フェイトと分かれた後は、まっすぐ部屋に帰ってきたときには、すでにアリサもすずかもなのはも、戻ってきており、
夕食の準備にはいるとこだった。
「今までなにやってたのよ!」
「散歩だな」
「まさか、他の女の子と散歩、なんてことはないよね?」
「いや……ない、ない!」
不覚にもなのはが怖いと感じてしまった。
嘘は言ってないよ?
俺は散歩するついでにフェイトを見つけただけであって、そしたらフェイトが後ろからついて来ただけだ。
決してアリサたちを放っておいて、フェイトといちゃいちゃしてたわけじゃない。
「こんな遅くまでどこほっつき歩いていたのよ! みんなで卓球とかしたのに、あんただけいないし」
「どうどう、アリサ。俺のことを心配してくれたのか?」
「ち、違うわよ! みんなで楽しもうとしてるのに、迷惑かけたあんたが気に入らないだけ!」
俺が迷惑かけたか?
否! 絶対に迷惑かけていない。
それに、なのはに散歩に行ってくるとメールを送ったはずだが……。
「あ、本当だ」
「なーのーはー!」
「にゃー! ごめんね、アリサちゃん」
「ははは、もっとやれー」
「竜也君、止めてあげなよ」
止める? ご冗談をすずか。
俺がアリサに無実の罪をかぶせられたのに、その原因がなのはだったんだ、怒られて当然だ。
決してさっき危ういとこを突かれたから復讐してるわけでもないよ?
それに、最近なのはは元気がなかったから、こうやって触れ合ってた方が楽しいだろ?
あ、楽しいのは俺か。
なのはは猫状態で遊ぶのも楽しいが、やはり、素は素でいいものがあるな。
アリサに苛められて、若干涙目のなのはなんて最高だ!
……あれ? なんか危ない扉を開いた気がする。
まぁ気のせいだろうな。
本当に楽しい時間……母さんもはやても来れば良かったのになぁ。
あ、そうだ、はやてにメール送ってやろ。
どんな文面にしようかな……。
『こっちは楽しいです。とてつもなく楽しいです、はやてがいないのが非常に残念です。ああ、本当に残念すぎる』
まぁこんなもんかな、ついでに涙目のなのはを……
「なのは」
「何、竜也君?」
アリサに怒られて、さっきより涙目のなのはを呼び、パシャリ。
うん、いい泣き顔──じゃなかった、笑顔が撮れた。
よし、これをメールに添付して送信っと。
「あ! た、竜也君その写真をすぐに消して! 泣き顔なんて恥ずかしいの!」
「泣き顔? そんなに嬉しそうにしてるじゃないか」
「竜也君にはこれが嬉しそうに見えるの!?」
「だってなのははえ──」
「た、竜也君!」
すずかが俺の言おうとしたことにすぐに気付き、大声で邪魔をした。
そして、小声で、
「それは、さすがに言っちゃ駄目じゃないかな?」
「自覚ないのは問題じゃないか?」
「そうかもだけど……なのはちゃんにはまだ早いと思うよ?」
確かにそう言われてみればそうかもしれない。
自覚ないのはその言葉の意味を知らないからくることかもしれないしね。
それに、なのはには……やっぱ純粋が一番だよね!
今一瞬、Mだと認めたなのはを思い浮かべ、あ、これやばいかもと思った自分を自粛したわけじゃないデスヨ?
危うくなのはに洗脳されるとこだった。
「『え』で何?」
しかし、なのはには『え』と言う言葉は通じてしまったようだ。
これはまずい、しっかり誤魔化さないと。
必死に自分の頭の中の国語辞典を検索する。
え……え……え……、
「エキサイティング、そう、なのははエキサイティングだな!」
「えきさいてぃんぐ?」
なのはは言葉の意味が判らないらしく、頭の上に疑問符を浮かべる。
どうやら、上手く誤魔化せたようだ。我ながらうまいこと言ったと思う。
エキサイティング──白熱的、情熱的。
つまりは、もしこの言葉の意味を知っててもなのはに当てはまる節はあるのだ。
さすがは俺の脳内辞書といったところだね。
それに、なのはは魔法を使ってもとってもエキサイティングだしね!
それはもう、怖いほどに……。
南米サッカーのフーリガンも真っ青なエキサイティング度だ!
まぁ下手したらエキサイティングしてる、なのはは真っ赤だけどね!
血糊的な意味で……いやぁ本当に非殺傷設定って便利だよね!どんなにやっても人死なないもん! ……たぶん。
顔に返り血を浴びているなのは。
そして、きっとこう言うんだろうな。
「竜也君、今日も一緒に遊ぼうね」と。
……こわっ!
自分で想像しておいてめっちゃ怖く感じたわ! なんか鳥肌立ってきたよ。
「竜也、どうしたの? 体が震えてるわよ」
「え? ああ、武者震いだ」
「「「何に!?」」」
お決まりのセリフを言う。
だって、返り血を浴びたエキサイティングななのはを想像して、ガクブルしてたなんて言えるわけないじゃないか!
なのは云々より、俺が異常者扱いだよ!
と、そんなくだらない妄想をしていたら、携帯が震えている。
そうか、お前も怖かったのか……。
ちょっと携帯に同情した瞬間だった。
って、そんなわけも無く、はやてからの返信だった。
なんて書いてるかと言うと、
『楽しそうで何よりや。それで、竜也君は女の子を泣かして何が楽しいんかいな?
それともこれは、私を泣かせたいちゅうことなんか? 俺はこんなに楽しんだぞと私に見せて、泣かせたいんか?』
あれ? おかしいな。
俺は、こっちは楽しいのに、来れなかったはやての為にもこの楽しさを伝わらせようと送ったのに、
なんか怒ってるような感じがするな。
気のせいだよね?
結局この後もはやての誤解は解けず、帰ったらじっくり話すと言うことで落ち着いた。
じっくり話すって俺は特に何も無いんだけど……。
まぁどちらにしろ、今回の土産話やお土産も持っていくつもりなので、都合がいいと言えば都合がいいかもしれない。
そして、なのはたちはというと。
美味しい晩御飯をいただいた後、今日は移動で疲れたのか結構早い時間に就寝したようだ。
肝心の俺はというと、実はそうとう眠い。
眠いのだが……。
眠れない状況でる。
どうしてかというと、この状況が問題なのだ。
この部屋は四人分の布団を並べてもかなりゆとりはある。
なのにもかかわらず、どうしてこう、密集して布団を敷く必要があるのだろうか?
左から、すずか、なのは、俺、アリサ、と言う感じである。
この状況を良い言葉、つまりは都合の言いように解釈するなら、両手に花。ハーレムといえるだろう。
だがしかし、これは一緒に寝るとなると状況は一変する。
それは、四面楚歌とも言えるし、絶体絶命もしくは、軽犯罪ともいえるかも知れない。
何が言いたいかというと、前にもこのような経験をしても、一回や二回で完全に慣れるなんてことは不可能だと言うことだ。
しかし、しかし、だ!
俺はここに来てようやくものすごい画期的なアイディアを思いついた。
それは──猫ディフェンス!
まさに、俺らしいというところだろうか。
まさか、こんなところで猫姉妹が役に立つとは思わなかった。
ようするに人と人との間に猫を挟むことにより他国との境界線、領土をハッキリさせようというのだ。
よし、さっそく実践しよう。
すでに布団の中で丸くなってる姉妹を持ち上げて……。
ん? 人と人との間に猫……人間──人猫間?
ああ、なのはのことか。
人猫間と書いてなのはと読む、もしくはアリサ? たまにすずか?
うわぁ、便利な言葉が出来たよ。
じゃあ、人犬間でフェイトかな?
くだらないこと(自分で言ってしまうあたり自覚している)を考えていると、魔力の反応を感じた、詳しくは分からないがたぶんジュエルシードだと思われる大きな魔力だ。
それと同時期にフェイトの魔力も感じた。
噂をすればなんとやらだね。
それにしても、さっそくジュエルシードでも見つけたのかな。
仕事? 熱心なことだと感心していたら、なのはがその反応に気付き、部屋を飛び出して行った。
このままじゃ、また二人が激突しちゃうな。
俺にできることはないとは思うが、まぁ一応見にはいってみるか。
そう思い、俺もなのはの後を追って、すぐに部屋を出た。
そうすると、俺と一緒の布団に潜り込んでいた猫姉妹まで一緒についてきた。
「心配してくれてるのかな?」
「「にゃあ」」
「そうか、ありがとう」
俺は心配してくれる猫姉妹を引き連れて、急ぎなのはとフェイトの下へ向かった。
急いで向かいようやく追いつくと、どうやら殺伐とした雰囲気だった。
こりゃあ、場違いってもんかもしれないなぁ。
でも、二人には喧嘩して欲しくないし……う~ん、どうしよう。
そんなことを暢気に考えていると、アルフがなのはに飛び掛った。
「あ、まずい!」
俺はとっさに、なのはの前に出て、なのはの盾に──
「え?」
「竜也!?」
あ、なんか蹴飛ばしちゃった。
「ゆ、ユーノ君!? それに、竜也君!?」
まぁいいや。
俺はなのはの前に飛び出したんだが、アルフは俺に気付いて攻撃を止めようとするも、勢いで止まらない。
でも、大丈夫、俺にも魔法が……。あ、リミッター解除してないから防御できないや。
まいったなぁ~ははは、やば!
リミッターをつけていて、魔法を使えないのを今更思い出す。
このリミッターは母がつけたもので、母さんにしか解除できない。
なので、このままではアルフの攻撃が直撃──
「にゃー!」
『え?』
これが本当の猫ディフェンス……。
当る直前、猫姉妹、アリアの方が俺の目の前でシールドを張って守ってくれた。
あまりのことに、自分が助かったことより、猫が魔法を使ったことに驚いてしまった。
驚いたのは俺だけでなく、なのは、フェイトまでもが驚いていた。
でも、一番驚いていたのが、
「嘘……あたしの一撃を軽々と防御するなんて」
全く揺ぎ無いシールド。
まさに鉄壁の守りと言うべきか、防御が得意な俺にはよく分かる。
これほどまでに洗練されて、綺麗な防御魔法は明らかにただの猫のものではないと。
というか、え? この猫たち魔法使えるの?
すげぇ、最近の猫ってすげぇ。
なのはも猫って言えば猫だから、もうあれだな……やっぱり動物ってすげえ。
動物の未知なる可能性に触れた瞬間だった。
「竜也、それあんたの使い魔かい?」
「いや、違うよ。懐かれたから連れてるだけ」
「本当かい?」
「極めて本当だ!」
はやての家で出会って以来の付き合いだからな。
そんなには長く一緒ではないが、それなりの関係は築いてきたつもりだった。
まさにそれが真価を発揮した瞬間でもある。
そして、アリアが防御しているうちにもう片方の猫が……
「あ、そ……それは危ないから、駄目だよ」
ロッテはフェイトがまだデバイスの中に封印処理をしてないのに気付き、ジュエルシードを奪取してきた。
そして、それを口にくわえて、俺の下に返ってくる。
「え? 俺に?」
「にゃー」
「そうか、ありがとうな」
俺はロッテにお礼を言って、ついでになでなでして褒める。とても嬉しそうだ。
アリアにも、護ってくれてありがとうとロッテと同じように褒める。そうするとロッテと同じように嬉しそうにした。
双子だけあって反応がよく似てる。
その後、アリアは左肩にロッテは右肩に上って待機した。
ちょっと重いけど、気にしない。
片方は命の恩人だし、片方はジュエルシードをとって来てくれたしね。
それにしても、フェイトも自分にとって大切なものを猫に取られたのに、猫を心配するあたり優しいよな。
まぁ普通ならそもそも奪われないと思うけど。
「竜也、ジュエルシード、返して」
「フェイトにはそれが必要なんだよ!」
フェイトと、アルフが俺にジュエルシードを返すように言う。
二人ともかなりな剣幕で迫ってきてる。
うーん、結構怖いな。そこまでして集めなくちゃいけないものなのかな?
返してあげたいのはやまやまなんだけどね。
そうすると逆になのはは、
「ええっと、竜也君それ渡してくれないかな? すっごく危ないんだよ?」
なのははジュエルシードが欲しいと言うよりは、俺の身を心配しての対応と言う感じだった。
その心配はとても嬉しいんだけどね。
だからって渡すわけにも行かないね、そうするとフェイトが、ね?
あっちを立てればこっちが立たずとはまさにこのこと。
つまり俺は板ばさみ状態。
逆に言えば、このジュエルシードに行方は俺が握っていると言うことになる。
さてどうするべき……。
喧嘩──戦闘はして欲しくない。
二人とも俺の大切な親友でありペットとペット候補だ。傷ついて欲しくもないしね。
二人の様子を見る。
フェイトたちは剣幕こそあるもの、力で奪うつもりはないようだ。
そこらへんは、今までの使いである程度信頼……信用されてると言うことなのかな?
もし、そうなら嬉しい限りである。
まぁ猫姉妹を警戒してるだけかもしれないけど。
そして、なのは。
こちらは心配そうな目をしている、今にも泣きそうな顔だ。
というか、もう我慢の限界なんじゃないかな?
それほどまで、追い詰められてると言うことかもしれないけど……。
さて、確認したわけだが。
平和的解決は何かないか、怪我をせずに文句の言いようのない解決方法。
…………あ!
あるじゃん、こういう時こそあれしかないよな!
平和的解決で、不満文句のいいようのない完全天運任せの方法が!
もう一度二人の目をしっかりみる。
そして、大きく息を吸い、宣言する!
「相沢竜也主催! 大じゃんけん大会!」
『え?』
開いた口がふさがらない、閉口。眼から目玉が飛び出す。
誰もがそういった顔をした。
よし、まさに世界平和まっしぐらだぜ!
あとがき
ふふふ、帰ってきました!この感覚!
作者のタピです。
番外編を書くつもりが、調子が出てきたのでm本編を……。
ということで第43話です。ある意味、竜也のターン!
そしてある意味、竜也無双です。この発想が中々難しかったです。