第十八話・ぐっどもーにんぐ希望の朝!これで…今度こそ…私、幸せになります!!はっはっは~ん。ちょっと状況を整理しよう。今後のためにもと~っても重要なのだ。この立ち振る舞いで私の未来が決定しそう。まず、予定通り私は助かった。とゆーか、死ぬわけないんだけどね。ギーシュ来るの知ってたワケだし。助かったっていうのは主にヒゲ男から。これできゃつにとって私はもはや路傍の石コロと化したわけだから、情報欲しさにストーキングする事もないだろう。いくら彼氏イナイ歴=人生な女でもヒゲストーカーはいただけない。うん、ないな。でもこの“操られたラリカ!”イベントは、実にいい布石になる可能性を秘めている。その名も“ザ・敵に操られた罪悪感と力不足の認識でパーティから離脱大作戦”だ。長い。まあ、要するに『私が操られたせいで2人に迷惑を!ごめんなさい、もう私には2人の傍にいる資格はないわ!!』で、2人が『そうよ!敵に操られるなんて貴族の風上にも置けないわ!!』『まあまあルイズ。でも正直、俺らも死ぬところだったしな…』『おでれえた!おでれえた!』変な剣1本が余分だったけどまあいい。デルフも今回の功労者だし、友情出演だ。…話がズレた。そして、『やっぱりドットで攻撃力皆無&水メイジなのに“治癒”とかもタバ子の方が上な私は、戦力的見解からしても無用の長物だわ!いわゆるひとつの足手まといよ!!』『そうよ!私の失敗魔法の方が威力は上だし、何よりあんた地味なのよ!!』『まあまあルイズ。でも正直、足手まといは邪魔だな。強くなれない者は置いていく』『おでれえた!おでれえた!』というコンボが決まり、『だから私みたいなザコ子は学院に引き篭もってるわ!でも友情は変わりないよ!』『そうよ!それが一番よ!でも友達だからそれなりに付き合いは継続するわ!』『まあまあルイズ。でも正直、それがお互いにとっても一番だな』『おでれえた!おでれえた!』という完璧なミッションがこんぷり~とされる。転んでもタダでは起きないのだよ!それが私なのだ!うふふのふ。よしOK、実にスムーズかつ綻びが微塵も見付からない作戦が決まった。では次の状況整理。あれから今日で何日経った?精神力ゼロになるまで魔法を使った試しがないからトコトン不明だ。でも少なくとも1日は経っているだろう。長くて2日。さすがにそれ以上経ってたら着替えくらいさせるはずだ。でもナゼに服がこのまま?単に気絶&ぐっすりすやすやコンボきめてただけなんだし、着替えさせたり身体を拭いたりくらいしてくれれば良かったのに。気が利かないなー。ま、理由は聞けばいいか。うん、状況整理しゅうりょー。部屋に戻って着替えよう。お腹も減ってるし、厨房に行って何かもらおっと。今ならケーキ1ホールくらい瞬殺だぜ~、だぜ~。ベッドから降り、伸びをする。そしてドアに手を、「ラ…リカ…?」先にドアが開けられ、ルイズが現れた!逃げられない!じゃなくて、クマできてますよー。夜更かしはダメダーメですなー。まあ、そう美容に気を遣わなくても可愛いから平気ですか。なーるなるなる、さすがメインヒロイン!とか思ってたら抱き付かれた。「ラリカ!ラリカぁ!!」何だ一体?幼児退行?…よく分かんないながらも、背中に手を回し、片方の手で頭を撫でる。「…おはようルイズ」朝?の挨拶終了。ハイ終わり。だから着替え&ゴハン行かせろ。「おはよう、じゃないわよ!!」勢いよくルイズが離れる。くっ付いたり離れたり忙しいなぁ。てか、どーして挨拶しただけで怒る?理不尽じゃーありませんか。って、今度は泣きそうだ。イミワカラン。「おはようじゃ…ないわよ…」「ごめんね?ルイズ」本気で分からん。長寝か?長寝がいけないのか?…あ、そうか。散々迷惑かけたから怒ってるのか。計画通り!!でも作戦決行は着替えと食事の後だ。そういうわけで、後からたっぷり反省するから今は退いてくだされ、ルイズどの。「………本当に、心配したんだからぁ………」あ、ホントに泣いた。何だこの状況は?イジメたの?私この子をイジメたの?「…そっか。ごめんね。ありがとう、ルイズ。でも、もう大丈夫だから。それと泣き顔のルイズも可愛いけど、私はやっぱり笑顔の方が好きかな?…だから笑うのだ!おりゃ~っ♪」「ひゃっ!?ラリ、」今度は私の方から抱き締めた。うーん、おフロ入ってないし、匂わないかな~。ま、汗かいてないし大丈夫だろ。それに乙女に臭いとか言うヤツは人としてダメなのです。…おーよしよし、いい子だから泣き止んでね~?そして早く着替えに行かせてね~?ん?ルイズが動かなくなったぞ。ってか、寝た。よく分かんないけどこれでようやく解放された。後はぐっすりルイズをベッドに寝かせて…、「あ!!ミス・メイルスティア!気が付かれたのですか!?」と思った矢先に今度はシエスタだよ。気が付いたじゃなく、ようやく起きた、でしょ~に。それとも何だ?この世界じゃ精神力使い果たして長寝するのはビョ~キ扱い?知らんぞそんな常識。「おはよーシエスタ。何だかルイズが立ったまま寝るという偉業を達成したので、お任せてしてい~いかな?ワタクシ、ちょ~っと着替えとかしたいもので」「それは構わないんですけど…起きて大丈夫なんですか?」「はい?」「だってミス・メイルスティアはとても特殊な状態で、だから絶対安静にっていう話だと」なんじゃそりゃ!?特殊な状態?…ただ長寝してたんじゃなくて?あれ?「でも、その感じだったら大丈夫みたいですね。みんなにも知らせなきゃ。私たちメイドも、厨房のみなさんも凄く心配してたんです。でも、ただの平民じゃ何のお力にもなれなくて…。せめてお召し物やお身体をと思ったんですけど、動かしちゃいけなくて…」シエスタの目にも涙。…うん。本格的に非常に予想GUYな状態だったんだ、私。まだ何か言ってるけど聞こえない。なーにが起きたんだ?まさか精神力に飽き足らず、生命力まで振り絞ったとか?小細工で危うく自爆するところだったとか?アホか私。自己嫌悪がっくり。「それでミス・メイルスティアが医務室に運び込まれて3日、ミス・ヴァリエールとサイトさんが交代で看病なさってたんです。だから…、ふふっ、元気になられた姿を見て、ほっとされたんですね」え?ああ、ええと…うん。半分聞いてなかった。とにかく、ルイズと才人が看病してくれてたって事か。で、安心したら疲れが一気にボルテージMAXになって寝たと。「あれ?才人君も怪我してなかったっけ?」「サイトさんの怪我は1日で完治しましたよ。あ、そうです、ミス・メイルスティアの部屋にあった秘薬を借りたと言ってました」…うん、それ売り物。てか主不在の部屋に入って秘薬借りるって。まあいいけど。私の茶番に付き合ってくれて、看病までしてくれたのだ。それくらいは許そう。「なーるなる。詳しい話はまた後で聞くことにしましょ~か。今はとにかく部屋に戻るよ。この格好のままは乙女的にいろいろアレなゆえに。そんなワケでルイズをお願い。あと、身体拭きたいから部屋までお湯を持ってきてくれたら嬉しかったり」正直言って、ルイズを抱っこ状態で支え続けるのはキツいのだ。“レビテーション”しようにも杖がないし。それに微妙に混乱風味。自分の身に何が起こったかを再確認しないと。「分かりました。すぐに用意して伺いますね、ミス・メイルスティア」まだ涙目で、しかし微笑むシエスタに、少しだけ罪悪感ちーくちく?なんて。※※※※※※※※上半身裸になり、身体を拭く。さすが学院メイド。お湯の温度は実に適温だ。いい仕事してますなー。とか思ってたら、ドアをブチ破る勢いで才人が入ってきた。「ラリカ!目を覚ましたって、」で、固まる青少年。何というラブコメ体質!でも適用する相手を間違えてるぜい?こういうのは粒ぞろいのヒロイン軍団相手にド~ゾ。で、彼女らと好きなだけラブコメして下さいな。「あっち向いてホイ」指で左を指す。反射的に才人は右を向いた。「よーしそのまま暫し待たれぃ。上着だけ羽織るから…っと。ハイ、オーケイだよ」ブラウスをてきと~に羽織る。才人はもの凄くびくびくしながら再び向き直った。で、流れるような動きで土下座。「ごめんなさい」「うむう~む、でも土下座はいただけませんな。立って顔を上げて、あーんど歯を食い縛れっ!」「ひっ!は、はいっ!!」びしっと立ち上がる。軍人顔負けの素晴らしい動作だ。「ていっ」軽く額を叩く。別にそう怒ってはいないし、でもまあ、恥ずかしかったコトには違いないので一応。魅力ゼロばでぃと自覚していながらも羞恥心はあるのですよ~、コレが。「ノック厳守と言ったでしょ~が。ここは一応レディの部屋なんだぜー。だぜー?」「ご、ごめんラリカ…」「よし許す。…というか、ずっと看病してくれてたんだよね。ありがとう、が先かな?」そーいうワケでアリガトね、と言って微笑む。感謝は本物だ。ルイズが目を覚ましたら彼女にも言わないと。「え?あ、あ…、いや、そんなの当たり前っていうか…、それより許してくれるのか?その、見ちまったのに…」「わざとじゃないって知ってるし、それだけ慌てて来てくれたって分かってるから。そんな才人君を許さないっていう方がヘンじゃないかな?うん、とゆーかスマンと思うなら忘れてくれたまへ。恥ずかしかったのは事実なのでありまーす」怒っちゃいないが、蒸し返されるのは勘弁だ。…って、才人の目が潤んでない?まさかコイツも?「あー、才人君。私何かマズいコト言ってしまったりするとか?」「…ははっ、いつものラリカだ。戻ってきてくれたんだ。また、いつものラリカに…」無視ですかそうですか。…何か疲れた。あと、下も拭いて早くゴハン食べたい。「才人君」ブツブツ言ってる才人の意識をこちらに戻させる。「才人君とルイズに聞きたい事と話したい事があるの。ルイズは今、医務室で眠ってるから…起きたら部屋で待っててくれる?用事を済ませたら行くから」「用事?それなら俺も手伝うぜ。何でも言ってくれよ!」「ふむふ~む、スカートと下着を脱がせてとか言わせるつもりかねキミは。それとも拭く係?はっはっは、責任とらせちゃうぞー。…とまあ、用事とは主に身だしなみ的なアレなのですよ。つまるところ、手伝ってもらうワケにはいかなかったりする」「なっ、そ、そうか!そうだよな。だって上を拭いてる途中…、ゴメン。すぐ出てく、すぐに。あと、ルイズ連れてあいつの部屋で待ってる。俺たちもその、話したい事あるから」話したい事。いよいよアレか。“オマエが操られたせいで迷惑した&弱者は足手まといだ”通告。オブラートに包んで言ってくるだろうが、気遣い無用、むしろ全面同意の心構えだ。実に予想通りかつ、予定通り。「うん、待ってて下さいなっと。それじゃ、また後で」出て行く才人に笑みを向け、私は心の中でガッツポーズを繰り返した。これでようやく平穏な未来にリーチかかかる。微妙に不測の事態が起きたようだが、結果よければ全て良し。そしてさらば主人公一同!こんにちは平穏な日常!!紆余曲折、ピンチも何とか乗り越えたし、あとはエピローグ一直線。次回!『最終話・そして数年後』に、ブリブリブリミ~ル☆ご覧のスポンサーの提供でお送りしました!!はっはっは!わーるど・いず・まいーん!!今度は今度で今度こそ、ピリオドの向こうへ行ってやるぜ~。えいえいおー!!