幕間4・二人のライアーライアー・レイヤー。嘘の層は厚すぎて、ホントの私は回収不能?別にいいけどねー。らんらんらーん。よし、ウェールズの意志ってか遺志は確認できた。惜しい人っていえば惜しい人だけど、どーしようもない。こういう大きな流れは原作通りにしないとマズいでしょう多分。あー、でも少しだけ罪悪感?なんて。嘘。下手にそーいう感情持ったら、私の破滅フラグが立ちそうだしね。それは勘弁。“俺”の頃に見た映画やらマンガやらがソースなんだけど。ダメ人間はダメ人間を貫かなければならないのです。です。次のターゲットはワルド。私を“ミョズニトニルン”が操ってると信じてはくれてるようだけど、疑いの目は完全に摘んでおかなきゃーならない。何せ、少しでも疑われたらアウトなんだし。アウトで人生から退場したくない。ここは1つ、ギャップで攻めてみる。ラ・ロシェール上空の“操られた私”と今の“本当の私”が違えば違うだけいいのだ。加えて記憶がちゃんと改竄されてるように自然な感じで接すれば、ぱ~ふぇくと。今後ヒゲストーカーに狙われる危険性をゼロにすべく、れっつらごー。あ、ダイエットイヤリングは外しとこう。無駄な警戒与えても良くないし。ってどこ行ったんだよあのヒゲ。わるどー、でておいでー、おこらないからでておいでー。とか、心の中でイタズラ小僧を探すママンしてたらバッタリ出くわした。あぁ!今限定で会いたかったわワルド様!「あ、子爵様」「ミス・メイルスティア。もう会場に行ったと思っていたが」「はい、少し殿下とお話させていただいていまして」「…ウェールズ殿下と?」ワルドから不穏な空気。なぜお前が何の用で?って言いたげだ。キケンな感じだが、それは想定内。とゆーかウェールズ→ワルドの順番は決定事項だ。むしろ逆は本格的にマズい。「はい、そして子爵様にも」「僕に?さて、どんな話かな」「お話というほどでもありませんが…」あくまで無防備に近付く。うわー警戒してる。だが、「ありがとうござました!」ぺこりと頭を下げた。「…?」笑顔で顔を上げる。「グリフォンに“治癒”、マトモにお礼も言わないままバタンきゅ~しちゃいましたので、その、改めて」「ああ、何だそんな事か。いや、当然の事をしたまでだ。君はルイズの友人だからね」警戒が薄れたのが口調で分かる。お礼を言う順番は偉い順。ウェールズ→ワルドは当然だし、改めて言うのは不自然な事じゃーない。「でも、命の恩人様です。子爵様の機転がなければ私は賊にアレな目に遭わされていたでしょうし、“治癒”して貰えなかったらお肌がキズ物に…あ、」あはは、と笑って誤魔化す…振りをする。いかにも素が出ちゃったぜチクショーみたいな。「いや、別に構わないさ。ここは畏まる場でもないし、普段の君の口調でいい」「あー、じゃあ、すみません。当方、育ちがよくない田舎者でして。あは」よし。丁寧語やら尊敬語は疲れる。それに、それは“ラリカ”じゃないし。さてと、じゃあ適当に話しますか。「子爵様はパーティーに出席されないんです?」「今日の主役は殿下たちと大使であるルイズさ。僕は警護でもしているよ」「んー、なら私もお手伝いしましょうか?私、オマケみたいなものですし」「いや、君も出たまえ。パーティーに花は多い方がいい」「雑草みたいな花ですが。じゃあ着替えないとダメダメですね。この格好じゃ追い出されるのがオチですので」左肩の部分が破れ、血の跡が残っている。これでパーティーは無理があるだろう。「なら、衣装室まで案内しよう。場所は聞いているからね、ドレスを貸してもらうといい」「ありがたやーです、お言葉に甘えさせていただきますね」※※※※※※※※無人の廊下を2人で歩く。城にいる皆さん、全員パーティーに行ってしまったみたいだ。無用心だけど…明日玉砕ってのが敵味方問わずに分かってるから無理ないかも。どちらもお互い、無駄な事はしないのだ。約束された勝利と定められた敗北、まあ中にはワルドとかみたいな例外もいるけど。「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」唐突にワルドが言った。「殿下に媒酌をお願いしたんですよね。うかがいましたよ、殿下から」「そうか。なら話は早い。それに君も立会人として出席して欲しい。ルイズの友人だからね。なに、式が終わったらグリフォンで脱出すればいい。3人ならアルビオンを脱出するくらいなら何とかなるはずだ」早速本題か。私の目を通して“ミョズニトニルン”にウェールズを殺すのを確認させなきゃならないんだし。彼にとっては最重要。そして3人、つまり才人は数に入れていない。もう伝えて、才人は先に脱出する事を了承したのだろうか。それともまだで、彼の意思に関わらず招待する気がないのか。てゆーか、グリフォンじゃ3人でも無理じゃない?ああ、確認さえ終われば私は用済みだからポイしちゃえってワケか。なーるなる。「もちろん、喜んで立ち合わせていただきましょーか。それで、いい場所あったんです?」「ああ。礼拝堂があってね。朝、誰かを迎えに伺わせよう」笑っているが目は笑ってない。ホントにこういう笑顔って存在するんだなー。小説とかの表現法かと思ってたけど…コレがそれか。というかですね、貴方は明日振られるんですよ~?「幸せにしてあげて下さいね、ルイズの事。とっくにご存知かもしれませんけど、ちょっと素直じゃないトコロもあるものの、優しくて誇り高くて、とってもいい子ですから」「ああ、約束しよう」微塵も思ってないくせに、よくまー言えますなー。私もヒトの事は言えないけどね。はっはっは、狸と狐の化かし合いですか。化かす相手は別だけど。あ、でもルイズの評価は本心だ。冗談抜きで流石はメインヒロイン。ツンデレーションでデコレーションされてるけど、嘘の層でガチガチに固まった私とは、中身の輝きが月とスッポンの涙。ま、だからこそ彼女は放っといたって幸福が約束されてるんでしょーけど。衣装室に到着する。部屋の前にはメイドが2人いて、私たちに頭を下げた。「じゃあ僕は警護に戻ろう。ミス・メイルスティア、パーティーを楽しんでくるといい」「はい、ではまた明日」「ああ。こちらこそよろしく頼む」ま、こんなもんでいいでしょ~。これ以上は話す事もないし。じゃ、ドレスを借りるだけは借りて、部屋にでも戻りましょーかね。パーティー?サボりますよ当たり前かつ当然に。めんどくさいしねー。ルイズだって確か、途中で抜け出したよーな気がするし、私がいないくらい問題ないハズ。明日に備えて、今日はオヤスミぐっどないと☆…うん、その予定だったんだ。さっきまでは。でもミスった。戻る途中で誰かに見付かったらヤダなーとか思って、ちょっと遠回りっぽい別ルートで行ったんだけど…。ワルド再臨。いや、もう会いたくなかったんだけどなー。「ミス・メイルスティア?パーティーに行くんじゃなかったのかね?」てきとーに話して誤魔化すしかない。幸い、もう憂いはないし、別にワルドはパーティーに出ないのを怒る事もないだろう。「あはは、いやー、着替えたはいいんですが。やはり私はあの場に相応しくないっぽいので」「そんな遠慮は無用だと思うがね。まあ、好きにするといい」軽くヒゲ子爵は笑う。しかし、ふいにその笑みが消えた。…あれ?何だ?もしかして…エマージェンシー?何かマズったか?そんなハズは…。「1ついいかな」ど、どんと来い。全て誤魔化してみせるけどな!!「君は、彼らをどう思う?」…はい?「さっき使い魔君と話してね。彼は『分からない』と言った。ウェールズ殿下やこの城の者達が死を前にして笑っていられるのが。ルイズも使い魔君と同じような事を漏らしていた。しかし彼らは誇りと名誉の敗北を求めている。君の目に、それはどう映る?」な~んだ、そんな話か。ほんのり寿命が縮まったぜー。「ん。別にいいんじゃないですか?皆さん自分で決めたコトですし、幸せだと思いますよ」「幸せ?」「あー、そうですね。ちょっとつまらない話になるけど、いいです?」「ああ。時間は別にあるからね」ありがとうございます、と笑う。「コレは私の考えなんですが。1つ、一番の『大切』を決めておくんです。それが権力だったりお金だったり、愛だったりはそれぞれですけど。で、その『大切』のために生きる。他の何を差し置いても優先すべき、『大切』なコトのために。そして、それこそが幸福なんだと思うんですよ。…殿下やお城の皆さんにとってその『大切』は『ここで死ぬこと』だったんだから、この結末は幸福でしょ~ね」「『誇りや名誉』ではなく?」「正しくは自分たちが『誇りや名誉』だと思っている事、ですね。玉砕で全滅希望なんですよね?誰も伝えるヒトが残らないじゃーないですか。敵さんが『やられた人たちは誇り高かった』って後世に伝えてくれるワケないですし。むしろ、歴史は勝者が正義ですから、いいイメージでは残らないんじゃないかな?」腐敗した王党派はしぶとく抵抗したものの、革命の炎の前に敗れ去った、とか。ワルドは一瞬だけ驚いたような顔をしたが、やがて苦笑する。「冷静だね、ミス・メイルスティアは。そして恐らく、その通りになる」冷静も何も、歴史の勉強したヒトなら誰でも分かるコトでしょーに。それに私はアルビオンの人じゃないし。いちいち対岸の火事に一喜一憂してたら、この世界やっていけないぜー。「そもそーも、『勝利すること』が一番の『大切』だったら、ゲリラでも何でもするはずですし。そこまで勝つ事にコダワりがなかったってコトでしょー。でも、別にそれがいけないとは思ってないですよ?…私は誰がどんな事を『大切』として生きていても、否定はしないつもりですから」私の平穏な日常と幸福をどーにかされない限りね。「…それが、例えば『復讐』や『贖罪』だとしても?」へ?ずいぶんと極端な礼を出してきますなー、って。自分のコトなのか?正直、ワルドってあんまり知らないんだよね。でも何故にそんな事を?“誰かに聞いてみたかったけど、聞ける相手が居ないよー。じゃあ明日死ぬこの小娘に聞こう!後腐れないし”…とかそんなトコロかな?「だとしても、です」まあ、別にいいか。逆にワルドが原作通りに動いてくれる確率が高まりそうだし。「誰の『大切』も、私は否定しないです」笑ってみせる。復讐でも復習でも贖罪だろーと食材だろうと、どーぞお好きに。私に関係しない限りはどうでもいいのだ。少しの沈黙。…もういいかな?話終わったなら行きたいんだけど。「…やはり、君はパーティーに出席すべきだよ。ミス・メイルスティア」うぇ?ナゼにWhy?「いやー、雑草女は遠慮しときますって」「いや、出たまえ。君は遠慮すべきじゃない」何だってんですかこのヒゲ男は?ワケ分からん。「遠慮などせず、食事や踊りを楽しめばいい。君は彼らを理解しているんだ、誰に憚る必要もない」えー何それ。でも、あー、断れる雰囲気じゃないなコレ。仕方ない。めんどくさいけど顔出しますか。そういやウェールズにも、会場で、とか言っちゃったし。…はぁ。「…じゃあ、今度は会場までエスコ~トしていただけますか?子爵様」愛想笑いニコニコ。ワルドも…あれ?ニセモノ感バレバレな笑顔はどーした?上達したのか?「ああ。まかせたまえ」ルイズに向ける笑顔も、そーした方が良かったですよー?無駄だし、今更だけど。