第二十五話・タルブの風と際会の空戦闘機。確かにカッコいいけど、旅客機の方が好きだな。あー、北海道でカニ食べたーい。今度(生まれ変わったら)行こうっと。“竜の羽衣”は問題なくGETした。字が読めたら貰っていーよ☆とか墓石にも書かれてたし、村人が持っててもどーしようもないシロモノなので実に簡単にいただけた。まあ、私にも読めたんだけどね。空気を読んで才人君すごーいとか言っておいた。ちなみに“竜の羽衣”が運び出されスペースが空いた寺院には、ギーシュ作の銅像(モグラと戯れる少年)というゴミみたいなモノが置かれることになった。ありがたくない。きっと私達が帰った後に溶かされて鍬とかそのへんになるのだろう。で、シエスタの家族に紹介され、実にすんなり村に馴染んだ。やたら馴染んだ。馴染みすぎじゃないかってくらい馴染んだ。原作に殆ど描写なかった気がするから比較できないけど…原作でもこのくらい馴染んだのか?「こうやって…こうよ!!ほら、命中したでしょ?」ルイズがシエスタの弟たちにクロスボウを教えている、というか遊んでいる。的はギーシュ作オーク鬼像だ。リアル過ぎるとガキンチョ諸君が怖がるので若干ファンシーに仕上がっている。「おぉ~!きぞくさますげー!!」「きぞくさま!ぼくにもやらせて!!」「いいわよ。ギーシュ、矢」「…どうでもいいが、“錬金”だって少しは疲れるんだよ?」それにしてもルイズ上機嫌だ。ココアの上でも無駄に喋ってたし。平民の子供相手にあのルイズがねー。どういう心境の変化だろ。てか詔は?「ああ、そういえばラリカ。さっきやたらと笑顔なサイトが“実戦形式の訓練”は中止と言ってきたよ。そして宝探しで見付けた銅貨を『これやるから頑張れよ』とか言いながらくれたんだが。意味が分からない」「うん、それを私に言われても微塵も分かんないな~」どうでもいいしね。ちなみにタバ子とキュルケはハンモックで昼寝してる。実に平和だ。「ふぅ、結構疲れたな」ガンダールヴの力で薪割りしてた才人が戻ってきた。ごくろーさん。「お疲れ様、才人君。はいタオル」タオルを水魔法で湿らせ、手渡す。「お、サンキュー。それにしても斬伐刀、薪割るのに凄い便利だよな」そりゃそうだ。むしろそいつは戦闘用じゃなく、そういう事をやる為のモノだし。「そかそか、私の愛刀だったからね。うん、よく山へ狩りに出掛けたもんですな~」「狩りか。そう言えばラリカは貴族なのにどうして斬伐刀を持ってたんだ?」「あれ?才人君はルイズから我がメイルスティア家のコトは聞いてな~い?」「聞いてないぞ。ラリカの実家ってどんななんだ?」「そっか。ええとね、ウチは実に貧困で、日々の糧を得るのにも苦労する始末なんですよ。子供の頃なんて1回売られかけたしね。買い取り拒否されたけど。そんなこんなで我が家にお肉なんて出るはずもなく、私が山で狩りをしてお肉げっとしていたって寸法さ~。で、邪魔な枝や草を伐ったり、狩った獲物を捌いたりで斬伐刀の大活躍!」へらへら笑って話すが、才人はもの凄くショックそうな顔してる。まあ、平民の憧れのハズな貴族にこんなダメなのがいたらショックかも。夢壊してスマン。でも実際、我が家よりシエスタ宅の方が恵まれてるしね。どんだけだよメイルスティア家。「そう言えばラリカは将来どうするんだい?確か君にはお兄さんがいたはずだから、家を継ぐのは彼だろう?」大量の矢をルイズ&シエスタブラザーズに納品してきたギーシュが会話に加わる。「ん~、実家帰ってもお先真っ暗闇ヤミだから。てきと~な誰かのお嫁さんになるんじゃないかなか~な?どっちにしてもメイルスティア家から出ることだけは確かだよ」「適当な誰かって…」「なるほどね。どこかの貴族が相手に決まっているのかい?」「はっはっは、何を仰るギーシュさん。まだ相手なんているわけないでしょーに。それに共働きも辞さない構えですからワタクシ。貴族だろーと平民だろーとお金持ちだろーと貧乏だろーと、バリバリ尽くしちゃいますよー。愛する旦那様と多分産まれる子供たちのために!ま、最終的にシアワセだったなーと思えれば何だっていいのです。で~す」これは本心だ。平穏で平和な生活が最優先。金持ちでもトラブルばっかは嫌だし、少しくらい貧乏でも平和なら大歓迎。メイルスティア家以上の超絶☆貧乏は却下だが。「ふむ、欲がないね君は。いや、好感が持てるよ」そう言ってギーシュは笑う。「自分を知ってると言ってくれぃ。分相応な願いしかできない性質なのでありまーす」いや、これでも欲深いかなーとか思ってるんだけど。だって普通にしてたら悲惨なバッドエンドが待ってるワケだし。私の欲望パワーMAXで頑張っても、それくらいが限界だろうってだけなんだよ。「ラリカ」ギーシュや私とは対称的に才人は真面目な顔してる。何かを決意した風味な顔。「ほいさ?」「その、さ?ラリカはそのままでいいと思うぜ」…何が?てか、いきなり何を?「だからこの前、」「みなさ~ん!お昼ごはんの準備、できましたよー!!」シエスタの声。よし、ランチランチ~♪「昼食か。一体どんな料理が出てくるんだろうね」「素朴だけど、おいし~いごはんだと思うよ。さてさて、行きましょーか」「ラリカ」何だ才人、話なら後あと。「俺、頑張るからな」…?何を?そう言って足早に去って行く才人。「ラリカ、彼は何を頑張るって?」「午後からの作業?」「そうか。うん、張り切ってるね。やはり村の者たちに頼りにされ、やる気になってるんだろう」「薪割りって結構大変だもんね~」「僕はやった事ないんだがね」「よーし、じゃあ午後からはギーシュ君も薪割り体験だ!」「いや、別に体験しなくていいよ…」てきとーに喋りながら、私たちもシエスタの家へ戻って行った。※※※※※※※※夜、寝床を抜け出した私は村の傍にある草原に佇んでいた。確か原作だと夕方に才人がほんのりホームシック風味で佇み、シエスタがちょっかい出しに来たような気がする。“今回”は全員で見に来て、綺麗だとか凄いとか普通な感想を言って終わったが。少し原作乖離だけど、この程度なら問題ないはずだ。ラブ発展は今後の自然発生に期待するしかない。てかもう後は知らん。私の介入は終了した。後は野となれ山となれ。夜風が気持ちいい。景色とか別にどーでもいい私だけど、この風景は綺麗だと思った。原作メンバー達に絆っぽいモノが生まれたのは間違いないだろう。“竜の羽衣”も手に入れたし、あとは正史の流れに任せるのみだ。タルブ空中戦はゼロ戦でルイズ&才人が突っ込むのみだから、私に何の影響もない。そしてそれを機に、自然な感じでヤツらと距離を取ればいいのだ。「…あは、」思わず、笑みが零れる。「あーっ、いい風っ!吹けー吹けー、もっと吹けー!」今まで燻っていた不安を、不幸を、吹き飛ばせ。そして、私に幸福を運んで来い。風が気持ちいい。双月の光が優しく身を照らす。嬉しくて涙が出てきた。実にいい気分だ。これでもう、「やはり生きていたか。ミス・メイルスティア」…実に聞きたくなかった声が、上空から聞こえてきた。おい、ちょっとマテ。あっるぇ~?何これ?こんなシナリオ…原作にあったっけ?オマケ<ラリカの知らないシルフィード上の1コマ>キュルケ(以下キ)「それでね、って…ダーリン聞いてる?」才人(以下サ)「え?あ、何の話だっけ?」シエスタ(以下シ)「ワインのお話ですよ、サイトさん」タバ子(以下タ)「………(本を読み続けている)」サ「あー、悪い悪い。そうだよな、ワインは赤に限るよな」キ「全然聞いてなかったのね。もう、そんなに気になるんだったら、あっちに乗せてもらえばよかったのに」サ「“錬金”要員でギーシュなんだと。ルイズはともかく、ラリカが言うんじゃどうしようもねえよ…」シ「(…これは、嫉妬?)」キ「(嫉妬ね)」タ「(イーヴァルディ頑張れ!)」キ「うーん、“錬金”ならあたしもできるし、ギーシュと交代してもいいけど…」サ「!!」キ「(なるほど、“2人のうち誰かと一緒に居たい”んじゃなく、“2人のうち誰かがギーシュと一緒なのが気に食わない”ってワケね)」シ「(同上)」タ「(挿絵カッコいい)」キ「でもムカデ苦手だから無理ね」サ「………orz」キ「(あ、ちょっと面白い)」シ「(サイトさん不憫です)」タ「(面白い、続き続き)」サ「くそ、ギーシュの奴、デレデレしやがって。戻ったら思いっ切り…ブツブツブツ…」シ「(ミスタ・グラモンを思いっ切りナニするんですか!?)」キ「(うーん、ちょっと可哀相かも。仕方ないわね)………ダーリン、」サ「何だよ」キ「この宝探しって、何で始めたか知ってる?」サ「さあ。ラリカに誘われたから来ただけなんだけど」キ「そうだったの。でもね、実はコレ、ギーシュの為なのよ」サ「!?」キ「(面白っ!からかってみたいけど…ま、ここは)ギーシュとモンモランシーの仲を修復させる為にラリカが計画したの。ギーシュが宝を見付けて彼女が見直すって作戦で」サ「へ?」キ「ギーシュがあたしに相談してる所に通り掛かってね、アルビオン行きのご褒美に休暇を貰ってやろうって。今もルイズと2人で慰めてるんじゃない?結局お宝は見付からなかったし」サ「へ、へ~、そうだったんだ。なるほどなー、それでか!ルイズも結構いいとこあるし、ラリカは優しいからな!そうかー(ニコニコ)」キ「(単純過ぎるわダーリン!)」シ「(分かりやすいです、サイトさん)」タ「(避けて、イーヴァルディ!)」サ「全くギーシュの奴、しょうがねえなぁ。よし、俺も優しくしてやろう!」キ&シ「(でも…結局どっちへ嫉妬してたんだろう…?)」タ「(イーヴァルディは負けない…!!)」