第二十四話・恋せよメイド!(命令形)…せめてお友達から今回は私が巻き込む。今回だけ。これが終われば“終わり”だから。頑張れ私、ファイトだ、オーッ!!メンバーにはルイズも加わった。才人と喧嘩してないので予想はしてたけど…詔を考えなくていいのか?気分転換とか言ってたけど、…うん、まあいいや。これでルイズもシエスタと友情っぽいのを育んでくれるコトでしょう。オーク鬼の頭に矢が突き刺さる。突然倒れた仲間に、隣のオーク鬼が驚いた刹那、そのオーク鬼の頭にも同じ矢が突き刺さった。で、群れは恐慌状態に。「“錬金”。ラリカ、次の矢だよ」ギーシュに作ってもらった矢を受け取り、私は弓を番える。宝探ししてるハズの私達が、どーしてオーク鬼なんて退治してるかと言うと…まあ、単純に宝をゲットするのに彼らが邪魔くさいってだけだ。邪魔者は消す。う~ん実にアレな響き。でも相手がオーク鬼なら罪悪感とかゼロだ。…まあ、私は相手が誰でも罪悪感ないけど。人間検定失格でござ~い♪戦況。上空、ココアの上に私とギーシュ、ルイズが乗っている。距離はかなり離れており、オーク鬼は慌ててばかりでこちらに気付かない。まあ、気付いたとしても棍棒オンリーなオーク鬼が空中の私たちをどーこーできるワケないんだけど。シエスタ?ちょっと離れた場所で見学中。フレイムとシルフィードがボディガードだ。「ありがとギーシュ君。それじゃ、ほいさ~」ちっ、外れた。肩に刺さったから60点かな?「惜しかったね。“錬金”。ほら、できたよ」「よーし次は外さないぞー」…何という緊張感のない討伐劇。「ちょっとギーシュ!こっちにも矢をよこしなさいよ!」ちなみにルイズもココアに同乗し、こちらはクロスボウを撃っている。最初は貴族は魔法がどーとか言ってたけど、『私も魔法使ってないよ~?』って言ったら一発で納得した。毒液の瓶を渡してあるので、ルイズのはどこかに当たりさえすれば何とかなる。「ああもう!“錬金”、君ら人使いが荒くないか?」「うるさいわね。あんたは黙って矢を作ればいいの。…あ!当たった!ラリカ見て!!今当たったわよ!」「ルイズもオーク鬼シューティングに慣れてきたかー。よし、私も頑張っちゃうぞ~」実に緊張感がない。あまりに安全すぎても考えものだなー。別にいいけど。あ、オーク鬼がようやく気付いた。アジトっていうか住処の廃寺院に逃げ込もうとする。でも残念、寺院の屋根に潜んでたキュルケ&タバ子が魔法乱射。こんがりロースト&氷で串刺しだ。あめーん。魔法が止んだら今度は才人。残った数匹のオーク鬼をデルフと斬伐刀でさっくりスライス。…おぉ、終了か。おつかれさーま☆※※※※※※※※うん、知ってたけど財宝はガラクタだったんだ。正直スマンかったギーシュ。ちょっと労ってあげるから元気出してくれたまへ。夜、私たちは焚き火を囲みながら寄せ鍋…じゃなくて“ヨシェナヴェ”を食べていた。で、私はっていうと…“ヨシェナヴェ”ウマー言ったり、『やっぱり財宝なんてないんだ、僕は賭けに負けたんだ』とか感情の起伏で忙しいギーシュの相手をしてる。どうどう、落ち着けギーシュ。オマエは良くやった。頑張った。感動した!感動は嘘だけど。「ミス・ヴァリエールもサイトさんも凄かったです!オーク鬼をあんな簡単にやっつけちゃうなんて!」「まあ、戦い方次第って事なのよね。以前の私なら思い付きもしなかったわ。…あ、シエスタ、おかわり貰えるかしら」「ははは、正直オーク鬼なんて初めて見たから驚いたけどな。でも皆いるし、ちょっと張り切っちゃったぜ」シエスタとルイズ&才人は普通に楽しそうだ。実にいい感じ。タバ子とキュルケが談笑(笑ってるのはキュルケだけだが)してるので、自然とこんな形になったのだ。まあ、キュルケはともかくタバ子がシエスタと何か話すはずないし、ある意味当然なんだが。「でもギーシュ君は凄いよ~。結構特殊な形の矢なんだけど、すぐ同じモノ作ってくれたしね。いやー、流石は“青銅”のギーシュ!」「ま、まあ細かい細工とかも得意だからね僕は。あれくらいなら別にどうってことないさ。褒められるほどの事じゃない」「ギーシュが謙遜ねぇ、珍しいじゃない」キュルケがこっちの会話に参加してきた。オマケのハシバミ・タバ子も付いてくる。おーよしよしタバ子や。ハシバミできなくて残念だったねぇ。ごーめんよ。タバ子が隣に座ったので頭を撫でる。本を読んでいて反応ないけど。「はしばみ?」訊いてみた。深い意味はない。「…?」ちょっとこっちを見て小首を傾げるタバ子。何だ、ちゃんと反応するじゃーありませんか。「“ヨシェナヴェ”美味しかった?」こくりと頷く。で、再び本の世界へ。何が面白いんだかねー。別にいいけど。「そう言えばラリカ。あなたいつからギーシュの事、“ギーシュ君”って呼ぶようになったの?」「へ?ああ、それか~。そうだ、どっちがいいか聞かずに呼んでたね。ごめんごーめん」正直に言うと、凄くどうでもいい事なので選択したかどうかも忘れてたんだ。うん。「何それ?ギーシュに選ばせたって事?」「はいな。それでどっちがいい?」「じゃあ“ギーシュ君”で。何かね、その…何かあるんだよ、その呼び方。何だろうね?よく分からないがこう、どこか心で響くんだよ」イミフ。でもまあ、そっちがいいならそう呼ぼう。別に2文字増えても苦じゃないし。「オケ~イ。それじゃ~そろそろ、次の目的地を決めますか」「そうね。ルイズ、ダーリン!ちょっとこっちに集まんなさい、明日の予定を決めるわよ」キュルケの声に、2人が応じる。…ん?才人が微妙な顔でこっち見てるな。どーした?んん?※※※※※※※※というわけで、次の目的地はタルブになった。 計 画 通 り !!ここまで問題らしい問題はゼロ。ルイズ加入も逆にいい方向に行ってる気がする。ラブ発展は無理そうだけど、3人の間にはほんのり友情風味なのができてるハズだ。で、道中。クロスボウをいじるルイズが話し掛けてきた。「ラリカ、これの照準だけど…ちょっと歪んでる気がするのよね。どう思う?」「どれどれ~?ってルイズ、コレを使うのは今回限りとか言ってたような気が?」「え?ちょっと気に入ったから貰うわ。デザインも何か変わってて面白いしね。あ、もちろん部屋に飾るだけよ。使わないわ。貴族は魔法が基本だからね、うん」…うん、問題ないはず。多分。「あー、お話し中のところすまないんだが、ちょっと訊いていいかな」ココア同乗は“錬金”要員のギーシュがそのまま乗っている。他はシルフィードだ。フレイム?頑張って付いて来てるんじゃないかな。走って。「何よ」「どーしたギーシュ君」「いやね、さっきサイトから毎度おなじみ“実戦形式の訓練”の誘いがあったんだが…何だかアレは八つ当たり的な何かのような気がしてきてね。君たち、彼の機嫌が悪くなるような原因を知らないかな?」何だ?私とルイズは顔を見合わせる。うむ、目と目で通じ合った。原因なんぞ知らん。「さあ、気のせいじゃないの?あいつ、さっき機嫌良かったし」「私も心当たりなっしんぐ。ギーシュ君の勘違いじゃないかなか~な」「そ、そうかね?…むぅ、じゃあ“実戦形式の訓練”は本当に実戦形式を想定してのものなのか?うぅむ…」唸ってるギーシュは放っといて前方を見た。忠竜(?)のシルフィードはココアの飛行速度に合わせて飛んでくれている。その背中に乗った才人は…あ、こっち向いた。手をひらひら振ってみる。慌てた様子で前方に向き直ってしまった。何だあの態度は?嫌われたのか?よく分からん。愛しのルイズをギーシュと同乗させたのが気に食わなかったのかな?でもキュルケはココアあんまり得意っぽくないしなー。タバ子は論外だし。ま、どうせ次で旅&私の原作介入は終わりだし、深く考えなくてもいいかな~っと。あ、そういえば…おでれえ太君、アルビオンを最後に声聞いてないや。今も鞘の中で『オーク鬼、意外と脂が乗ってておでれえた!』とかやってるのだろうか。頑張れ。超頑張れ。オマケ<Side シエスタ>ミス・メイルスティアに誘われた時、正直言うと戸惑った。でも、お世話になってるしメンバーの方に見知った2人が居たから少しだけ安心した。サイトさんは朝、たまに水場で挨拶を交わすし、ミス・ヴァリエールはミス・メイルスティアの看病をしている時に少し喋った事がある。それにどちらもミス・メイルスティアのご友人だから、“メイジ殺し”でも貴族でも、そんなには気後れしなくて済むのだ。旅の前にミス・メイルスティアがわたしの紹介をしていてくれたお陰か、普通に喋ってくれるし、名前も覚えていただいた。ただのメイドが“メイジ殺し”や貴族のご令嬢と知り合いになるなんて…有り得なさ過ぎて、逆に楽しいかもしれない。そういえば、ミス・メイルスティアは旅の話を切り出す前に、“好きな人”について聞いてきた。平民のわたしなんかに。あれは、どういう意味なのだろうか?ひょっとしてミス・メイルスティアには好きな人がいて、参考にしたかった?それとも誰かを応援していて…?どちらだろう?分からない。それは、この旅のメンバー?サイトさんかミスタ・グラモン?ミス・メイルスティアはお二人のうちの誰かが好きなの?それとも、ミス・ヴァリエールたち誰かの恋を応援しているの?分からない。でも、わたしに出来る事なら協力させていただきますよ、ミス・メイルスティア。