序章
一人の男の子が泣いている
「しんじゃやだよ」
一人の男の子が泣いている
「しんじゃやだよ」
その涙をふき取るように男の子の目の前で倒れている女性がそっと頬に
手を寄せる
「 、ほこり…たか…く…、つ…よい…たま…しいを…持ちなさい」
途切れ途切れのその言葉を女性ははっきりと言った。その女性の腹部の部分が真紅に染まっていく
「しんじゃぁやぁだよぉ」
その男の子は顔が涙と鼻水でくしゃくしゃになりもう何を言ってるのかわからなくなっていた
「だ…いじょ…うぶ…。あな…た…がどんな…く…るし…い…ことに…なっ…ても…それを…おぼ…えてい…れば…かならず…た…ちむか…うこ…とがで…きるか…ら…だか…ら…!」
「おかぁさん!」
その女性の命はもう時間がない
「 、わた…しは…しあわ…せ…でし…た…よ………―」
女性はまぶたゆっくりと閉じた。まるで眠るようにゆっくりと
「おかぁさん!おかぁさん!目を開けてよおかぁさん」
そしてその日男の子の泣き声が止まることがなかった――