたらそれこそ世界がひっくり返る。「俺たちの世界には生身で空を飛ぶ人間が普通にいたりはしないし、月は一つだ」正しくは地球の周りを回る月という名の衛星が一つあるというだけだ。ルイズたちの星ではそれが二つあるという訳だな。それも地球と月の距離よりもっと近くに。だって見た感じ距離近そうだもの。「別の世界だなんて御伽噺じゃあるまいし・・・」「お前の魔法は次元を越えて御伽噺の世界の住人を召喚したとでもいうのか」「御伽噺の住人なら何か凄い能力でも持ってなさいよ」「現実はそんなに都合よく出来てないんだよ・・・」「夢ぐらい見てもいいじゃない・・・」この問答もすでに何回もやっている。夢を見るのは自由であるが、その夢を俺に押し付けるのは無理がある。俺からすれば、ルイズの世界の方が御伽噺そのものである。ドラゴンやグリフォンなどルイズの世界ではいて当たり前のようだが、俺の世界でそんなのが現れたら、世界は確実に大パニックになる。そんなトンでも世界に俺はいきなり放り込まれたのだ。怖いのは当たり前だ!ルイズも俺が別の世界から来たという仮説に行き着いた時は何故か、『これで私もヴァリエール家の娘を名乗っても可笑しくないわね!アーッハッハッハ!』と、最高にハイな状態だったが、俺が手足が伸びたり火を噴いたり怪光線を出すなどの能力皆無のただの一般人である事を理解したときは、『死にたい・・・』と、ベットの上で身悶えていた。気持ちは最高に分かるぞ。「俺だって、こんな事にならなければ、それこそ夢のような時間を過ごしていたはずなのに・・・殴っていいか?」「へー、夢のような時間ね。興味あるわねぇ・・・あと暴力はいけないと思うわ」俺としても女の子は殴りたくないが、だが、何事にも例外と言うものはあると思います。「今日は俺はデートだったんですよお嬢様」「良かったぁ。見ているだけで苛々する光景を阻止出来たのね、私」「歯ぁ喰いしばれぇ!貴様のような奴は修正してやるっ!!」「惚気る奴らは死ねばいいのよ!」「惚気る前に絶望したわ!」今、この瞬間だけ紳士の称号は返上する!この女は絶対泣かす!「私だってねぇ・・・絶望してるのよ・・・現在進行形でねぇ・・・やっと呼び出した使い魔は別の世界の住人とはいえただの平民・・・ようやく私を馬鹿にし続けてきた奴らに一矢報いるチャンスだったのよ?なのに!何のこのこ召喚されてるのよアンタは!空気読んでよ!」「それはお前の運が悪かっただけではないのか!」「外れにも程ってモンがあるでしょう!」「お互いに神様って奴に嫌われすぎだろ・・・」ゴメン、自分で言ってて泣けてきた。ルイズも半泣きである。こいつはこいつなりに人間関係に苦労はしているらしいが、俺も帰ったら人間関係の修復に骨を折るかもしれない・・・とはいえ携帯電話の電波は圏外だし連絡の取りようもない。ちなみに携帯電話を見たときのルイズの反応は、『何それ?』と興味津々だった。あまりにも何と言うか新鮮すぎる反応だったため、携帯電話をルイズに向けて、『死ねー』といったら本気で怯え始めた。その反応はないわ。でも面白いので写メで撮って保存した。その際も写メのフラッシュによって『いやああああああああ!!』とか叫んでベッドの毛布に包まって隠れてガクブルしていた。流石に可哀想になったので、携帯電話の用途と機能の大まかな説明をしたら殴られた。まあ、ルイズの反応のおかげでもあって、この世界が俺の世界とは違う世界だという仮説が正しいと思える要素の一つにもなったのだが。そもそもこの娘、冷静になり『何でこんな奴を召喚してしまったんだか・・・』と呟いた後、『ま、まぁいいわ。ところで・・・このケータイデンワとやら、何の系統の魔法で動いているのかしら?』『科学でございます』『カガクってなぁに?何系統?四系統とは違うの?』と、実に無邪気な表情で尋ねてきた。実に綺麗な瞳である。ルイズが言う四系統が何なのかは俺は知らないが、ルイズが知らない以上、その四系統とは異なる分野だろうとは思う。とりあえずこれは魔法とか言うものではなく、俺たちの世界の技術の結晶みたいなものとでも説明するべきか。そもそも携帯電話のようなものがこの世界にあるのかと問えば、ルイズの答えは「ノー」であった。そのような事実から、俺はルイズに『そもそも俺の世界とルイズの世界は全く異なる世界』であるという仮説を説明したのだ。そうしたらルイズは、『まるで御伽噺のようじゃない!』と言って、先程の押し問答や、「私は天才だ!」などハイな状態になっては現実の前に自己嫌悪の繰り返しと言うわけである。忙しい女だ。「・・・で、俺としては元の世界に帰りたいんだが」同じ内容をもう何十回言っただろうか。その俺の懇願に対してルイズの回答は一つ、「無理」このセリフもいい加減飽きると言うものである。「何故だ。理由を五十字以内で述べよ」「わたしはあんたを使い魔として契約したの。どんな事情があろうが契約はもう動かせないの!」「もう一回ゆっくり言ってみろ。リピートアフターミー」「わたしはあんたをつかいまとしてけいやくしたの。どんなじじょうがあろうがけいやくはもううごかせないの!」本当に言った上に、本当に五十字以内だった。ルイズは呼び出して契約した以上、破棄はできない儀式だったのに、出てきたのは紳士とはいえ単なる人間の小僧である俺であったのが不満であり、更に規則とはいえ、自分の初めてを捧げてしまったことへのやり場の無い悲しみにもう消えてしまいたいとまで思いつめたが、なんと異世界出身と言う俺にに少し期待したが現実はそう甘くなかった事に絶望と深い悲しみを背負ってしまった。要は「平民め!ぬか喜びさせやがって!」と言いたいらしい。訳も分からず呼び出された方としてはかなり迷惑な話である。ルイズが言うには、使い魔を元に戻す呪文は存在しないらしい。やばい存在が召喚されたらどうするんだ?更に、再び『サモン・サーヴァント』を唱えるには、一回呼んだ使い魔が死なないといけないらしい。なんてこった。「そもそもあんたの世界と、こっちの世界が繋がったことが偶然というか奇跡と言えるでしょうね。もう一回やれと言われても無理でしょう」奇跡はそんなに大安売りしていないらしい。「というか、そんなどうでもいい奇跡を起こしてどうする」その奇跡に俺は巻き込まれたわけです。「私の魔力は次元を越える程度の素養はあるという事ね」「何で満足げなんだお前は」「人間は無理にでも前向きじゃないとやっていけないわ・・・それはメイジだろうと平民だろうと同じじゃないの?・・・いま私良い事言ったわよね?」「最後で台無しだよね」「!?・・・クッ、しまった、また私ったら余計な一言を・・・!」どうやらルイズは日頃から失言が多い娘のようだ。「コ、コホンッ!とにかく、現状アンタを元の世界に帰す方法を私は持ってないわ。でも、いつまでも平民のアンタを使い魔にしたままじゃ私は恥ずかしすぎて死んでしまいそうなの。仕方がないから、アンタが元の世界に戻れる手がかりがないか、一応調べてあげるわ。感謝しなさいよね。でも、その手がかりが見つかるまで、アンタは私の使い魔。それは納得しなさい。私もそれで納得するから」「・・・嫌だと言ったら?」「ここを出るのはあんたの勝手だけど、アンタは違う世界から来たんでしょう?そんなアンタがこの世界で頼れる人間なんているの?逃げてもアンタがこの世界で生き残れる保障は全くないのよ?まだちょっと現実味はないけど、ドラゴンとかグリフォンとか全くいない平和な世界なんでしょう?アンタの世界って。この世界にはそうした存在がいるんだからアンタなんかすぐ死ぬわよ」「否定、拒絶の選択肢はないってことかよ」「そりゃアンタが魔法を自由に扱ったりできれば、逃げてもそれなりの期間生き残れるでしょうけど?私はそんな幻想をさっき打ち砕かれたばっかりだしね。観念しなさい。一応魔法学院にいれば一定の安全は保障されるから。元の世界に戻るその日まで、私の使い魔として励むことが、アンタが今やるべき事なんじゃないの?」ルイズとしても平民だろうと人間を使い魔とするのは彼女の意に反する事であるらしい。一応俺が元の世界に戻れるために動いてくれるとも言ってくれている。ここで無理に意地を張ってしまうのは実に愚かな行為である事は俺にも分かる。「・・・分かった。それが元の世界に帰るための近道だと言うのなら・・・俺はお前の使い魔になってやるさ」「賢明な判断ね。でも口の利き方がなってないわ。『何なりとお申しつけください、ご主人様』でしょ」ルイズは得意げに指を立てて言った。それはとても可愛らしい仕草だが、言ってることは何ともアホらしい。「自分で言ってて恥ずかしくないのでしょうか?『ご主人様』」「・・・やっぱりいいわ。冷静になってみると、アンタがご主人様とか言うと気持ち悪い」実に失礼な発言だが、ルイズはルイズで、「ああ・・・!さっきまでかっこよく決めてたのにぃ・・・!!何でいつも私はこうなのぉ!?」と、自己嫌悪に陥っていた。悶えるご主人様も面白いが、使い魔をすると宣言した以上質問もしなければならない。「悶えている所悪いが、使い魔の役割ってなんなの?」まずその使い魔の仕事を知らなければいけない。ルイズは咳払いをすると答えた。「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ。未知の場所や暗いところとかの探索とかに大変便利なんだけど・・・」ルイズは悲しそうに溜息をついた。「でも、アンタじゃ無理みたいね。わたし、なんにも見えないもの。まあ、見えたら見えたで同年代の人間の男が好んで見るものなんて私は見たくもないけど」そりゃ俺としても見せたくはない。個人のプライバシーにも関わる。「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね。まあ、あんたは秘薬の存在すら知らないから・・・」コレも無理ねと吐き捨てるルイズ。「そして、これが一番大事なんだけど……、使い魔は主人を守らないといけないの。 その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目ね。 ……まぁ肉の壁程度にはなるかしら」「物騒な事をさらりと言うな」「ま、だから、私はアンタにできそうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用…ってこれじゃあまるで家で雇ってるメイドとほとんど同じねぇ」クスクスと笑うルイズ。それは俺に主夫業をやれとおっしゃるのか。「まあ、使い魔である以上、なにもしないってのは私は許さないわよ。私の一存でアンタを奴隷のように扱ってもおかしい事はないんだから。それからすれば破格の待遇よ」「心遣いに涙が出そうだなーチクショー」「ま、元の世界に帰れるまで精々頑張りなさい。さてと、長くしゃべったら眠くなっちゃったわね…」ルイズは可愛く欠伸をした。・・・ベッドは一つしかない。添い寝ですか?「…馬鹿な事を考えているようだけど、あんたは床で寝るのよ?」ですよねー。まあ、毛布を一枚投げてよこすあたりまだ人道的か。が、倫理性はどうなっているのか。というのも、彼女は俺の目の前で着替え始めたのである。羞恥心というものがないのか。「そういうのが気になるなら部屋から出ればいいじゃない?」ごもっともである。まあルイズからすれば俺は男とか以前に使い魔だからなんとも思わないらしい。何か敗北感があるんだが。「そうそう、私が脱いだ服、明日になったら洗濯よろしくー」レースのついたキャミソールに、パンティであった。白か。自分の下着を見知らぬ男に洗濯させるとかいいのか?シミとかついてねーだろうな・・・・・・「じゃ、おやすみー」まあ、なんだかんだで養ってくれる主人なのだが、何故かいまいち尊敬できない。不思議だね。しかし頼れる人は現時点でルイズしかいないのだ。超展開ばかりの一日だったが、たまにはこんな激流に身を任せてみるのも一興である。内心で待ちぼうけをさせてしまった元の世界の三国に「すまない」と謝り、もう会えないかもしれない両親や妹に対し泣きそうになり、そしてすでに寝息を立てているルイズに小声で、「コンゴトモ、ヨロシク」「はいはいー、明日からは働いてもらうからねー」狸寝入りだった。こうして俺の激動の一日は終わるのだった。・・・・・・ところでこの世界に洗濯機は・・・・ないよなあ・・・・「洗濯機って何?」「いい加減寝ろよ」【達也の元の世界】因幡家。夜遅くになっても長男である達也が帰ってこない。兄の帰りを待っていた小学3年生と1年生の達也の妹たちはすでにすやすや眠っている。「あなた・・・達也・・・帰ってこないわね」「そうだな」「・・・やっぱり避妊具を持っていかせるべきだったかしら・・・?」「お前は何の心配をしているんだ!?」もうすぐ日付が変わる。今日も因幡家はいつも通りだった。長男からの連絡はまだない。ーーーーーーーーーーーーーーーーつづく?【あとがきのような反省】ルイズまで中二病みたいな何かのような性格になってしまった。ルイズファンの方々、申し訳ありません。