第二十九話・乖離?いいえ予定調和です。だと言ってくれあっるぇー、いろいろまずくない?ルイズを起こし、着替えさせる。まだ才人にやらせてるんだっけ?それとも、そろそろ意識し出してやらせなくなった?細かな原作知識はないし、聞くのも何だかなので分からない。カマでもかけてみようかな?ベッドに座らせ髪を梳かし、いつかみたいに濡れタオルで顔を拭いてやる。うむ、前回よりも時間短縮。私って使用人の才能がある?嬉しくない。ともあれ、新しい朝の始まりだ。結婚式は1週間後。ニューイの月の1日だ。でも3日前にはタルブが焼かれて戦争開始だから、あと5日しか本当の平穏はないってコトになる。まあ、タルブ空中戦はルイズ&才人が何とかするんだけど。「ルイズ、おはよ~。あと40秒でシャキっとしないと、“レビテーション”で食堂輸送しちゃうよー」「ええと、ラリカ。私起きてるわよ?」…あれ?本当に起きてる。じゃあ何で着替えさせたんだ?「よーしルイズ、そこで質問。じゃあ何で自分で着替えたりしなかったのかな~?かな~?」「だってラリカ、凄い手際よくやるんだもん。言おうと思ったけど、終わっちゃったわ」「お褒めいただき光栄ですわ、ルイズお嬢様。…本格的にメイドでもやろーかな」ちょっぴり本気と書いてマジな話。あ、でもこの表現はハルケギニアでは通用しないか。漢字ないし。不便ですなー。「そうなったら雇っちゃうかも」「そうなったら雇われちゃうかも」笑い合う。ルイズは冗談で言ってるんだろうけど。「さ、ごはん食べに行こっか。祈祷書を忘れないよーに」「うん。ねえ、今日も授業後に詔聞いてくれる?」「はいはーい。じゃあ今夜はそっちにお邪魔するかな。マトモなのを期待してるから、ちゃーんと考えないとダメだよ?あと、私は泊まらないからね~」「何でよ」「ベッドに川の字になって寝るの?ちょーっとムリあるかも」ルイズを真ん中に、私と才人で挟んで寝るか?あー、どっかの家族みたい。誰が子役かは言わないけど。「カワノジ?」「…3人並んで寝るって意味ね。狭くてムリムリ」だからハルケギニアに漢字はないんだって。危ない危ない。ルイズだったから良かったものの、才人だったら怪しまれたかも。アホだから気付かない可能性も高いけど。「…むぅ、それもそうね」さりげなく才人もベッドで寝てるか確かめたんだけど、ルイズは気付いてないようだ。でも、どうやら才人は無事にベッドイン(アレな意味でなく)を果たしているようだし、一安心。ソファーベッドをどうだとか呟いてるルイズを見て、自然と笑みが零れる。やはり、夢なんてただの夢だ。明るい未来は、目前。※※※※※※※※授業後、お菓子と紅茶を用意しとくから絶対来てよ!とか言うルイズに笑顔でイエスし、外に出る。向かう先は森だ。才人がそこで剣の訓練をしているのは、ココアとの感覚共有で分かっている。さて、フォローでもしときますかな。「さ~いと君っ」デルフリンガーを振っている才人に、背後から声を掛ける。「うぉ!?」驚く才人。ちょっとショックだったりする。「はっはっは、そんなに迫力ありますかねワタクシ。レディの顔を見て驚かないで欲しかったり」「ご、ごめん…」うむ、ルイズの言った通り暗い。真っ暗だ。“前回の私”といい勝負かも。「おっ、ラリカ嬢ちゃん。今ちょうどラリカ嬢ちゃんの、」何か言いかけたデルフは、瞬時に鞘へ収められた。うわー、久々に声聞いたと思ったのに出番終了か。私の知らないところではタップリ喋れていると信じたい。そうだよネ、おでれえ太クン?「ラリカ。…その、」気まずそうな空気が流れる予感がする。させないけど。「才人君、ごめんっ」最後まで言わせずに頭を下げる。プライドなんてないから、幾らでも下げられるぜー。「え?」「あの夜のコト。本当にごめんね。その…、何かぐしゃぐしゃで」あはは、と控えめに笑ってみせる。あー、ダメか。まだ才人はどんより暗いままだ。フォローめんどくさいな。逆切れされた事なんていつまでもウジウジ引き摺るなっての。オトコノコでしょーに。「私も動転してたって言うか、のーみそパニック状態だったって言うかで。あんな態度取っちゃって。いやー、我ながら情けないですよ、あは」「…ラリカ、その、俺…」何と言う重症。コイツ、こんなにナイーブなキャラだったか?仕方ない。ちょっとだけ本心を話すか。そうすりゃこっちも落ち込んだって分かってくれ、感情はトントンになるはず。泣き顔見られて恥ずかしくなり、思わず逆切れ。よくある話じゃーないですか。そんな落ち込むな。ゼロ戦まで墜ちたらどーしてくれる?「実を言うとね。家族以外で涙を見られたの、才人君が初めてだったりするの。…あ~、その、あはは。それで、ええと…、」無様な泣き顔を晒した事を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。他人に泣き顔。絵になる美少女ならいいけど、私のはみっともないだけだろう。才人から思わず目を逸らす。ヴェルダンデが居たら、即座に穴を掘ってもらいたい。大至急入るから。「は、恥ずかしかったから、思わず…怒って。その、ごめんね」半分以上は鬱積した無理の爆発と、グッドエンド終了と早合点した怒りなんだけど、それは言えない。でもこっちも本当だ。…てか、一部とは言えマジメな本心を話すのなんて、どれだけ振りだ?普段が嘘まみれなんで無駄に緊張する。どもってしまった。チクショー、顔が熱い。目が潤む。よし、さっさと済まそう!!八つ当たり、スマンかった才人!だからそろそろ許してコンディション戻してくれ!オマエさんにはもうすぐタルブ空中戦っていう大舞台が待ってるんだから!そして。再び視線を才人に戻し、「だからっ、才人君は悪く、」――――― 抱き締められた。あっるぇ~?なぜゆえ?なにがどーなった?オマケ1<Side Other①>「モンモランシー!モンモランシーってば!!どうして無視するんだい!?」「分かった、照れてるんだねモンモランシー。何せ、一週間も逢えなかったからね!」「いやあ、宝は見付からなかったが、もっと大切なものを僕は見付けたよ。そう、それは君への想いさ!」「逢えない時間、気付けばいつも君の事を考えている僕がいたよ。そして気付いたんだ、僕はやはり君への永久の奉仕者だと!」「モンモランシー?モンモ、ぶおっ!?」ドアが閉められる。一緒に部屋の中へ入ろうとしていたギーシュは、閉まったドアに思い切り顔をぶつけた。「モンモランシー?…ええと、モンモン?」「モンモランシー?」「おーい」オマケ2<Side Other②>ロンディニウム郊外の街、ロサイス。様々な建物が立ち並ぶ中、黒いレンガの建物に男は入っていく。「戻ったぞ。降下地点のタルブは…、」そこまで言い、眉を顰める。「…倉庫へのドアが溶接されてないか?」視線の先にはガチガチに鉄で封印されたドアがあった。おそらく“錬金”で土を貼り付けた後に鉄に変えたのだろう。「………ムカデがいたんだよ」気まずそうに答えるのは緑髪の女だ。「ムカデ?」「こっちの部屋に入ってきたらどうするのさ」「…別にムカデなど放っておけばいいだろう?」「別にいいじゃないのさ。倉庫なんて、用はないだろ?」睨まれる。有無を言わせない迫力があった。「まあ、そうだな。別に僕もお前を咎めようと言ったわけじゃない」「じゃあもうこの話題は終わりだよ」「ああ」少しの沈黙。破ったのは、緑髪の女だった。「…ところであんた、ヒゲどうしたのさ?」「………見て分からんか?剃ったんだよ」男の髭は綺麗さっぱり剃られていた。お陰で印象が大分変わっている。口髭があった頃は威厳のある凛々しさだったが、今はそれとは違った凛々しさがある。「いや、それは分かるけど。私が聞いてるのは何で剃ったかって事よ」「…あれだ、トリステイン王国と決別したからな」不自然に視線を逸らし、男は答える。「別れたから髭を剃るって…女が男と別れて髪を切るみたいなこと言うんだね」「それに、あの顔は面が割れている。こうすれば印象が変わり、動きやすくなるだろう」「隠密行動なんて、前みたいに仮面でいいんじゃない?」「別に僕の髭のことなど放っておけばいいだろう?」睨まれる。有無を言わせない迫力があった。「まあ、そうだね。別に私もあんたに文句があって言ったわけでもないし」「ならもうこの話題は終わりだ」「分かったよ」沈黙。今度は、しばらく破られなかった。