約一週間。
そう、一週間と言うと7日間のことだ。それも約というだけで、実質一週間経ったかどうかも微妙なわけだが。
はて? たったそれだけ会っていないだけなのに、怒られる要素はあるのか?
否! 絶対にない。
俺にだって都合はある。
そりゃあ、この一週間は大変だったんだ。
実質大変だったのは、ある一日だが、まぁ騒ぎを含め、大変だったのは一週間ということで。
あの騒ぎのせいでうやむやになってしまったなのはの件だが、あのあとの俺の必死の努力。
どこかの少佐並の演説によって、誤解は解けたけどね。いやぁ、みんなにもみせたかったよ、あの演説。
「だからな、はやて」
「なんや?」
「少し言い分けさせてくれよ」
「男のいいわけは見苦しいで?」
そう言われてもね。
会えなかったのには理由があるわけだし。
別にはやてを忘れてたわけじゃないんだよ。
ほら? あれだ。あまりにも忙しすぎて、はやてのことを考えてる暇がなかったんだ。それだけなんだ。
「そうなんかぁ、私のことを考える暇のうて、他の女の子のことを考える暇あるんやな」
ち、違うんだって! いや、ある意味あってるけどさ!
確かに、なのはとフェイトのことで大変だったし、この間の学校での出来事を収拾するのも大変だったけどさ。
「へぇ、学校での出来事か。何があったん?」
「ええっと、なんか正室とかそく──」
あれ? この出来事しゃべったらまずくない?
なんかこの流れてきに俺もついつい言っちゃったけど。危険が危ないと言うか……。
地雷を踏んだような気がするぞ?
で、でも平気だよね。あれは冗談の話だし、さすがにはやてだって、真面目に聞いたりしないよね?
「正室に側室かぁ? ふぅん、で正室は誰やね?」
「5兄弟いわく、なのはらしいが」
「なのはちゃんいうんかぁ、家はどこや?」
「ええっと……え? 何しにいくの?」
「お・は・な・し、やね」
いま、一瞬ハイライトがなくなったような気がするよ? 気のせいだよね?
遠くを見る感じと言うのかな。そして、口々に「ふふふ」と言うのが余計に怖く感じるよ。
それに、そうかお話か。それを聞いて安心……できないんですけど!?
いやね、なのはもお友達とお話しするのが好きらしいけど、はやてのお話ってどうも血生臭くなるような気がするな。
気のせいだよね。
「今夜は雨が降るなぁ、赤い」
小さく呟いたみたいだけど、声はやけによく聞こえたよ。
どうしてかな、不思議と身体も震えてきたな、「なのは逃げてー」って無性に叫びたくなるよ。おかしいな。
それに、赤い雨か……赤色の絵の具ならいいなぁ。
他に赤いものって……ああ、ペンキとか? 絵の具とほぼ変わんないか。
「まぁ今回は竜也君に免じて勘弁したるわ」
何をですか? もし、今日ここに来なかったらどうなってたんですか?
もしかして、なのはに明日は来ないとか……そんなわけないですよね。
俺って何を考えてるんだよな。全く、さっきから変なことばっかし考えてるよ。
おかしいよね、はやてと会った時ばっかし、こんな暗いと言うか危険なことが思い浮かぶなんて。
はやてはいい子だから、そんなはずないのにね。
「ふっ、ふふふ、今日は竜也君と二人きり~。今週はもう二回目やし、運がええなぁ」
うん、はやてはいい子……だよね? 俺に会えてそんなに喜んでくれるなんて、ウレシイナー。
はやてはかなりうかれてるよね。というか二回目って、それがで運がいいって言うのもよく分からないな。
そんなに会いたいなら、もうちょっと遊んであげるべきなのかな?
まぁどちらにしろ、最近はそんなに暇じゃないんだけどね。
「暇がないと私とは遊んでくれへんの?」
「え?」
はやてが涙目で、そして上目遣いで俺を覗き込んでくる。
そ、そんな目で見ないでくれよ。
俺だって出来るだけ遊びたいんだけど、それこそ剣術の鍛錬とか、魔法の練習とか忙しいんだから。
それこそ、都合が会う日はこうやって会いに……きてないですね。すいません。
でも、来ないからって、怖くなる理由はよく分からないんですけど?
「それはなぁ、美少女が寂しい言うてるのに、来ない王子様がいけないんやで」
「美少女って? 王子様って誰?」
「美少女は、私に決まってるやろ。王子様は竜也君や」
そうか、俺は王子様なんだ……。
巷では皇帝とか英雄とか言われたけど、ついには王子様か……今って民主主義の時代だよね?
もし、これが絶対王政のころなら、どれだけよかったことか……。
それこそ、動物王国が出来上がるよ。
あれ? そんな感じの映画なかったっけ? どこかの海賊物語あたりで。
「でもまぁ、これからは好きなときに、好きな時間に連絡取れるから、ええかな」
「なして?」
俺がそう不思議そうに、はやてに聞くと、はやてはジャジャーン、と言いながら、ポケットから出したのは。
「携帯電話?」
「そやで、これで伝書鳩の時代は終わりや!」
伝書鳩の時代終わっちゃうんだ……残念だな。
俺はあれ結構好きなんだよね、はとがかわいいのも理由の一つだけど、コストが……って前にも言ったか。
鳩はああ見えて、人懐っこいと思う。だって、俺が公園で寝てると、肩に止まるもん。
人嫌いな動物ならそんなことありえないよね。
だから、カラスは近寄ってこないし……ああ、前は鳶が肩に止まったなぁ。あの時はさすがに痛かったけど。
「じゃあ、さっそく私のメアドと電話番号を登録してな。今からメールと電話するから」
「ああ、それは別にいいけどさ」
「なんや?」
「なんで、俺のメアドと番号知ってるの? 俺は教えて記憶ないんだけど?」
「……タウンワークや」
へぇ、タウンワークって個人の携帯のメアドと電話番号まで書いてあるんだ~、すごいね!
俺は初耳だよ。俺も買おうかなぁタウンワーク……って、公衆電話のところにおいてあるか。
…………
現実逃避やめよう。さすがの俺でもぶるっと来たよ。
だって、タウンワークにメアドと電話番号載ってたらすごい数の個人情報漏洩してるし、
なによりメアドなんてしょっちゅう変わるから、更新が間に合わないでしょ、現実的に考えて。
とまぁ、御託はこんなもんにして……
何で知ってるんだよ! はやては俺のメアドと電話番号をさ!
おかしいじゃないか。本人から聞く以外に知る方法ないんだよ? 後は本人の友達とかさ。
「え? あるで」
「ほう、何か教えてもらおうか!」
「……それは企業秘密や」
こわっ!純粋に怖いよ!
やり方も手口も分からない方法でどうやって防げって言うんだよ!
人間にとって、何が起こるかわからないことが最も恐ろしく感じるというよね。
夜の廃墟とかさ。ああいう場所って幽霊とか出ないと思ってる人でも、何が起こるか分からないと言う人間心理から、
怖がっちゃうんだよね。
それと同じで、はやてにはある意味、未知で、無限の可能性を秘めてるから危ないし怖いよ。
「まぁ正直に言えば、前に竜也君が来たときに、ちょっと見せてもらったんやけどね」
「なんだ、案外ありがちな……って、浮気を調査する主婦か! はやては!」
「そうなんよ、肝心のメールとかはブロックかかってて見えへんかったわ、残念」
あ、危なかった。
お風呂はいる前にブロックかける癖が身についててよかったよ。
母さんがよく勝手にメール見ては、俺をにやけ顔で見てくるから、それで身についたんだが、怪我の功名って奴かな?
意味違うと思うけど……ある意味母さんのおかげだが、絶対に感謝はしないけどね!
「でも、ブロックかけるんいうことは、やましい事があるってことやね?」
「……そんなことないよ?」
「じゃあ、見せてくれてもええやん」
「それは……駄目だ」
なのはの命だけでなく、アリサやすずかまで命を失う危険性があるからね。
下手したら、5兄弟でさえ……いや、さすがにあいつらは男だからないか。
まぁあいつらに限っては命がなくなっても……いや、はやてを犯罪者にしちゃいけないから、殺すわけにはいかないな。
何より俺は、平和主義者だからね! 平和最高!
でも、そんなやつが魔法使って、剣術習ってるんだよね……。
「ほう……それじゃあ、力ずくでも!」
「そ、そうはいくか! 行け!猫その一!」
「にゃあ!!」
「な、なんや!?」
はやてが、車椅子とは思えないスピードで対面に座ってる俺に迫ってきたので、
俺は慌てて、窓を開け、外にいた猫に命令を出す。
実はあの猫が、さっきから気になってしょうがなかったんだが、絡む機会がなかったので、断念していたのだが、
ようやくそのチャンスが回ってきて、少し嬉しかったりする。
いきなり命令を出して言うことを聞いてくれるかは疑問だったが、聞いてくれて何よりだ。
「ね、猫は卑怯やで!」
「力ずくできた、はやてが悪い!」
「う……わかった。とりあえずお互いに落ち着こうや」
勝ち目は無いと思ったのか、はやては元いた場所に渋々ながら戻る。
俺も二匹の猫を抱きながら、部屋の中に入れて、ひざの上でなでなでしながら座る。
猫って結構ふさふさしてて気持ちいいんだよね。
抱き心地も、ちょうどいい重さだし、なにより撫でられて「ふにゃぁ」なんていってる姿がかわいい。
ここら辺は、なのはとかアリサだと代用できないんだよね。
手の温もりとかはあるけど、あの毛のふさふさ感は本物じゃないとやっぱり無理。
むしろ、人間がふさふさしてたらちょっといやだな。
あ、でも、頭でもいいのか。……今度やってみる価値はあるかな?
「竜也君は、ほんまに猫が好きやなぁ」
「動物なら何でも好きだよ?」
「狸でもかぁ?」
「何で狸がでてくるんだ?」
「ち、ちょっとなぁ」
う~ん、疑問である。
そういえば、今更だが、はやてと図書館で会った時も、狸にやけに反応してたな。
何かトラウマでもあるのだろうか……。
言われてみれば、はやては狸っぽくはあるんだけど……。
まぁ狐か狸かで言われれば狸って即答するけどね!
「電波的なもの、かなぁ」
「そうか、電波、かぁ」
電波ってなんだろうね?
この言葉って魔法という言葉と同じくらいに便利な気がするな。
なんか、これを使えば、「ああそうか、じゃあしょうがない」という気分にさせるよね。
うん、電波万歳! 魔法万歳だね!
でも、実際の魔法はとてつもなく努力が必要だけどね……ああ、思い出すだけで寒気が……。
そうか、よく考えれば今日、家に帰ってからも魔法の練習があるのか……
「どうしたんや? 顔が真っ青やで?」
「「にゃあ?」」
はやても、猫たちも俺の様子に気がついて、心配をしてくれた。
みんなええ子やなぁ。その言葉は心に染みるよ。それだけで、今日も頑張れる気がするよ。
最近は母さんの魔法攻撃だけでなく、なのはの魔法砲撃まで食らわされてるからね……。
なのはの方は、日を経つごとに威力が増してるような気がするし……感覚的なものなら俺より天才じゃないか?
俺なんか、なんだかんだで覚えるの早いとか言われながらも、身体に叩き込まれてからという感じだし。
母曰く「覚えるには、まず身体に刻んだほうが早いからね」とのこと。
刻むって言ってるし、無傷で覚えたいですよ。
いつの時代だって、楽して生きたいのにさ。それに、その練習方法って根性論に近いよね。
「はぁ……」
「ほ、ほんまにどうしたんや? 相談ならいつでものるで」
「「にゃにゃ」」
その心遣いが本当に心に……よし、決めた!
今日はこの猫を思いっきり可愛がろう。
あ、そういえばこの猫に名前がなかったなぁ。
さすがに、その一とかその二じゃかわいそうだしなぁ。どうしよう。
はやてにも相談して、名前を決めるべきなのかな?
<私はリーゼ・ロッテだよ>
<私はリーゼ・アリアよ、よろしくね>
そうか、ロッテにアリアか。
同じ苗字ってことは姉妹なのかな?
<双子だよ>
そうか、双子なのか。
猫の双子とは珍しい……と言うか俺は初めてだな。
どおりで、二人──二匹揃ってかわいいわけだよ、全く。
<えへへ>
<ありがとう>
「さっきから、何をブツブツ言ってるんや? これはほんまに重症かも知れへんな」
失礼な、猫としゃべってただけじゃないか。
何がおかしいんだよ。むしろ、おかしいのははやての方じゃないのか?
まぁいいか。
この猫姉妹を見てると、怒る気になれないんだよなぁ。すごい和むよ……心がとても落ち着くし。
できれば、明日の温泉にもつれていきた──あ!
「はやて」
「なんや?」
「明日家族もろもろで、温泉行くけど一緒に行くか?」
「え?」
俺がそういうと、少し困ったような顔をした。
でも、すぐに考えがまとまったのか、残念そうに俺に向かっていった。
「ごめんなぁ。行きたいのやまやまなんやけど、私がいると迷惑かかるやろうし」
「迷惑なんてかからないけど? むしろ、いてくれたほうが楽しいし」
「ありがとう。でも、ごめんなぁ。その代わりにお土産をお願いな。あと、楽しいお話もやで」
心底残念そうに、そして、悔しそうにしながらも最後は必死に笑いながら言う。
はやてにとっては、あの足がそこまでも枷になってるのかな?
それとも、他の理由があるのか……。
どちらにしろ、はやてがこういうのだ、無理やり連れて行くというのもありだとは思うけど、本人の意思を尊重すべきかな。
となれば、しょうがない。
温泉から帰ったら、そっこう遊んでやるか。温泉旅行中にメールとかしてもいいしな。
俺はこの後、日が沈むまで、猫とじゃれながら、はやてと楽しい話をした。
はやては、あの怖い雰囲気がなければ本当に優しくていいと思うんだけどな。そこがちょっと残念だな。
でも、あの暗さってまさか俺に原因があったりして……まさか、ね?
あとがき
そろそろフェイトの味が恋しくなる今日この頃。
作者のタピです。
第39話です。はやて回です。
感想で、はやて~~が多いですよねw みなさんの懸念はよく分かりますw
そして、期待通り書けたかな? そんなことを思いながらうpです
今回はなんか色々突っ込みどころ多いですね。気のせいだと思いますが。
個人的にはやては大好きです!中の人的な意味を含め!
最後に
次はいよいよ40話。
フェイトのフォローをしなくちゃいけないですね。
そして、最近よくある質問に答えます。
Q:なのはの猫BJはまだ?
A:一言、まだです。ネタバレになるので詳しいことは書けませんが、書くとしても、無印以降になると思われます。
その日が来るまで、首を長くして待ってもらえると光栄です。