※このお話はあくまで本編のIf話というか異伝のようなネタ話です。始祖の祈祷書を眉を顰めながら見ているルイズ。彼女は今、新しい魔法を覚えたいと言って、始祖の祈祷書とにらめっこ中である。「うーん・・・うーん・・・」目をかっと見開いたり、細めたり、閉じたりしているが、祈祷書はうんともすんとも言わない。いや、喋ったら驚くんだがな。「ふー、ふー!」何か祈祷書に息を吹きかけ始めたルイズだが、そこまでして新しい魔法を覚えたいのか?この前、散々燃費が悪すぎとか言って嘆いてたじゃないか。爆発と解除だけでいいじゃん。駄目なの?俺はそんな珍行動を繰り返すルイズを見ながら、喋る剣の手入れをしていた。「・・・小僧、手つきが適当になってきたぞ。娘っ子の行動は面白いが、ちゃんと俺の手入れはしやがれ」「黙れ無機物。削るぞ」「・・・痛くしないでね」「気持ち悪いんですが」俺と喋る剣とのやり取りもいつも通りだ。貴族になったのはいいが、今のところやることもなく暇である。そんな風に暇を持て余してますとか言ったら色んな奴らが俺を構い倒そうとして来る。気持ちは嬉しいが、俺は穏やかに過ごしたい。基本ルイズはそういう穏やかな時間を俺に提供してくれるので、我が主とこうしてまったりする事が最近は多いのだ。・・・って、まったりしてどうする!?俺は出来るだけ早急にもとの世界に帰らなきゃならないんだぞ!?一回帰ったことはあるけど、分身があっけなく死んだせいで元の世界に戻された。自重しないルーンの力で条件付とはいえ次元を越えれるんだ、もしかしたら無条件で次元を越えれる魔法があるかもしれない!最近ようやくそのことに気づき歓喜したのだが、あるかもしれないと言う仮定だけで、実際あるかどうかは知らない。結局未だ絶望的な状況なのだ。「おお!?何か文字が浮かび上がってきたわ!」ルイズが歓喜の声をあげたので、見てみると、成る程確かに始祖の祈祷書が輝いている。俺には古代のルーン文字など読めないが、ルイズは真面目に授業を受けているらしく、普通に読めるらしい。英語を普通に読み書きできる日本人を俺は尊敬するが、ルイズが古代ルーン文字を読み書き出来るのは別に尊敬しない。覚えても俺の世界じゃ使わないしな・・・「えーと・・・中級の中の上。『世界扉』?」なに?『ワールド・ドア』とな?何だそれ?「・・・おい、何で今の娘っ子がそんな魔法の項目を読めるんだ」「知っているのか?」「『世界扉』は違う世界への扉を開く魔法だ。だがな、そんな魔法、爆発とは比べ物にならねえほどの魔力を使うから、今の娘っ子じゃ・・・」「ユル・イル・ナウシズ・ゲーボ・シル・マリ・・・」多大な魔力を使うのにルイズさんは既に詠唱を始めていた。「おいコラ娘っ子!?適当に呪文を唱えるんじゃねえ!?」喋る剣の静止も聞かずに、ルイズはノリノリで詠唱を続けている。新しい魔法を使いたくて仕方ないのだろう。爆発しなければいいが。しかし、違う世界の扉を開くか・・・もしかしたらとは思うがこれが元の世界に戻るための魔法なのかもしれない。やがて途中で詠唱を止めて、ルイズは杖を振ると・・・大きな鏡が現れた。「ぜえ・・・ぜえ・・・かなり疲れるわね・・・これ・・・」いきなりグロッキー状態のルイズだが、俺は鏡に映った光景に唖然としていた。・・・鏡に映った俺の家の玄関。「・・・あれ・・・ここ・・・どこなの?」「ルイズ」「な、何・・・?」「俺の家だ」「へ・・・?」俺はルイズの方を向く。ルイズは俺が何を言ったのか分かってないかのような顔をしている。「俺の・・・家なんだ・・・」「・・・ほえ?」何か都合よく俺の世界に繋がったみたいだが、このままずっと呆けていたらルイズの身が危ないのではないか?そう思った俺は簡潔にルイズに言った。「ルイズ!今度はドラゴンとか呼べよ!皆によろしく伝えてくれ!」「ちょ、ちょっとタツヤ・・・」俺は目の前の鏡に飛び込んだ。「待ちなさ・・・」自分が止める前に達也は鏡の中に飛び込み、当の鏡は消えてしまった。ルイズは薄れそうになる意識を堪えながら、現状の理解をしようとしていた。どうやら自分は『世界扉』の魔法を詠唱してみたら、成功した挙句、更に達也の世界に繋げてしまったらしい。「さ、流石私・・・やはりモノが違うわね・・・」そう強がっては見せるが、心の準備ナシにこれはないのではないのか?ルイズはベッドに倒れこんだ。「全く・・・皆によろしくって・・・どう伝えれば良いと言うのよ」確かに達也の帰る方法を探す努力はすると約束はした。しかしこんな形で別れてしまうとは夢にも思わなかった。おそらく達也と親しくしていたギーシュやシエスタ辺りは大変残念に思うだろう。更に、ミスタ・コルベールも、達也の帰郷を残念に思うのではないのか?「姫様や母様に何て言って誤魔化そうか・・・」目下の危機はそれである。何故かこの二人は妙に達也を気に入っている。どういう反応をするのか考えるだに恐ろしい。「死んだら諦めもつくけど、生きてるのに会えないほうが辛いんじゃないのかしらね?」いっそ死んだ事にするか?とも思ったが、それは自分自身が許さなかった。「元々、ここにいること自体がおかしな存在だったから・・・そう思えば辛くはないわよね。うん。生きてるんだから」目を閉じるルイズ。「だから、涙を流すのはおかしな事なのよ、ルイズ・フランソワーズ。おかしな・・・事なのよ」そう、自分に言い聞かせながら、ルイズは意識を手放した。さて、俺の記憶が正しければ、鏡に映ったのは俺の家の玄関のはずである。「おいおい、すげえな小僧。このクソ広い大草原はお前の家の庭か?」しまった、喋る剣も一緒に持ってきてしまっていた。しかしここは何処だ?見渡す限り荒野と岩山しかない。更に言えば人の気配もない。俺の記憶に日本で地平線が見えるところは限られているが、少なくとも俺の家付近にこんな場所はない。「ルイズめ、期待させといて場所が全然違うじゃねえか」「あん?小僧の家じゃねえのかよ」「こんな広い土地をもった貴族様ではないから」一応頬とか抓ってみたが夢ではないようだし、この荒れ果てた荒野がある世界とは、まさか世紀末救世主的な世界じゃなかろうな?「おい、お前、珍しい格好してんじゃねえか」ふと、声を掛けられた。珍しい格好とかお前、ルイズ達の世界でも言われなかったぞ?俺が声を掛けられた方を見ると、3人組の男がニタニタしながら俺を見ていた。東洋系の顔つきだが、格好はその質素な鎧のような服と、頭には黄色の布を巻いている。少なくとも、日本じゃあまり見ない格好だ。そして柄も凄く悪い。「兄ちゃん、さっそくで悪いんだが、金と服置いていけや」3人組の男のリーダーと思われる中肉中背の男がそんなふざけた事を言ってきた。しかも、包丁より大きなナイフを俺に突きつけながら。・・・げえ、物盗りかよ。しかし、いきなりこれではいよいよ世紀末である。「小僧」背中の喋る剣が、囁いてくる。「あいよ」俺は背中の喋る剣を抜き、3人組のうちの小柄な男を剣で殴り飛ばした。「ほぎゃあ!?」「て、てめえ!」大柄な男の攻撃をかわして、男の切ない場所に剣を振り上げる。男は声にならない叫びを上げて泡吹いて倒れた。これで取り巻きは全員片付けた。ワルドやらに比べたら脆いな。「で、どうする?」出来るだけ余裕ぶっこいて言ってみた。今のを見て怖気づいてくれたらラッキーなんだが。「・・・クソ!カモと思ったのに何てこった!おい!お前ら行くぞ!」「う、うへ~い・・・」「おふっ・・・」小柄の男は頭を押さえながら、大柄の男は内股で、リーダーの後を付いて行った。すまん、しばらくは歩きにくいだろうが、盗みを働こうとした罰として受け取ってくれ。立ち去る3人組を見送る俺だが、大変な事に気づいた。「ここ、どこだろう」場所を聞くのを忘れた。「おやおや、助けに入る必要がないとは、何とも拍子抜けだ」今度は誰だよ?俺が声の方を振り向くと、三人組の女性がいた。一人は大きな槍を持っている。あと二人は眼鏡の女性と、頭に何かトーテムポールというか太陽の塔のようなものを乗せた女性だった。あえて言おう、助かったとは思わん。断じて思わん。そして此処は何処なんだ!?(続いたら怒ります?)