なのはの問題が無事に解決した。
これで万事、上手くいくと思いきや、そうはいかないのは、まさに人生なのだろう。
うん、このセリフはどっかの小説の引用っぽいけどね。
それはともかくとして、問題なのは、アリサとすずかへのお話である。
あの二人はなのはが困っていたこと、苦悩していたことを感じていはいるものの、真意は知らない。また、話すわけにもいかないわけだ。
その理由が、魔法だった、しかもある程度の危険があると知れば、仲のいい親友としては黙っているわけがない。
それほどまでに、あの二人はなのはのことを思っているのだ。
なのはは本当に友人に恵まれてるよな、と心の底から思う。羨ましい限りだ。
そんなことを俺が言えば、アリサあたりは、「あんたも、その中に入ってるのよ!」なんて照れながら言うに決まっている。
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに……うわぁ、アリサかわええ。
言ってみようかな。その顔見たさに。
って閑話休題。話が逸れた。アリサがかわいいかどうかの話ではなく、なのはの事情説明をどうするかだ。
本来なら、なのは自身が、「解決したよ」と笑顔で、何事もなかったように言えればいいのだが、事態はそう簡単にはいかない。
もし、そんなのことをなのはが言って、「そう、それはよかったね」で終われば、いいのだが、問い詰められれば、
なのはのことだ、しゃべるに決まっている。
このことについては、士郎さんを筆頭とする高町家一同と母さんも同じ意見だった。
まぁそんなことを満場一致で言われたなのはだが、
「そん、そんなことないよ! なのはだってちゃんとできるもん!」
「アリサに迫られても?」
「へ、平気だもん」
「すずかがすごい笑顔で聞いてきても?」
「そ、それは……ごめんなさい、ごめんなさい、もう嘘をつきません、ごめんなさい。
そんな目で見ないでください、本当に申し訳ありませんでした」
と、沈んでしまい、なのは自身も同じ意見となったのだが……
はて? どうしてすずかに対してそんな低い姿勢──トラウマ的な感じに繰り替えして、すずかに謝るのだろうか。
何か過去にあったのだろうか……
最後の「なのはは猫でいいです、はい、私は猫です」と言ったのがやけに印象的に残った。
そんなこともあり、なのは本人がしゃべることが出来ないので、アリサへの状況説明は消去法で俺になるわけだが……
「っで、どうなのよ!」
「どうと言うと?」
「今日のなのはの様子よ! この間までずいぶんしょぼくれてたと思ったら、急にあれでしょ!?」
「浮かれてる感じだよね?」
すみません、俺も下手したら、魔法のことを話しかねない雰囲気です。
アリサはいつも通り、否! いつも以上の気迫を交えながら俺に今にも襲い掛かりそうな雰囲気を出しながら、脅迫。
すずかは、一見すごく、それはとてつもなく落ち着いているように見えるが、それが逆に怖いです。
なのはが、ひたすらすずかに頭を下げた気持ちも分かった気分だよ。
今の状況に至った経緯としては、
この二人は最初、なのはの様子が戻ったのにすぐ気がつき、安堵をしたと同時に、その理由を早速尋ねにいったのだ。
その時になのはが、
「詳しい話は、竜也君がしてくれるよ」
の一言で、矛先が図らずも俺に来たというわけだ。
まぁ結果的には予想通りというか、願ってもいない展開なわけで、俺が上手く誤魔化せれば、問題解決になるわけだが……
アリサも、すずかも頭はいいからなぁ。
学力的な面でというわけでなく、生きていく面でという意味での頭がいいだ。
アリサにいたっては学力も相当なものだが、まぁそこは俺とどっこいしょだからね。
こういう場面での、頭の良さというのは明らかに分が悪い。自分自身、悪いとは思わないが、この二人は別格だと思う。
そんな二人を相手に誤魔化すと言うのは至難の業というもの。
「そうよね、浮かれてる感じ……はっ! まさか!!」
「ん? どうしたんだ、アリサ?」
アリサの頭に電球が出てピコーンと出てるみたいだ。ようするに何か閃いたと言う感じだろう。
何を閃いたかは知らないが、ちょっと悪寒と言うか、いやな感じがする。
魔法がばれたと言うわけでもないだろうけど……なんだろうな、このいやな感じは。
「まさか、あんた……いや、そんなことは無いと思うけど。でも、前から……」
「ど、どうしたのアリサちゃん!?」
「そうよね、うん。そうに決まってるわ。それだったらなのはがうかれた理由も分かるし。
あんたがその理由を知ってるのにも納得がいくわ」
独り言を呟くアリサというのも、中々に面白いな。珍妙もともいえるかもしれないけど。
しかも、何を考えてる分からないが、だんだん顔が真っ赤になっていくし。
ん? そもそも、なんで考え事をして顔が真っ赤になるんだよ? 意味がわからないよ。
そんなことを思っていると、アリサの顔がさらに赤くなったが、次の瞬間深呼吸をして、一言言った。
「あんた、なのはと付き合ってるんでしょ!!」
「「え?」」
「にゃ!?」
そのアリサの一言は、このクラス中、学校中に響き渡った。
俺となのはが付き合っている?
いやいや、ありえないだろ、常識的に考えて。
だって、なのはってあのなのはだぜ? 子猫だぞ? 使い魔だぞ? 俺のペットだよ?
そう思いながら、なのはの方へ目線を向ける。
「にゃ……」
俺と偶然目があうと、急に顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
その姿はまるで、付き合い始めたばかりの初々しい男女のペアのようで──って!おい!
俺となのはは付き合ってないし、なんでそんな恥ずかしがるんだよなのは!
そんなことすると余計に──
「それは本当ですか!? 閣下!?」
「今宵はお祭りですね!」
「ついに正室が出来た、ということか……」
「さ、さすがです! 憧れるなぁ」
「いつかは俺が天下を……」
ああ、もう!鬱陶しい奴らまで出てきたじゃないか!!
誤解だっちゅうのに! 俺となのは付き合ってないし、しかも、なんだよ正室って!
仮に付き合っていても、正室だと結婚してるんじゃないか。その上、その言い方だと、まるで側室がいるように聞こえるぞ!?
うん? ということは一夫多妻制かな?
だとすれば、アリサやすずかもそこに入れて、ああ、はやても入れないと後々危なさそうだから入れて、フェイト愛人って感じで……
って、そんなことを考えてる場合じゃない!
あ、そろそろはやてにも会いに行ったほうがいいかな?
「じゃあ、側室って誰よ?」
おい、アリサよ。そこはまともに突っ込むところじゃないぞ? しかも、なんで若干真面目に聞いてるんだ?
それに、突っ込み間に合ってないけど、5人目!
お前野心あるだろ? 前々から気になってたんだよ、絶対裏切るだろお前!
裏切ったら言ってやるからな! 禿げって言ってやるからな!
どこかの秀才軍師みたいによ!
敵は本能寺にありって、敵は君の髪だよ、賢さと同時に抜けていく君の頭皮だよ!
「側室……アリサ殿かな?」
「いや、すずか様だろ」
「両方でいいんじゃない?」
「むしろ自分で!」
「ふふふ……反旗を翻す日は近い」
「え?」
「ふぇ?」
5兄弟の発言で、ついにはアリサとすずかまで真っ赤になって硬直してしまった。
すずかのその反応はなんだか久しぶりなような気がするなぁ。
うん、新鮮新鮮、かわいいね。
……はっ! 思わず二人に見惚れてしまった、不覚!
クラスのみんなが見てるのに……このままじゃあ余計に勘違いされるよ!
だって、側室扱いされて、一見照れてるように見えるアリサとすずかに見惚れてる俺だぞ?
怪しいと言うか、下手したら収拾がつかないぐらいの事態になりかねないよ……
ああ、こうやって突っ込んでると、なんだか疲れてきたな。
突っ込み忘れてたが、4番目の君。その発想危ないから。崇拝超えちゃってるから。
5番目はそろそろ何らかの処置をとったほうがよさそうだし……野望が声に出てるよ?
君はどこの門番ですか? そんなんだから、いつまでも所長になれないんだよ。あれ、署長だっけ?
にしても、3人はいつまでフリーズしてるつもりなんだろうな。
声をかけてみるか。とりあえず一番近くにいる、
「アリサ、いつまでフリーズしてるんだ?」
「え……あ、た……竜也」
俺が声をかけると、すぐに気がついて俺に向き直るアリサ。
しかし、すぐにその後に俺と目があって、また顔を真っ赤にして、押し黙る。しかも、若干恥ずかしそうにして、もじもじしながら。
あれ? いつものアリサじゃないよ。
な、なんでこんなに尖っていないと言うか、滑らかと言うか……照れてる?
いや、デレてるって感じなのかな?
場の空気がさらにおかしな感じなってるし……。
ああ、クラスメイトの目線が痛い。みんな見てるよ……。いつの間にか廊下にも人が集まり始めてるしさ。
どうするんだよ! この状況をどうやって切り抜ければいいんだよ。
どいつもこいつも正常じゃないしさ。俺だけなのか!? 普通なのは俺だけなのか!?
どちらにしろ、野次馬をなんとかしなくちゃな。
これ以上、噂が広まったらしゃれにならない。今の状況でも十分しゃれにはならないけど。
「5兄弟!」
「「「「「はい!!」」」」」
「今すぐ、廊下にいるじゃじゃおよび、噂話をこれ以上広げさせるな!」
「「「「「イエス! マイロード!」」」」」
これで、噂話もろもろは何とかなるだろう。
さり気無く、あいつらは優秀だからね。どんな手を使うかは分からないけどさ。
最近は運動能力の上昇もすさまじいしね。聞くところによると、閣下に見合う護衛になるには、訓練が必要だとか何とか言ってたっけな。
そもそも、俺は閣下──皇帝でもなければ、護衛もいらないんだけどね。でも、利用できるものは利用するよ。
5兄弟のおかげか、はたまた時間の経過のせいか、朝に起きた噂話は放課後になるとすでに、なくなっていた。
いや、なくなっていたと言う表現は正確ではない。
沈静化されたという感じだろう。
あくまで、噂の傷跡は未だに残っているのだから。それを、裏付けるものは……
「……アリサ」
「な、何かしら? た……竜也」
未だに俺に声をかけられると顔を真っ赤にするアリサ。
お昼休みのころには元に戻ったかと思ったのだが、そう簡単にはいかないようで。
下手したら、お手をするよりも恥ずかしがっているというか、照れているというか……まぁその姿が妙にかわいいので、そのままにしているんだけどね。
それに対して、すずかはというと、
「ふふふ、側室かぁ」
どこか怪しげな雰囲気をかもし出している。
その様子は、どうも近寄りがたいもので、俺はさっき──朝の出来事から話しをかけられないでいる。
一体どうしたと言うのだろうか……。
困ってはいるのだが、俺には収拾がつきそうにないので、すずかはずっと無視の状態。
そもそも、すずかにいたっては何しても、こっちに見向きもしないで自分の世界に閉じこもりっぱなしだ。
そして、なのはは……
「正室ってなんだっけ?」
意味を理解していないので、すっかり元通りである。
うん、天然と言うか……この場合はバカと言うのだろうか? でも、それじゃあ、なのはがかわいそうだから、子猫な脳とでも言っておくか。
ただ、本能のままに生きていると言う意味で。
「あ、なんか今、失礼なこと思ったでしょ!」
「なのははいつも子猫だといったんだ」
「え、そっか……いつものことかぁ」
「そうそう、いつものこと」
うん、なのはは俺のペットで使い魔だからね。
いやぁ、優秀な使い魔で本当にいいよ、ご主人様は鼻が高いな。
そう、優秀と言えば、なのはの魔法の練習が始まった。
昨日の晩、あんな出来事の後に、なのはが早速練習をしたい、と言ったためにだ。
まずはなのはの才能を見極める為ということで、得意の魔法を思いっきり見せてもらうというもの。
そして、俺はそれを受け止めろと、母が言った。
……うん、死ぬかと思った。
なんだよあれ、つい数週間前に魔導師になったばっかしの奴が、放つ魔法か!?
あ、魔砲か……って納得してる場合じゃないし!
なんだっけあの砲撃、ディバインバスターだっけ? 俺も最近は砲撃魔法の練習してるから分かるけど、案外難しいんだぞ?それを、あんな簡単に……。
まぁそれでも片手でガードしたけどね。そりゃあ、2年間努力し続けましたからね。防御はお手の物です。
受け止めたときに、なのはは驚いてたけどね。
でも、そのあとに「もっと威力を上げる必要があるかな」とか言ってたなぁ。末恐ろしいやつめ。
その砲撃を見た母さんは、それを見てなのはの才能に気がついたみたいだった。
母曰く、なのはは魔力の集束・圧縮の天才とのこと。
俺が万能型なのに対して、なのはは特化型とのこと。
その上、なのはには‘レイジング・ハート’という、インテリジェントデバイスがあり、これがまた優秀とのこと。
恵まれてていいですね! デバイスとか憧れだよ……。
前に母さんにデバイスがほしいと言ったら、まずはデバイス無しで魔法を使えるようになれ、話はそれからだといわれて、断念したからね。
母さんもデバイスはもってるらしいけど、口うるさいからスリープ状態だって言ってたし。
だったら、そのデバイスくれよ……。
まぁそんなわけで、なのはは魔法を教えてもらう環境がそろったので、今日は朝からうきうきしてと言うわけだ。
魔力量に関しては俺より少し少ないくらいらしい。でも、正確には測らないと分からないとも言ってたな。
まぁ俺に関しては、フェイトと争うつもりはないので、果たして魔法を使う日が来るのか……疑問である。
その分この使い魔が頑張ればいいか。
「……それでね、もう家に帰ろうと思うんだけど」
「え? ああ、もうそんな時間か」
最近は本当に、時間が過ぎるのが早いね。
毎日が楽しいからかな? それなら願ったり叶ったりだね。
刺激も多いしね……多すぎるくらいかもしれないけどさ。
「うん、そうなんだけど……アリサちゃんとずずかちゃんはどうする?」
「そう……だな」
未だに忙しそうだなぁ、二人は。
アリサはさっきから顔の表情がしょっちゅう変わるし、すずかは……うん、触れないでおこう。
「まぁ明日には戻ってるだろうから、今日はもう帰るか。俺も剣術の鍛錬あるし」
「う~ん……そうだね。じゃあ帰ろうか、竜也君」
俺となのはは、おかしな二人を学校に残して、家に帰った。
まぁ、あのままだと心配なので、5兄弟に家まで送るように言ってからだけどね。
いやぁ、あの5兄弟は本当にいいやつらだね。
本当に何がしたいのかはよく分からないけど……。
後日談になるが、翌日の学校では、アリサは微妙に甘えてきたり、すずかは顔を真っ赤にしたりと、一日経っても元に戻らなかった。
それでも、二日後には元には戻っていた。元に戻ってホッとした気持ちがあったが、どこか残念と思ったのは心の内に留めておくとしよう。
あとがき
シリアスの後なので、作者暴走です。
作者のタピです。
昨日のシリアスが嘘のようだw
と言うわけで第38話です。日常回です。
なのはについては上手く誤魔化したと思ってる。それ以上に内容が……気にしたら負けですよ?
フェイトの件はまた後ほどと言う感じになります。
そして、なのはのDBを軽く止める竜也です。一応チートオリ主ですからw忘れがちですが。
そんなわけで、まだ温泉の話にはまだ行きません。この感じだと、予想以上に話数がかかりそうですね。
A’s編書けるか疑惑だw
最後に
気付けばコメントが300を達成。
特に前回はたくさんのコメントありがとうございまず。皆さんのコメントにはいつも助けられてます。
これからも、こんな駄文ですが、よろしくお願いします。