<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.16394の一覧
[0] F REAL STORY  【スーパーロボット大戦Fっぽい】 [まくがいば~](2010/02/18 22:25)
[1] F REAL STORY  プロローグ01 【これだけR-15位】[まくがいば~](2010/02/22 22:20)
[2] F REAL STORY  プロローグ02[まくがいば~](2010/02/23 23:05)
[3] F REAL STORY  幕間 -私がいない所で-[まくがいば~](2010/02/14 22:47)
[4] F REAL STORY  第一話 Aパート[まくがいば~](2010/02/22 22:16)
[5] F REAL STORY  第一話 Bパート&幕間[まくがいば~](2010/02/18 22:24)
[6] F REAL STORY  第二話 Aパート[まくがいば~](2010/02/22 22:08)
[7] F REAL STORY  第二話 Bパート&幕間[まくがいば~](2010/02/21 00:32)
[8] F REAL STORY  第三話 Aパート[まくがいば~](2010/02/23 22:31)
[9] F REAL STORY  第三話 Bパート[まくがいば~](2010/02/24 23:37)
[10] F REAL STORY  幕間  -私のいない所で-[まくがいば~](2010/02/27 22:04)
[11] F REAL STORY  第四話 Aパート[まくがいば~](2010/03/02 17:08)
[12] F REAL STORY  第四話 Bパート[まくがいば~](2010/03/06 21:49)
[13] F REAL STORY  第四話 Cパート[まくがいば~](2010/03/06 21:53)
[14] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/03/09 00:09)
[15] F REAL STORY  第五話 Aパート[まくがいば~](2010/03/11 21:19)
[16] F REAL STORY  第五話 Bパート[まくがいば~](2010/03/16 21:47)
[17] F REAL STORY  第五話 Cパート[まくがいば~](2010/03/17 22:32)
[18] F REAL STORY   幕間[まくがいば~](2010/03/28 20:29)
[19] F REAL STORY  第六話 Aパート[まくがいば~](2010/03/28 20:30)
[20] F REAL STORY  第六話 Bパート[まくがいば~](2010/04/02 22:08)
[21] F REAL STORY  第六話 Cパート[まくがいば~](2010/04/02 22:12)
[22] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/05 23:17)
[23] F REAL STORY  第七話 Aパート[まくがいば~](2010/04/08 22:36)
[24] F REAL STORY  第七話 Bパート[まくがいば~](2010/04/11 22:00)
[25] F REAL STORY  第七話 Cパート[まくがいば~](2010/04/13 18:47)
[26] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/15 21:25)
[27] F REAL STORY  第八話 Aパート[まくがいば~](2010/04/19 21:29)
[28] F REAL STORY  第八話 Bパート[まくがいば~](2010/04/21 23:11)
[29] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/24 22:58)
[30] F REAL STORY  第九話 Aパート[まくがいば~](2010/06/04 22:54)
[31] F REAL STORY  第九話 Bパート[まくがいば~](2010/06/04 22:57)
[32] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/06/24 15:51)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16394] F REAL STORY  幕間
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:d80d6788 前を表示する
Date: 2010/06/24 15:51
幕間 -私がいないところで- 


「このまま宇宙へ上がるのかよ、マジで!!」
 ミディアムをドダイ代わりに使ったジェガン搭乗のジェスは、ゆっくりながら確実に垂直上昇していくブロックX
を苦労して追いかけていた。
 ドダイなどのMS用飛行サポートマシンなら、ある程度垂直に高度を上げるのも楽なのだが、今使っているミディ
アムではまず真上に上がっていくことは不可能なので、グルグルと銀の球の周りを周回しながら、必死に高度を上げ
てついていっていた。
『この重力を完璧に無視した上昇を続けていくなら、確実に大気圏を離脱できるわよ、この球』
 ブラックゲッターの腹部操縦席で、ふわふわと上がっていくブロックXのデータを取り分析していたミーナがそう
告げている。
「ゲッターはいけるのか、上に?」
『う~~~ん、どうだろう? ゲッターロボは単独で大気圏越えられるって聞いてるし、この子も気密は完璧だから、
大丈夫だと思うよ。問題は宇宙に上がってからの方かな、パットそういうシミュレーション全然やってないし』
「宇宙に上がるの決定事項になりつつあるなぁ・・・」
 ここで会話に入っていないパットはというと、ミディアムに乗り移り、デュオを使ってノーマルスーツなど宇宙で
も使えそうな装備を漁っているのだ。
『こちら家捜し隊隊長のパット。ノーマルスーツは一応六着あったけど・・・ 二人分足らないね』
『あ、俺いいところで降りるから、俺の分はいらないぞ』
『えぇ、デュオも一緒に行こうよ~~』
『俺は3日前に宇宙から降りてきたばっかりなんだよ!』
 デュオはスペースノイドなのかと思いなのか・・・ じゃああのガンダムはアナハイムあたりの謹製なのかとな、
などどジェスは思いながらも、思考をすぐに切り替えすぐ後のことを考えることにする。
『俺の使っていたノーマルスーツやるよ、これで人数分にはなるだろ。しかしなぁ・・・』
 呆れたようなデュオの声。
『こんな球に乗って宇宙へ上がれるとはねぇ』
 思わず頷いてしまうジェス。通信越しにミーナも頷いている気配がする。
 前にジェスが宇宙に上がったのは士官学校の講習でだった。あの時はシャトルに乗ってGを味わったのに、今回の
宇宙行きはずいぶんと長閑な上昇となりそうだ。
 そこでジェスは苦笑する、もう宇宙に上がることが決定になってしまったみたいだ。
「パットは後10分くらい家捜ししてくれ。まぁ、あとはあって食い物くらいだろうけど。ミーナは球の観測とこのデカブツの
フォローを頼む。で、デュオ」
『なんだい?』
「降りるんならさ、こいつやるよ。好きに使ってくれ」
『これって、この輸送機か? いいのかよ?』
「あぁ、置いてったってしょうがないからな。下手にアシがつくとマズイし」
 ジェスが太っ腹なとこを見せていると、横からパットが会話に割り込んできた。
『あぁ~~、ジェス今気がついたけど、何仕切ってんのよぉ~~!! リーダーはアタシなんだぞ!!』
「わかったわかった。で、リーダー、デュオにこれやっていいですか?」
『う~~む、まぁ可愛いデュオのためだからねぇ。貸し一つってことであげてもいいかな』
『なんだよ、可愛いってよ』
『この三つ編み、ラブリーじゃん♪』
『あ、馬鹿、勝手にさわるなよ!』
 イマイチ、緊迫感の沸かない連中だ。

 ここで、同じ時間帯、他の場所で起きていることを追っていこうと思う。

- 月 :フォン=ブラウンシティ上空:-

 そこではポセイダル侵攻軍月制圧艦隊と地球連邦軍月面守備艦隊の戦闘が行われていた。
「ええい、いまいましい!!」
 ポセイダル軍はプラネットボンバー級を旗艦に8隻の戦闘艦、そして80機のHMという陣容でまずグラナダの
電撃的な制圧に成功、そしてもう一つの月面大都市フォン=ブラウンへの侵攻を開始したのだが、そこで思わぬ抵抗にあっていた。
 月制圧艦隊司令官、リィリィ=ハッシーは愛機グルーンを駆ってMHを率いて戦場に居た。
 彼女は、このフォン=ブラウンに侵攻を開始してから、自分の仕事が何一つ出来ない状態だった。それはなぜかというと・・・ 
「やられるわけにはいかないんだよぉ!」
 彼女の駆るグルーンに肉薄する地球側のMSがあり、それの相手で手一杯な状態だったからだ。
 彼女は知らない、自分に圧倒的なプレッシャーを与えているこのMS『Zガンダム』とそのパイロット『カミーユ=ビダン』
が先の大戦でロンド=ベルという部隊に席を置いていた、大戦の英雄であることを。
 そして、彼女がZガンダムの相手で手一杯である為、部下のHM達は、
「ドリルプレッシャーパンチ!!」
 月面スレスレで最終防衛線を引く1機の得体の知れないロボットに次々に墜されていく。
 その黒いボディのロボットは手のつけられない頑丈さで、HM側の攻撃が殆ど効かない状態なのだ。
 そして、月守備艦隊にはアナハイムフォン=ブラウン工場から数機のMSの援軍も確実にHMを撃墜していた。
「やらせんぞぉ! 異星人ども!」
 試作ガンダム二号機、サイサリスを駆るのは元DC軍、『ソロモンの悪夢』の異名を持つアナベル=ガトー。
「いっけぇ、ビット!!」
 クリアブルーのエルメスを駆るのはエルピー=プル。
「ファンネル!」
 そして赤いキュベレィ・マークⅡを駆るのはその妹のプルツー。
 三人ともDC離反組であり、ラ・ギアスから帰還した後、身を隠すためロンド=ベルに縁深いアナハイム、フォン
=ブラウン工場に身をよせていたのだ。
 その三人の操るMAとMSに、ポセイダル軍は確実にHMを撃破されていった、そのことがリィリィ=ハッシーの
癇に障りさらに彼女を苛つかせる。
 Zガンダムのビームライフルから伸びたサーベルをロングスピアーで弾き、左腕のハンドランチャーを放つグルー
ン。しかし、Zガンダムのパイロットには予知能力でもあるのかと疑いたくなるくらいの素早い反応でハンドランチ
ャーの光条をかわした。
 そしてZガンダムはすぐに変形しグルーンの間合いから逃げおおせてしまう。繰り返されるヒット&アウェイにリ
ィリィのストレスはもはや最高潮にあった。
 そのリィリィをトドメとばかりに激高させる通信が入った。
『リィリィ=ハッシー様、艦が、旗艦が攻撃を受けています!』
 
「ひゃっほう!!」
「大成功!!」
 プラネットボンバー級の下に回り、メガバズーカランチャーによる不意打ちに成功した月防衛艦隊所属パイロット
ビルギット=ビリヨ少尉と、アナハイムテストパイロットチーム長のルー・ルカは、使い捨てのメガバズーカランチャ
ーを捨てて明後日の方向に逃走中だった。迂回挟撃のためにずっとコソコソと動いて、漸く必殺の一撃を加えられた
のだ。あとは逃げるが勝ちだ。
 二人が載っているMSは、アナハイムが次期量産主力機として開発中のヘビーガン、全長16mに満たない小型M
Sだ。それを黒く塗って出撃という念の入れようだった。
たった二機による奇襲だったが、効果は絶大だったようだ。ミノフスキー粒子のおかげでかなり至近距離からメガ
バズーガランチャーによる攻撃が出来たこともある。ポセイダル軍はまだミノフスキー粒子下での戦闘になれていな
いということもあった。
 小型兵器を発射してオールレンジ攻撃をしかけるヤツ、何で出来ているんだと叫びたくなる要塞みたいなロボット、
そして自分をトコトン追い詰める可変MS、あまりにペンダゴナの常識からかけ離れた戦闘に、リィリィはついに切
れた。
「ええい! 撤退だ! 出直しだよ!!」
 グルーンから撤退信号が発射された。彼女の部下のHMたちはこれ幸いとばかりに我先に撤退していく。グラナダ
は手中に落ちたのだ。これ以上、この都市を落とすためにイラつくなんて彼女は耐えられなかったのだ。
「・・・いってくれたのか?」
 カミーユは去り行く敵機を見つめながら、大きなため息をついた。
 フォン=ブラウン上空で最終防衛線を引いていたサラミス改五隻、ラー級巡洋艦一隻からなる月防衛艦隊の司令代
理兼巡洋艦ラー・チャター艦長のヘンケン=ベッケナー中佐も、戦闘ブリッジの艦長席に深く崩れるように座って、
深いため息をついた。
「グレートマジンガー様々だな、これは」
『こちら剣。フォン=ブラウンに帰還します。ヘンケン艦長』
 その今回の功労者、グレートマジンガーのパイロット、剣 鉄也からの通信が入った。鍛えられた戦士の彼ですら、
激闘のためさすがに疲労の色は隠せないようだ。
 ラー・チャターの艦橋にはゆっくりと月に降下する鉄の巨人、グレートマジンガーの姿が映っていた。この巨人が
受けた敵の光条は数十発に及んだ。それでもひるまずこの月面決戦でグレートマジンガーがあげたスコアは実に22
機にのぼる。まさに獅子奮迅の活躍だったのだ。
 グレートマジンガーがいなければ、カミーユやアナハイムの援軍が居ても、きっとフォン=ブラウンも敵の手に落
ちてしまったことだろう。
『ヘンケン艦長』
 こちらも疲れきったという感じのMS隊隊長のカミーユ=ビダンから通信が入った。
「おお、カミーユ、ご苦労だったなぁ。やっぱりあの角つきが敵の隊長機だったみたいだな」
『えぇ、すごいヒステリックなプレッシャーでしたよ。なんとなくシーマ=ガラハウを思い出しました』 
 そう言って苦笑するカミーユ。彼が全力をもってグルーンを抑えたこと、これも今回の殊勲の一つだろう。
 そしてヘンケンの元には、ロンド=ベル経由でかなり詳細なポセイダル軍のHMなどのデータがあったことも幸い
した。だから出撃したMSには皆実弾兵器を持たせたのも功をそうしたようだ。
『さすがに疲れたので、帰艦します』
「あぁ、気をつけてな」
 そこでカミーユからの通信は切れた。
「今回は、運で勝てたようなモンだな・・・」
 帰還するZガンダムを見つめながら、ヘンケンは自身にだけ聞こえるように呟く。
 自分の下にいるこの6隻の艦船、それと十六機のMSだけでは、あのポセイダル軍に確実に殲滅させられていただ
ろう。偶々、月に剣 鉄也とグレートマジンガーがいて、そしてアナハイムのフォン=ブラウン工場が月防衛艦隊-
というよりにかってロンド=ベルにいたカミーユやヘンケンに-好意的だった為、自社戦力を出し惜しみをしなかっ
た。どれか一つでも掛けていたら、月はポセイダル軍に全て制圧されてしまっていただろう。
 できるだけ早く、連邦軍も力の糾合を行わないといけないな。
 ヘンケンはゆっくりと無機質な天井を仰ぎ疲れた眼を閉じた。今の連邦軍はかなり分散状態になっている。先の大
戦の痛手もまだ完全に癒えてはいない。組織的にまとまった戦力といったらティターンズくらいと言っても過言では
ない有様なのだ。
 今のままなら、分散した兵力をジワジワと減らされていき、次々と拠点を落とされていくだけだ。
 だが後手後手に回りまくっている上に、内部にも火種を抱えている今の地球連邦では・・・
「はぁ~・・・」
 これからのことを考えると、戦術的な些細な勝利に、浮かれて入られないヘンケンだった。


 話戻って、再び『ブロックX』内部及び近辺。

「あぁ、わかった。こちらはなすがまま状態だからな。お前たちに任せる」
 アーウィンがそう言って、通信を切った。相変わらずこの部屋の中では電波は届かない状態だが、かってエレベー
ターへの入り口があった扉にくっつくようにすれば、音声通信くらいはなんとかできるようにはなっていた。
「なんだって、外は?」
 こちらもやることがなくなってしまい、コンテナに寄りかかって座り込んでいたヘクトールが訊いてくる。彼の隣
には、これまたやることがないので仲良く座っているガロードとティファが居た。
「ミディアムを漁っていたら、『万が一の為』と書かれたコンテナがあったらしくて、そこに緊急用の小型エアロック
とか宙間移動用のバーニアとか作業用装備とか色々出てきたらしい。どうやらジェスのご母堂は『こういう事態』をも
想定していたらしい。今から、とりあえずノーマルスーツとか持ってくるらしいので、コレを開けろとのことだ」
 と、ウィンは『コレ』と言ったところで、この部屋唯一の入り口のスライド式ドアを叩く。
「それ開けたら空気とかドカーって出て行っちゃうんじゃないのか?」
 ヘクトールが眉をひそめていう。そうなったら何故か自分だけパラシュートなしで外へ放り出されるような美味し
い展開になるような気がしてしまった。命がけで笑いを取るのかと、訳分らない苦悩なぞ始める。
「外で観測しているミーナによるとな、このブロックXは球状をしていてこのブロックの周りには、妙なフィールド
が形勢されているらしい。だから大丈夫だろうというミーナの予測だ」
 だがウィンは、自分で開けようとはしない。
「ウィン、開けないの?」
「お前に譲る」
 凄い無責任な即答が返ってきた。
「俺も遠慮したい」
「遠慮するな、俺とお前の仲だろう」
「親しき仲にも何とやらだよ」
 二人ともチャレンジ精神がないのか、それともミーナを信用していないのかわからないが、意思を曲げる気はない
らしい。
「まぁまぁ二人とも」
 何だか気まずいので、間に入ろうとしたガロードだったが。
「そうか君がいたな」
「よし」
 二人はそれだけ言うと、ガロードの両サイドに立ち、ベルトを両脇からつかんで、そのまま二人でエレベーターの
前まで運んでいく。
「え、ちょっと、お二人さん・・・?」
 素早い展開に反応できなかったガロード。その彼に二人は異口同音、あっさりと
「「あけてくれ」」
 と言った。何故自分がと問いかけようとするが、
「心配するな、抑えておく」
「もしお前に万が一のことがあっても、ティファの面倒はしっかり見る、なんなら子供にお前の名前をつけてもいい」
 ウィンはともかくヘクトールの未来予想は大変不本意で、抗議の一つもしたいトコだったが、ティファが小さく口
を挟んだ。
「ガロード、大丈夫だから・・・」
「よし、わかった」
 その一言で彼の不安は銀河の彼方まで飛んでいった。ここがもし真空宇宙の真っ只中でも彼は、ティファの一言を
信じたことだろう。純情一本槍なのだ、彼は。
「んじゃ、開けるぞ」
「おう」
「頼む」
 念のため、両脇を二人に抑えてもらって、ガロードはエレベーターの開閉ボタンを押す。
 ドアはゆっくり開いていくが・・・
 空気の流失はなかった。中の気圧に変化も感じられない。開いたドアから見えるのは一面下に広がる雲の絨毯だっ
た。こうやってみるとようやく自分がプカプカと非常識な上昇を続けていることが今更実感できる。
「こちらアーウィン、開けたぞ。お前らはどこにいるんだ?」
『おぉ、今いくからちょっと待ってろ』
 通信機に入ったのはジェスの声だった。すると下方一面に広がる雲海の一部が盛り上がり、そこから黒いボディの
ゲッターが姿を現す。
 そのゲッターの右腕にはジェスが自分の身長と同じくらいの荷物を抱えて立っていた。MSパイロット用の白いノ
ーマルスーツを着用している。
 左腕にはミディアムで見つけたと思われる緊急用のエアロックが握られていた。取り付け作業も済ませてしまうつ
もりらしい。
「よ! 久しぶり~♪」
 おどけて手を上げるジェス。ゆっくりとゲッターの右腕が近づいて開いたドアに近づいてきた。
「なんだか、凄い展開になったなぁ~」
 ヘクトールもがそう言ってドアの外に手を出した。そのわずかに外に出た腕に上空何千メートルだかわからない冷
気が突き刺さり、思わず手を引っ込める。どうやらこのブロックXを囲っているフィールドとやらは、かなり薄いみ
たいだ。
「まずは、この荷物だ」
 ドアのすぐ外で停まった掌、ジェスはまず自分で背負っていた大荷物をドアに放り込んだ。
「相変わらずの馬鹿力なこって」
 ジェスが投げ入れた荷物をヘクトールはガロードと二人掛りで中に運び入れる。荷物の内容はノーマルスーツや食
料のようだ。
 今度は外ではゲッターの左腕がゆっくりと近づき、エアロックを取り付けようとする。
「ちょっくら閉めてくれ」
「わかった」
 ジェスに言われるままにドアを閉めると、軽い振動がブロックに伝わった。そして2分ほどでまたジェスから「開
けてくれ~」という連絡が入る。
 言われるまま開けると、装着が完了したエアロックがその先にあり、エアロック側のドアが開いてジェスが中へ入
ってくる。
「これで宇宙へ上がっても、何とかなるだろう。まぁ、急場しのぎだけどな」
 ヘルメットを外し、物珍しげに周りを見回すジェス。
 その視線の先に荷ほどきをしているヘクトールとガロードとそれにひっそりと付き添っているティファが目に入っ
た。
「あの少年が、増えた一人分か?」
「あぁ、成り行きで同行することになった純情少年、ガロード=ラン君だ」
「どんな成り行きだったんだよ」
「おいおい語ってやるよ、時間はありそうだ。そう言えばミディアムがどうした?」
「あの黒いガンダムのパイロットにやったよ。色々と雑事頼んだんでな。まぁ、こっちも成り行きってやつかな?」
 ジェスの言葉に、アーウィンが目を丸くする。どういう成り行きであのガンダムのパイロットにミディアムをやる
ような展開になったのか、想像もつかなかった。ジェスも肩をすくめて言う。
「あぁ、こっちもおいおい語ってやるさ」
 するとジェスが突然思い出したように、ウィンに訊いてきた。
「ところで俺たち、どこへ行くことになったんだ?」
 今度はウィンが肩をすくめて答えた。
「『行くべきところ』だそうだ。それ以上は俺に訊いてもわからんぞ」
「なんだい、そりゃ?」
そんなこんなで、合流を果たした5人組+2人、彼らは自分達がこの先の戦いにおいて重要な役割を演じることに
なることに、まだ全然気がついていない。
  


そして、時間を本編とほぼ同じに戻し、話を進める。

 

 所長代理室に昼近くになって出勤してきたカレン=スターロードは、椅子に座るや私的メールが届いていることを
秘書コンピューターに知らされた。
「誰から?」
 彼女の問いにFWが浮かび発信者の名前を出す。そこには彼女の息子の名前がでていた。
「上手くいったのかな、あの子たち」
 呟きながらメールを開くと、別のFWが浮かびそこに現れたのは・・・
『えっと、レナンジェスの代理のモンです』
 髪を三つ編みにまとめた、愛嬌のある少年だった。どうやらジェスが彼女宛に伝言でも頼んだらしい。
『連中、ブロックXごと宇宙に上がっちまうみたいなんで、ブラックゲッターをトレースしてそこにシャトルでもな
んでも送ってくれとのことです』
「ブロックえっくす~~~!? なんであんなもんがあそこにあるのよ!!」
 思いもかけない名前を聞かされ、思わずメールに訊いてしまうカレンだが、無論、メールから返事などこないで三
つ編み少年の映像は続く。
『それと、この大型ミデアはレナンジェスやパット姐さんの好意により俺がもらえることになりましたんであしから
ず。ここに積んであったジェガンとエアリーズはアラスカの森林地帯に置いてマーカーだしておきましたから、そちらで
回収お願いしますわ。では、これにて伝言終わり』
 その宣言どおり、陽気な少年のあまり上手じゃないウィンクがあって、映像メールは終わった。
 カレンはというと、ため息ついてもう一度メールの再生を命じる。少年は間違いなく『ブロックX』という言葉を
口にしていた。
「この子、ブロックXのこと知ってそうな感じなのよね・・・」
 ブロックX、そこには15年前造られた最強のMS三機のうちの一機が、封印されているはずだ。運用法次第では
ジオンDCが造った最悪の兵器コロニーレーザー以上の威力を誇るあのガンダムXが。
 その存在を知っている人数なんて今ではたかがしれているはずだ。あの三つ編み少年はその知っている誰かの手の
モノだろうとカレンは思う。
 そんなことを考えているうちに秘書コンピューターがいつも通りにランダムに選んだ地球圏のニュースを表示し始めた。
 まずカレンの目を引いたのが、新興組織ティターンズの基地が3つ、ほぼ同時刻にガンダムタイプのMSに壊滅させられた
というニュースだった。しかも二ヶ所の基地、北米カナダ基地と大連基地はたった一機のガンダムによって基地を壊滅さ
せられたそうだ。
 次に目に入ったのはタクラマカン砂漠にあった連邦の研究所がテロにあって壊滅してしまったというニュースだっ
た。これには心当たりがありすぎる。
「あの子たち、宇宙に行くって言ってるみたいだけど、あの女の子確保できたんでしょうね」
 そう自分で言ってすぐ杞憂だと気がつくカレン。あの少女が目覚めたからこそ、ブロックXを目覚めさせることが
できたのだろう。しかし、彼女がガンダムXと同一の場所にいたとはまったくの予想外だった。
 そこでカレンは思い至った。何だかんだで彼女の息子たちは上手くやってくれているのだ。カレンがティファをさ
らって来いと言った理由は、彼女だけがD・O・M・Eの場所を特定できるからと彼自身に教わったからだ。
 ブロックXが向かう先、それは彼が眠る『サテライトベース』以外にありえないだろう。その場所こそをカレンは
知りたかったのだから。
「なんだかんだで上手くいきそうね。さすが我が息子♪」
 と、ちょっと親馬鹿になっていた時、ふと自分のほかにガンダムXのことを知っているある老人姿が五人、電撃的
に思い出された。先ほどのニュースを呼び出しながら指折り数え始める。
「ロンド=ベルを襲ったのでイチ、この坊やも乗り手だとしてニ、サン、ヨン、ゴ・・・ Jのオッサンたち、また
ガンダム作ったんだ~」
 かっての知り合いの健在を妙な具合に発見できて、カレンは少し浮かれてしまう。
「トレーズ君もジャミトフも大変だぞぉ。あの性悪爺さんたちのMS相手は~」
 そして、彼女は秘書コンピューターに出来るだけこのガンダムによるテロ事件の詳細を調べるように命令して、次
に人間の秘書に紅茶を淹れてくれと頼む。
 秘書が淹れてくれた紅茶を飲んでちょっと一服。ふと机の上に置いてある写真立てに目がいった。そこには日替わ
りでリンとカレンとジェスが写った写真が出るようになっているのだ。
「リンとあの子は、いったいいつになったらまた逢えるのかな?」
 リンが地球に戻ってきたと思ったら、今度は我が子が想像をこえる手段で宇宙へ上がってしまった。早く孫の顔が
みたい彼女としては二人を合流させたいのだが、どうも神様が意地悪でもしているみたいだ。
でも、リンも相変わらず甘えっ子だけど、ロンド=ベルという組織の中でそれなりに自立してきているみたいだっ
た。ジェスべったりだった彼女にとっては、それはプラスなのかもしれないななどと、育ての親らしいことをカレン
は思う。
「さてと、ではシャトルの用意でもしますか」
 そう言って宇宙局の局長を呼び出そうとした彼女に、私的通信が入った。その発信人の名を見て彼女は手を叩いて
喜ぶ。
 そして通信用のFWを立ち上げると、そこには夜の森に赤毛の青年の姿が映し出された。歳の頃は二十代後半だろ
うか?
 その青年にカレンは話し掛けた。
「どう、そっちの調子は、マーズ?」
 マーズ、それはかってこの世界を六神体の手から救った青年の名前だった。
 彼が今、どこで何をやっているのか?
 それがわかるのは、もう少し話が進んでからになる。

 -続く-

 【後書き】
 間、あきまくってますね。新作だせるの、いつになるやら・・・・・・
 いっそ、新作パートだけ、暫定公開するか、考え中です。
 


前を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022969961166382