第四十四話・人生?もうどうにでも、なぁ~れっ☆信じる者は“すく”われる。主に足元を。古人の言うことは、なるなーるに言い得て妙かも。漢字が違うのは、この際ほっとけ。女王陛下はご健在あそばせました。日本語ヘンか?まあどーでもいいや。もうどーにでもなぁれ☆ルイズなんかを信じた私が馬鹿だった。いや。幼馴染の絆とやらが、私の考えてたよりずっと強固で強靭だったってコトだろう。でも、仕方ないといえば仕方ない。“友情”とか私に理解しろって方が無理なのだ。友達いないしね~。いるのは私の“策”のために友情ゴッコ熱演中な原作連中のみ。全部終わったら友達作りたいなーとかは思ってたけどもう無理だ。…まあ、とにかく。今、私は“絶望”の二つ名に恥じない絶望っぷりを味わいつつ、陛下の前に立っている。謁見の間なのに、気分は裁判所だ。流れをざっと説明すると、① 城の医務室でウェイクアップ② 獄中じゃない?と、いうことは女王陛下もといアンアンさんは死、③ 裏切ルイズ「安心してラリカ!姫様含めみんな無事よ!」④ アホの才人「ルイズが新たな“虚無”を炸裂させたぜ!ついでに奇跡が起こって殿下が正気に戻り、“ラリカにヨロシク”って言ってたぜ!」⑤ 駄剣デルフ「おでれーた!(何せ、ウェールズの最後の台詞がそれだしな!)」⑥ あばばばばば!⑦ 役立たずのルイズ「姫様が“お礼”言いたいから謁見の間に来いって」⑧ あばばばばばばばば!!⑨ あばばばばばばばばばばばば!!!!以下略。人生終了確定。と、いうわけで現状。地獄のマンツーマン面接すたーとぅでありまーす。「…気分はどうですか。ミス・メイルスティア」実に無理をしている感バリバリな笑顔で尋ねられる。最悪ですぅ☆とか答えたいけど、怖いから無理。憎しみの炎は微塵も消えてないってコトだろうか。泣きたい。結局全て無駄な足掻きだった。“ディスペル・マジック”は原作通りに使われ、油でもかけて焼却するはずだった落とし穴INゾンビ騎士はめでたく成仏(?)。そして奇跡の一時生還を果たした殿下は、あろーことか成仏の直前に『ミス・メイルスティアにヨロシク』とか何とか言ったらしい。殺意の波動MAX状態な女王陛下にその台詞って、まさにトドメ以外のナニモノでもないだろう。せっかく死ぬ間際に恋人に会えたんだから、そこは空気を読んで陛下への言葉オンリーで締めくくるべきでしょーに。風メイジなのに空気読めないとは、コレ如何に。「ミス・メイルスティア?」「あ、はい。申し訳ございません。まだ本調子では…」体調はバリバリ本調子だ。精神的&肉体的な疲労で倒れたっていっても、2日も寝てたんだし余裕で回復する。でも気分はマリンブルーなので本調子じゃないって言っとけ。てか、この状況で元気ハツラツってどんだけマゾなのでせう?「そ、そうですか。そうですよね………」…ん?なんだこの空気は。とりあえず尋常じゃない雰囲気だけは感じる。「私は」遠い目をする女王陛下。もったいぶらないで、言いたいことさっさと言え。“やはり許さないわメイルスティア!死刑よ!”とか“女王に弓を引いた罪について朝まで語ろうか?”とか“メイルスティア家は一身上の都合で取り潰しになりました”とか、最悪なパターンは大概考えてあるから心の準備はOKなのです。むしろ無駄に焦らされた方が精神的に辛いかもかーも。「私はどこか、まだ“何も知らない少女”に戻れると、思っていたのかもしれません」…うん、回想モードに突入したな。長くなりそうだ。長くなった。要約すると、ついカッとなってやった。今は後悔している。…要約しすぎた。とにかく、自分のした諸々について反省してるってコトだ。正直どうでもいいけど。私にとって問題は別。重要なのは、殿下の亡命をそれとなーく阻止し、討死のススメをした“ラリカへの感情”なのだ。これはゾンビに唆されて国を裏切りかけた事や、止めようとした自国の貴族に杖を向けた事とは全くの別問題だし。“女王”が国を裏切るのはマズいけど、“1人の女”が恋人を間接的にでも失わせた相手を憎むのは、全く全然問題ない。むしろ健全な発想かも。しかも、「…それにあなたは、出会って1日もかからない間にウェールズ様の信頼を得たのですね…」うん。コレは追加で嫉妬ポイントアップな要因だろう。てか、てきとーに話を聞き流してたら、話題が不穏な方面へ向かってる。最初から不穏だけど。「え?い、いえ、そんな事は。…その、ありません」「何を言うのです。そうでなければ、最期の言葉が『ミス・メイルスティアに“ありがとう”と伝えてくれ』なわけがないではないですか。そうでしょう?」視線が痛い。雨の中、対峙した時みたいな敵意ビンビンな視線じゃないが、明らかに“何か”考えてる。『このクズ子をどうやってルイズにバレないよう始末しようかしら?』とかそのへんか?今もこの謁見の間に、姿を消した暗殺者を忍ばせてるかも。まあ、魔法衛士隊員の目の前で先制攻撃したし、冤罪とか言い逃れとか無駄な現状だ。普通に犯罪者として裁いても問題ない気もするけど。人気絶頂・聖女アンアン陛下が『この娘は悪人だから裁きます』って言えば、民衆の皆さんは右向け右で『“聖女”に弓を引いた悪魔の首を刎ねろ!』とか言い出しそう。事情を知ってる城の関係者も、今回みたいな“国の恥”を小娘の命1つで隠蔽できるなら、むしろ大賛成するだろう。いや。でもルイズたちなら情状酌量の余地くらい求めてくれ、「それに、ルイズが変わってしまったのも、きっとあなたの所為でしょう」…ん?てか、「“虚無”の事、打ち明けられたのでしょう?あの子が選んだ相手はあなただったようですね。私はこの件で実際に目の当たりにしなければ、打ち明けてもらえなかったかもしれません。タルブの時も最後まで真実は語ってくれなかった…」“最愛のおともだち”!!何やってんだ!?ホントに“虚無”の事、私にしかバラさなかったの!?それに対して陛下が私にどんな感情抱くかアホでも分かるだろ!?「それは、その…恐らくまだ確証が得られてない時点では陛下に話すのは憚れたとかそのへんなんだろうと思います。私に打ち明けたのはあくまで『虚無かも?』レベルの話で、」「気遣いは要りません。分かっていますから。ルイズがあなたの事を話す時の表情を見ていれば、あの子が最も信頼する“最愛のおともだち”がもう私でなくなっている事は、誰の目にだって明白でしょう」「………あ~、はい…そうですか…」「ウェールズ様も、ルイズも、私が幼い頃から大切だったものが、全部あなたに取られてしまったみたい。気付かないうちに、私は多くを失ってしまったのですね」取ったつもりも取るつもりもないっての。…遠い目をして言う陛下が考えてる“何か”が分かった。『この泥棒猫ッ…!』だ。“俺”の世界の昼ドラでは日常茶飯事(?)な言葉。つまり、私は“恋人が最期の言葉を向けるほどの仲になっていた(覚えはないけど)NTR女”で“最愛のおともだちを奪った(つもりはないけど)友情ブレイカー”。清々しいまでに“敵”だな、それ。ドラマだったら序盤で階段から突き落とされてるか、包丁で脇腹刺されてる。よって、殿下が私の事を話す度に嫉妬パワー上昇してたのと同じように、ルイズが私を庇おうとすればするほど嫉妬&憎まれる負のスパイラルが成り立つワケか。ここで私が『ルイズが私の希望に反して陛下を殺さなかったのは、お二人の美しき友情の賜物にございます。てか、殿下もルイズも奪うとかそんなつもりは微塵もないでございます』とか言えば…ダメか。友情の件は少し回復するかもだけど、私の殺意が際立つだけだ。うん、どーしようもないなコレ。完全アウトだ。まあ、アウト具合が100%から120%になっただけだけど。「ミス・メイルスティア。あなたが憎い、というのが正直な気持ちです。これは女王としてではなく、1人の人間としての感情…。こればかりは、どうしようもないのかもしれませんね」ほら、ハッキリ言われたしねっ☆そう言いながらもこちらを見る視線に憎しみが篭ってないのが余計に怖い。いや、むしろ口元が笑って…引き攣ってるのか!?「陛下…」「ですが、それ以上に…羨ましいのです。私が自分の事のみに感けていた間、あなたはウェールズ様の信頼を得て、ルイズと友情を育んでいた。私も自らの立場を嘆く暇があれば、何をすべきか考え、何か行動すべきだったかもしれません」こんなクズ子を羨ましいと?それに殿下の信頼なんて得るほど交流なかったし、ルイズとそんなモノを育んだつもりもないんですけどね~。「その、今からでも遅くはないと思いますよ…?」「そうですね。ウェールズ様はもうどうしようもありませんが、友情は…その、可能かもしれません」だからオマエには死んでもらい、ルイズを再び自分に振り向かせる事にする!ってか?私とルイズの間にある友情っぽいのはただの茶番なハズ。陛下と彼女の仲なんて邪魔しないし、そんな気もないから勘弁して欲しい。無理ですか?そうですか。「…」「…」両者無言。精神的にかなり疲れる。寝起きでコレはきついぜ~。陛下、もう覚悟は決まってるんで、さっさと判決でも何でも下してくださいな。どーせ抵抗できないしね。杖も弓もなっしんぐゆえに。うん。何か、本気で疲れてきた。もうさっきから極度のプレッシャーの中、2時間近く話してるし。拷問じゃね?もう何しようともどーせオシマイなんだし、よく考えたらこの遣り取りってムダかも。私の“嘘”は幸福な人生を送るためにあったのだ。死亡確定な状況で、他人におべんちゃらとか言ってあげる理由はない。…そうだ。むしろ、バッドエンド確定なだけに、“今”が一番フリーダムな状況じゃ~ないですか。後の影響なんてどーでもいいわけだし。うん、そーだそーだ。もう、どうでもいいんだよ。あは。てかさ、何でこんなまどろっこしーの?とりあえずじわりじわりと恐怖でも与えようっての?えげつないね~。悪いのは私だけど。当初の計画が狂って、それでも何とか軌道修正頑張って、希望が見えてきて、茶番な“友情”とかも、それなりに何だか悪くなくて、“コイ”とか“アイ”の可能性を知って、…でも、“ホントの私”が疲れてて、肝心な時に、最悪の選択をした。ダメだ。思考が完全にネガティブ一直線。あー、もうメンドくさい。あー、あー、あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!よし。もういいや。全部、どうでもいいや。来世から頑張ろう。あは。盛大に溜息をつく。そして、わざとらしくヤレヤレ、とかぶりを振った。「ミス・メイルスティア?」「ふぅ、ダメですね」「え?」突然の豹変に、陛下…アンアンが目を丸くする。「あなたはダメです、アンリエッタ様」よーし殺せ!この際、不敬罪でも何でもいいや。ズバーっとやっちゃってください。さっさと“佐々木良夫”に生まれ変わってオリンピック目指さなきゃならんゆえに。「なっ、」「ダメダメです。実にダメです」笑いながらアンアンに近付いていく。うん、最後の最後に思いっ切りバカにしてやろう。その方がアンアンも処刑しやすくなるだろーし。また“ラリカ”として生まれ変わる事があったら、全身全霊微塵も関わらないで生きる所存なので、ご安心を。…まあ、メイルスティア家の皆さんは今回ホンキでごめんなさい。でも、前回の人生より多少はお金とか仕送りできたから、少しだけ勘弁してください。てか、幼い私を売ろうとしたりしたからオアイコだよね?「まず第一に、もう“どうしたいか”決まっているのに、要件を話さないのがダメです」生殺しもいい加減に終わらせて欲しい。“憎い”私をどうしたいかなんて、決まってるのに。「一国の主だっていうのに、国を捨てようとしたのはダメです」これは正直どうでもいいんだけどね。私に直接関係なければ国とかどーでもいいし。「止めに来た“友達”や衛士に杖を向けたのはダメです」まあ、かくいう私も自分の“大切”の為なら誰にだって弓を向けるけどね。「とゆーか、ニセモノだって分かってるのについて行くってのはダメです」ピュアな乙女心に関しては私が言える口じゃないけどね。「いや、それって殿下の顔してれば殿下本人じゃなくても良かったんじゃ?結局見た目か?って思えてくるのでダメです」殿下もかわいそ~に。これは同情。「そして“最愛のおともだち”とか言いつつ、ただの学生なルイズ(と私)をアルビオンとか戦場に放り込む時点でまずダメです」私も巻き込まれた。とりあえず、それが個人的に一番ダメだな。「そして、こんな“小物”相手に嫉妬とか、ダメダメです」にっこり笑って、呆然としているアンアンの肩に手を置いた。「つまるトコロ、そんなだから殿下は正気に戻った時(私は見てないけど)あんな態度を取り、ルイズは友離れしちゃったのです。全てはアンリエッタ様のダメさがダメだったんですよ」よし死んだ!!ラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティア(2回目)、完ッ!!第三部は何十年か後、佐々木良夫の死亡時からとなります。ご期待ください。「なっ、なっ…、」アンアン涙目。まあ、いくら何でもここまでダメ言われたのは人生初だったろう。しかも吹けば消し飛ぶような小娘に。怒りゲージは限界振り切れていることでしょう。あは、そう考えると楽しいね~。楽しいついでに、イイコト思い付いた。「そう、ダメ“だった”のです。でも、」アンアンの頭にぽふっと手を乗せる。うん、タバ子やルイズより背が高いから微妙だ。でもまあ、何とかなる。…なでなーで。「今回の件でアンリエッタ様はそれに気付けた。城に戻り、冷静に考えて反省することができた。そうでしょう?実に“えらい”です。これで立派な女王様になれるはず。なれなきゃ、第二第三の私みたいなのが現れ、大切なモノを奪ったり、弓とか魔法とか撃ってくるでしょう」ガリア王族のタバ子に次ぎ、トリステインの女王アンアンまでもアタマ撫でることに成功した。下から数えた方が早いくらい下級貴族の小娘が。何という快挙。ハルケギニアの歴史のどこを探しても、そんな畏れ多い馬鹿はいないだろう。あー、でもそんなダメ人間に涙目でアタマ撫でられてる“女王陛下”って、凄い構図。「そーいうわけですので、私が憎いなら…アンリエッタ様の思うようにやっちゃえばいいのです。何せ“女王陛下”なんですから。前置きに湿っぽく長話なんて、もう要らないですよ。私の言いたいコトも、今ので全部ですし、ね?」…何やってんだよ、さっさと衛士呼ぶなり、自分の杖抜くなり、何かしろってーの。ああ、あんまりにもあんまりな状況でパニックか。ま、いいや。すぐ正気に戻ってキレる事でしょう。私はもう一度、にっこりとアンアンに微笑みかけた。さあ、殺せ。…そして。私は学院に戻ってきた。五体満足で。褒章もらって。ん?あれ?何ぞこれ?????