「あ、キラ君、ちょっと話があるんだけど。」
トールにキラは格納庫にいると言われ、そこに向かったユズハはその途中の通路で戻ってきたキラを見つけた。そして、話を切り出す。
「ユズハ?どうかしたの?」
「あのね・・・・・。」
ユズハは話した。フレイが軍に残る事を決めた事を。そして、他の皆の中にも残るものがいるかもしれない事を。それから、ユズハ自身の中では結論がでているが、キラを惑わせないように迷っているという風に言った。
「そう・・・・なんだ・・・・。」
キラが迷いを見せる。そんな彼にユズハは一言だけ言った。
「キラ君、あなたがどちらを選んでも私はそれでいいと思う。けど、一つだけ言える事があると思うの。私達は今まで、仕方なく戦った。けど、ここで残るってのは自分の意思で決めたって事、全部自分の責任になるってことだと思う。戦うのも・・・・人を殺すのも。勿論、それは他のみんなも、この先みんなが残る事を決めて・・・死んでしまってもそれは誰の性でもないみんな自身の性。」
殺すという言葉、そして死ぬという言葉にキラがびくっとなる。ユズハの表情は真剣そのもので、そして彼女もまた顔を青白くしている。だが、彼女は目をそらさず、じっとキラの事を見つめ、そして言った。
「ユズハは・・・どうしてそんなに強いことが言えるんだ?」
迷っている・・・とは言っていたが、その話の内容からユズハがおそらくはアークエンジェルに残る“覚悟”をしているのだろうという事がその話から検討がついた。そして、その上で彼女は言っているのだ。この先、自分が死ぬのも、仲間が死ぬのも、そして・・・・敵を殺すのも全て自己責任なのだと。
「私は、責任を誰かに押し付ける事も、押し付けられる事もしたくないから。」
それに対し、ユズハはそう答えた。それは彼女自身の根源とも言える言葉。彼女は15歳という幼さにして、“責任”というものの重さを良く知っている少女だった。
「僕は・・・・どうしたらいいんだろう・・・。」
キラはポツリと呟く。だが、それはユズハに対する問いかけではない。目の前の強い少女に対し、この状況で頼ることがどれほど情けない事かわからないのほどキラは馬鹿ではなかった。
そして、約束の時間まで、後、10分となった。しかし、キラは今だ決断できていなかった。しかし、それは無理の無い事かもしれない。人生を決めかねない選択に対し1時間という時間は勢いで決めるには長すぎ、熟考するには短すぎる時間なのだから。そして、キラが答えを出すよりも早くサイ達は答えをだしていた。
「返事は決まったかね。」
「俺は・・・・・軍に残ります。」
ホフマンの問いかけに対し、サイは軍に残る事を表明した。彼なりに必死に考え、それでも彼にはフレイを放って置くという選択は残らなかった。
「俺は・・・・・降ります。」
「私もです。」
トールは降りる事を決めた。軍に残るフレイとそして、おそらくは彼女の為に残ると予想していたサイ。彼らは放って自分だけ逃げていいのかという気持ちとその選択がキラを苦しめるのではないかという葛藤。自分の事以上に友人のことを思いやった彼が取った選択は艦を降りることだった。そして、彼の恋人である、ミリアリアも彼のその選択肢に従い降りることを決めた。
「俺も・・・・降ります。」
そして、カズィも降りる事を決めた。彼は軍に残るという事実をかみ締め、その恐怖に耐えられなくなった。そして、この決断をした。
「わかった。後は、パイロットの二人だけのようだが、彼らは?」
ホフマンは彼らの意思を確認した後、今だこの場にいないユズハとキラの事について訊ねる。
「多分、もうすぐ来ると思います。」
ミリアリアがそう答える。時計を見ると、約束の1時間まで後6分、もし、その時まで答えを出せないようなら規律を守れないような軍人など以下に優秀でも必要ない。ホフマンは彼らの答えに関わらず、軍に残すつもりは無かった。
「何で・・・何でこないのよ・・・。」
ユズハが来ないことにいらつきを見せるフレイ。その時、艦に警報が鳴り響いた・・・・。
(後書き)
階層が深くなりすぎて読み込みが悪くなったのでスレッドを新しくしました。それから今までは割りと原作にそう事を意識し、公式小説などを参考にしていたのですが、逆にその辺が変化がなくてつまらないと指摘されることが多かったので、これからは開き直って独自の展開、会話を多くしていきます。その為、これまでとは文の書き方が大きく変わる部分もあり、読みづらい部分等が生まれてくることもあると思いますが、ご了承ください。
今回、トールの選択についてはほんと、悩みました。ただ、彼はフレイが言い出すまで軍に残るという考えは一切持っていなかった訳ですから二者択一になったらこういう選択をするのではないかと考え、本編のようにしました。でも、彼が降りたことでミリアリアがいなくなったのは痛いにゃー。