調子に乗ってもう少し投稿してみます。
これはリンディ編かな?
テンション低めにつき口調がおかしいのに注意。
過去の捏造及びやっつけ仕事にも注意。
私が初めてその人と出会ったのは六才の時だった。
その時の私はまだ魔法学園を卒業したばかりで、社会の右も左もわからないような状況だった。
家柄のこともあり、いずれは管理局で士官として働くことは決まっていた。
そのこともあって、就業年齢が低いミッドチルダにしても格段に幼くして執務官補佐というエリートコースに就くことも出来た。
今になって考えれば、当時管理局への強い影響力があった祖父が全てどうにかしたのだろう。
だって―――
「今日からあなたたちの上司になる、プレシア・テスタロッサです。よろしくね」
―――その執務官というのが管理局でも屈指の実力者、あの大魔導師プレシア・テスタロッサだったのだから。
小さな頃からその人の武勇伝を聞きながら育ってきた。
曰く、魔導師ランク総合SS+の万能型魔導師。
曰く、魔導師ばかり集めた犯罪組織を一人で制圧した魔導師。
曰く、オーバーSランクの騎士とのクロスレンジ勝負に一対一で勝利した魔導師。
曰く、執務官の中でも屈指の美人魔導師。
他にも私が聞いた話の中には嘘か真かもわからない話もいくつか混じっていたが、幼い私が憧れるには十分な女性だった。
「あ、あのっ!わたしはリンディ・ハラオウンっていいますっ!」
初めの挨拶はこんな感じだっただろうか。
「ぼ、僕はクライド・ハーヴェイといいます!よっ、よろしくおねがいしますっ!」
同じく魔法学園からの付き合いで、いつもは物怖じしないクライドもこの時ばかりは緊張していたようだった。
「…………本物?」
彼女は心底驚いたような表情を見せていたが、私たちのあまりの幼さに驚いたのではないかと思っている。
「は、はひっ?!」
……その呟きに何とか答えようとして、うっかり舌を噛んでしまったのは若さだろうか。
そんな私を見ていた彼女は、少し困惑した表情をしてからまるで微笑ましいモノを見るかのような目で私を見つめていた。
「ふふ、そんなに緊張しなくても良いわよ。いつもそんな感じじゃ疲れちゃうでしょ?」
そんなふうにファーストコンタクトを終えた後だろうか。
なんとか打ち解け始めた頃にクライドが彼女に一つの質問をした。
「あ、あの。プレシアさんって最近まで休んでいたんですよね?」
「そうね。今日が仕事の復帰日よ」
「じゃあ、お子さんが生まれたって本当ですか?!」
その話は私も知っていた。
二年ぐらい前から産休を取って仕事を休んでいると母から聞いた事がある。
「ええ……丁度いいわね。今日はこの後二人の実力がどんなものなのか知るために模擬戦をやっておしまいだから、よければ後で家に来る?」
彼女の好意に、すかさず私は答えていた。
「ぜひ!!」
……この後のことは話すまでもないだろう。
強いて言っておくとしたら、彼女はアリシアちゃんが大好きで、アリシアちゃんは可愛かったということだろうか。
――それからの四年間は楽しかった。
彼女はどんな時も優しかったし、誰よりも強かった。
私たちがどんな窮地に立たされようといつも救ってくれた。
時には厳しくても、それが優しさからくるものだということを私もクライドも知っていた。
アリシアちゃんが成長していく姿をみて一人っ子だった私もお姉さんの気持ちになれたし、プレシアさんの旦那さんもいい人だった。
――でも、そんな日々もずっとは続かなかった。
アリシアちゃんが、アリシアちゃんを守ろうとした旦那さんもろとも犯罪者に殺された。
それを聞かされた瞬間は何を言われたか判らなかったが、二人の葬式で理解させられた。
アリシアちゃんたちは、もうこの世には居ないのだと。
葬式は雨の中だった。
ほとんどの参列者は傘を片手に祈りを捧げていたが、彼女だけは雨の中で傘も持たずに呆然と立ち竦んでいた。
誰かが彼女に傘を差し出したが、それが受け取られることはなかった。
私は彼女にどんなふうに声をかければいいのかわからなかった。
私自身も涙を流していたからかもしれない。
そのまま葬式は終わってしまった。
結局、最後まで私は彼女の表情を見る事はできなかった。
その三日後、彼女が辞表を提出していたことを知った。
管理局も同情したのだろう。辞表は即日に認められ、私が気付いた時には彼女の家はもぬけの空だった。
ただ、取り残されたテーブルの上に『ごめんなさい』という文字が書かれた紙が置いてあっただけだった。
私とクライドも、しばらくは立ち直ることが出来なかった。
妹分と、親しい人。
さらにはもう一人の母を失ったのだから。
取り残された私たちは、クライドの家と親交のあったグレアム提督の部下になった。
一度は挫けかけたけど私たちだけど、何とか気を取り直し執務官になった。
その3年後には提督の旗下とはいえ次元航行艦の艦長と副艦長になることが出来た。
20歳でクライドと結婚をした。
仕事の関係で籍を入れるのにここまで時間がかかったけど、クライドも艦長職が板に付いてきて余裕が出来たのでこういう流れになったのだ。
結婚式は盛大だった。
両家と関係のある管理局の偉い方の大半が参列し、ミッドの首都クラナガンの高級ホテルを丸々貸し切るような式だった。
あの人も呼ぼうとしたけど、結局見つかることはなかった。
行方不明だったのだ。
管理局も探そうとはしたみたいだけれど、数年前に次元移動型の大型庭園を購入した事がわかっただけだったらしい。
結婚一年で長男のクロノが生まれた。
その間の仕事はクライドに任せっきりだったけど、文句一つ言わずに引き受けてくれたのは彼らしいというか……。
とにかく、充実した日々だった。
子育ても大変だったけど、アリシアちゃんとプレシアさんのことを思い出せば苦でもなかった。
けど、結局幸福というものは続いてくれないらしい。
闇の書事件。
私はクロノが5才になるまでは仕事に復帰しないつもりで生活をしていた。
そのクロノももう4才。
そんなある日、クライドの口からその言葉が出てきた。
管理局で士官をしている者ならほとんどが知っている事件だ。
完成とともに次元世界を崩壊させる魔導書。
過去に何度も管理内外世界問わず被害をもたらしてきた物。
その魔導書の所有者の居場所が判明したので本局の艦隊で封印に向かうことになったという。
大丈夫だ、と言葉を遺し彼は逝ってしまった。
一度は暴走を収めたかにみえた闇の書は、しかし本局への帰還中に再度暴走。
そして闇の書を保管していた艦にはクライドが乗っていた。
暴走する艦内で彼は最後まで乗員の退避を優先させ、一人艦に残ったらしい。
最期は、艦隊の主砲アルカンシェルで艦ごと散った。
全て、艦隊の総司令であったグレアム提督から知らされた。
その際に、恨んでくれて構わない、と頭を下げた提督を、私は恨む事が出来なかった。
葬儀は本局所属の全ての局員が参加し執り行われた。
葬儀では、涙を見せる事ができなかった。
私の分もクロノが泣いていたからだ。
クライドは慕われていたのだろう。葬儀に際し、沢山の花が贈られてきた。
その中の一つ、差出人不明の花束が目に付いた。
その花束に添えられていた便箋を開いてみれば『ごめんなさい』とだけ書いてあった。
……彼女だ、と思った。
かつて見た手紙と寸分違わぬ文字が、そこには書かれていたからだ。
今更何を謝るというのだろう。
そんなふうに、思った。
ふと、雨に濡れた彼女の姿を思い出した。
結局見えなかった顔。
もしかしたら、あの時彼女は泣いていたのではないだろうか。
彼女には誰も、何も残らなかった。
だが私には、私の分まで泣いてくれる息子がいるではないか。
そうだ、私は泣く訳にはいかないのだ。
クライドの分まで、あの子を育てなければいけないのだから。
そう決心し、クロノを育てていくとクライドの墓に誓いを立てた。
けれど、その時に一つの疑問が浮かんだ。
――プレシアさん、貴女は一体どんな苦しみを味わっているんですか?
――届くはずがないと思っていたその問の答えは、しかしながら十年もの時間を超え私に返ってきた。
そんな訳でやたらと暗い原作直前までのリンディさん視点です。
キャラクターの背景も出来たしこれで最終決戦を書けるのかな?
ちなみにプレシアがやたらと強そうな理由は彼女は参考に出来る魔導師を知っていたからでしょうか。
それにしてもさすがリリなの。感想の内容も参考になります。
片手腕立て伏せしながら考えさせられました。本当にありがとうございます。
……それにしても、書く物書く物段々と話が暗くなってきている自分は病んできているのだろうか?
……少し、腕立てジャンプでもして気分転換してきますね。
それでは!
※4/4ちゃっかり追記
エイプリルフールに乗り遅れた……。
痛オリ主が成長する物語とか書きたかったけどなぁ。
現実で諸々あったとしてもなかなか更新できなくて大変申し訳ないと思っています、ハイ。
週内には追加できそうです。
それではお目汚し失礼をば。