ある日、隊長質に呼ばれたので、隊長室に向かった。
失礼しますとノックをし、部屋に入ると
開口一番、レジアス部隊長に
「テレビに出ろ」
と言われた。
どうも、毎年、その年に入った新人を特集する特番あるらしく、その番組に出ろとのこと。しかも、生だそうな。
最近狙撃主として借り出される事が多かった事が、目に留まったらしい。
しかし、俺は自分で言うのもなんだが華が無い。
コルトのようなイケメンでは無いのだ。
そう思い、向いていそうに無いと言って断りたかったのだが、
「拒否権は無いんですよね?」
と部隊長に聞いてみると、
「無い」
とはっきりと断言された。
どうも、部隊長いわく、今回の番組出演をを陸のイメージアップに繋げたいらしい。
「『陸の新人の代表』の一人として、テレビに出演するという事を決して忘れるなよ。
お前の取る行動一つが、一般市民にとっての陸のイメージに直轄するといっても過言では無いからな」
と念を押され、俺ははぁと大きくため息をつきながら
「了解しました。恥を欠かないように努力します」
と部隊長に返事をしておいた。
それではと言って、部屋を出ようとすると、部隊長は
「それと、デバイス持参だそうだ。忘れるなよ」
と言ってきたので、
「了解しました」
と、返事をしておいた。
模擬戦でもするのかな?
蝶の羽ばたき
番組の出演の情報を知り合いに知られないように、誰にも教えなかったのだが、家族には父から話が回り、録画を行うとの事。
父いわく、結構多くの局員がこの番組を見ているらしく、注目度は俺が思っていた以上に高いらしい。
コルトからも俺が出演すると言う事を知ったらしく、連絡が来た。
その時コルトに、
「俺も出た事がある。まぁそこまで変な事を聞かれたりしないから大丈夫だ」
と言われ、少し緊張がほぐれたりもした。
俺は知らなかったのだが、どうも入った年に出たらしい。
まぁ、執務官試験に一発で通ったら目立つわな。
アリシアも知っていたらしく、何で知っているんだと聞いてみると、どうもグレアム提督経由で聞いたらしい。
お店の情報をやり取りしたときに、教えてもらったとの事。
「絶対見るね。楽しみにしているわよ」
とニヤニヤした顔で言われた。
どうも、包囲網が完全に形成されているようだった。
まったく、嫌な話だ。
さてさて、やってきました撮影日当日。
スタジオに着くと、そこには何人かの局員がすでに到着していた。
俺と同じ年くらいのも居れば、俺より少し上の人も居たりする。
テレビ局の人に
「少し待っていてくださいね」
と言われたので、用意された椅子に座ってすこし待つ事に。
どんな事を聞かれるのかなと考えていると周りが一斉にざわめき始めた。
どうも、周りの雰囲気から大物が到着したらしいと判断できる。
どんな奴が入ってきたのかなと思い、扉のほうを見ていると、そこに居たのはあの『規格外』フォルクス=ワーゲンだった。
フォルクスが入ってきたとたん、この番組のプロデューサーがに駆け寄り、頭を下げだした。
あいつだけ、明らかに俺やほかの局員とは扱いが違う。
当の本人は少しうっとうしがっているようだが。
どうやら、あいつが今日の本命で、俺はその他の一人といった所か。
特別扱いになるのは仕方が無いか・・・。
あいつ自身の持つ、ロストロギアの存在や、バックに聖王教会が、ある事も考えると
それに、ワーゲンはコルト以上の美形だからな、明らかに別格のオーラを出している。
そんな事を考えながら、撮影を待つ事に。
そんなこんなで予定されていた時間になり、番組撮影が始まった。
生放送という事で緊張していたが、問題なく進みそうだ。
今日出演する新人は俺を含めて五人。
あとは、客席にそこそこの人数が座っている。
なぜかワーゲンが座った位置は、司会者の女性から一番遠く一番端で、俺はその隣の端から二番目だった。
こいつが中央じゃないのか?と最初は思ったのだが、新人局員の紹介が、司会に近いほうから始まったため、すぐに理由が分かった。
ワーゲンを最後にする事によって、番組の注目を少しでも長引かせようという手法をとったからのようだ。
俺はその前の、引き立て役にされたようで、すこぶる不快に感じたが、自分が、陸の代表の一人としてこの場に呼ばれた以上、無様な姿をさらすわけにはいかないと、我慢する事に。
そんなこんなで三人目の説明が終わり、俺の紹介が始まった。
最初は俺の簡単なプロフィールから始まり、父が陸士であると表示されると、司会者から「お父様が陸士だったから、局員を目指したのですか?」
と質問されたので、俺は迷い無く
「はい。それに、父や母といった家族や友人達といった、大切な人達が住む、地上を守りたかったから局員になりました」
と質問に答えた。
無難で面白くない回答だが、切欠こそ違うが、嘘を言ったつもりは無い。
プロフィール紹介が終わり、次に、一緒に働いている人の映像が画面に映し出される事になり、そこに写っていたのは小隊長と先輩だった。
ほかの人同様前もって撮影されたものらしい。
小隊長達は普段の様子を隠しつつ、いろいろと聞かれた質問に答えている。
自分の評価を知り合いからされるというのも、なかなか恥ずかしいなと飲み物を口にしながら考えていると、質問が終わった後、
「最後に何か一言ありませんか」
といわれたことに対し小隊長はニヤッとした顔で、
「愛しのあの子が見ているかもしれないからって、緊張してヘマするなよ」
と、爆弾発言を行った。
俺は、その瞬間に、飲んでいた飲み物が器官に入り、大きく咳き込んでしまった。
吐き出さなかったのは、奇跡といっても過言ではない。
俺が苦しそうにゴホゴホしていると、司会者は、ニヤニヤした顔しながら
「なるほど、好きな女の子が居る地上を守りたかったんですね」
と、面白がって質問してくる。
俺がとっさに
「それについてはノーコメントで」
と答えても、司会者はさらにニヤニヤしながら、
「陸士期待の狙撃手が、今一番狙い撃ちしたいのは愛しのあの子のハートなんですね」
とさらに煽り、それにつられて、客席も多い盛り上がる。
客席には、女性のほうが多いのも理由の一つだろう。
女性の恋話好きは、自分とは関係ないところで発揮してほしい・
しかし、そんな事を気にしている余裕は俺には無く、ただひたすらに、ノーコメントですと答えるしかなかった。
それが墓穴だったことは言うまでもない。
隊舎に帰ったら、小隊長とは少々お話をしないといけないようだ。
小隊長の暴走で、会場が一通り盛り上がった後、ついにフォルクスの順番になった。
映し出された映像は、俺を含め、ほかのメンバーよりも、手が加えられているのが素人目にも良く分かる出来だった。
しかも、コルトとの模擬戦の映像を映し、フォルクスの強さを見せ付けている。
まさに特別扱いと言うべきか。
フォルクスの紹介に出てきた提督も、本局のかなりお偉いさんならしい。
そんな中、司会者がフォルクスに
「フォルクス准尉位美形だと、モテモテでしょうに。
それとも、イスト准尉のように意中の相手がいらっしゃるんでしょうか?」
といった、司会者にいろいろと突っ込みたい質問を行った。
俺がにらみつけても、司会者はどこ吹く風で受け流している。
これが、芸能人というものか。
そんな事を考えていると、フォルクスはしっかりとした口調で
「はい、います。
まぁ、僕も片思いですが」
と言い切った。それを聞いた司会者は
「おおっ、どこぞの准尉と違って男らしい発言ですな。
思われているその女性がうらやましい」
と、こちらをニヤニヤしながらそう言った。
この司会者とは、後で少し、お話をしたほうがいいかもしれない。
フォルクスの紹介が終わった後、司会者が
「さてさて、今回は、今までの放送と違って、実際にバトルロイヤル形式の模擬戦を行ってもらいます」
そう言ってから、デバイスは持ってこられてますねと確認してきた。
なるほど、ここまで露骨だといっそすがすがしいな。
ほかの局員も、当然その理由に気がついているらしく、一斉にフォルクスの居る方向を見ている。
見られているフォルクスは、はははと苦笑いをしている。
それならばいっそのこと、とことん乗ってやるかな。
そう思い俺は司会者に話しかけた。
「すいません、ちょっと提案があるのですがよろしいですか?」
俺がそういうと、司会者がこちらを向きながら、何んでしょうかと聞いてくる。
「いや、実は先ほどフォルクス准尉の時に流されていた、模擬戦の映像の相手であるコルト執務官とは、士官学校の同期なんですよ」
「それがどうかしたのでしょうか?」
「実は前に、彼の凄さを本人から直接いわれてたんですよ。
『フォルクス=ワーゲンは規格外』だと。
正直、このままバトルロイヤル形式を行うと、僕たちは彼に各個撃破されて終わるでしょうね」
「なるほど、それで、准尉はどうされたいんです?」
「ですので、4対1での模擬戦で行えないでしょうか?」
俺の言葉に、その場に居た人すべてが、一斉にこちらを見てくる。
とくに、フォルクス准尉は勘弁してくれと言わんばかりの表情だ。
そんな中司会者は、俺の言葉に
「ずいぶん弱気ですね」
そう返してくる。
「勇気と蛮勇は違いますから。それに自分や相手の実力を把握し、少しでも高い勝率の手段を実行する事もまた、局員に必要な資質だと、僕は考えてますから」
俺は、そう言って、再度司会者を見つめる。
目で暗に、そちらの方が盛り上がりますよいう事を含ませるのも忘れない。
どうしようかと司会者がプロデューサーのほうを見ると、プロデューサーは手で大きく丸を作っている。
どうやら番組としてはOKのようだ。
そちらのほうがより、フォルクスの強さが証明されるという事だろう。
それを見た司会者は
「ほかの方々はこの提案をどう思われますか?」
と、ほかの三人に尋ねる。
俺と同じ陸士は、あまり納得がいってなさそうだが、本局から
「それでは、OKが出ましたので、模擬戦の場所に移動をお願いします。」
そう言って俺たちを転移装置に誘導し始めた。
後書き
次はイスト+αVSフォルクス
仕事が忙しいです。
次も少し開きそう
特に今月半ばから来月にかけて死ぬ事になりそうだ。