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No.16394の一覧
[0] F REAL STORY  【スーパーロボット大戦Fっぽい】 [まくがいば~](2010/02/18 22:25)
[1] F REAL STORY  プロローグ01 【これだけR-15位】[まくがいば~](2010/02/22 22:20)
[2] F REAL STORY  プロローグ02[まくがいば~](2010/02/23 23:05)
[3] F REAL STORY  幕間 -私がいない所で-[まくがいば~](2010/02/14 22:47)
[4] F REAL STORY  第一話 Aパート[まくがいば~](2010/02/22 22:16)
[5] F REAL STORY  第一話 Bパート&幕間[まくがいば~](2010/02/18 22:24)
[6] F REAL STORY  第二話 Aパート[まくがいば~](2010/02/22 22:08)
[7] F REAL STORY  第二話 Bパート&幕間[まくがいば~](2010/02/21 00:32)
[8] F REAL STORY  第三話 Aパート[まくがいば~](2010/02/23 22:31)
[9] F REAL STORY  第三話 Bパート[まくがいば~](2010/02/24 23:37)
[10] F REAL STORY  幕間  -私のいない所で-[まくがいば~](2010/02/27 22:04)
[11] F REAL STORY  第四話 Aパート[まくがいば~](2010/03/02 17:08)
[12] F REAL STORY  第四話 Bパート[まくがいば~](2010/03/06 21:49)
[13] F REAL STORY  第四話 Cパート[まくがいば~](2010/03/06 21:53)
[14] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/03/09 00:09)
[15] F REAL STORY  第五話 Aパート[まくがいば~](2010/03/11 21:19)
[16] F REAL STORY  第五話 Bパート[まくがいば~](2010/03/16 21:47)
[17] F REAL STORY  第五話 Cパート[まくがいば~](2010/03/17 22:32)
[18] F REAL STORY   幕間[まくがいば~](2010/03/28 20:29)
[19] F REAL STORY  第六話 Aパート[まくがいば~](2010/03/28 20:30)
[20] F REAL STORY  第六話 Bパート[まくがいば~](2010/04/02 22:08)
[21] F REAL STORY  第六話 Cパート[まくがいば~](2010/04/02 22:12)
[22] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/05 23:17)
[23] F REAL STORY  第七話 Aパート[まくがいば~](2010/04/08 22:36)
[24] F REAL STORY  第七話 Bパート[まくがいば~](2010/04/11 22:00)
[25] F REAL STORY  第七話 Cパート[まくがいば~](2010/04/13 18:47)
[26] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/15 21:25)
[27] F REAL STORY  第八話 Aパート[まくがいば~](2010/04/19 21:29)
[28] F REAL STORY  第八話 Bパート[まくがいば~](2010/04/21 23:11)
[29] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/04/24 22:58)
[30] F REAL STORY  第九話 Aパート[まくがいば~](2010/06/04 22:54)
[31] F REAL STORY  第九話 Bパート[まくがいば~](2010/06/04 22:57)
[32] F REAL STORY  幕間[まくがいば~](2010/06/24 15:51)
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[16394] F REAL STORY  幕間
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:361a872e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/05 23:17
 夜。
 暗闇を焦がすかのような炎と煙が、タクラマカン砂漠にあるとある施設から立ち上って
いた。
 ニュータイプ第三研究所と呼ばれるその施設に向かう五人の一団があった。
 その施設にいる被験少女、ティファ=アディールを【誘拐】する為、烈火の如き勢いで
向かうはチーム名いまだ未定のあの五人組、ジェス・ヘクトール・アーウィン・パット・
ミーナ。乗るは怪しいゲッターロボとこれまた怪しいMSとそれを乗せるドダイ改。
 そして待ち受けるは、先に第3ニュータイプ研究所を襲った謎の黒いガンダムと、恋に
燃える『炎のMS乗り」ことガロード=ラン少年!
 さて、この三つ巴、どうなる!?

 

「・・・・・・ガンダムかよ」
 MSに乗った事ある者、そしてMSに憧れる者達の間では、今だカリスマ的存在のガン
ダムフェイス。
 それが今、自分の前にいるのだ。
 ガロード=ランは操縦桿を握る手が知らずに汗ばんでいくのを感じていた。
 そのガンダムの前には、自分の仕事仲間が乗るジェガンが七機、すでに行動不能に陥っ
ていた。
 軟弱な連邦軍人ではない、実戦の修羅場をくぐり抜けてきた傭兵たちが僅か四分の間に
みんなやられてしまったのだ。
 黒いガンダムの主武装は一目瞭然だった。
 ビームサイト、光の大鎌が怪しくその光を放っている。そして、炎によって怪しく輝く
そのガンダムの姿は、ガロードにある存在をイヤでも思い出させる。
「・・・・・・死神だよな、まるで」
 そして、死神が鎌を自分に向けてゆっくりと振り上げていく。
 金縛りにあったかのように、自分の身体が思うように動かない。ガロードが自分の運命
に恐怖した、その時だった。
『ガロード・・・・・・』
 か細い、でもしっかりとした声がガロードの耳に、いや頭の中に直接響いた。少女の声だ
った。
『来て、私のところへ・・・・・・』
 あの少女が自分を呼んでいる! その声の主がガロードが一方通行で想っていたあの少
女の声だと彼には確信できた。
 ガロードの金縛りは解けた。そして身体には例えようないくらいの力が漲っている。
「俺、がんばっちゃうよぉ~~~!!」
 ・・・・・・単純な少年だった。
 滑るように急接近してくる黒いガンダム。ガロード乗るジェガンは手に持ったガトリン
グライフルをフル斉射で迎え撃つ!
 だが、そのガンダム、ガトリングライフルの連射を避けもせずにそのまま突っ込んで来
た。    
「なに!!」
 弾は何発も命中している。だが効いていないようだ。
 この黒ガンダム、装甲も特別堅いらしい。ガトリングライフルの連射をモノともせずに
ガロード操るジェガンに斬りかかる。光の大鎌がうなりをあげて迫ってきた。
 だが、恋に燃えるMS乗りガロード=ランはひと味違った!  
「だぁりゃぁ~~~~~~!!」
 気合い一閃! ガロードは持っていたガトリングライフルで殴りかかった!!
 ゴガン!!
 凄まじい打撃音が轟き、黒いガンダムが怯む。ガロードのヤケの一撃の方がわずかに早
く決まったのだ。
 だが、黒いガンダム。あれだけの勢いの打撃を受けても、倒れずにその場で踏ん張って
いた。バランサー、装甲、フレーム、どれを取っても超一級品のMSらしい。
 ガロードは畳み掛ける! この隙しか勝機は無いと感じ取ったのだろう。
 そしてガロードの取った戦法は更にハチャメチャだった。
「どりゃあ~~~!」
 と叫ぶや、ガロード駆るジェガンはその黒いガンダムに抱きついたのだ。そのまま二機
もんどり打って倒れ込む。
『あちゃ~~、何すんだよ、おめぇ?』
 ガロードのコックピットに、敵側の黒いガンダムのパイロットの呆れたような文句が聞
こえてきた。接触回線によるものだ。
 パイロットの声にガロードはいささか驚いた。自分と同じくらいの年の少年があの黒い
ガンダムを動かしているようだ。
『俺の相棒に、傷がついちまったぞ、あたた・・・・・・』
 こうしている間にも、ジェガンは黒いガンダムをフルパワーで締め上げている。だが、
大きさではジェガンの方が一回りほど大きいのだが、ジェネレーターのパワーは黒いガン
ダムの方が上らしい。必死の抱きつき攻撃も、ジェガンの方に着実にダメージを蓄積され
ていっている。
 このままでは後一分も持たずにジェガンの両腕は内から引きちぎられてしまうだろう。
 しかしガロードにとってはこれでいいのだ。彼はコックピットに置いてあったサブマシ
ンガンと拳銃を手に取ると、あとはオート操縦にして、コックピットのハッチを強制
パージ。わずかに空いた二機の隙間から、とっとと出て行ってしまった。
『おい、アンタ!? どこ行くんだよ?』
 開けっ放しにしてあった通信回線から、黒いガンダムの声がする。声だけ聞いていると
今MS戦をやっている相手に対しての話し方としては飄々としている気がガロードにはし
た。
「悪ぃな! 可愛い姫様が俺の事を待ってるんでね。そいじゃ!」
 こちらも負けずとそう返すと、楽しそうな笑い声が返ってきた。
『へへ、それじゃ仕方ないよなぁ。縁があったらまた会おうぜ!』
「やなこった!」
 ガロードは駆けだしていった。自分を呼んだ少女のもとへと。

 一方、その少女の狙うもう一組のチームがようやくニュータイプ第三研究所に到達した。
「行くわよぉ~~! げったぁ~~~びぃ~~む甘口バージョン!!」
 パットの叫びと共に、ブラックゲッター腹部から出力を押さえられたゲッタービームが
発射された。
 その光条は、囲いの一角を見事に蒸発させた。そこへ滑り込むようにドダイ改とジェガ
ンスーパーカスタムが滑り込む。
「「「!?」」」
 内部に突入したジェス&ヘクトール&アーウィンの目にまず飛び込んで来たのは所々破
壊され、煙と炎を上げている基地施設。そして明らかに接近戦でやられた思われるジェガ
ンの残骸七つ、そして八機目のジェガンの腕を引きちぎって起き上がった黒いガンダムの
姿だった。
「襲撃わずか十分たらずで、八機のMSがオシャカかよ。凄い腕だね、あのパイロット」
「それとも、あのMSの性能、か?」
 黒いガンダムが、ゆっくりとこちらを向いた。武器は、珍しいビームサイトのようだ。
「デザインセンスも、いかしてるよなぁ」
 ジェスはそう言いながら、両腰に差してある日本刀設えのヒートサーベルを抜いた。 
 二刀流対大鎌のMS戦、世にも稀な戦いになりそうだ。       
「じゃあ、お前らは、手はずどおりに頼むわ。俺が!」
 そしてジェス操るジェガンSCは、黒いガンダムに向かって突っ込んでいった。
「こいつを押さえる!!」
 二機のMSが激突する。
 ジェガンSCが右ヒートサーベルを大上段に振り落とす!
 その斬撃を黒いガンダムは右にそれてかわした。そしてそのまま滑るように横に回り込
むと、大鎌を横薙ぎにふるって来た。
 その一撃を、ジェス操るジェガンは、滑るような足捌きで重心移動で方向転換すると、
左のヒートサーベルでその鎌の光刃を受けた。そしてそのまま右のヒートサーベルで斬り
かかる。
 だが、その一撃も黒いガンダムの見事なスウェーバックで紙一重でかわされた。
 時間にしてホンの数秒の、息詰まる攻防であった。 
『やるじゃん』
 ジェスのコックピットの中に、敵ガンダムのパイロットからの指向性通信が入った。声
からするとあのガンダムはパイロットは少年と言ってもいい年頃のようだ。
「アンタも凄いよ、そのガンダム・・・・・・ こんな近距離なのに、センサーやレーダーが敵
がいるって認識してないもんなぁ」
 そうなのだ。さっきからジェガンSCのコックピットの索敵センサーは、こんなに近く
にいる敵をいまだに捉えていないのだ。おかげで有視界で確認しながらの戦闘になってい
る。凄まじいステルス性能だ。
『へへ、俺の相棒は特別製でね。覚えておきな、デスサイズって言うんだ。ガンダム!』
 黒いガンダム-デスサイズがビームサイトを横に振りかぶった、来る!
『デスサイズ、黒い死神さ!!』
 踏み込みの速さが半端じゃない。ジェスは左腕のヒートサーベルでその斬撃を受け止め
ようとしたが、
「ちぃぃぃぃ!!」
 速すぎる、目で追えても機体が付いていってない。とっさい横にスラスターを全開にし
て避けようとしたが。左腕を肘から持っていかれた!
 真横にゴロゴロと転がっていくジェガンSC。
「まずいぞ、こりゃ・・・・・・ おい、ミーナ。ヘクトールとウィンに言ってくれ、あんまり
押さえられないぞ」
 隻腕になったジェガンSCを立て直しながら、やることがないのでヘリポートの真上で
フラフラと浮いているブラックゲッターにジェスは通信を送った。
『了解! いま二人が下のヘリポートから建物に突入したから。状況によったら私も降り
るから、あなたはそのガンダムに集中して。リンに笑われるわよ!』
『笑わないわよ。リンだったら、きっと『私のジェスに何すんのよぉ~!』って感じで怒
るに決まってるじゃない』
 続いたパットの軽口には、ジェスも思わず苦笑してしまう。でもジェスの考えは違って
いた。子供の時からずっと一緒だった彼だけが知っている一面があるからだ。
『アイツ、俺が危ないことしてると、すぐ泣いていたからなぁ・・・・・・ でも!!』
 距離を取って、ジェスはジェガンSCに独特の構えをとらせた。
『こんなことで、心配させるようじゃ、お袋や小母さんに顔向けできねぇぞ!!』
 子供の時、目の前で死んでいったリンの母親に、自分は誓ったのだ。彼女を護ると
それが彼を強くしていった原動力なのだ。
 右足を後ろに引き、腰を落とし、残った右腕に持ったヒートサーベルを弓を引くような
スタイルで構える。
 ネモでやった時より、数段自分の動きに近い構えが取れていた。
 あの『青い巨星』ランバ=ラルを相手にしたときにつかった、直線の一本突きの構えだ。
『うわぁ、ジェスの必殺技じゃん!』
 この中で唯一やることのないパットが歓声を上げている。ちなみにミーナはブラックゲ
ッターの腹にあるコ・パイロット席で、突入した二人のサポート中だ。
 デスサイズは、この構えをハッタリじゃないと感じ取ったのか、警戒して動きを見せな
い。
「パット、適当にゲッタービームをぶちかましてくれ! 俺とアイツの間を薙ぎ払うくら
いがベストだ。出来るか!?」
『え? 了解了解! まかっせてよ!』
 思いも掛けずに自分に役が回ってきて、手放しで喜んでいるパット。視線に連動してい
るターゲットセンサーを使って、ゲッタービームの標準を決める。
『いっくわよぉ~~!! げったぁ~~びぃ~~~む!!』
 パットの気合いと共にゲッタービームが放たれた! サーチライトの光のように、ジェ
スの指定したコースを光条が薙ぎ払っていく。
『なんだぁ!?』
 デスサイズのパイロットの動揺が伝わってきた。気が逸れた。
「だぁ~~~~~~!!」
 絶叫と共に背中のバーニア全開で突きを放つジェス操るジェガンSC。そう、ジェスの
狙いは隙をつくることだったのだ。
『あ、やっべぇ~~!』
 瞬きする間に、ジェガンSCが急接近している。避けられる間合いじゃなくなっていた。
「もらったぁ~~~!!」
『奥の手ぇ!』
 そして今まさに必殺の突きがデスサイズを突き破らんとした時、そのデスサイズの左腕
に装着されているシールドが発射された!
「!?」
 偶然かそれとも狙ったのか、なんとヒートサーベルの切っ先と、そのシールドが激突し
たのだった!
 爆発と閃光が、二機を包んだ。

 

 そして今度は突入班。ヘクトール&ウィンのコンビはミーナに現在位置を逐一教えても
らいながら、施設内部を走り続けていたる。
 ちなみに研究所内部はパニック真っ直中のため、怪しいスタイルの二人が駆け抜けてい
っても、誰も咎めるモノはいなかったりした。         
『次の角を右に行って!』
「了解!」
 ミーナの指示を受けながら、かなりの階層を下がったところで、二人は見るからに科学
者研究者といった風体の一団と、金切り声を上げている連邦軍の高級士官とその護衛小隊
に遭遇した。
 そして、その一団の中心には、明らかに冷凍睡眠装置と思われる機械があった。慌てて
どこかへ移送中だったらしい。
「お姫様・・・・・・」
「発見だな、手を上げろ!」
 二人で顔を見合わせると、肩から下げていたサブマシンガンを天井に向けて威嚇射撃す
るウィン。軍人をやめても、強盗で食べて行けそうなほどの、見事な恫喝だった。
「ひぃ~~~!」
「撃て、奴らを殺せぇ!!」
「やめてくれぇ! 撃たないでくれぇ!!」
 と、二人をテロリストかなんかだと思っているその一団は、威嚇射撃だけで物の見事に
混乱してくれた。
 銃をもった護衛の兵士も、慌てて逃げようとする科学者たちが邪魔になって、二人に銃
を向けられないようだ。
「チャァ~~~ンス!」
 ヘクトールがその一団にとっこんで行く。そして数回の打撃音が轟いた時、護衛の兵士
は全て当て身をくらって昏倒していた。そして、ウィンも続き、今度は拳銃の銃尻をつか
って科学者たちを一人残して昏倒させた。その間、約三十秒。本当の陸戦の特殊部隊でも
こうは出来ないだろう。見事な手練れだ。
 そして今立っているのは、佐官の階級章をつけた高級士官と、最年長と思われる白衣を
きた科学者だけだ。その二人に銃口を突きつけ、ヘクトールから口を開いた。
「い~まから、ミ~たちの質問に、サクサクっと答えてくださ~~い!」
 どんな時でもユーモアを忘れない性格は、こんな場合でも変わらないらしい。思わず頭
を抱えるウィンだが、気を取り直して銃を突きつけている老科学者に訊いた。
「この少女の覚醒にはどれくらい時間がかかる?」
「き、貴様ら、何が目的でその娘を!!」
 恐怖と屈辱で目が血走った士官が、口から泡を吹きながらそう怒鳴る。
「ミ~~達にも、わっかりませ~~ん」
 ヘクトールがそう答える。嘘は言っていないのだが、それで更に頭に血が上ったらしい
士官は、意味不明の罵声を叫び始めたが、あまりにうるさいので彼もヘクトールに首筋に
当て身をくらって昏倒させられた。
「答えてもらおうか」
 唯一残った老科学者だったが、こちらは銃口を突きつけられているうちに、恐怖で白目
をむいて勝手に気絶してしまった。残した人間の人選ミスだったようだ。  
「どうすっか、このまま運ぶかぁ?」
 二人で担ぐのはちょっと無理そうな冷凍睡眠装置を前に、二人が顔を見合わせる。覚醒
時間が短時間で済むなら、少女だけ運んでいくつもりだったのだが、その操作方法が二人
にはわからないのだ。
「エレベーターが動いていればいんだがな。とりあえずそこまで運ぼう」
 ウィンがあちこちいじって調べてみると、この冷凍睡眠装置はどうやら小型のホバーカ
ートに乗っているらしいので、二人でも移動はさせられそうだった。
「じゃ、行こう、ん?」
 と、二人が冷凍睡眠装置に取り付いた時だった。
「おおっと、お二人さん、動かないでよぉ!」
 明後日の方向から、若い少年の声がした。いきなりの伏兵にウィンがその視線を声のし
た方に向けると、そこは天井だった。天井のパネルがおちて、そこから逆さまに上半身を
だした少年が両手に銃を持ってそれを二人に突きつけていた。
「なかなか、いいタイミング」
「だな」
 二人が言うように、二人の隙をついた見事な不意打ちだった。しかも、この少年、先ほどの護衛
の兵士よりも10倍以上隙がない。
「まぁ、経験の差ってやつかな。お兄さん達、そのまま万歳しててよ。殺す気はないけど、
俺って銃だけ弾くなんて器用な真似できないから、そこんとこよろしくね」
 どことなく憎めない軽い口調でそういうと、少年はするすると器用に天井から床まで降
りてきた。言われた通り大人しく万歳しているウィンとヘクトール。
 そして、右手に持っていた銃だけ、ズボンのベルトに差し込んで、冷凍睡眠装置に付い
ていたコンソールパネルをいじり出した少年。左手の銃はちゃんとウィンの眉間にポイン
トされている。ホントに抜け目のない少年だ。
「あのさ、名前訊いていいか、少年?」
 ウィンがそう訊くと、少年はあっさり自己紹介をしてくれた。
「ガロード=ラン、この研究所に雇われていた傭兵だよ。まぁ、いまは勝手に辞めてフリ
ーターかな」
 そう言って明るく笑う少年、ガロード=ランだった。
「じゃあ、ガロード。こちらから提案があるんだけどいいかな?」
 ウィンは言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。ガロードと交渉するつもりのようだ。
「うん? まぁ聞くだけならかまわないよ」
 そう言いながらも、コンソールを叩いて、蘇生作業を続けるガロード。だてにしょっちゅう
天井から覗いてわけじゃないらしい、見事な手際だ。
「俺達は、その少女をこの施設から救出するために来たんだ」
「あれ、誘拐じゃ・・・・・・」
 余計なことを口出しそうになったヘクトールの爪先を思いっきり踏んづけて、咳払いを
して話を続行するウィン。ヘクトールは踏まれた足を抱えて、ピョンコピョンコ跳ねている。
「キミの目的も同じだと思うんだけど、どうかな、ガロード=ラン?」
「俺は、この姫様を助けたいだけだからなぁ~。でも、兄さん達は悪人じゃないって分か
るけど、どーも組織って信用できなくてね。兄さん達が連れていった先で、またこの姫様
がこんな目に会わないとは限らないだろう?」
 よし、ここからが正念場だとウィンは思ったのだが、またヘクトールが余計な口を出し
てきた。
「あぁ、そこんトコは大丈夫。うちらはその娘に人探し頼みたいだけだから」
 あっさり切り札を出してしまったヘクトールの膝裏をけっ飛ばして転ばすウィン。そして
再び咳払いを一つして、何事もなかったような顔をしてウィンが言う。
「まぁ、そういうことなんだ。私も詳しい話しを聞かされてないのだけど、その少女の関
係者らしい人物の捜索が、私たちのメインの任務でね。どうかな、手を貸してもらえない
だろうか?」
 わざと『その少女の関係者らしい』を強く言って、そう持ちかけたウィンだった。その
作戦は効いたらしく、ガロードの興味が明らかにこちらに向いた。
「この子の親か何かなの?」
「さぁ? でも、この少女にしか探せない人物、らしい。キミも一人でその子を連れて逃
げるのは大変だろう」
 そこで、ガロードの手が止まった。蘇生作業が完了したらしい。
 ブィィィーンと低い起動音がして、冷凍睡眠装置が蘇生作業を開始した。ポッドの中を
満たしていた冷凍ガスが抜かれ、蘇生ガスが変わりに満たされていく。そして、零下数十
度まで下げられていた体温を、徐々に上げていった。
 そのプロセスが始まってから、ガロードが急に落ち着かなくなってきた。気になって、
ウィンとヘクトールがポッドの中を覗いてみると・・・
「うわ、馬鹿、見るなよ!!」
 ガロードが慌てて二人の前でバタバタと手を振って、それを阻止している。そこで二人
は察しが付いた。中の少女、ティファ=アディールはきっと素っ裸なのだろう。冷凍睡眠
の時は、そうするのが普通なのだから。
 だが純情なガロード少年には、ちょっと目の毒だったようだ。
「ガロード、その子を素っ裸のまま連れましたりできないよなぁ」
 駆け引きとかそんなのとは無縁のヘクトールの一言が、ガロードの胸にはグサッときた
らしい。
「仕方ないか。じゃあ、とりあえずここ出るまでは、兄さん達と協力といくか」
 しぶしぶといった感じでそう言ったガロードだった。彼の本心としては、あくまで一人
でお姫様を救出したとい名誉も欲しかったのだが、そう上手く行かなかったみたいだ。
「ありがとう、私の名はこの建物を出てから名乗るよ。知られるとマズイ身分なんでね」
 と両者感で合意を得られたところで、ピィーと電子音が響いた。冷凍睡眠装置が蘇生処
置が完了したという合図だ。
 緊張で唾を飲みこむガロード。考えてみれば、自分の思いは本当に一方通行だったのだ。
 プシューと圧縮空気が吹き込まれる音がする。そしてゆっくりと少女が眠り姫にされて
いた棺のような容器の、その透明の蓋部分が上がっていく。
 そして、眠り姫、ティファ=アディールが目を開いた。その瞳は長い間、睡眠を強いら
れていた人物とは思えないほど、意志の光が宿っていた。
 その瞳が、自分を見つめている三人の男性を見返していた。そして、耳まで真っ赤の純
情少年ガロード=ランを見つめて止まった。
 見つめ合う二人の視線。それはティファが上半身を起こしても離れなかった。
 ガロードも何故だか引き込まれるように視線をティファの瞳から外せないでいる。ちな
みにヘクトールはティファに着せる何かがないかと、探しに出ていった。ウィンも調度、上の
ミーナから報告が入って、その応対をしている。何となく二人だけの世界になっている。
「・・・・・・ガロード」
 ティファの口が小さく、ガロードの名前を呼んだ。
 『どうして俺の名前を?』と訊こうとしただったが、その言葉をティファの言葉が遮っ
た。
「あなたを、待っていました、ガロード」
 ティファの言葉は続いた。
「私を、地下最深部にあるブロック『X』まで連れていってください。そこにあなたが乗
るべきMSがあります」
「俺が、乗る・・・・・・?」
「そうです」
 不思議なことに、その時ガロードには、ティファの言っている言葉を全て、ごく自然に
受け入れていた。
「わかったよ、えっと・・・・・・」
 そこで初めてガロードはその少女の名前を知らないことに気が付いた。
「ティファです。ティファ=アディール」
「何だよ、ガロード。嬢ちゃんの名前、知らなかったのかよ?」
 そこへムードぶち壊しって感じで割り込んできたヘクトール。手には、連邦軍の女性兵
士用の制服と下着のセットを持ってきていた。
「ほいよ、嬢ちゃん。サイズの見立ては間違ってないと思うぞ。まぁ、とりあえずここで
るまではこれで我慢してくれや」
 そう言って制服&下着をティファに渡すヘクトール。彼女もそこでようやく自分が全裸
だと思い出したらしく、顔が急速に真っ赤になっていった。やはり恥ずかしいらしい。
「はい、坊ちゃんと俺は回れ右。早く着替えてね」
 言われてガロードも慌てて回れ右をする。二人の背後でティファが着替えをする気配が
伝わってきた。
「ねぇ、兄さん?」
 気になったのか、ガロードが小声で訊いてきた。
「服はともかく下着はどうしたの?」
「売店に売ってる奴をかっぱらって来た」
 そういえば、この研究所にも女性職員は居たから、そう言う物も置いてあって当然だろ
う。だが、もう一つ疑問があった。
「じゃあ、なんであの子のその・・・・・・ サイズとかまで分かったの?」
「俺の覗き歴を持ってすれば、そんなもの、一目みれば、ミリサイズまで」
「馬鹿な事ばっかり言うな!」」
 自慢げに胸を張って答えるヘクトールに、通信を終えたらしいウィンが踵落としを食ら
わせて、発言を止める。クリティカルヒットだったらしく、バタンと倒れてヒクヒクと痙
攣するヘクトールだった。
「小耳に挟んだんだが、ガロード君。この少女は地下の施設に行くのを望んでいるのか
い?」
 踵落とし決めた後に、よくこんなシリアス顔が出来るなと妙な所で感心しながらも、ガ
ロードはウィンの言葉に頷いた。
「まずいな」
 軽く舌打ちするウィン。何かトラブル発生したようだ。
「実はな、ここに向かって降下してくる一団があるんだ。どうやら地球軌道上守備艦隊の
88艦隊のMS隊らしい。ここに何か問題があったら、即座に降下する手はずになってい
たようだ」
 先ほどのミーナからの通信は、この事を知らせる為だったのだ。ミーナ乗るブラックゲ
ッターのレーダーが、急速降下するMS八機を捉えたのだ。
「でも、ティファは下に行きたいって・・・・・・」
 ガロードの言葉に、ウィンは分かっているという風に頷いた。
「ティファさんとキミのやりとりを見ていると、言葉では上手く言えないが超然とした絆
のような物を確かに感じる。その少女がああ言ったからには、それはきっとこれからのキ
ミに必要な物なのだろう」
「はい、その通りです」
 ティファのか細い声がそれを肯定した。        
 その言葉に振り返ると、着替えを終えたティファが恥ずかしげに俯いて立っていた。
「に、似合ってるよ、その服・・・・・・」
「馬鹿か、お前。ただの軍服だぜ」
 ガロードの上がりまくった返答に、ダメージから回復したヘクトールがツッコミを入れ
た。
「最深部のXというと」
「えっと、うげぇ、地下250メートルだってよ」
 テスラ研で入手したこの研究所の見取り図には確かに、最深部ブロック『X』の存在も
表記されていた。しかし、そこへ行くには別棟のビルに行って更にそこから専用エレベー
ターに乗っていかないといけないらしい。
「その新手がここに来るまでは?」
「ミーナの報告ではおよそ二十分。ちなみにジェスはあの黒ガンダムに大苦戦中らしい」
「なら、迷ってる時間はないな」
「あぁ」
 ウィンとヘクトールはお互い頷きあうと、まずヘクトールがティファを横抱きに抱える。
「キャ!」
「おいオッさん、何すんだよ!?」
 ティファの困惑とガロードの文句を放って、二人を男はもの凄いスピードで駆けだした。
 置いて行かれる形になったガロードも慌てて二人と運ばれるティファの後を追いかける。
「ちょっと、オッさん達!?」
「だぁ、オッさん言うな! 俺はまだ二十歳前だ!」
 ティファを抱えているというのに、素晴らしい速力で駆け抜けていくヘクトールが噛み
つくように言う。
「と・に・か・く! 急がないと間に合わないだろう! その最深部のXブロックとやら
に」
 そこでようやくガロードにも、いきなり駆けだした二人の意図が理解できた。
「兄さん達、手伝ってくれるの!?」
 ガロードの問いに二人とも頼もしく頷いた。
「大丈夫です、間に合います」
 そしてヘクトールに抱えられたティファが、そう囁く。
 ティファにそう言われると、俄然やる気のでるガロードだった。
「よぉ~~~し、俺、頑張っちゃうよぉ~!!」

 こうしてティファ=アディール誘拐は、新たな展開を迎えたのだった。

 
 -第七話 Aパート-

 【後書き】
 こっちはドタバタ珍道中になりつつありますね。ちなみにブラックゲッターは
ガンバスターと同じような操縦システムという設定です。日高さんが声やってる
ミーナはお姉さまのポジションですけど。


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