この間は久々にはやてに会った。はやては非常に危ない子だった。もっと明るい子だと思ってた。
俺が会うときはいつもダークネスな雰囲気を纏っている。以後注意を……。
そんな経験をした俺だが、その後は定期的にはやてに会うことにしようと思う。
これ以上危険な目には遭いたくないしね。
とかいいながらも、時間は無情にも過ぎていく。
はやてのための時間を少し割こうと思ったのだが、そうもいかないことになった。
それは、
「最近のなのは、おかしいわよね」
「うーん、ちょっと思い悩んでる感じかな?」
「そう! そうなのよ! 何で私たちに相談してくれないのかしら!」
アリサとすずかが、なのはの様子がおかしいと言ってきたのである。
事実、俺も最近なのはとは遊んでいない。
前までは、その時間は大抵俺の鍛錬の見学をしていた。
今もなのはと一緒に帰ったりはするのだが、その後なのはが一人で出かけたりしたり、ペットのユーノを連れて散歩に行ったりするのだ。
俺も鍛練があるので、四六時中なのはと一緒というわけにもいかないので、最近のなのはの状況は掴みきれてないのが現状だ。
朝についても同様である。
早起きをしてどこかに出かけているようだった。これらのことは今まではありえないこと。
自分で言うのもなんだが、なのははよく俺に懐いている。
だから、一緒にいることがほとんどなのに、最近は別行動……というより、なのはが別行動をとることが多くなっている。
「あんたは何か知らないの?」
「残念ながら」
「いつも一緒にいるのに?」
「最近はそんなに一緒にいない」
「ふ~ん。やっぱりおかしいわね」
今考えてたことをアリサに言うと、やはり引っかかるところがあるようだった。
余談になるかもしれないが、最近は朝に結界が張られているときがある。
そのときは偶然なのか、必ずなのはとペットのユーノがいない。そこに関係性があるのかは分からないが。
いや、あるのかもしれない。
この一人と一匹。もしくは二匹は両方とも魔力持ちなのが分かっている。
もしかして……なんてことが頭をよぎる。
「これは一度……会議をするべきよね!」
「「え?」」
「会議よ! なのはの今後について私たちが話し合うのよ!」
「いや、それはいいんだけど」
「何!? 文句があるのかしら?」
「直接本人に聞けばいいんじゃないかな?」
「あ……そうよね。じゃあ、聞いてくるわ!」
そう言って自分の席を立って、なのはの席に向かうアリサ。
そのアリサの雰囲気は明らかに好戦的なのは言うまでもないだろう。
「あ、接触した」
アリサがなのはに接触する。
二人でなにやら話し込んでいるようだ。アリサがやや顔を真っ赤にしながら、叫んでいる。
それに対し、なのははただただ苦笑するだけという感じだ。
そして、戻ってくるアリサ。
「駄目ね、話にならないわ」
「なんて言ってたの?」
「いつも通りで別に変わんないよ、だってさ。私たちが気付かないと思ってるのかしら」
どうやら無駄足に終わってしまったようだ。
アリサがもう一度言ってくるといったが、その時にチャイムがなってしまった。
今日最後の授業のチャイム。
「しょうがないわね、放課後また話してみるわ」
俺たちも一時は解散して、各自の席に戻った。
俺の席はなのはの席に近いので、授業中に手紙を渡して、ことの真意を確かめようとした。
「それで、実際のところはどうなんよ?」
「うん? 実際のところって?」
「何か隠し事してるでしょ?」
「え? なんのことかな?」
「俺が分からないとでも?」
こんな感じのやり取りが行われたのだが、なのはははぐらかすばかりで、本当のことを話してくれそうになかった。
これは予想以上に手こずりそうだ。
一番厄介なのは俺にすら話をしてくれないこと。今までの間柄俺にぐらいは話してくれそうなもんなのに、
俺にすら内緒なんて……軽く傷つくわ。
これは放課後のアリサが見ものだな。
そんなことをずっと授業中に考えてると、ようやく学校終わりのチャイムがなった。
アリサが早速なのはをというつめようと動くも、それを察したのか、なのは早々の帰宅準備を始め。
俺たちより一歩先に家に帰ってしまった。
その状況はまさに異様だった。
「ちっ! 逃げられたわ」
「あ、アリサちゃん落ち着いて」
「これで、私に落ち着けって言うの!」
「まぁまぁ」
「何よ!」
「お手でもして、落ち着けって」
「え……」
一瞬で顔が真っ赤になるアリサ。
それだけでなく、急にそわそわして、どうしたらいいのか悩んでる感じだった。
その様子がなんとも、かわいい。
「ほれ、お手」
「う……うぅ……に……」
必死に我慢しようとしている。
心の中に葛藤でもあるのだろうか。手を出そうとしたり、頑張って引っ込めたりを繰り返すアリサ。
もう一押しかな?
「お手」
「にゃ……にゃん」
ようやく、ポンとお手をしたアリサ。
その様子はすごく恥ずかしそうにしながらも、ちゃんと小さくとも「にゃん」というアリサは、
俺に餌付けされてるな。
そして、アリサのお手はとてつもなく久々で、その手はとても暖かい。
「ハッ! な、何をやらすのよ!」
しばらく膠着した後、正気に戻る、アリサ。
しかも、俺に怒鳴るとは……八つ当たりだな、全く!
「別にいいじゃないか? 落ち着いたし気持ちよかったろ?」
「確かにそうだけど……ってそうじゃないわよ! き、気持ちよくなんかなかったわよ!」
「気持ちよくなかったのか? ……そうだったのか。ご、ごめん。俺が悪かったよ」
「え……な、何でそんなに落ち込んでいるのよ!」
俺は良かれと思ってやったのに……すごくショックだ。
ああ、これでしばらくはやてぐらいの美味しい料理しか食べられなさそうだよ。
それで、無理にたくさん食べて太っちゃうんだ……。
太って、剣も振れなくなって、最終的には魔法も使えなくなって……ごめんなさい、母さん。
こんな俺を許してください。
「う、嘘よ」
「え?」
「き、気持ちよかったに決まってるじゃない」
「本当に!?」
「ほ、本当よ」
「あ、アリサちゃん!?」
「う、うるさいわよ! すずか!」
「え? 何で私に!?」
やっぱり、気持ちいいんだ、お手。
うん、やってよかったよ。
アリサも気持ちよく俺も気持ちがいい。まさに相思相愛だね。意味違うと思うけど。
これで、はやての料理を思う存分食べれるよ。
「ああ、もう! 話が逸れてるわよ! 問題なのは、なのはのことでしょ」
「そうだった」
「忘れてたの!?」
いや、久々にアリサが恋しくなってて。
前からどうにかアリサにお手させられないか考えてたんだけど、中々チャンスがなくてね。
今日はようやく出来て、満足しちゃってなのはのこと忘れてたよ。
そうだよな、なのはのことも考えないと真剣に、飼い主として、使い魔の主として。
「「竜也(君)……」」
「し、しょうがないじゃないか! アリサのお手は至極なんだぞ!」
「え……」
「竜也君!?」
「い、いい加減にしなさいよ……照れるじゃない」
「あ、アリサちゃんどうしたの?」
「なんでも……ないわよ」
再び顔を真っ赤にする、アリサ。
それに対して、なぜか、慌てるすずか。
最近見なかったけど、今日はすでに2度も見れるなんて幸せだなぁ。
なのはと戯れるのも、フェイトと話すのも、はやてと遊ぶのもいいが、アリサもいいな。
今度からまたアリサにちょっかいでもだそうかな。
「はい! この話はとりあえずここでは終わり! 時間も時間だし場所を変えましょう」
アリサの言うとおり時間はすでに4時前になっていた。
俺もすずかも、その意見に賛成し、場所を移動することとなった。
といっても、どこに移動するつもりなのかな? まさか……ね?
「うん、予想通りだったね」
「会議といえばここじゃない」
「他に人もいないしね」
やはりというか、俺の部屋になった。
それでも、最近はこの二人を入れることはあまりなかったので、少し新鮮だ。
入れることがなかったというより、遊ぶこと事態もそんなになかったような気もするけど……。
「それで、何についてだっけ?」
「なのはについてよ! また忘れてたの?」
「いや、確認って奴だよ」
なのはについて、今日もそうだが、不自然な点が多すぎる。
第一、今までの行動が友達優先だったなのはがそれ以外を優先しているのだ。
心境の変化、もしくは環境の変化があったとしかいえない。
心境の変化については、知る由はない。
これこそ本人に聞いて確認するしかないのだ。
環境の変化については俺の知ってる限りではない。
ペットを飼い始めてということ以外は。
「もう一回、聞くけど。あんたに心当たりはないの?」
「ないね、全く」
「そう……すずかは?」
「私もさっぱりかな、アリサちゃんは」
「……同じよ」
3人いれば文殊の知恵というけれど、所詮は小学校3年生ということなのか。
いや、それ以前にこの手のことは解かりっこないのだ。
いくら本人を交えずに、話し合ったところで有力な情報が手に入るわけもなく、ただ時間が過ぎていく。
話も内容も堂々巡りだ。
何度も同じこと聞いて、同じ回答をして。
やっぱりと落ち込んで、なんで教えてくれないと怒って。
俺自身としても悔しい。
あれだけなのはと一緒だったのに、あんなにも接していたのに。
所詮は他人だったのかと思ってしまう。
人には秘密の一つや二つはあるだろう。
それこそ、すずかにもアリサにも当てはまるだろうし、実際に俺にもある。
フェイトのことやはやてのことはもちろん。魔法のことだってそうだ。
それを考えれば、なのはも同じようなものだ思う。
ただ、それを知りたいと思うのは友達として親友としてあたりまえのことなんだけど……。
理不尽だよなぁ。
自分のは明かさないくせに相手のは知りたがるって。
でも、それでも知りたいというのは心からの本心だからしょうがないね。
「これじゃあキリがないわね!」
「そうだね」
「まぁしょうがないことではあるけど」
「そうかも知れない、ううん、実際そうなんだろうけど! でも駄目なのかしら? 親友のことを知ることって?」
「いや、俺も同じ意見だよ」
「私も……そうかな」
すずかも引っかかる言い方をするあたり、何か思い当たる節があるのだろうか。
アリサもその言いように不信感を抱いたようだけど、ここでそこをついてしまっては、また話が逸れると思ったのか、
それとも、聞かないほうがいいと思ったのか、どちらにしろそのことには触れなかった。
「そうよね……でも、このままじゃ答えは出ないわ」
「その通りだね」
「だから今度、近いうちに4人で集まってお話をすべきよね」
最初からそうすれば……そんなことを思ったのは俺だけじゃないはずだ。
まぁ実際のところ、本人に聞いても答えてくれなさそうだけど……。
今日失敗したしね。俺もアリサも。
「じゃあ、この話はそのときまで保留! せっかく竜也の家にいるんだから、遊びましょう!」
「え?」
「何? だめなの遊んでいっちゃ?」
「いや、別にいいよ」
「なら、まず何で遊ぼうかしらね」
なのはの話は、ここで遊ぶ為の理由に過ぎなかったように聞こえる。
いや、アリサに限ってそれはないと思うけど……。
何はともあれ、第一回なのは会議は終わった。
この会議がどう意味したのかは分からないが、こんなに心配させたなのはには、今度埋め合わせをしてもうとしよう。
ふふふ、そのときが楽しみだ。
おまけ
「なんで俺がやらなくちゃいけないんだ?」
「あんたのゲームでしょ?」
「まぁいいけどさ……」
とあるウィルスが蔓延した、ゾンビのゲームをやる。
ガシャーンと急に窓が割れてゾンビが出てくる。
「きゃー!!」
「あ、すごい」
「アリサそこまで驚くか? すずかは落ち着きすぎ!」
「だ、だって……」
「怖いのか?」
「こ、怖くなんか──」
再びゾンビ
「キャー!」と言いながら俺に抱きつくアリサ。
「うぉ、ちょ、ちょっとアリサ!」
「が、我慢しなさい!」
「アリサちゃん!?」
そのゲーム中終始抱きつくアリサだった。
あとがき
本編にはない、なのはに対する親友たちの葛藤を書いてみた。
作者のタピです。
第35話です。アリサ回です。
途中から明らかに方向性が怪しくなった件w
なんか暴走したような気がしますが、気のせいです。
久々にアリサの好感度上昇? ですかね。
にしても、無印編……長くなりそうな気配。