幕間3・絶望のラリカと落日の皇子私は『絶望』のラリカ。私が去った後には『希望』が残る。なんてパンドラ?アルビオンがそうなればいいのに。無理だろーけど。クライマックスは明日。私は何としてでも生き抜き、平穏な日常を手に入れてみせる!!つまーり、今夜の仕込みに全てがかかっているのだ。用意周到、念には念を入れまくって。いっくぜ~☆今夜最後のパーティーするから出席してねーとか言われ、みんな準備のために部屋に戻っていった。もちろんワルドは残って明日のトツゼンドッキリ☆結婚式をウェールズに依頼してたけど。別の虚無がいるって知っても、ルイズはやっぱ欲しいか。上手くいけば思い通りに出来るかもかーもだし、当然といえば当然。ま、無理だけどね。さてと、まずはウェールズには確実に明日、結婚式に出てもらわないと。ルイズの説得も短かったし、妙なイレギュラーが発生してもおかしくない。ウェールズも風のメイジだから、“偏在”を結婚式に寄越したりするかもしれないのだ。…殺したと思ったら消滅するウェールズ。焦るワルドはきっと、“ミョズニトニルン”にもう一度チャンスをよこせとか言うだろう。で、本物を殺すのを見届けさせられるハメに。それは絶対に御免だ。計画がおじゃんになっちゃう。だからとりあえず…ウェールズ殿下と、れっつ・すぴーきんぐ~。「殿下」ワルドが去った後、声を掛ける。振り返ったウェールズは悲壮感バリバリの微笑を湛えていた。「君は…ミス・メイルスティアか。怪我の具合はどうだい?」「はい、その節は殿下自ら“治癒”していただき、恐れ多かったり有難かったりで…」「いや。君も大使の1人だからね。負傷してまで赴いてくれたんだ、当然だよ」おぉう、器がでっかいの~。流石は“プリンス・オブ・ウェールズ”。イケメ~ンだし、アンリエッタが惚れてるのも分かる気がする。後でゾンビになるんだけど。ゾンビもホラーなゾンビじゃなかったしね。…まあ、そんなゾンビじゃアンアンさんも誑かされないか。「ですが、…改めて言わせて下さい。本当に、有難うございました」感謝は本当。本当に痛かっただけに。ウェールズは「ならこちらも改めて、…どういたしまして」とか言って微笑むと、明後日の方向を向く。窓から射し込む月の光がその横顔を照らし、無駄に絵になる光景だった。「…今、ワルド子爵からミス・ヴァリエールとの結婚式に立ち会って貰えるように頼まれたよ。決戦の前に勇敢な私から媒酌を、という事らしい」別に聞いてないのに教えてくれるウェールズ。まあ、何となく語りたかったんだろう。雰囲気や状況的に何となく気持ちは分かる。「ははっ、随分と高く買ってくれたようだ。名誉だ誇りだと言っていても、実際はアンリエッタへの未練を捨て切れていなかった私なのにな。…おっと、すまない。今のは忘れてくれ」…ま、未練たらた~らなのは、あの手紙を宝石箱に大切そーに保管してた時点でバレバレなのですが。「でも、だから亡命しない事を決断された。何よりも大切な姫様のために。…それだけで、充分だと思います」てきとーに褒めて心変わりしないように釘を刺す。やっぱ亡命するとか意見を変えないでね、と言われるよりも、しない決断は立派ですね!と肯定された方がある意味強制力があるだろう。「…そんな解釈もある、か。ミス・メイルスティア、君は言う事が上手いな」必死ですから。私は答えず、ウェールズは少し笑い、でも相変わらずどこか遠くを見詰めている。「私の恋はこの地で終わってしまったが、彼らの愛はこの地で始まる。終わる者と始まる者、同じこの城にいても、踏み出す先はまるで真逆なのだな。…だが、2人の結婚の媒酌人に選らばれた事は本当に光栄に思うよ。未来ある彼らに、こんな私が餞を送れるのだから」その愛は始まらず、むしろ一方通行で終了するワケですが。でも、今の台詞からすると自分本人で出席することは間違いなさそうだ。こんなコト言われたら、ルイズなら『じゃあやっぱり亡命を!殿下にだって未来が!』とか言い出しそうだが、私は言わない。原作とズレはないよーだし、もう無問題。もーもーまんたい~。安心したぜ~、これでウェールズはもういいや。次に取り掛からねば。「はい、誇って下さい。どんな始まりにも意味があるように、どんな結末にも意味があります。殿下の決断が、結末が、いずれ大きな意味を持つはずです。死は殉ずる道。世間知らずな小娘が戯言を、と思われるかもしれませんが、私はそう信じています」つまるところ、単にウェールズの死の肯定なんだけど。あ、王族に対してコレは失礼だったか?ま、どうせ明日滅ぶんだし、不敬罪もないか。タバサといいウェールズといい、私の不敬さって何回斬首されるレベルなんだろなー。今度アンリエッタ姫様に会ったら気を付けよう。あと1回しか会わないだろーけど。むしろ、今回の褒章もらったら二度と会うもんか。「殉ずる道か。いや、戯言じゃない。君は…不思議な子だな。ただの学生とも思えない考え方をする。何より、死を正面から見据えている気がする」そりゃー2回リアル死んでますから。殉ずる道だなんて思ってないですけどねー。それにしても懐大きいなぁ。怒るくらいはすると思ったのに。ウェールズがこっちに向き直る。もう悲壮感はどこにもない笑顔だった。「さて。そろそろ、パーティーに行かないと。君たちは、我が王国が迎える最後の客だ。さっきも言ったが、ドレスはこちらで用意しよう。もう行くといい」「はい。では、会場で」終わった終わった。さらばウェールズ。もう二度と話す事もないでしょう。とか思った矢先、呼び止められた。何だ破滅志願者。私は次の手で忙しーんですよ。「君がトリステインに戻った時、アンリエッタに伝えて欲しい。『ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいった』と。それだけでいい。それだけ、伝えて欲しい」そーいうのはルイズか才人に言うべきじゃないかなかーな?まあ、彼らにも言うんだろうケド。「私は殿下が、例えどんな結末を迎えたとしても、そう伝えるつもりでしたよ。だから、もう何も心配なさらないで下さい」ってか、勇敢に戦えず殺されても成仏して下さい。伝えといてやるから。ゾンビになっても襲ってこないでプリーズ。「…そうか。そうだな。呼び止めてすまなかった。………ありがとう」よし、今度こそ終わったよね?のんびーりしる時間はないし。今度呼び止めても聞こえな~いしますよー。言質は取ったし、まずは好調。さーて、アタマ切り替えて次だ、次。…国の滅亡も、いろいろドラマがあるもんだなぁ。前回は単なる情報として聞いただけだったけど。当事者ならではですな。さらば落日の皇子様。そしてアルビオン王国。私、みんなのぶんも幸せになるからっ!ぜったい、幸せになるからっ!!なーんてね?あは。オマケ<ラリカの知らない朝の1コマ>ギーシュ(以下ギ)「(ゼェゼェ…)サ、サイト、そろそろ止めないか?というか、何で、素手で殴り合ってるんだ、僕たちはっ!?」才人(以下サ)「(ハァハァ…)だから、実戦形式って、言っただろ?杖落としたり、剣落とした時のために、決まってるじゃねえか。いくぜっ!!」ギ「うおっ!?だ、だからって、明日のアルビオン行きに響いたらどうするんだ!?」サ「ラリカのジェネリック秘薬があるっ!!(ぶんっ)」ギ「のあっ!!…なるほど、いいだろう。後悔するなよ!!いくぞ平民!!」サ「きやがれ貴族!!」2人「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」………。ルイズ(以下ル)「ワルド?こんな所で何やってるの?」ワルド(以下ワ)「いや、使い魔君に手合わせ願おうと思ってたんだが…」ル「あそこでギーシュと仲良く気絶してる馬鹿犬に?」ワ「…貴族のサガというやつでね、噂の使い魔君の実力とやらを試してみたくなった…のだが」ル「幾らなんでも、これから手合わせなんてただの虐待じゃない?今のあいつになんてその辺りの通行人でも勝てそうだし」ワ「…ああ、そう思ったところなんだ。というか彼らは大丈夫なのかい?」ル「薬はあるし、夜までには復活するんじゃないかしら」ワ「そうか。…あー、ところでルイズ。良かったらこれから町へ出ないか?」ル「ごめんなさいワルド。先約があるし…その、昨晩の事、考えたいから…」ワ「そ、そうか。ああ、分かったよ」(ガンダールヴの力を測りたかったが…ドットの小僧と互角?いや、武器を使っていないようだし…うむ…。しかし、夜まで何しよう?)………。キュルケ「(ZZZ…)あらぁ…すてきなオジサ…むにゃむにゃ…」タバサ 「(ZZZ…)…はし…ばみ…、すぅ」