第十五話・ドタバタ☆結婚式いっくぜ~!正真正銘、コレで終いだ!!ラリカ、ふぁいとぉぉぉぉぉっ!!ダイエットイヤリングをして、髪型はポニーテールに。結婚式に弓はムリなので、懐には厨房から持ってきたナイフ1本。コレ重要。いつでも付けられるように、カラーコンタクトレンズも準備OK。後はチャンスを待ち、作戦決行。リハーサルなしのぶっつけ本番だ。でも大丈夫、やれるさ、私ならできる!!できなきゃデッドエンドだし。それじゃ、本番いってみよ~☆「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか?」私の目の前で結婚式が進んでいる。ルイズは戸惑って…あれ?もの凄く暗い顔してる。「誓いません」で、即答。「何を言っているんだいルイズ?緊張して思いもしない事を言ってしまったのかな?そうだろうルイズ。君が、僕との結婚を拒むわけがない」 「申し訳ございません、ウェールズ殿下。大変失礼とは存じますが、私はこの結婚を受けるわけにはまいりません」真っ直ぐウェールズを見て言うルイズ。こんなにしっかりしてたっけ?そして何か言おうとするワルドに向き直る。「ワルド。貴方はあの夜、『待つ』と言ってくれたわ。だから私も真剣に考えることにした。真剣に考えて、答えを出そうとしていたわ。でも、これは何?待つというのはその場しのぎの嘘だったの?それとも、私の考えなんて待つだけの価値がないとでもいうの?」「違うよ僕のルイズ。僕はただ、」おーおー、修羅場ですなー。あ、ワルドが激昂…まではいかないけど強い口調で何か言ってる。ウェールズも異変に気付いて…、そういえば才人は何してるんだっけ?とか思ってたら、ウェールズが…避けた!?ワルドの攻撃を辛うじて回避したウェールズ。「くっ!ワルド子爵!!貴様ッ!!」「ワルド!貴族派のスパイだったのね!?」何やってるのぉぉぉぉっ!?ワルド!いやウェールズ!?ええと、「流石だな、今のを避けるとは。だが、ここで貴様には死んでもらうぞ、ウェールズ!!」よし、冷静になれ私。まだ誤差は範囲内だ。要するに何だかんだでウェールズが殺されて才人が駆け付けて、最終的にワルドの腕がちょん斬れる流れが崩れなければいい。ここで私が取るべき行動は、「子爵様…それが貴方の選択なんですね?」とりあえず、ルイズを庇うようにして2人から距離を取った。「…ミス・メイルスティア。すまないが大人しくしていてくれないか?邪魔をすれば、君も殺す」ま、殺せないんだけどね。何せ“ミョズニトニルン”に確認させなきゃならないんだし。「ミス・メイルスティア。ミス・ヴァリエールと下がっていたまえ。手出しは無用。…ワルド子爵、私を欺くに飽き足らず、自らの婚約者までも利用するとはな。私の誇りと、彼女の名誉のためにも…貴様を討つ」でも何だこの一騎打ちは。なぜなにど~して?「でもウェールズ殿下!私たちもお力に!!」よしルイズ、“私たち”って何かね?ナゼに私も含まれる?「ルイズ!殿下と子爵様…ワルドは、トライアングルとスクエア。私たちが余計な手出しをすると逆に足手まといになっちゃう!殿下を困らせたらダメ!!」「でもっ…!!」私はルイズの杖を持つ手を握り、かぶりを振る。ルイズを抑えておくってコトは、それ即ち私の参戦も回避するってコトだ。無駄に戦わせるわけにはいかない。「そういう事だ、気持ちだけありがたくいただいておくよ、ミス・ヴァリエール。私は誰かを庇いながら戦うような器用な真似はできないからね」「話はもういいだろう?…どうやら、役者も揃ったようだしな」役者?そう思った次の瞬間、礼拝堂のドアをぶち破って、ちょっぴりボロボロの才人が現れた。何があったんだ?「サイト!?どうして!?」ルイズが叫ぶ。才人は答えず、肩で息をしながらワルドを睨んだ。「“偏在”を倒したか。流石はガンダールヴ。あらかじめ力を測っておけなかったのはやはり手痛かったな。過小評価を認めよう。だが…もう油断はせん」…あー、一戦交えてたのか。でも何で?そんなシナリオあったか?「ユビキタス・デル・ウィンデ…。僕は果たすべき目的を完遂せねばならん!そのために!恨みはないが、全力で潰させてもらう!!」“偏在”わーらわら。うん、何か知らんが実に責任を感じる発言だな、今の。才人を個別で狙ったのも『確実にウェールズを始末する』ためか。失敗したみたいだけど。てことは、ウェールズが一撃で死ななかったのも…変に気合入っちゃったから?…うん、大丈夫。想定の範囲内だ。範囲内だ。範囲内なんだ。才人が“ライトニング・クラウド”食らってない状態で戦いに挑むと逆にマズかったに違いない。これはこれでダメージ負ってるし、補う意味でもウェールズがいるし、戦力的には原作と同じさ!!多分。おそらく。きっと。「ワルド!お前だけは絶対に許さねえ!!」「我が杖の前に滅ぶがいい!裏切り者よ!!」「無駄だ!!貴様らの全て、『閃光』の風に呑み込んでくれる!!」………。あのー、じゃあ、皆さんがんばってくださいね~。大人しく見学してますので。※※※※※※※※戦闘描写?無理。だってよく分かんないし。何かやたら速く動くわ、魔法びゅんびゅん飛ぶわで意味不明。あ、でも途中で何を血迷ったか飛び出したルイズが“ウインド・ブレイク”で吹っ飛ばされた。私も一緒にね。正直痛かった。血、ちょっと出たし。そんなこんなしてたら、ウェールズが胸を突き刺されて吹っ飛んだ。「ウェールズ殿下!!」壁に背を打ちつけ、崩れる彼に駆け寄るルイズ&私。「くそ!!そんなっ、」「他人に構っている余裕があるのか!ガンダールヴ!!」才人は戦闘続行。がんばれよー。「殿下!ウェールズ殿下!!」ルイズが必死になってウェールズの胸から溢れる血を止めようとする。彼女の手はもう真っ赤だ。「ラリカ!“治癒”を!秘薬は!?」「ルイズ…、何をやっても殿下はもう…」無理だ。ウェールズは死ぬ。わざと助けないとかじゃなく、これはもうどうあっても助からないのだ。水のスクエアとかが何をやろうとも無理だろう。某ハーフエルフの少女が持っている指輪ならあるいは何とかなるかもしれないが、ココにない物はどうしようもない。「何言ってるの!?まだ間に合うわ!!早く、」「ミス、ヴァリエール…もう、いい…、ぐっ…」苦しそうにウェールズが口を開く。「ウェールズ殿下!!」「殿下!もう喋っては、」「…ミス・メイルスティア、すまない、私の結末は…こんな、ごほっ!!」「ウェ、」ルイズを制する。いい子だからちょーっと黙っててね。「私は申し上げたはずです!例えどんな結末を迎えたとしても、勇敢に戦ったと伝えると!!それに、この最期のどこが勇敢な死でないと仰るのですか!?」ウェールズが僅かに目を見開いた。“レコン・キスタ”のスクエア、ワルドと“戦って”の戦死。不意打ちの暗殺じゃなく、激戦の末の敗北に“嘘”はない。それに。…全く。約束したじゃーないですか。伝えるって。まあ、相手が私じゃ信用ないかもですけどねー。「…大丈夫、ご安心下さい。…伝えますよ、必ず」微笑む。伝えますよ。だから安心して死んで下さい。そして恨まないで下さいね。ウェールズ…、殿下も苦しそうに、しかしどこか穏やかに微笑む。「ウェールズ殿下…」ルイズの目から涙が零れる。そして何か言い掛けたが、「ぐわぁぁぁぁっ!!」才人の叫び声で、私たちの意識は戦いの場へ戻された。ボロボロの才人、ワルドも満身創痍だが、彼ほどじゃない。しかも“偏在”が1人残ってるし。…これって、いわゆる大ピンチ?「よくやった、と言うところか。だが、ここまでだガンダールヴ!」どうしてこんな!?やっぱり原作通りに進んでなきゃいけなかったのか?それとも“心の震え”ってのが足らない?でも“心の震え”を引き出すにはルイズにやられてもらわないといけないし、その場合は私も矢面だ。私もやられたら、計画は破綻。気絶なんてしちゃったら目も当てられないし。マズい。非常にマズい。このままじゃ、「“エア・カッター”!!」“偏在”が切り裂かれて消滅する。ワルド本体も思いがけない攻撃に怯んだ。「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」その一瞬の隙を突き、才人がデルフリンガーを一閃する。「くっ!?しまっ、」宙を舞う『腕』。「…詰めが、甘いな…ワル…ド……」壁に背を預けたまま杖を突き出したウェールズ。不意打ちは卑怯…とかは言わない。むしろグッジョブ。よくやった!いやー、一時はどうなることかと焦ったけど、原作という運命は変わらずか!ニヤリと笑い、ウェールズの全身から力が抜け落ちる。南無。…まあ、…カッコ良かったですよ。殿下。うん、さっすが “プリンス・オブ・ウェールズ”!!………うん。………。そして紆余曲折したけれど、原作通り場景がここに出揃った。私の計画も…クライマックスを迎える。