第六話・ゴーレムごっついのぉ女の争い男の取り合い。醜いねー。でも、それも浪漫。一度でいいからヒロインしてみたいかもかーも。なんて。嘘デスよ?結果だけ言おう!マチルダことロングビルことフーケは、無事に“破壊の杖”をお持ち帰りました。私というイレギュラーがある中、よくぞ盗んでくれた!感動した!!達成者に拍手!ぱちぱちぱち。あは。…あー、かなり精神的に参ってるなぁ、私。この騒動が終わったら休もう。風邪引いたとかいって1日ぐっすりゴロゴロしよう。“ロック”+本棚か何かドアの所に置いて、超絶引き篭もってやるぜぃ。あばば。クールダウンだ私、ひっひふーひっひふーラマーズ呼吸法。よし、冷静な私が戻ってきた。それにしても、フーケのゴーレム大きかった。私の兄も土メイジだけど、あんなゴーレム絶対に作れない。トライアングルの片鱗を味わった。前回、フーケ怖いよーって部屋でガタガタ震えていた私は正解だったようだ。あんなもんに立ち向かうのは勇気じゃなくて蛮勇です。断言できる。※※※※※※※※一夜明け、ルイズ達主要メンバーと私は、オールド・オスマンに呼び出されていた。ミス・シュヴルーズを筆頭とするダメ教師団の言い訳&罪の擦り付け合いをBGMに物思いに耽る。フーケ騒動だけは原作メンバーに参加し、褒章をいただこうという計画だったが、正直気持ちは揺らぎまくりだ。フーケ怖い。ゴーレム怖い。タバサと知り合ってしまうという不測の事態に続き、ラリカ死亡って言う不測すぎる事態が起きたら洒落にもならない。あくまで私が目指すのは幸福な人生であって、スリル満点な人生ではないのだ。…でも、この雰囲気の中で1人だけ抜けるのは無理っぽいなぁ…。「私も行きます。この中ではバツグンに攻撃力ないですけど、治療くらいはできますから」で、結局参加の意を告げた。る~るる~、心の涙がとまらない~。コルベール先生が生徒達だけ危険な目にとか言ってくれてるようだ。ありがとう先生。でももう少し粘って下さい。一発でコロっと賛成に廻らないで。いつか貴方のワインに毛抜け薬を仕込んで差し上げますね。ちくしょ~め。「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持ち、トライアングルメイジだと聞いておる」あ、バッドトリップしてる間にオールド・オスマンの生徒紹介コーナーになってる。得意げな…いや、いつもと変わらない無表情のタバサ。ルイズは驚いている。私も原作読んでなかったら驚いただろう。才人はシュヴァリエがどういうものか理解していないため、特に表情を変えない。「ミス・ツェルプストーはゲルマニアで優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、自身も優秀な炎のメイジだと聞いておる」「あら、どうも」さも当然といった感じで微笑むキュルケ。その自信に満ち溢れた表情、実にお似合いだ。態度がちゃんと実力に見合っているからスゴい。私じゃ永遠に無理な境地ですな。「ミス・ヴァリエールは座学では常にトップ、ヴァリエール家もツェルプストー家に負けず劣らず優秀な軍人を輩出する家系じゃ。彼女自身、学業に真摯に打ち込む努力は評価されておる」ルイズ自身の魔法に関してはノータッチだが、褒めてる事に違いは無い。ルイズもちょっと得意げだ。知らぬが仏。この世界風に言うと知らぬがブリミル?違うか。「そして彼女の使い魔は、ドットとはいえメイジを倒した凄腕の剣士。恐らく、剣の腕は生半可な騎士くらいでは歯が立たぬほどじゃろうと見ておる」才人の評価も上々。…ガンダールヴだって事はまだ話してないだろうけど。確か、フーケ騒動が終わった時に話すんだっけ。「最後にミス・メイルスティアじゃが、その…頑張っておるよ。まあ、なるべく怪我だけはせんようにな」同情キターーー!!そのあからさまな優しい眼差しが痛い。辛い。ハイハイ、どーせ私はオマケですよー。見ないで!そんな目で見ないで先生方!!場違いだって自分が一番分かってますから!一旦部屋に戻り、私は必死で考えを巡らせた。フーケことロングビルも私を同情的な目で見ていたため、積極的に攻撃を仕掛けてくるとは思えないが、それでも戦場をチョロチョロしてたら邪魔だよプチッって潰されるかもしれない。かといって彼女の隣でじ~っとしてたら人質確定だ。どう振舞うのが最善か?ちなみに私が使える攻撃魔法は、“水の鞭”っていう中距離攻撃魔法だけだ。攻撃に不向きな水メイジでも、本当はもっといろいろあるのだが…攻撃(狩り)に魔法より弓を使ってたのがマズかった。全然収得できてない。だって獲物を1発で仕留めるのに水魔法は向いてないし。実質本位(というか生活本位)なのですよ、私。まあ、とにかく“水の鞭”だけだ。しかもこれは杖の先から水流を鞭みたいに出す魔法なので、近付かないと当たらない。“ファイヤーボール”とか“ウインディ・アイシクル”みたいに安全な遠くから撃てるモノじゃないのだ。30メイルのゴーレムに“水の鞭”で挑むのは蟷螂の斧。しかも私の“水の鞭”、威力あんまりないしね。当たっても、恐らくゴーレムが若干濡れる程度だろう。改めて、何と言うザコキャラ。だからこそ原作にチラッとも出ない扱いなのだが。…仕方ない。もう使う必要はないと思っていたけど、そうも言ってられないようだ。私は壁に掛けてあった弓を手に取る。腕は落ちていない。弓の腕に食生活かかってた&幼少時代からの努力は伊達じゃーないのだ。むしろ、今度佐々木良夫で転生したら多分オリンピックだって狙える。メダルは無理だろうけど。誰かがドアをノックする。はいはい、今行きますよー。犯人は逃げたりしないので、急がなくてもいいんだけどねー。※※※※※※※※馬車に揺られながら、茶番の舞台へ向かう。ドナドナド~ナ。ちなみにシルフィードとココアは空から馬車を追い掛けてる。馬車を追う風竜とムカデってシュールすぎる状況だなぁ。前の方でルイズとキュルケが言い争っている。ロングビルが貴族の名を無くしたとかそんな話から始まったど~でもよさげな言い争いだ。喧嘩するほど仲がいいのですね。才人はデルフリンガーとお喋り中。剣と喋るなんてまさにファンタジーだろう。じっくりファンタジーな世界を堪能して下さいな。…あ~、ダメだ。精神がささくれ立ってるよ私。頑張れ私、気合だ、気合だ、気合、「ラリカ」本を読む置物と化していたタバサに声を掛けられた。大人しくずっと本を読んでて欲しかったのに。私なんかと話しても楽しくないっスよ?「はいな」「ラリカは、怖くないの?」「何が?」ていうか、怖くないように見えるのか。節穴なの?その目は節穴なの?「相手は多分、トライアングル以上のメイジ。貴方は、水のドット。どう考えても勝てないのに」あー、どうして勝てない相手にナゼ挑むのかってコトか。私は笑ってみせた。精神的にアレになってるので、きっと無駄に爽やかに笑えたはず。「いえいえ、勝てますよー?こっちには強~い仲間がたっぷりいるから」「…他力本願?」「他力だろーと自力だろーと、それで目的が達成できれば万々歳。別にフェアな“試合”をするわけじゃないから、要は何でも勝てばいいのです。確かに私単体じゃ何の役にも立たないだろ~けど、ほんのりサポートくらいはできるかもかも。いやー、信頼できる仲間がいるって素晴らしい。タバサもそう思わない?」そう言って彼女の頭を撫でてみた。よし!これでタバサからの好感度はガクンとDOWNしたはず。へっぽこかつ、お気楽なバカなどシャルロット様の交友関係には不要ですよねー?これを機に、どうぞこのラリカめを見限って下さい。「…何が何でも勝つ事。信頼できる、仲間…」…あっるぇ~?何か復唱してるよこの子。とても嫌な予感。落ち着け私、さっきの台詞はどう考えてもダメな人の思想だろう?「あ~、タバサ。私の言いたいのはね、」「着きました」ハイ、ここで空気を読まないロングビルの到着宣言。惨めに敗北してくれ、フーケこのやろー。※※※※※※※※そして役割分担。ルイズ、キュルケがちょっと離れた場所から監視する中、すばしっこい才人とタバサが廃屋に侵入。私は戦力的にアレなので、ココアに乗って上空で待機だ。ロングビルは偵察(という名のゴーレムの準備)に行った。いやー、素晴らしい人選。私の安全が確保されてるのが特にグッド。「じゃあ、行って来る。もしゴーレムが現れたらルイズの爆発で教えてくれ」はいはい、いってらっしゃ~い。2人が中に入ってすぐ、土がもこもこ盛り上がってゴーレムが現れる。いやー、おおきいですなー。あんなもんに挑むなんてやっぱ無理ですよ。高見の見物としますかね。キュルケの炎は効いてないっぽいし、ルイズの失敗魔法はあさっての方向を爆破してる。ふれーふれー、キュルケ☆ がんばれがんばれル・イ・ズ☆ここで不利を悟ったタバサが、シルフィードに皆を乗せて…って、ココア!?いきなり急発進するココア。振り落とされそうになったが何とかしがみつく。「ココア!」急降下でゴーレムに近付いたココアに、ルイズを抱えた才人が飛び乗る。彼女の手には“破壊の杖”ことロケットランチャー。奪還は成功したようだ。てか、ココアは才人が呼んだのかい!?確かにココアには『才人の命令も聞くように』って命じてあるが、優先順位ってモノがあるでしょうに!?あくまでご主人様は私だって!あー、でも昆虫脳味噌じゃ分からないか。反省。「ラリカ、ココアにゴーレムの周りを旋回するように命令してくれ!ルイズはどこでもいいからゴーレムの爆破を頼む!!」「…りょうか~い」もうどうにでもな~れ☆恐怖も何だか麻痺してきた。今の私なら空も飛べる~ですよ?(実際飛べるが)よ~しココア、付かず離れず、蟲らしくやらしい動きで相手を翻弄せよ!あは。「分かったわ!“錬金”!!」ルイズの失敗魔法でゴーレムの肩が吹っ飛ぶ。ゴーレムがパンチを繰り出すが、纏わり付くように飛ぶココアには当てられない。イメージ的には人間にしつこいくらい纏わり付いて飛ぶアブみたいだ。あれって凄くウザいんだよね。至近距離を飛んでるお陰で、ルイズの失敗魔法がちゃんとヒットする。才人は才人で、ココア⇒ゴーレム⇒ココアって感じにぴょんぴょん飛び移りながらゴーレム削りに勤しんでいる。私よりココアを使いこなしてない?ちなみにキュルケプレゼンツのシュペー卿ナマクラセイバーはとっくに折れて、才人はデルフリンガーを使ってますよー。はっはっは、ざまあ。「くそっ、斬っても斬っても再生しやがる!このままじゃジリ貧だ!!」シルフィードに乗ったキュルケとタバサも魔法を撃っているが、当然の如くゴーレムにはノーダメージ。てか、ゴーレム倒す必要ってなくない?全員空飛んでるわけだし、このまま逃亡すれば事件解決の予感。とりあえず“破壊の杖”さえ戻ればいいってオールド・オスマンも言ってたよ?「う~ん、これは実に難しい局面。才人君、とりあえず一旦退いて、」すたこらさっさのとんずらだー。と言おうとしたのだが、「駄目よ!!あいつを捕まえれば、誰ももう、私をゼロのルイズとは呼ばないわ!」ハイ予想通りのセリフ~。ええ、じゃあ逃げましょうってワケにはいかない事くらい分かってましたよ。「馬鹿野郎!そんなこと言ってる場合かよ!!この状況が分かんねえのか!」と、才人が言ってくれるけど、「私は貴族よ!敵に後ろを見せて逃げない者を貴族と呼ぶの!!」 当然の如くルイズは聞かない。このままじゃ得る物のない無駄問答だ。…やっぱゴーレム倒さないと駄目ですか。そうですか。あ~う~、分かってたけど、コイツらと付き合うと命が幾つあっても足りそうに無い。フーケ騒動が終わったら可及的速やかに距離を置こう。そうしよう。そういうわけで。…覚悟決めるかな~。怖いけどな~。