第十六話・卑劣なるミョズ!というコトでひとつまだ見ぬシェフィールドさん。貴方のキャラ、勝手に作っちゃいましたァ♪ ごーめんね。てへ☆ボロボロの才人、左腕を失ったワルド。対峙したまま、動かない。そんな中、ルイズが一歩踏み出した。全ての視線は私を映してない。私に顔を向けているのは、ウェールズだけ。でも、その目が開かれることはない。…いや、あるけどそれは別だ。私は準備しておいた“アレ”を、そっと取り出した。「くっ、ウェールズめ、まだあんな力が残っていたとはな!!だが、」「そこまでだ!!ガンダールヴ!!」できるだけ邪悪っぽい声で、ワルドの台詞を掻き消す。まだ戦うとか言われたら困るし、ここからは私のステージだ。私の、未来を賭けたステージだ。3人は突然の私の声に一瞬フリーズする。ルイズを後ろから捉え、杖を奪い取る。そして、首にナイフを突き付けた。う~ん、流れるような動き。まさに犯罪者。まあ、想定外の事態でルイズが全く反応できなかったからなんだけど。「え…?ラリ、カ…?」固まるルイズはとりあえず無視。「ワルド!!貴様の働きは見届けた。…しかし、詰めを誤ったな」「お前は…」ワルドの表情が変わる。彼らの目には、無駄に目立つ紅い瞳をして、凄惨な笑みを浮かべた“ラリカ”が映っている。ルイズには見えてないけど。「ラリカ!?何でルイズを、それより!!どうなってるんだよ!?」おー、才人もパニくってますなー。「黙っていろガンダールヴ。今、貴様には用がない」「なっ…!!」後で大切な用があるから、今は黙っててくれぃ。まずはワルドをどっかにやらないとね。「目的は果たした。退くがいいワルド。貴様にはこれ以上消耗されるわけにはいかんのでな。それにもうじきレコン・キスタの軍勢がここにやって来る。満身創痍のガンダールヴに、無力な小娘。どう足掻こうが待つのは死、のみだ」「…お前はどうするつもりだ?」ワルドが私に向ける目は、“ラリカ”でなく“ミョズニトニルン”への目。感情を押し殺したみたいな…怖いねー。「この“小娘”の身体に、もう価値はない。メイジとしても兵士としても使えんクズなど、生かしておく理由もあるまい?」自分で言ってて悲しくなる。でも、これって事実なのよね☆…ウェェェン。「しかし、“ユンユーンの呪縛”は…」「代わりなど幾らでもある」そもそもダイエットリングを回収したところで、どーしようもないのだ。むしろバレるから絶対に拒否せねば。てか、グズグズしてないで行け!ヒゲ男!!「何をしている!!忘れたかワルド!貴様の目的は何だ!?」「ッ!!…分かった、退こう。…ここは、退く。目的のために」よーやく“フライ”で浮かび上がるワルド。なーにを迷ってたんだよ?「逃がすか!!」「動くなと言ったはずだ!…大切なご主人様が死んでもいいのか?」追いかけようとする才人に警告する。「くっ!!」「ラリカ…」悔しそうに歯を食い縛り、去っていくワルドを睨む才人。そして、戸惑うルイズの声。…よし、ワルド行ったな。前半終了。次だ。※※※※※※※※「さて、ガンダールヴ。まずは剣をこちらに投げてもらおうか」こちらに向き直る才人。見て分かる動揺。ま、無理ないかな~。「ラリカ…?何だよ、どうしちまったんだよ!?」「ラリカ!お願い、教えて!!何でこんな事を!?」「聞こえなかったか?剣をこちらにと言っている。私は愚者が嫌いなのだ、…後は、言わずとも分かるな?」ナイフをルイズの首にくっつける。引けば、スパッと切れるだろう。切る気なんて微塵もないけど。才人がデルフリンガーを投げる。私の足元に転がったそれを一瞥した。…よし。デルフの位置はまあまあOK。苦しそうな声を漏らして片膝をつく才人。そーいえば、ガンダールヴの力で怪我してても動けるっていう特典があったハズ。剣を手放したからダメージが軽減されなくなったのか。「ふん、無様だな、ガンダールヴ。武器がなければ所詮はただの平民か」「ラリカ…」「どうして…」うん、そろそろ気付けオマエら。明らかにコイツ“ラリカ”じゃないでしょーが。ちょっといろいろ心配になってきたぞ?「待て相棒!…こいつ、恐らくラリカ嬢ちゃんじゃねえ。いや、さっきの話からすると…」おぉデルフリンガー!!やっと台詞…じゃなくて、グッド!!「デルフリンガー、伝説の魔剣か。察しがいいな。貴様の言う通り、この小娘は我が術中にある。この“神の頭脳”のな」「“神の頭脳”だと!?…なるほどな。相棒、ラリカ嬢ちゃんを操ってるのは相棒と同じ伝説の使い魔、ミョズニトニルンだ!!」なんだってー!!しょうげきのじじつだ!!「なっ!?そのミョズ…何とかがラリカを!?」「あははははは!ガンダールヴ、ここは『はじめまして』とでも言っておこうか?まあ、すぐに3人とも死ぬのだがな。…デルフリンガーは後で“私”が回収し、使ってやらんでもないが」「はっ!ごめんだね!!てめえみたいなヤツには死んでも使われねえ!!」「我が能力を前にしても言ってられるのか今から楽しみだ、デルフリンガー。…ガンダールヴとその無力な主よ。どんな気分だ?ウェールズを守ることも叶わず、裏切り者のワルドは取り逃がし、挙げ句、操られた友によって絶望の中で死ぬ。惨めだろう?悔しいだろう?ははははは!そう、その表情だ!!敗者にはその表情こそ相応しい!」何という鬼畜。ミョズニトニルン、許すまじ!!…ごめんねシェフィールドさん。貴女がどんどん外道になっていく。ま、いいか。どーせ悪役だしね♪「くそおっ!!こんな…どうしようもねえのか…!!」「ラリカ!お願い、目を覚まして!元のラリカに戻って!!」どうしようもなくないよ才人。てか、してもらわないと私が困る。ルイズ、元のラリカも何も、オマエさん達の知ってる“ラリカ”自体がニセモノなんだけど。うん、本物は暗ーい内気少女かつダメ人間なんだ。外から爆音が聞こえる。そろそろか。ルイズを突き飛ばす。よろける彼女を才人が受け止め…2人はこちらを見た。そこで初めてルイズは“私”の顔を見る。紅い瞳、そして普段とは違う雰囲気を感じ取って下さいな。ね?こんなの“ラリカ”じゃないでしょ~?「ルイズ!!大丈夫か!?」「私は平気よ!それより!…ラリカ、いえ、ラリカはそんな瞳をしていない!!」だからそー言ってるでしょ~に。でも瞳の色に一発で気付いてくれただけ、才人よりは優秀か。「ミョズニトニルン!!ラリカを、私の親友を返しなさい!!!」「ふむ…そうだな。どうせ3人ともここで死ぬのだ。考えてやってもいい」死なないけどね。「!!」驚く2人。しかし。「だが…この“ユンユーンの呪縛”は強力でな。1つ間違えば、この小娘の心は完全に失われる。それでもいいなら…さあ、どうした?やってみろ。杖を奪ってみるか?気絶でもさせてみるか?ククク、まあ、武器を失ったメイジとガンダールヴにできることなど何もないがな」「くっ、この…、」「ダメだ相棒!!…コイツ遊んでやがる。恐らく普通の方法じゃ“ユンユーンの呪縛”とやらは解けねえ。だが…ミョズニトニルンなら、何かのマジックアイテムを使ってるはずだ!!」デルフ…お前って子は。本当にいい子だねぇ…。すごい面倒が減る。もう鞘の中でおでれえたしてろ何て言わないよ…。言ったことないけど。「6千年の時を経てもボケてはいないようだな、デルフリンガー。確かにその通りだ」悪役っぽく笑い、できるだけ優雅な動きでイヤリングを見せ付けた。「このイヤリングこそ“ユンユーンの呪縛”。この小娘の意識を霞の奥へ押し込め、我が思うままに操るマジックアイテムだ。そして、呪縛を解く方法は1つ」片方を外す。ぐっ!!とか呻きながら片目を押さえ、カラーコンタクトレンズを外した。片方だけ元の色に戻った瞳を見て、2人が目を見開く。…こうかはばつぐんだ!これで、『イヤリングを外す=瞳の色が戻る=解決する』ってイメージが具体的に沸いたはず。「こうやって外せばよい。それだけだ。2つとも外さねば完全には解けんがな。…どうだ?単純だろう。だが、それゆえに間違った事をすれば…」「さっき言った『心が失われる』って事か…!!」外したダイエットイヤリングを床に落とし、踏み付ける。ショボい素材だったのか、簡単に砕けた。「ククク…。それで、どうする?呪縛はあと1つだけだぞ?あと1つ、ただ外すだけで貴様らの大切な『おともだち』とやらが帰ってくる。さあ、どうした?」杖を向ける。「確かにイヤリングから何か魔力を感じる!くそっ!俺としたことが何で気付かなかったんだ!!すまねえ相棒、すまねえ娘っ子!!」デルフリンガーの悔しそうな声。いや、悔いなくていいから。ショボい魔力を放つダイエットイヤリングなんて、普通は絶対気にも留めないし。でも、証言してくれてありがと~。信憑性が実にアップした。「結局、貴様らは何もできずに終わるのだ。何も為せず、救えず、ここで朽ち果てるのだ」「このっ…卑怯者!!ラリカを、ラリカを返せっ!!!」涙目のルイズが飛び掛ろうとする。「“水の鞭”!」しかし、“水の鞭”で彼女らの前の床を殴り付けて制した。いくら攻撃魔法がダメな私でも、素手の女の子よりは強い。「あははははは!誰が大人しく外させてやると言った?無力を嘆け、己の不甲斐なさを憎め。杖を奪われたメイジや“武器を失ったガンダールヴ”に何ができる?」…そう、だから気付け才人。この局面を解決するんだ!!自分の手で、そうすれば私の計画は完成する!!爆音が近い。早く。早く気付け。「…ふん。デルフリンガーを失ってしまえば、ただの平民だったという事か。せっかく呪縛を解く術を教えてやったというのに、つまらんな。興ざめもいいところだ」視線を外してやる。今がチャンスですよー!!気付け気付け気付け気付け気付け!!!才人!!気付け!!!ヒントやっただろ!!「消えるがいい、ガンダ、」「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」よっしゃぁぁぁぁ!!気付いたぁぁぁぁぁぁぁ!!!才人が突っ込んでくる。その手には…『斬伐刀』。デルフリンガーを使うようになっても、ずっと後腰に差していた、私があげた狩猟刀。「何!?」速っ!?冗談抜きで、ホントに…、刹那。刃が首の真横に煌き、ダイエットイヤリングが切り飛ばされる。よし!ポニーテールにしといたお陰で髪の毛切られずに済んだ!!次は、「き、貴様ァァァ!!馬鹿なッ!!ば、馬鹿なぁぁぁぁぁァァァァァァ!!!」顔を押さえ、悲鳴を上げる。悪役ご用達の、一度は言ってみたい台詞ナンバーワンの悲鳴を。頭をぶんぶん振り、もがくフリをしながら残ったカラーコンタクトレンズを外す。そして、全精神力を込め、全然明後日の方向に向かって“錬金”!!おそらくその辺の瓦礫の一部が何かに錬金されただろう。どーでもいいけど。「……ばか…な…」よし、これで、精神力からっぽ…。かんぜんに、しぜんに、きをうしなう。あとは、もうしらない。ヴぇるだんでが…きっと…、これで…みっしょん、こんぷりー…………………。