ラ・ロシェールの港町の入り口はどう見ても山道であり、どこにも海がなさそうに見えた。辺りは崖などに囲まれており見通しが悪い。前を進むグリフォンは空を飛べるから良いものの、馬の俺やギーシュは辺りに注意しなければいけない。しかもワルドのグリフォンはともかく俺たちの馬は軍用ではない。結局俺がなにを言いたいのかと言うと、俺たちは襲撃を受けたのだ。そして襲撃された際、俺とギーシュの騎乗していた馬は突如投げ込まれた松明ににパニックを起こし、俺たちを振り下ろして逃げた。「畜生め!奇襲か!」喋る剣が俺の背中で吼える。俺は一応受身を取れたので無傷だが、ギーシュは顔から落ちた。「ふぎゃ」という声がした。すぐさま喋る剣を引き抜き、構えたら、左手のルーンが輝きだした。妙な電波も流れてきたが、内容は大して変わらないものだった。「来るぞ小僧!!」無数の矢が殺到する。不思議な感覚だった。判る。矢が何処に降ってくるのか。どう動けば比較的安全に立ち回れるか。それが判る。今の自分が出来る範囲で、どうやって動けばいいのかが判る感覚・・・未来が視えるなんてことじゃなく、何となくこう動けば良いんじゃないのかと言うことがわかる。全部を回避することなんてできない。全部を弾くなんて芸当はできない。ただ、こう動けば良いんじゃないかと感じる。そして、その勘を信じて動いた。矢が今まで自分がいた場所に突き立つ。剣を振った。いくつか矢を弾く事が出来た。しかしいくつかの矢は俺の腕や身体を掠めていった。痛みが掠めた箇所を襲う。その痛みのせいなのか、自分が更に集中していく事が判った。動き回りながら剣を振る。そうして矢の雨を凌いでいく。生傷がその度に増えていくのが判る。ギーシュはすでに青銅のゴーレムを召喚し、矢の雨から身を守っていた。矢の雨は俺ばかり狙っているかに思えた。どう見ても弱そうに見えるからか。痛みは強くなっていく。だが、意識を失くすほどじゃない。「小僧、まだいけるか?」「アホか!帰りてえよ!」喋る剣が俺の状態を確認する。服とかはもう破れまくりだ。赤く染まりつつある箇所もある。ワルドやルイズの乗るグリフォンは俺たちの遥か前方を走っていたから、この事態に気づいていないのか、姿は見えない。つまり、俺たち二人で・・・この場を何とかしなければならないのか・・・!!そう思っていたら、ギーシュのゴーレムが二体俺に近づいてきて、俺の前方を守るようにして立った。それを確認した後、ギーシュは俺に近づいてきた。「タツヤ、生きているようだね」「何とかな」「弓矢を使っているからメイジではないとは思うけど・・・何処にいるのかがわからなくては防戦一方だ」「多分あの崖の上だろうな」喋る剣が口を挟んだ。「どうする?小僧は魔法を使えねえし、遠くを攻撃する術もない。かといって、貴族の坊主も遠距離を攻撃する魔法も覚えてねえ。逃げようにも馬がねえ」ギーシュの攻撃手段は青銅のゴーレム『ワルキューレ』による攻撃だ。とはいえ、その手には剣などの武器は握られていない。「ギーシュ、錬金で弓作ってワルキューレに持たせれないか?」ゴーレムを錬金できるなら、その武器も錬金できるのではないか?そもそも決闘していた時点で何故ワルキューレが剣とか持っていなかったのだろうか。・・・思いつかなかったんだろうな。「作る事は可能だが・・・弓の心得など僕にはないぞ?」「向こうは反撃の術がこちらにないと侮って攻撃してやがる!ハッタリでも射返せ!」「ギーシュ、やってみよう。やらないより、マシだ」ギーシュは頷き、薔薇を振った。俺たちの前に立つ十体のワルキューレの手に弓が握られる。幸い矢のほうはそこら辺に転がっている。ギーシュが矢の分の魔力を消費することだけは避けたかった。俺が指し示す方向に向かってワルキューレ達は弓を向ける。青銅の弓がキリキリと音を鳴らす。「放て!」ギーシュの号令で一斉にワルキューレの手から矢が放たれる。矢の大半は崖の上に吸い込まれるように消えて行った。闇の中から悲鳴がいくつかあがるのが聞こえた。ギーシュは第二射の指示をワルキューレたちにすでに出していた。崖の上からまた矢が降り注ぐ。しかし矢は青銅の乙女たちに当たるだけで俺たちには被害は全くなかった。ワルキューレたちの手からまた矢が放たれた。悲鳴があがる。すぐさま落ちた矢を回収し、第三射の準備をする。ギーシュもコツを掴んできたのか、次第に矢の精度が上がっている気がした。第三射を放とうとしたその時、ばっさばっさという羽音が聞こえたかと思うと、崖の上からこれまでより大きな悲鳴があがった。矢が俺たちの方ではなく、夜空に向かって放たれている。だが、その矢は途中であらぬ方向へ逸らされていた。「風の魔法だ・・・」ギーシュが呟く。隊長さんがやっと来たのか?と、思ったその時、小型の竜巻が崖の上の襲撃者たちに襲い掛かる。襲撃者たちは崖から転がり落ち、ある者はそのまま気絶し、またある者は地面に落ちた衝撃で身体を打ちつけ、うめきをあげるしか出来ずにいた。中には何とか立とうとするものもいたが・・・そのような者はワルキューレたちの攻撃によって昏倒させられていた。俺も何人か剣で殴り飛ばしたが・・・かなりスッキリした。襲撃者が戦闘不能になったのは幸運なことだが、今の風の魔法は一体誰がやったのだろうか?ギーシュが驚きの表情で崖の上を見ている。嫌な予感がしたが、俺もギーシュの視線の先を追って見た。そこには月をバックにして、翼を羽ばたかせるドラゴンがいた。お、終わった・・・ギーシュも諦めたような表情で、その場に座り込んだ。俺はデルフリンガーを握り締めて、謎のドラゴンに向け、剣を構えた。ドラゴンが地上に降りてくる。ギーシュも覚悟を決めて立ち上がる。ワルキューレたちがギーシュの前に集合する。ドラゴンが地上に足を付いたその瞬間、「全ワルキューレ、突撃!!」ギーシュの号令と共に、俺含めたワルキューレ全十一名がドラゴンに猛然と向かった。「ちょ、ちょっと待ちなさーーい!!」その聞きなれた声に俺は止まり損ね、豪快なヘッドスライディングを披露してしまった。声の主は謎のドラゴンからぴょんと飛び降りた。「キュ、キュルケ・・・」ギーシュが力が抜けたような声で言う。声の主はキュルケだった。「そういえば、あなた達はこの子の事を知らなかったわねえ。驚かせてしまったようで悪いわね。この子はタバサの使い魔の風竜のシルフィードよ」キュルケがそう言うと、シルフィードと呼ばれたドラゴンから、タバサがぴょんと飛び降りてきた。その瞬間、俺の身体にどっと疲れが襲ってきたが、喋る剣を杖代わりにして、倒れることだけは避けた。このことについて、デルフリンガーは一切文句を言ってこなかった。「そうか・・・しかし何故君たちがここにいるんだい?」「そりゃあ、助けに来てあげたんじゃない」「それは結果論じゃないのかい?」「まあ、実は朝方あんた達が馬に乗って出かけてようとしてたから、面白そうと思ってね、タバサを叩き起こして後を付けたのよ!そしたらあんた達が戦ってるじゃないの」タバサを見ると確かにパジャマ姿であった。いくらなんでも急ぎすぎではないのか?「一応お忍びの任務なんだが・・・まあ、助けてくれたのは感謝するよ」「有難う、二人とも。死ぬかと思ったから助かった」「いいのよ。貴方たちには昨日の借りもあるしね」「ゴキブリ退治のお礼」タバサがぼそりと言う。そんなに苦手なのか・・・タバサはそうぼそりと言うとパジャマ姿のまま、うめいている襲撃者の所へ歩いていった。パジャマ姿での尋問・・・シュールである。「ところでルイズの姿が見えないわね。使い魔の貴方をほっといて何やってんのかしら?」「ああ、ルイズなら、婚約者の子爵様とグリフォンの上でヨロシクやってるんじゃないのか?」「婚約者?」「ああ、今回の任務の助っ人として派遣されてきた方が、ルイズの婚約者のワルド子爵だったんだ」「グリフォン相手に馬は距離を離されるばっかりだったんだ。そこを狙われた」「で、肝心のその子爵様は救援に来ず、あんた達は二人で夜盗どもと戦ってたわけ?」「そういうことになるね。僕はいいが、タツヤが傷だらけだ」ギーシュがそう言って初めてキュルケは俺のボロボロな有様を見た。動くのに支障はないが、痛いものは痛い。「全く、日頃偉そうな事言ってるのに、婚約者と会えたからって浮かれすぎねあの子。大丈夫?」「痛いけど、動けるよ」「とにかく宿に急ごう。タツヤの傷の手当てもしなければいけないしな」「タバサ、尋問は終わった?」キュルケが戻ってきたタバサに聞く。タバサはコクリと頷き、「ただの物取りといっている。でもそれにしては多勢過ぎる」「・・・ま、面倒だし、今はほっときましょう。タバサ、あと二人ぐらいシルフィードに乗せれる?」「乗れる」まあ、馬は逃げたし、仕方ない。俺とギーシュは彼女たちの好意に甘えて、タバサの使い魔の風竜、シルフィードに乗せてもらえることになった。少し風竜は非難めいた視線をタバサに向けていたように見えたが、タバサは気にせず読書を開始した。目が悪くなるぞ?そしてすぐに道の先に、両脇を渓谷で挟まれた、ラ・ロシェールの街の灯りが見えた。ラ・ロシェールの街の中心に到着した俺たちは、俺の傷の治療のための薬と包帯を購入した後、ルイズたちが何処にいるか探す事になった。「さて、一応お忍びの任務なんだから、下手に豪華な宿に泊まれば、任務を妨害せんとする奴にはすぐ見つかると思うんだがどうだろう?」「一応ここで一番上等な宿は『女神の杵』だね。貴族御用達の宿だ」お忍びなのに貴族御用達の宿に出入りしていては嫌でも注目集めないか?貴族が泊まってるって。この情勢のアルビオンには誰も行きたがらないのに、そのアルビオンに行こうとする貴族一行というのは珍しいと思われ噂になるのでは?「というか、グリフォンやら風竜に乗ってきてる時点で目立ってるんだけどね、私たち」そりゃそうだな。素直にまずその豪華な宿屋を探すか。ルイズは『女神の杵』に到着する前も、その後も、ワルドとずっと話していた。ワルドは自分を片時も忘れた事はないと言ってくれた。ワルドは立派な貴族になり、自分を迎えに行くと決めていたから今まで会うことができなかったと言ってくれた。ワルドは自分に誰にもない魅力があり、特別な力を持っていると言ってくれた。ワルドは自分が歴史に名を残す偉大なメイジになれると言ってくれた。そして、ワルドは、この任務が終わったら結婚して欲しいとまで言ってくれた。信じられなかった。あの憧れのワルドが、そこまで自分を思ってくれていたなんて・・・ワルドは返事は後でいいと言ってくれたが、正直舞い上がっているルイズにはそんな言葉は聞こえなかった。転げまわりたいほどの歓喜にルイズは襲われている。顔のにやけも抑える事は出来ない。幸福の感情がルイズの心を支配していた。まさに有頂天状態である。部屋のベッドの上でじたばたするルイズ。現在ワルドは『桟橋』へ乗船の交渉へ行っている。少し寂しいがもう少しで帰ってくるだろう。普段のルイズには考えられないことだが、この時迂闊にもルイズは幸福で同行者のギーシュや達也の存在をすっかり忘れていた。いや、忘れていないにしても、どうせ後で来るだろうと楽観的に考えていた。そのような考えだったから、達也とギーシュは危うく死ぬ思いをしたのだが。コンコンとノックの音がした。ルイズはワルドが戻ってきたと思って、ベッドから下り、扉へと急いだ。「今、開けますわ」などと言って扉を開ける。扉の前に立っていたのはキュルケだった。「え?な、何でアンタがここに・・・??」「そんな事はどうだっていいじゃない、ルイズ」と、いきなりぱぁんとキュルケが自分の頬を叩いた。いきなり何をするんだと抗議をしようとキュルケを睨むと、反対側の頬を叩かれた。「わたしに対して男に狂って脳がやられたと言っていたけど、それは今の貴女のことじゃないのかしら?ゼロのルイズ」「何を・・・!!」「成る程貴女の言うとおり、あの子はただの平民じゃないみたいね。それは何となく分かったわよ。でもアンタのような女の使い魔だと幾ら只者じゃなくても命が幾つあっても足りないわよ!!ばっかじゃないのアンタは!!」「・・・!!まさか・・・タツヤがどうかしたの!?」「ようやく気づいたの?だからあんたはゼロのルイズなんて言われるのよ。どうせ久々にあった婚約者に対して頭が一杯になって使い魔の彼の事を失念してたんでしょう?これだから恋愛経験ほぼゼロのアンタは・・・!!あーもう!もう一発殴らせなさい!今度はグーで!」キュルケがもう一発殴る素振りを見せていたら、外からまた声が聞こえた。「おいおい、騒がしいな・・・」「ちょっとギーシュ!ルイズの馬鹿がいたわよ!」どうやらギーシュが来たようだ。怒りの表情を見せているキュルケとは違い、彼はすごく疲れた表情だった。「ああ、いたのか。良かった・・・ワルド子爵はいないのかい?」「ワルド様は・・・『桟橋』へ乗船の交渉へ行っているわ・・・」「そうか・・・ルイズ、僕から君に言いたい事はもうこんな事はしないでくれということだ。まがりなりにも僕たちはこの任務を共に請け負った仲間なんだ。だが僕たちは君たちが先行しすぎたお陰で夜盗と戦う羽目になった。たった二人でね。でもまあ、キュルケ達が助けてくれたり、タツヤの機転のお陰で何とか生き残れたけどね・・・ホント頼むよ・・・」「ご、ゴメンなさい・・・」「君が今、一番謝るべきなのは僕じゃないはずだよ、ルイズ。じゃあ、僕はもう休むよ・・・」そう言ってギーシュは自分の部屋に向かったようだった。ルイズは今まで浮かれていた自分を恥じた。一体何をやっていたんだ私は!?『私の数少ない結果であるアンタは、私の宝とも言えるの。アンタのお陰でまだ、私は希望を見れるからね。『私はゼロなんかじゃ、ない』ってね』かつて自分はそうタツヤに言ったのに、危うくその宝を失ってしまう所だった。これでは自分は自分で自分の希望を捨ててしまっているじゃないか!そうして自分は本当にゼロになってしまうということをわかっていなかった!!キュルケの表情は怒りこそ収まったようだが、なおも厳しい目をしている。ルイズはしょんぼりとした様子である。そこにタバサがやって来た。ルイズはなんでアンタまでいるんだと言いそうになったが、続いて現れた姿に息が詰まった。ボロボロの服を着て、所々に見える包帯が痛々しい姿の達也がタバサの後ろから現れた。ルイズが黙っていると、達也が口を開いた。「惚気る奴らは死ねばいいよ」かつてルイズが達也に向かって言った言葉だった。「なにお前?婚約者がいるのはいいし、勝ち誇るのも勝手だよ。けど分かってんの?お前。これは一応世界の運命とやらを握った任務だろ?確かに依頼した人の動機は馬鹿馬鹿しいものかもしれないけどさ、だからといって適当にやっていい訳ないだろうよ。特に依頼者はお前に頼んだんだぞ、ルイズ」とりあえず途中まで俺も帰りたい帰りたいと言っていたが、それでもこの馬鹿主とその婚約者よりはマシだと断言できる。説教などガラじゃないのだが、それでも言わずに入られない。たまには自分の意見も言わなければいけないのだ。でないとまた同じ事をしそうだ。色んなことが重なってこうやって説教できるのだ。ギーシュが弓を錬金できなきゃ俺は死んでたし、キュルケ達が来なきゃ死んでたし、あの風竜がタバサの使い魔でなければやっぱり死んでたのだ。「まあ、お前には色々言いたい事はたくさんあるし、場合によってはぶん殴りたいのだが、一言言わせて貰うぜ」ルイズが唇を噛み締め、肩を震わせている。一応反省はしているようだ。しかし、だからどうだと言うんだ?俺は万感の思いを言霊に乗せて言った。「この、バーーーーーカ!!!」馬鹿にバカと言って何が悪い。ルイズ、お前も事実を指摘されたからといって泣くな。気持ちが悪い。なに?ゴメンなさい?ゴメンで済むか馬鹿者!悪いと思うならこれからちゃんと後ろを見る余裕を持ちやがれ!そんなことも出来ない余裕ない女はいいお嫁様になれませんぞ!「はぁ~・・・もっと怒ると思ってたけど、主が主なら、使い魔も使い魔ね・・・」キュルケが呆れたように言う。「失礼な。俺は後ろを見る余裕はある。助ける余裕はないが」「後ろ見てるだけよねそれ。前方不注意なだけじゃない・・・」「違うね!前後左右上下危険がないか調べているだけだ!」「過剰な注意深さすぎて、逆にそれはただの注意散漫じゃない!?」なお、程なくしてワルドが戻ってきた。ワルドは俺の姿を見るなり紳士的に謝ったが、あまりにも白々しかったので俺は無言で飛び蹴りをぶちかました。なお、その後、ギーシュとキュルケとタバサも追撃を行っていた。自分が始めたとはいえ、流石に引いた。ルイズは助ける事も出来ず、一連の出来事を呆然と見つめる事しか出来なかった。最終的にはワルドはキュルケに土下座していた。意味が分からん。俺たちの怒りが収まった後、ワルドがアルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないらしいから、明日は自由時間だと説明した。今日はかなり疲れたから明日はゆっくり休もう・・・そんな俺の予定は翌日の早朝あっさり破壊された。朝、目覚めてすぐ、ああ、今日は二度寝しようと思ったら、扉がノックされた。誰だよ、と思って俺はドアを開ける。「おはよう。使い魔くん」「お引取りください」無駄に爽やかな笑みを浮かべたワルドがいたような気がしたが、今日はオフなので気にしない。俺はドアを閉めると、今まで寝ていたベッドに向かった。だが、閉めた扉から今度はどんどんどん!と強いノックの音がしたので、結局俺はまた扉を開ける羽目になった。「おはよう、使い魔くん」「おはようございます。そして、おやすみなさい」扉を閉める。しかし、ワルドがその瞬間足を差し込んできた。「ま、待ちたまえ、僕は君に話したいことがあるんだ・・・!」「・・・何なんですかこんな朝早く」「き、君は『ガンダールヴ』というものを知っているかい?」「何ですかそれ?」「が、ガンダールヴとは伝説の使い魔の一つさ。伝承ではあらゆる武器を使いこなすと言われている」「そりゃ、凄い便利な使い魔ですね~」「ああ、確かに凄い。で、だ。僕はフーケの一件で君に興味を抱いてね、昨日ルイズから聞いたのだが、君は異世界からやってきたそうじゃないか」あんの色ボケ。そういう事はペラペラ喋っちゃいけないんじゃないのか?「僕は歴史と、兵に興味があってね、フーケを尋問したときに、きみにも興味を抱いて、王立図書館できみのことを調べてみた。その結果、ガンダールヴかもしれないという結果に辿りついた。君がガンダールヴであるかどうか確かめるため、そしてあの『土くれ』を捕まえた腕がどのくらいか、僕は知りたいんだ。ちょっと手合わせを願いたい」「手合わせって?決闘ごっこみたいなものですか?」「ああ、そうさ」「俺、怪我人なんですが」「別に勝ち負けを決めるものじゃない。我儘なのはわかっている。どうか手合わせしてくれ」年上、しかも同姓の我儘など気持ち悪くてしょうがないが、断っても動きそうにないので、俺は渋々手合わせを受ける事になった。勝ち目?あるわけないだろ?(続く)【後書きのような反省】さっそく死ぬような目に合う主人公(笑)とギーシュ君。ルイズさんはワルド卿にぞっこん過ぎる・・・怒られましたが。