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No.16875の一覧
[0] ルイズさんが109回目にして平民を召喚しました (オリ主)[しゃき](2011/02/28 21:49)
[1] 第1話 使い魔などという意味不明な供述[しゃき](2010/04/26 20:50)
[2] 第2話 文化の違いは恐ろしい[しゃき](2010/04/26 20:53)
[3] 第3話 嘘は言っていません。誇張はあります。[しゃき](2010/04/26 20:56)
[4] 第4話 郷に入っては郷に従えと言われても限界はある[しゃき](2010/04/26 21:00)
[5] 第5話 『ゼロ』ではないという希望[しゃき](2010/03/15 13:15)
[6] 第6話 男の友情も案外脆いがすぐ修復する[しゃき](2010/04/26 21:02)
[7] 第7話 紳士(おとこ)は女性の涙に弱いのではなく、女性の笑顔に弱い[しゃき](2010/04/26 21:03)
[8] 第8話 男の夢が24時間営業とは限らない[しゃき](2010/04/26 21:08)
[9] 第9話 だから貴方は独身貴族[しゃき](2010/04/26 21:15)
[10] 第10話 君は僕にやや似ている[しゃき](2010/04/26 21:17)
[11] 第11話 空気を読み違えると大抵碌な事にならない[しゃき](2010/04/26 21:21)
[12] 第12話 意外と後ろに人が近づいてきても気づかない事はある[しゃき](2010/04/26 21:25)
[13] 第13話 一方的な勧誘にははっきりNoと言え[しゃき](2010/04/26 21:28)
[14] 第14話 分かりやすい虚飾は気の毒になるのでやめてくれ[しゃき](2010/03/10 21:53)
[15] 第15話 ストレスを発散するときの力加減は難しい[しゃき](2010/04/26 21:29)
[16] 第16話 友達友達ってしつこく言わなくてもいいんだよォ!![しゃき](2010/03/11 23:15)
[17] 第17話 いちゃつくのは勝手だが場所を選べ[しゃき](2010/03/13 00:32)
[18] 第18話 自分の言葉にはある程度責任は持て[しゃき](2010/03/13 23:43)
[19] 第19話 ラッキーヒットが一番怖い[しゃき](2010/03/15 19:43)
[20] 第20話 軽々しくおばさん呼ばわりするとブーメランで帰ってくる[しゃき](2010/03/15 00:13)
[21] 第21話 ここにもフラグを掴み損ねた漢がまた一人・・・[しゃき](2010/03/15 20:00)
[22] 第22話 未練がない人生なんてない[しゃき](2010/03/15 15:36)
[23] 第23話 わたしの王子様(前編)[しゃき](2010/03/15 21:22)
[24] 第24話 わたしの王子様(後編)[しゃき](2010/04/19 16:03)
[25] 第25話 身体検査でいちいち妙な妄想をするな[しゃき](2010/03/17 14:57)
[26] 第26話 人を陥れようとする奴はしっぺ返しを受けるはず[しゃき](2010/03/17 20:50)
[27] 第27話 裸の付き合いもほどほどに[しゃき](2010/03/18 15:25)
[28] 第28話 彼女が彼に抱く感情は恋愛ではなく親愛である[しゃき](2010/03/31 17:41)
[29] 第29話 そんな敵の倒し方があっていいのか[しゃき](2010/03/19 18:23)
[30] 第30話 祈る存在は選んだ方が良いと思う[しゃき](2010/03/20 13:02)
[31] 第31話 さらば擬似的シスター!兄の愛は永遠に!(誇張アリ)[しゃき](2010/03/20 12:59)
[32] 第32話 溢れ出る食欲に抗う事は出来ない[しゃき](2010/03/20 19:35)
[33] 第33話 テンションが上がりすぎると言葉が乱暴になる[しゃき](2010/03/25 13:12)
[34] 第34話 そんな子守唄があってたまるか[しゃき](2010/03/21 13:26)
[35] 第35話 戦争は頭を潰せば大打撃[しゃき](2010/03/22 01:51)
[36] 第36話 つまり私は伝説の女[しゃき](2010/03/23 13:20)
[37] 第37話 俺は君の友達なんかじゃない[しゃき](2010/03/23 12:55)
[38] 第38話 何でお前が其処にいるんだ(タルブの村より)[しゃき](2010/03/23 13:46)
[39] 第39話 何より強きは母の愛[しゃき](2010/03/23 16:31)
[40] 第40話 誰も気づかぬ偉業、自分たちも知らぬ偉業[しゃき](2010/03/24 08:05)
[41] 第41話 ただし聞くだけだ。受けるとは言っていない。[しゃき](2010/03/24 12:40)
[42] 第42話 堅実と特殊能力が合わさって最強に見える[しゃき](2010/03/24 21:33)
[43] 第43話 私はそんな軽い女じゃないわよ[しゃき](2010/03/25 13:14)
[44] 第44話 美女は好きだが愛する女はただ一人[しゃき](2010/03/25 17:17)
[45] 第45話 勇気の幻影[しゃき](2010/03/25 23:05)
[46] 第46話 性格だけは良い男[しゃき](2010/03/26 14:38)
[47] 第47話 雨上がりの虹[しゃき](2010/03/26 20:32)
[48] 第48話 存在自体が武器であるお方[しゃき](2010/03/27 12:34)
[49] 第49話 答えは聞いてないんじゃなくて聞けない[しゃき](2010/03/27 17:57)
[50] 第50話 暗闇を彷徨う男[しゃき](2010/03/28 00:36)
[51] 第51話 アンタの私怨に巻き込まないでよね[しゃき](2010/03/28 16:55)
[52] 第52話 母から見た成長した娘の姿の理由[しゃき](2010/03/29 00:15)
[53] 第53話 娘が男を連れてきた日[しゃき](2010/03/29 13:29)
[54] 第54話 手段を選んでいる場合じゃない[しゃき](2010/03/30 17:28)
[55] 第55話 夏休み中なので逃げたところで追われます[しゃき](2010/03/30 22:52)
[56] 第56話 パンがなければ作れ。材料がなければ作れ。[しゃき](2010/03/31 14:34)
[57] 第57話 地球外生命体とバッタと餡パン[しゃき](2010/04/04 15:08)
[58] 第58話 勝利の絶対条件[しゃき](2010/04/15 00:30)
[59] 第59話 生徒に手を出す者は等しく許さん[しゃき](2010/04/15 17:11)
[60] 第60話 騎士でしょう?貴女は[しゃき](2010/04/17 17:07)
[61] 第61話 どんだけ心の広い神様だよ[しゃき](2010/04/18 16:28)
[62] 第62話 クリスマスを一人で過ごすのは寂しいのよ[しゃき](2010/04/19 08:58)
[63] 第63話 頭脳労働派の中年女性をを舐めるなよ[しゃき](2010/04/19 12:21)
[64] 第64話 サウスゴータの悪魔[しゃき](2010/04/19 22:36)
[65] 第65話 ルイズさんが110回目にして使い魔を召喚できませんでした[しゃき](2010/04/20 13:22)
[66] 第66話 空白の間のとあるお話(完全版)[しゃき](2010/04/21 08:47)
[67] 第67話 孤児は孤児を呼ぶ[しゃき](2010/04/21 13:05)
[68] 第68話 悪夢の捜索隊追加[しゃき](2010/04/22 10:42)
[69] 第69話 伝説の遭遇と再会[しゃき](2010/04/22 17:55)
[70] 第70話 本当はここにいて欲しいよ[しゃき](2010/04/23 16:30)
[71] 第71話 まさかの左遷通告[しゃき](2010/06/09 15:48)
[72] 第72話 話は聞かせてもらった!この領地は滅亡する![しゃき](2010/04/25 01:18)
[73] 第73話 カオスの権化、現る[しゃき](2010/04/25 16:51)
[74] 第74話 憧れの人[しゃき](2010/04/25 22:41)
[75] 第75話 友人だろうと容赦なし[しゃき](2010/04/26 17:12)
[76] 第76話 幼馴染が上級生?いいじゃないか![しゃき](2010/04/27 00:07)
[77] 第77話 冷静に混乱する女[しゃき](2010/04/27 22:21)
[78] 第78話 努力派VS一発逆転派[しゃき](2010/04/27 22:35)
[79] 第79話 とてつもない修学旅行[しゃき](2010/04/28 15:30)
[80] 第80話 減っていく救出隊[しゃき](2010/04/28 23:12)
[81] 第81話 お前のような歌姫がいるか【注意!ややグロかも!】[しゃき](2010/04/30 01:14)
[82] 第82話 古城に響く俺達の歌[しゃき](2010/04/30 01:18)
[83] 第83話 やりすぎ!カリンちゃん![しゃき](2010/04/30 22:20)
[84] 第84話 真心喫茶[しゃき](2010/04/30 23:21)
[85] 第85話 クローンの襲撃【お食事中の方はご注意下さい】[しゃき](2010/05/01 17:07)
[86] 第86話 狐の嫁入り(修正あり)[しゃき](2010/05/02 18:47)
[87] 第87話 今日も因幡家は平和です(追加あり)[しゃき](2010/05/02 12:49)
[88] 第88話 その子がアンタの想い人だと言うの[しゃき](2010/05/02 21:00)
[89] 第89話 飲酒は二十歳になってから[しゃき](2010/05/05 20:03)
[90] 第90話 気合で解決するほど世の中甘くない[しゃき](2010/05/10 16:56)
[91] 第91話 腹が減っては何も出来ぬ[しゃき](2010/05/10 17:05)
[92] 第92話 大事な事なので二回言いました[しゃき](2010/05/10 22:41)
[93] 第93話 魔法媒体の天敵[しゃき](2010/05/11 17:24)
[94] 第94話 フーケさんとワルド君[しゃき](2010/05/13 17:03)
[95] 第95話 喧嘩は一対一でやろう(前編)[しゃき](2010/05/13 16:52)
[96] 第96話 喧嘩は一対一でやろう(後編)[しゃき](2010/07/01 01:06)
[97] 第97話 変態という名の紳士達[しゃき](2010/05/13 23:46)
[98] 第98話 プロジェクトZ~愚かな挑戦者たち~[しゃき](2010/05/14 18:10)
[99] 第99話 彼女は息抜きのためなら死ねるそうだ[しゃき](2010/05/14 18:11)
[100] 第100話 それはアンタの未来であり、私たちの過去だ[しゃき](2010/05/15 01:16)
[101] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「紳士たちの社交場」[しゃき](2010/03/17 02:13)
[102] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「続・紳士たちの社交場」[しゃき](2010/03/18 19:04)
[103] 【注意!完全なネタ回です】 第X話 「真心喫茶109」[しゃき](2010/04/22 23:28)
[104] 予告篇?【ネタ】 世界の扉の向こう側[しゃき](2010/04/12 17:11)
[105] とりあえずの技能のまとめ(102話まで)[しゃき](2010/06/11 15:40)
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[16875] 第17話 いちゃつくのは勝手だが場所を選べ
Name: しゃき◆d1ebbc20 ID:1ddacfd7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/13 00:32
さて、出発の朝である。
俺とルイズとギーシュは、馬に鞍を付けていた。俺の背中には喋る剣もある。
このマダオソードは無駄に長い剣なので、腰に付けて歩くと凄まじく歩きにくいからだ。


「そんなんだったらもう一本の方を持っていけばいいじゃねえか」


「アレは実戦用だ」


「それでいいじゃん」


「人を斬るなんて俺にはできない!殴り倒すのは可能だが」


「俺は一応剣であって、鈍器じゃねえんだが」


「無駄に頑丈な己の身を呪うがいい!」


俺たちが向かうところはけして安全な場所ではないらしい。
活人剣を謳う程、俺の剣術は磨かれてはいないが、人を斬るのは抵抗がある。
革命なんてしてる場所ということは人がたくさん傷ついて死んでいってるはずの危険すぎる場所だ。
それを止めようぜ!なんてヒーローかぶれの任務ではないが、戦地の中心に行く事は間違いないのだ。


「所で、君たちに僕の使い魔を紹介したいんだが」


と、ギーシュが俺達に唐突に言った。
しかし、彼の使い魔らしき影は見当たらない。
だが、ギーシュが口笛を吹くと、モコモコと地面が盛り上がり、茶色の巨大モグラが現れた。


「僕の使い魔のジャイアントモールのヴェルダンデだ」


「肉の焼き方のような名前だな」


「ウエルダンではない!僕の使い魔をこんがり焼かないでくれたまえ」


「ギーシュ、そのこんがりモグラは地中を進んでいくのよね」


「そりゃ、モグラだからね。しかし、地中を進む速さは馬の速さにも劣らないよ」


「そのモグラはなんの役に立つんだ?」


「そうだね、まず地中にある貴重な鉱石や宝石を見つけることが出来る。青銅以外のゴーレムもそろそろ研究したい僕にとっては助かる能力をもっている。次に、偵察にも便利だね。流石に空を飛ぶ使い魔には一歩譲るが」


「偵察要員にしては目立つんじゃないのか?」


俺とギーシュが話していると、ヴェルダンデは鼻をすぴすぴとひくつかせ、ルイズに擦り寄っていた。


「ちょ、ちょっと・・・」


ルイズはドン引きしているが、ヴェルダンデは更にルイズに鼻を近づかせ、今にも押し倒しそうな勢いである。
見様によっては少女に巨大モグラが懐いているようにも見えるし、場合によっては少女の貞操の危機にも見える。


「おそらくヴェルダンデは君の持つその指輪に興味を示しているようだね」


「いいから、この子をどうにかしなさいよ。アンタの使い魔でしょう?」


巨大モグラの顔を抑えてこれ以上近づかせないようにしているルイズだが、その細い腕はプルプル震えていた。
そろそろ止めろよ、と俺がギーシュに進言しようとしたその時だった。
一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつこうとしていた巨大モグラを吹き飛ばした。


「ヴェルダンデ!?誰だ!僕のヴェルダンデを吹き飛ばしたのは!」


ギーシュが無様に吹き飛ばされる巨大モグラを見て、涙目でわめいた。
朝もやの中から、長身の貴族らしき男が一人、姿を現した。
それを見たギーシュは薔薇の造花を掲げようとしたが、貴族の男はすっと杖を引き抜き、薔薇を吹き飛ばした。


「おいおい、僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」


その名を聞いた瞬間、ギーシュは驚愕の表情で固まった。
しかし俺はそう言われてもピンとこない。正直アンタ誰である。
魔法衛士隊って何だろう?ギーシュの表情から考えるにとても凄そうとしか分からん。
まあ、王女お付きの部隊の隊長だから実力者であるということは分かる。
ま、俺なんぞ足元にも及ばんほどの強さなんでしょうな。
という事は生存率が格段に上がる?


「すまないね。婚約者がモグラに襲われそうになっているのを見て見ぬふりはできなくてね」


ギーシュを見ながらそのイケメン貴族はそのような戯言を言った。
こん・・・やく・・・しゃ?
OK、状況を整理しよう。
この貴族はルイズにまとわり付いていた巨大モグラを魔法で吹き飛ばした。
吹き飛ばした理由をこの貴族は「婚約者がモグラに襲われそうになっていたから」と言った。
・・・人違いじゃないんでしょうか?髪の色及び長さ、或いは体形が似てたとか。


「ワルドさま・・・?」


「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」


「お、お久しぶりでございます!ワルドさま!」


ワルドはルイズに駆け寄り、抱えあげた。その表情は満面の笑みである。
ルイズはといえば、頬を染めて、借りてきた猫のように大人しくワルドに抱きかかえられていた。
どうやら人違いの類じゃないようだ。
まあ、貴族の娘だしな、ルイズは。婚約者ぐらいいても可笑しくないよな。
何かラブコメチックな雰囲気をかもし出しているのは腹が立つが。


「ふふ、君は相変わらず軽いな。まるで羽のようだよ」


「そ、そんな・・・恥ずかしい・・・」


甘い。甘すぎる。糖分高の吐瀉物を垂れ流す事が出来そうなほど甘い雰囲気だ。
今のルイズは確実に恋する乙女って感じだ。普段のあの凛々しい馬鹿っぷりは微塵もない。
ギーシュも微妙な顔でそのいちゃつきぶりを眺めている。
泣かせた女の子と仲直りしたとはいえ、現状のギーシュはフリーである。
勿論俺も現状彼女いない歴=年齢の漢である。
その歴史にピリオドを打つチャンスを今目の前でいちゃついてる娘によって破壊されてしまったことは忘れも出来ない事である。
そんな寂しき漢たちにこのような光景を見せるなど、この二人は命が惜しくないのだろうか。
そう思っていたら、ワルドがルイズを地面に下ろし、俺たちのほうを見ながら言った。


「ルイズ、彼らを紹介してくれたまえ」


「は、はは、はい!あ、あの・・・金髪の方がギーシュ・ド・グラモン、黒い髪の方が、私の使い魔のタツヤです」


ルイズが交互に指差して言う。
ギーシュと俺は深々と頭を下げた。俺はとりあえずギーシュに倣った形だが。
ワルドは俺に近寄ってきた。


「君がルイズの使い魔か。人とは思わなかったな。僕の婚約者がお世話になっているよ」


「いーえ、俺の方こそルイズ『さん』にはお世話になりっぱなしですよ」


実際世話になってるしな。
厨房の人々と親しくなれたのも、ギーシュと普通に話したりできるのもルイズの力が大きい。
何だかんだでルイズには感謝ぐらいはしてます。忠誠を誓う気はないが。
目の前のワルドからは、男らしさと気品さが溢れ出ている。今まで見たメイジとは違い、身体も逞しい。十人が見れば十人がカッコいいと認めるんじゃないか?


「アルビオンは今大変な事になっているが、何、心配する事はない。君たちはあの『土くれ』のフーケを捕まえたんだ。その勇気があれば、何だって出来るさ」


そう言ってワルドは、あっはっはっは!と笑った。
自分たちの不安を和らげようとしているのか。
周囲の気配りも欠かさないとは流石は隊長を張る男は違うね。
今のところ、この男に欠点らしきものは見当たらない。ルイズはいい人と一緒になれるようだな。
まあ、しかし、勇気だけじゃ何も出来ないというのはフーケとの戦いで分かっているんだよね。
勇気なんてものはただの行動のきっかけでしかない。それすら出来ない人間も結構いるけど。

ワルドが口笛を吹くと、靄の中から鷲の頭にライオンの胴体をもった幻獣グリフォンが現れた。
ワルドはひらりとグリフォンに跨ると、ルイズに対して手招きした。もう、その仕草が自然でギーシュのように気障っぽくない。
ルイズは少し躊躇う素振りをみせたが、ワルドの手を取った。ワルドはルイズを抱きかかえた。そしてワルドはグリフォンの手綱を握り、杖を掲げて叫ぶ。


「では諸君、出撃だ!」


グリフォンが駆け出す。俺たちもすぐに自分たちの馬に跨り、その後に続いた。
俺は前を行くバカップルに対して冷たい視線を浴びせるしかない。

ギーシュがこの任務に志願したのは、この任務が成功すれば、アンリエッタ王女に声を掛けて貰えるかもしれないからという理由と、家の名を上げることが出来るかららしい。が、それを説明しているギーシュの表情は終始にやけていたため、多分理由の大部分は前者だろう。
どいつもこいつも色ボケばかり。それは依頼した王女もである。
ルイズは依頼を受けたときはワルドが同行するなんて知らなかったろうから、単純に家や自分の名を上げるためか、友人の王女のため、あるいは世界のため~とか考えてたのかもしれない。しかし今は完全に恋する乙女モードに突入している。場所が場所なら微笑ましいのだが、マジで場所を考えろよ。


何で俺が昨晩ルイズに「俺も行かなきゃ行けないの?」と確認したと思ってんだよ。
遊びに行くわけじゃないって事ぐらい昨日の姫さんの話を聞けば俺にだってわかるさ。
どう考えても『土くれ』のフーケの件とは危険度はまるで違う。
敵ははっきりしていないのだ。場合によってはウェールズ皇太子側と事を構えることもありうる。
ワルドはおそらくルイズを守るだろう。ギーシュも自らのゴーレムでなんとか身を守る事も出来るだろう。
だが、俺は?魔法は使えんぞ?攻撃が避けやすくなったといっても人間の体力には限界があるんですが。
要はワルドが来ようが、俺の生存確率はこのメンバー中で一番低いという訳だ。
悲壮感纏ってるの俺だけかよ!チクショー!色ボケは死ね!あ、でもこいつら死んだら俺も死ぬな。やっぱ生きろ。





学院長室の窓から、アンリエッタは出発する一行を見送り、その無事を祈った。
その隣ではオスマン氏が鼻毛を抜きすぎて鼻血を出している。オスマン氏は少し慌てて鼻血の止血を行った。
そのとき、扉が乱暴にノックされた。オスマン氏が「入りなさい」と言うと、慌てた様子のコルベールが入ってきた。


「オールド・オスマン!大変です!」


「ふむ、どうしたね。ついに君の頭髪に効く魔法でも見つかったのかね?それならばワシに報告せずさっさと試せばよい」


「そんなの見つかったら即、試しています!そうではなく、城からの連絡です!フーケが脱獄しました!」


「ほう?どうやって?」


「門番の話では、さる貴族を名乗る者に『風』の魔法で気絶させられたようなのです。魔法衛士隊が王女のお供で出払っている隙に、何者かが脱獄の手引きをしたのですぞ!」


「ほう、それはつまり?」


「高い確率で、いえ、まず間違いなく、城下に裏切り者が存在します」


「そんな!城下に裏切り者が・・・!?・・・これは間違いなくアルビオンの貴族の暗躍ですわ!」


「さて、とはいえワシらに出来るのは今は待つことだけ。すでに杖は振られております。ジタバタしても意味がありませんよ。今は彼らを信じましょう」


「何を悠長な事を・・・」


「我々が下手に騒げば、今しがた出発した彼らにいらぬ被害を与えかねません。今は信じて吉報を待ちましょう」


「ですが・・・」


「信じましょう、姫様」


オスマン氏がアンリエッタに言い聞かせるように言う。
アンリエッタは窓の方に向き直り、遠くを見るような目をして、自分の友人のルイズ達の無事な帰還を祈るのだった。









さーて、魔法学院を出発して結構な時間が過ぎた。
俺とギーシュは道中、途中の駅で二回ほど馬を交換したが、ワルドのグリフォンはタフなもので全く疲れを見せる様子もなく走っている。


「まさかここまでとは思わなかったよ・・・これが魔法衛士隊か」


「しかしこの分だとまだ馬を替えなきゃいけなくなるな」


「あのグリフォンもよく鍛えられている。息を全然切らせていないし・・・」


「まぁ、王女様を守る部隊の隊長が騎乗するんだ。ちょっとやそっとでへばったら決まらないしなぁ~」


「今のペースは幾らなんでも速すぎる。僕は少し疲れたよ・・・」


「そもそも目的地の港町までどのくらいかかるんだ?」


「普通は馬で二日はかかる。だが、今のペースはそのペースを明らかに凌駕してるよ。婚約者にいい所を見せようと張り切るのはいいが、こっちの事も考えて欲しいな・・・」


「婚約者ねぇ。そう聞くと本当に貴族なんだーって気がするな」


「悪かったね、婚約者がいない貴族で」


「お前はいてもどうせ女の子に声かけまくって婚約者に愛想付かされるタイプだな」


「恋愛はやはり自由恋愛に限るね。そう思わないか?」


その自由恋愛による厄介ごとに巻き込まれてるんだけどね、俺たち。
恋愛は自由だが、極力他人に迷惑をかけないで欲しい。
恋は盲目なんて言うが、そんな時でも大局的に物を見れる奴が恋愛上手になれるのではないのか?


「それより、タツヤ、君は疲れていないようだね・・・」


「は?俺は馬を信用してるから。人馬一体というやつだ。体力的にはまだ元気だ。問題は精神的疲労だ。帰っていいか?」


「すでに白旗宣言じゃないか!?」


前を走るグリフォンからはワルドとルイズの話す声が風に乗って聞こえてくる。
主にワルドがルイズに対して愛を囁いている。肩も抱いている。
それに対してルイズは照れているのか終始顔が真っ赤だ。
どの位会ってなかったんだろうな、あの二人。
会えない日が長ければ長いほど再会した時の感情は爆発するものだ。
・・・仮に五年位会ってないと仮定すると、何だか危険な香りもするが、それは俺の世界の常識では異常なことだが、こっちではそんなに珍しい事ではないのだろう。
安易にこのロリコン貴族が!とは言えないな。そもそもこの世界で『ロリコン』という単語があるとは思えんが。


「やはり気になるのかい?ルイズが」


ギーシュが何やらニヤニヤしながら聞いてくる。


「ギーシュ、前にも言ったよな俺。俺は苦労して漕ぎ着けたデートの当日にルイズに召喚されたと」


「・・・すまない、妙な勘繰りをしてしまったようだ」


「普通さ、デートをすっぽかした挙句、それからまったく音沙汰無しの男を、別に恋人でもない女が待ってると思うか?」


「普通は・・・怒るよ」


「ああ、愛想もつかれるな。そして相手にもされなくなる。いつまでも恋人でもない男を待ってくれるような、そんな男に都合の良い女性なんていないよ・・・でもさ、せめて俺は謝りたいんだよ。そいつに。待ちぼうけをさせてしまった事、約束を違えたこと、裏切ってしまった事・・・許されなくても謝りたいんだ。帰れる可能性は低いらしいけどさ」


「まあ・・・基本的に使い魔は主の側にいるものだからね・・・」


「もし召喚されていなかったら、あの二人のような状態になっていた可能性があったかもと思うと、何とも複雑・・・いやはっきり言って腹立ってくる」


「ま、まあ、当事者だからね、彼女は・・・」


「あっさり振られでもすれば面白いんだが、あの貴族さんはルイズにぞっこんみたいだし、ルイズもまんざらでもなさそうだ。両思いの奴らの不幸を心底願うのは紳士的じゃない・・・が、感情は許すなと言ってる」


「あまり早まった真似はしないでくれよ・・・?」


「それは心配するな。あの貴族さんに何かあれば俺が危ない。ルイズに何かあっても俺が危ない。したがって奴らを手にかけることはイコール自殺行為でしかないんだ。それが分かってるから余計にムカつくんだよ。ちょっと殴っていいですか?」


「その理屈はおかしい!?」




ギーシュを殴ることはしないが、ともすれば、この俺の悲しみにも似た怒りは何処に向ければいいのか。
ムシャクシャしたからアルビオンの奴らを適当にぶった斬るほどの腕があるとは俺には思えない。
ふと気づくと、グリフォンに乗るルイズと目が合った。その目は勝ち誇ったような目である。何だその目は!
ギーシュもそれに気づいたようで、死ねばいいのにとか物騒な事を言っていたが、すぐに正気に戻っていた。
あいつら死んだら、俺たち生き残れる確立限りなくゼロだもんな。泣けるな。




それから俺たちの予想通り、馬を何回も替えて飛ばした結果、その日の夜のうちに俺たちは第一の目的としたラ・ロシェール入りを果たした。








(続く)



【後書きのような反省】

ラブコメ的空気を目の前で見せられたら殺意も沸きますよ。
それが人情ですよ多分。


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