「さて、お話しましょうか、ハラオウン?」
「何で貴女がこの世界に?」
「まぁまぁ私に関してなんかいいじゃない。とりあえず、この子たちの今の現状について、ね」
先ほどまで、艦──アースラと言う、次元航行艦だったかな? 勉強したのは大分前だったから忘れたが、
そんな艦に、連行されて、さてこれから取り調べと言うときに母さんの邪魔──と言うわけではなさそうだが、
母さんが割り込んできたことにより、アウェイで行われるはずだったものがここ、我が家で行われることになった。
そして、当然のように高町家、士郎さんと桃子さんもきている。おそらくは、先を見越した母さんが呼びつけたのだろう。
相変わらず恐ろしい母だなと認識した。
<今のうちにはやてちゃんに連絡とっておきなさい>
<え? なんではやてのことを?>
<むしろ私が息子のことを知らない方がおかしいわよ?>
俺にプライバシーは? 日ごろの行いは全てばれてる!?
本当に恐ろしい母だ。
認識を改めるどころか警戒レベルだよそれは!?
でも……この場合に限ってはありがたいことだった。明日死ぬかもしれないと言う本当に生と死の境目だった気がするから。
「じゃあ、今回のことについては、まずなのはちゃんとフェイトちゃんは当事者だから説明してもらわなくちゃいけないから、ここに残ってね。
竜也は、まぁただ巻き込まれただけ、というよりはお節介なだけだったみたいだからちょっと席をはずしてもらえるかしら」
「えっと、どうして私の名前を?」
「それもあとで、ね。でも本当に……よく似てる」
「え?」
「こっちの話よ、じゃあ、みんなこっちの部屋に来てくれるかしら」
そう言って、母を先頭にリビングに向かっていった。
俺はその中、とりあえずは自分の部屋に戻り、はやてに連絡をとることにする。
明日の朝日が迎えられるかどうかの瀬戸際だ。交渉は慎重に、対応は丁寧にやらねば……。
俺はまだ……まだ生きたいんだ! 死にたくない。死にたくないよー!
あ? このセリフ死亡フラグなような気がする。
しかも、血の雨が降ると言うよりは、血が抜かれるような……。
どっちにしろ、俺の血が、身体が大変なことになるのには変わらないか。
魔法会談が行われているであろう一方で、俺ははやてとの死線を交えた戦いが始まった。
◆
私にとって、今回の仕事と言うのはちょっと厄介だけど、そこまで大変なものではないはずだった。
この世界には協力者である、リーゼ姉妹と言う強力なカードがあり、その二人の話からもそこまでの事件性は感じられなかった。
しかし、いざこの世界に関与し、事件性を暴こうとしたところで、まさかの人物が現れてしまった。
それが、アイコ・クライン。今はこの世界の住人と結婚して、アイコ・アイザワと言うらしいが。
もともとは時空管理局でかなり名を馳せた人物であり、その当時からオーバーSランクと言う大魔導師。
それでいて、自分で言うのもなんだが、おそらくは互角、もしくは以上に頭が切れる人物。
実は昔からの知り合いで、一時期はライバルのような人物でもあった。
「じゃあ、まずはなのはちゃんから、説明してくれるかしら?」
「どこらへんからですか?」
「そうね、魔法との出会いからでお願い」
<かあ──艦長。あのアイコとかいう、人物は何者ですか? 只者には見えないんですが>
<そうね、警戒はして損はないわ。ただ、そこまでも危険人物と言うわけでもないから>
そう、危険と言うわけではないんだけどね。
ただ警戒しといて──違うわね、警戒しても意味があるかさえも分からないわ。
かつて、管理局内ではその強大な魔力を使いこなし、数々の武勇伝も聞いた。
とある時は海で、とある日は陸で、そしていつの間にか空にも所属してた事があるという神出鬼没という言葉がまさに当てはまる人物。
その一時期のライバルと言うのは、彼女が提督になったときに関係があるのだが、それは今は関係ない。
ただいえることは、その彼女の仕事柄、人と人との繋がりが非常に広い。
その人脈こそが彼女の一番の武器で、情報源と言えるだろう。
書く言う、私自身もかなり広い自信はある。もとより、ハラオウンの名は管理局内ではかなりの名門であるのが理由だ。
独自のネットワークだって持っている。しかし、それ以上のネットワークを駆使していたのが、彼女──アイコと言う人物だった。
管理局を抜けて、科学者になったと聞いて以来、行方不明になっていたと言うけれど、まさかこんなところで会うなんてね。
噂によれば、かなり危険なところに手を出して痛い目に会った、なんていう人もいたけれど、本当にそうなのかもしれないわね。
もし、今回のことが無事に終わって、彼女が戻ってきたなら仕事が相当楽になりそうね。
あら、いけない。また余計なことを考えてしまったわね。どうもここら辺が見境がなくなってきて、自分で怖いわ。
「ありがとう。これがとりあえずこの事件に関してのなのはちゃん側の見解ってところね。
ちゃんと聞いてたかしら、そちらのお二方? ハラオウン親子?」
「ええ、聞いてたわ。なのはちゃん……でいいかしら?」
「はい」
「なのはちゃんが魔法の関わった経緯とこのジュエルシードに関しては理解したわ。では、今度はそちらの……」
「フェイトちゃんについて……そうね、彼女にとっては辛い話になるかもしれないわ」
「え? ええっと、竜也のお母さんは私のことをどこまで知ってるんですか?」
「ほとんど全てが予測だけど、たぶん、ほぼ全てを知ってるわね。テスタロッサの考えそうなことよ。
そのジュエルシードと言うロストロギアは、願いを叶える、祈願系のロストロギア。どうせ、テスタロッサがそれを願うのは……」
「願うのは?」
「その前に竜也を呼んでくるわね。フェイトちゃんは私の息子のことを信頼してるみたいだし」
おそらく、彼女がこれから話すのは事件の真髄。言うなれば全ての種明かし。
私たちが今回の事件にかかわるには遅すぎた、そう感じられるような話だと思う。
もしかしたら、今回は時空管理局がでしゃばらなくても彼女ならあるいは……。
そう思うがその考えを払拭する。
そうね、ネガティブに考えてもしょうがないわ。
今回のことをポジティブに考えるなら、ここに優秀な魔導師になれそうな人物が、複数いること。
元管理局の彼女を含め、あのなのはちゃんという子はすでにデータで分かっているが相当の魔導師になれるだろう。
そして、フェイトちゃんと言う子も多分そうでしょうね。なのはちゃんと対等以上の実力だって聞いてるから。
それに、彼女──アイコの息子の竜也君も、おそらくは……。
リンディは事件がまだ終わっていないにもかかわらず、この後のことを考え、未来の管理局員候補の将来を考える。
その結果、ここでできるだけ印象をよくしておこうという結論に至った。
◆
死線──最近良く使う言葉……と言う現実にすでに嫌気が差しそうだが、そうも言っていられないのが現状である。
八神はやて、俺にとっては彼女は動物王国への足がかりの一人と言う認識でかかわっている人物だ。
動物王国のなのに一人……でも、それがしっくりと言うのもおかしな話だよな。今更ながら。
おっと、そんなことをのんきに言ってる場合じゃなかった。早く電話をしなくては!
時間はすでに夜と言って差し支えない時間。
彼女には今日は必ず帰るから待っててくれと言って家を飛び出した。
だから、こそのフォローの電話なんだけど。
怖いな。
はやての声を聞くのが異様に異常に怖いな。電話越しでも黒いオーラが流れ込んできそうだよ。
でも、まだ黒いオーラを放っていない可能性も!
…………。
ないよねー、そんな希望的観測が上手く行くわけないよね。
ああ、暗い未来が待ってるのが分かるから、ついつい現実逃避をしちゃうよ。
どうになかならないかなー! どうにもならないだろうなー!
「はぁ……いつまでも考えても仕方ない、電話をするか」
携帯電話のアドレス帳から八神はやてを選択。
よくよく考えれば、この時点ではやてからメールも電話も無し、お咎めがない時点で不自然に思うべきだったのかもしれない……。
『あ、ようやくきたな。こんばんわ、竜也君』
「え……ああ、こんばんわ、はやて」
電話に出たはやての口調は、いつもと変わらない優しいものだった。
って、別に優しくもないし普通ものだった。これで優しいと感じる俺ってかなりやばいな。普段どれだけはやての怖い姿を……。
思い出すだけで鳥肌もんだぜ。
さて、問題はここからである。
はやてとの約束をすっぽかしている時点で明日生きるか死ぬかも分からぬこの状況を何とかしなくてはならない。
「ええっと、な、はやて、実は」
『知っとるで』
「え?」
『話は義母さんから聞いとるから、別に怒ってへんよ』
なんと驚いた、はやてはなぜか俺のお母さんを義理の母と書いて、義母さんと呼びやがった。
おかしいんじゃないかな? はやてさん?
あなたに両親がいなくて寂しいのは重々承知ですが、俺の母を義母さんと呼ぶのは筋違いじゃないですか?
『それはなぁ、今回の件についてこう言ってったんよ』
「ん?」
『私がなぁ、「じゃあ、竜也君をすきにしていいですか」って聞いたら。
「ええ、いいわよ。煮るなり焼くなり。もしくは、焼いてから煮たっていいわよ」って言ってくれたんやで』
母さん……何勝手に悪魔と取引してるんですか?
息子を犠牲にして何が楽しいのですか?
俺はさっきまで、俺に気遣ってくれた母さんに感謝の念を持っていたのに、一瞬で吹き飛んだぞ!
何? 母さんは俺が死んでもいいのか?
しかも、煮るか焼くかの二択なのに両方を選べるとはこれ何事か!
俺は蒸されるほうがいいんだ! ってそれも違うか。出来れば焼くはやくでも、妬くの方がいいなぁ。
男の憧れだよね、女子に妬かれるのって。焼かれるのは憧れじゃないけどさ!
『だからね、私が「じゃあ、あんなことやこんなこともしていいですか?」って聞いたらなぁ』
はやての言う、あんなことやこんなことってどんなこと?
それは、あんなこと(血が抜かれる)やこんなこと(血の雨が降る)とかそういうことなの?
怖いよ! 俺ははやてが非常に怖い!
『そしたら、こう言ったんやで。分かるか?』
「全然、見当もつかないよ」
実は想像できることもあるのだが、予想したくない。
その全ての予測がバッドエンドだからだ。今の俺には死のビジョンしか思いつかない。
ホント、いやな思考回路になってしまったものだ。俺はポジティブが一番だと言うのに。
『「うふふ、はやてちゃんはおませさんね。ええ、いいわよ。楽しんでね」やって、きゃー』
「やって、きゃー」やないで! はやて!
あ、ついつい関西弁に。なに、楽しんでとか、おませさんとか、何?
俺の身に何が起きようとしてるの!?
近い未来が非常に怖い。と言うか暗い。明日がきて欲しくないです! さっきまで明日がきてほしいと言った自分が憎い!
『まぁそういうわけやわ。だから安心してな』
「どこに安心する要素が?」
『それは……むふふ。秘密やで。楽しみにしてるで』
そう言って、はやては電話を切った。
何か俺の知らないうちに、大変なことになっているが……考えたら、ドンドンおちていきそうなので止めておこう。
俺の精神の為にも止めておこう。
ちょうどはやてと電話を終えたときに、母さんが呼びに来た。つまるところ、俺にも話さなければならない話があるらしいとのこと。
今まではジュエルシードについては蚊帳の外だったと言うことは、それ以外のこと? ってことなのかな。
色々な思惑を浮かばせながら部屋に入る。
「さて、これで全員かしら?」
その部屋には、オールメンバーが揃っていた。いろんな意味でそうそうたるメンバーでもある。
人外魔境的な意味ですよ? もちろん。
だって、この世界にいるはずのない魔導師が半分以上。
一般人だと、よく勘違いされるが御神流の剣術を扱う士郎さんはもちろん人外だし。
桃子さんは……母さんから常々、黒い話を聞く。実際のところは分からないけどね。
「じゃあ、まずは……そうね、私が関わっていた研究についてかしらね」
母は話す。
実は母さんの過去話は2年前の魔法ばらし以来だったりするわけだが、その過去は壮絶というよりは、
不思議、謎のものだった。
母さんは言う、自分がかつて管理局に抜けた後に関わっていた研究とは、プロジェクトFと言われるもので、
簡単に言えば、クローンの作成技術のことだそうだ。
母さんはその研究で唯一、クローンの作成に成功した。ただのクローンじゃない。元になった人物をほぼ100%再現することが出来たそうだ。
俺を含め、なのはもこのことが一体どれほどすごいことなのかはよく分からなかったが、リンディさんやクロノといった、
管理局の面々が驚いたことから見れば、相当すごいことなのだろう、しかし、それと同時に、
「そ……そんなの技術が完成してただなんて……。でも、そんなの!」
「許されるはずのない技術、でしょうね。死者を蘇らすに近いことだわ。しかし、ここでほぼ再現できたとは言うけれど、決してそんなことはなかった」
そんな技術にも欠陥があった。しかし、上層部の人間はこれが完全だと言い張った。言い切ってしまった、と母は続けた。
結局その後、この研究があまりにも非人道的にして、問題ありだと思った母は研究の成果と結果を全て隠滅した。
そして、その結果……この世界にくることになった。
なんとも壮大で、規模の計り知れない話だな。
さすが俺の母さんと言うべきか、相変わらずというべきか、昔からこんなんだったんだな。
俺からすれば、その話は現実味がないためにあまり実感が得られなかった。
そして、それ以上に、この話が何の関係があるのか分からない。
なぜ、母さんは今頃になってこの話をしたのか……。
「その研究の仲間にテスタロッサ、つまりはフェイトの母さんと関係があったわ。
いえ、彼女自身とはもっと昔からの付き合いはあったわ。彼女の娘が生きていたころからね」
『え?』
この発言からすると、まるで娘がもういないかのように聞こえる。
今、母さんが自身で言った『フェイトの母』と言う言葉をまるで無視するかのような、矛盾してるかのいいよう。
誰もが違和感を感じて、え、と言う言葉を放った。
知らないうちにフェイトが俺の手を握っている。それも、かなり強く。
身体も若干震えているのが伝わってくる。たぶん、今顔を見れば……。
これから話される真実に怖がっているのか……、そりゃあそうだ。
今の母さんの発言は、今のフェイトを否定し完全に裏切るものだったのだから。
そして、衝撃の話をつげる。
「さっきの発言で分かると思うけど、フェイトちゃん。貴女はテスタロッサの本当の娘。
アリシア・テスタロッサのクローンよ。悲しいけどこれが現実。何れは知らなければならない辛い現実」
「あ……ぁ……ぁ」
「「フェイト!?」」
母さんの最後の言葉で、崩れ落ちるフェイト。
俺とアルフは急いで身体を支える。なのはもすぐに気付いて駆け寄ってくる。
フェイトがクローン。
その言葉にフェイトだけでなく全員が驚愕の色を隠せなかった。
嘘のような真実だった。
しかし、嘘をつくとは思えない。こんなことで無意味な嘘をつくとは思えない。
それに……だからといって、母さんがこの状況を見逃すとも見放すとも思えない。
こうは言ったものの、母さんは、俺の母は、確かに不思議で謎でいい加減で、ハチャメチャだけど。
時には非情で、事なかれ主義で、消極的で……だけど、だけど……。
子供……特に自分の関わる子供達。それは、なのは然り、アリサやすずかたちも含め、優しく接していた。自分の子供のように。
そして、今フェイトに向ける視線は……。
「フェイトちゃん、この真実から目を背けちゃだめ。絶対に、絶対に何とかして見せるから。
貴女のお母さんである、プレシア・テスタロッサは必ず止めるから。だから……諦めちゃ駄目よ」
「は……は、い」
「そう、いい子ね。分かったかしら、ハラオウン」
母さんは俺やなのはと同じように、フェイトも自分の娘を愛すように語りかけ、励ました。
だから、俺は母さんが……。
昔から知っていた。この母がどんな人であるかを、どんな過去があろうとも、今をどう生きているかも。
「ええ、でも場所は分かってるのかしら?」
「時の庭園……場所ももちろん、抜かりがあると思う?」
「いいえ、ただの確認よ」
このリンディさんも中々の人だと見える。
今までの発言から状況を把握して、たぶん母さんの人柄までも予測してる。そして、何をしようとしてるかも。
俺には分からない。
でも、たぶん……母さんのことだ、そのプレシアっていうフェイトのお母さんに……、
「ふふふ、覚えてなさいよ、テスタロッサ。貴女の雷と私の刃どちらが上かしらね」
ああ、名しからないプレシアさん。哀れだな。俺は貴女のことを忘れない! 名前しか知らないけど!
母さんのあの振りかざすではなく、振り落ちる刀の嵐を食らうことになるなんて。
無事じゃすまないね。
「た、竜也」
フェイトが消えそうな声で俺の名前を呼んだ。手は未だに強く握ったままである。
手を離すと儚くてすぐに消えちゃいそうだから、離すことは出来ない。
フェイトがクローン。
この事実はフェイト本人だけでなく俺自身にも大きくのしかかった。
でも、クローンだからってなんだって言うんだ。
変わらないじゃないか、別に。普通に生きる人と。
この握っている手の温もりだって、なのはと変わらず暖かくて……生きている。
「竜也、フェイトちゃんを……ね。言わなくても分かるでしょ?」
「もちろん、俺は誰だと思ってるの? 俺は」
母さんの息子だよ?
いつもなら母さんのお決まりのセリフを俺が言う。
その言葉に他意はない。それが真実であり、誇りであり、嬉しくもあるのだから。
そして、母さんも言う。
そうね、さすが母さんと父さんの子だわ、と。
自信満々に、これ以上ないほどの親馬鹿振りとも言うべき言葉を。
「竜也……」
「どうした、フェイト」
今にも泣きそうな顔で、下手したら聞こえないかもしれないほど小さな声で俺の名前を呼ぶ。
だから俺は、そんなフェイトの手を改めて強く握り締め、そして……。
「あ……ぅ」
「大丈夫、大丈夫、俺の母さんが何とかするって言ってるんだ。問題なんてない。
あの母にしては珍しく本気だから何とかなる。それに俺もいるしな」
「う……うん」
「一言余計よ、お母さんはいつだって真面目よ! いろんな意味で」
フェイトを抱きしめて、その温もりを確かめて、改めて、当然のことを、当たり前のように、確認する。確認させる。
フェイトはここにいて、ここにだって居場所はあると。
もちろん、それは俺だけじゃなくて……俺だけが居場所じゃなくて……、
「フェイトちゃん、なのはもいるからね、だから」
「あたしだっている、フェイトは私のご主人様なんだよ、だから」
だから泣かないで、と。
フェイトはその言葉の一つ一つ「うん、うん」と泣きながらうなずき、しばらくうずくまる、俺の胸元で。
しかし、次に顔を上げたときには、
「私も行きます。母さんに、確かめたいことがあるから」
もう泣いていなかった。
その姿は覚悟を決め、決意を固め、自分に生きる意味を見出し、明日を将来を未来をみようとする、
希望の光を見つけた、可能性を見つけた、そんな様子だった。
はぁ、これで何とかなりそうだな。
一時期はどうなるかと、フェイトはこのまま駄目になるんじゃないかと思ったが……うん。
ようやく、ようやく、この事件自体にも終わりが見え始めた気がする。
全てを平和に、目指すは世界平和だね。
フェイトが傷つきはしたが、むしろ、この場合は仕方なかったと思う。
なら、この先にもう辛いものは、暗いものは必要ないね。
目指すのはいつだって、俺にとっての最高の、
「じゃあ、みんな行くわよ、時の庭園へ。テスタロッサ決着をつけるわよ!」
ハッピーエンドに向かって。
母さん、それは明らかに私怨だよね!?
あとがき
シリアスっぽくなるのは今回で最後だと思われます。少なくとも無印では。
作者のタピです。
前半過去ばらし。中盤ギャグ。後半シリアスと忙しい回です。
そのせいで、今までで一番長いです。
なんかクライマックスぽくなってきました。
予定ではあと2~3話で無印完結の予定です。本当に50話ですねw
まぁ合計ではこの回で50話超えるんですけどね。
最後に
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
あと、もうしばしお付き合い頂けると嬉しいです。
明日はうpできないかもしれません。
P.S
出来ることなら、今回の事件をなのは視線とフェイト視線でまとめてみたいですね。
時間があればですが;;