時間は放課後、いや、具体的に言えば夕方前。
俺はなのはたちの魔の手から、5兄弟との連係プレーで見事に逃げ。
占いの言った通りに、再び、否! 三度この地へ戻ってきた。
そう、ここは駅の改札口前なのである。
前回から思ってるのだが、駅で動物って普通に考えたらありえないだろ。
駅構内って普通は動物禁止なんじゃ……他の人にも迷惑かけかねないしね。俺は迷惑だとは思わないけどさ。
なんてったって動物大好きだからね。
何はともわれ、すでにこの駅に来て、5分が経過したわけだが……
一向に俺の目的の人が現れる気配がない、さすがに3度目はなかったのかな?
◆
竜也の住んでる町に引っ越してきた。
この町に来た理由は、お母さんがジュエルシードっていう、ロストロギアを集めて来いと言ったからなんだけど、
行けって言われた日より、早く着ちゃった。
久々に達也に会える気がしたから。
う~ん、これが女の勘ってやつなのかな?
「フェイト、その竜也って奴はどんな奴なんだい?」
私の使い魔のアルフが疑問の念を持って、私に話しかけてきた。
竜也がどんな奴か?
正直に言うと私にも分からない。
初めて会ったときは、駅の真ん中だ頭を抱えながら座っていた。
その時はお母さんに頼まれて買い物しにこの町に着たんだけど、どこに行けばいいか分からなくて私は困ってた。
そんなときに、同年代くらいの子を見つけて、勇気を振り絞って声をかけてみた。
そしたら、思いのほか優しそうな子で、丁寧に道を教えてくれた。
私は、私以外の同じくらいの子と話をするのが初めてで、どうすればいいか分からなかったけど、
実際に話してみれば、とても優しかった、それに、私の名前を言ってくれた、竜也は名前を教えてくれた。
「優しい子、だよ」
「ふ~ん、まぁフェイトが言うならそうなのかもね」
2回目に会うことになったのは、それより大分先のことだった。
その間もすごくお母さんは、厳しくて怖かったけど、竜也としゃべったことを思い出せば頑張れた。
次に会う日までは、次に会うときのも笑顔で会いたい、その一心だった。
だから、買い物をまた頼まれたときはすごく嬉しかった。
買い物に行く時の日、竜也に会いたくて、家を飛び出すようにこの街に来た。
今考えれば、馬鹿なことだったと思う。
竜也の住んでる町は知ってても、住んでる場所も分からない。
かといって、連絡手段を持っているわけでもなかったから、会える可能性のほうが低かった。
だけど、会える気がしたのは本当。
今日の今だって、また竜也に会える気がしている。
でも、それ以上にに……忘れられてるんじゃないかと、恐怖でいっぱいだった。
ううん。今も怖い。前に会ったときから、またずいぶん時間が経ってしまったから。
それでも、2回目のときは覚えていてくれた。
竜也を駅でまた見つけて、勇気を振り絞って、恐々と声をかけてみた。
そうしたら、竜也は私の想いとは裏腹にすごくいい笑顔で、私の名前を呼び返してくれた。
こんなにも嬉しいことはなかったかもしれない。
昔……昔、お母さんが私に微笑んでくれていたような、そんな幸せの香りがした。
だけど……私を見て時々悲しそうな目をしてるといもあった、なんでだろう?
でも、そんな竜也にもう一度。もう二度、もう三度と私はまた会いたい。
「でもさぁ、その竜也って魔導師かも知れないんだよね?」
「うん、確かに魔力を感じたから」
そう、竜也からは魔力を感じた。
この世界の人間は普通は魔力を持っていないと調べた結果が示していたのに、竜也は魔力をもっている。
これは1回、2回と会ったことで確証がもてる。
それに……
「意図的に隠してるみたいだった」
「何か厄介ごとでも抱えてるのかねぇ」
普通、魔力があればすぐに感じることができる。でも、竜也の場合は、感じられなかった。
もし感じられていたならわざわざこんな駅に来なくても探索魔法ですぐ見つけ出せる。
しかし、それが出来ない。
なぜか? 魔力を何らかの方法で隠しているから。
さすがに竜也のすぐ近くに居たら気付いたけど……でも逆に言えば、そこまで近くに居なければ認知できないほど。
これは何を意味してるか。
ただ魔力をもっているならいい、たまにそういう人はいるらしいから。
でも、意図的に隠されているのなら意味は変わってくる。竜也が魔導師である可能性、これが浮上する。
別に竜也が魔導師でも構わない。
ううん、私としてはむしろ嬉しい。だって、そうすれば一緒に練習とかできるから。
他にも、一緒にお母さんの探し物を探してくれるかもしれない。
そういえば、この間読んだ本に
「好きな子との距離を縮めるには同じ趣味を持つのがよい」って書いてあったなぁ。
魔法をお互いに使えるんだから、あってるよね?
そうだとしたら、もっと竜也と仲良くなれるのかな……そしたら、嬉しいな。
そうしたら、竜也をお母さんにも紹介しよう。
うん、きっとお母さんも喜んでくれる……と思う。
「まぁいいさ。フェイトの友達なんだろ?」
「うん、初めての友達だよ」
「じゃあ、きっといい奴だ。あたしもそいつには感謝しないとねぇ」
「なんで、アルフが感謝するの?」
「え? それは……ほら、こ、こんなにもフェイトが笑顔を見せてくれるようになったからだよ」
「私……笑ってる?」
「なんだ、気付いてなかったのかい?」
そうなんだ。
うん、きっとそうなんだ。竜也は私にとって─
そんなことを思っていると、竜也が駅に着たみたいだった。
あ、キョロキョロしてる、なんか竜也の慌てる姿って新鮮かな。あれは、私を探してくれているのかな?
分かるようにもっと近づいてみよう。
そう思って、そろそろと竜也の後ろに回る。
竜也は一行に気付かない。
今度は竜也の顔を後ろから、じっと見つめる……
5分が経過した。
<まだやってるのかい、フェイト>
痺れを切らしたのか、アルフが呆れ口調で念話してくる。
まだやってるのって、竜也が私に気付かないんだもん。
ひどいよ……こんなにも近くに居るのに気付かないなんて……
そう思うと思わず涙が流れてしまった。
そのとき目の前の人がこちらを振り向き、目が合った。
◆
フェイトまだかなぁ、なんてのんきに思いながら周囲を見渡すこと約5分。
今更だが、俺の後ろから熱烈な視線を感じた。
最初こそ、なんかほんわかした雰囲気の目線だったが、今となっては軽く殺気じみているような……
いや気のせいだろう、殺気を放つ人なんて早々多くない、と思いたい。
たぶん、この思いは無意味なんだろうけどね!もう諦めてるけどさ!
おおっと、こんなこと思ってる場合じゃない。
パッと後ろ、つまりは熱い視線がする方向も見る。
そこにはきんぱ─もういいか。フェイトが居た。
しかも、目が合った。
そして、フェイトの目はなぜか涙で満たされていた……って、え?
どうして!?
今会った瞬間、というか何で泣いてるの、俺に会ったのがそんなに嬉しかったのか?
あ、それはないか。
困惑した。訳の分からないこの状況と周りの雰囲気(駅に居る人がな泣いているフェイトをちらちらとみる)に
俺は更なる、困惑に陥った。
ど、どうすればいいのか!?
と……とりあえず、泣いてるフェイトを宥めなくちゃ。
「フェイト?」
「た、竜也!」
さらに涙が増量した。何ゆえ!?
本当に困った事態である。俺がそんなふうに右往左往してると、どこからともなく声がした。
<フェイトはあんたに会えて喜んでるんだよ>
<それは本当か?>
<使い魔のあたしが言うんだから間違いないよ>
そうか、使い魔が言うなら間違いなんだろうな。
俺に会えて喜びで、涙か。
くぅ、泣かせるねフェイト! 俺も嬉しいよ。
俺もあまりの感動の為、いや、感動の興奮のせいで勢いに任せて、フェイトに抱きつく。
「ありがとうな、フェイト」
「……!? うんん、竜也。私こそありがとう」
フェイトはそういうと強く抱きしめ返してきた。
なのはとは違う温かみだった……なんか、これって癖になりそうだね。
この後はお互いに無言で抱きしめあった。
駅の真ん中で!!
<ええと、非常にいいにくいんだけどさ>
<<何?>>
<あんたちいつまでそうしてるつもりだい?>
いつまでそうしてる?
ふん、確かにいわれてみれば、駅いる人々は節々に俺とフェイトをみるが、別に恥ずかしいとは思わないね。
いや、実際には恥ずかしいが、それ以上にこの温かみが捨てがたい!
<私は……別に>
<俺も同じく>
<あんたら……>
でも、そうだね……そろそろ、物事を進めないと尺が……じゃない。
時間が経っちゃうね。
残念だが、非常に残念だが、この抱き心地から開放されるとしよう。
そう思い、抱き合うのをやめる。
「あ……残念」
「何か言った?」
「ううん、なんでもないよ」
フェイトが少し残念そうな顔をした。
気持ちは一緒だったということか。
しかし、よくよく考えれば今まですごいことをしていたような……気にしたら負けか。
気のせいか、殺気も多い気がするがそれを含め気にしない。
「あ、なんか自然な流れでこんな感じだけど、何でフェイトはここにいるの?
また買い物か何か?」
ずっと放置していた問題。
いや、放置をせざるを得ない状況だったからしょうがないが、フェイトがここにいるのが不思議だ。
それ以上に、あの占いが当たるのが不思議なんだが。
「引っ越してきた」
「へぇ、この町に?」
「ううん、遠見町に」
今までどこに住んでいたかは知らないが、遠見町といえば、ここ海鳴市の隣町だ。
フェイトは、わざわざそれを伝えに会いにきてくれたんだろうか?
いや、そもそも会いにきたのか?
そこからして疑問なんだが……
フェイトがさらに、続けて話す。
「家に来る?」
この俺に断る理由があるとでも?
答えはもちろん……
「ほわぁ、すごいな」
「そう?」
フェイトの家は、マンションだった。
しかも、そこから見る夜景かなりの絶景。しかも、この部屋でしばらくは一人暮らしだという。
このブルジョアめと思ったのは当然のことなのだが……
なぜ、母親が居ない? それに学校は?
色々と疑問が思い浮かぶ……前から思っていたことだが、フェイトにはなぞが多い気がする。
あ、でも、その謎のひとつも解消された。
フェイトのとなりにいる、アルフである。
どうやら彼女はフェイトの使い魔とのことだった。
そうか、さっきの天の声も彼女だったのか。納得である。
……え? 使い魔!?
使い魔って言うと、あの異世界召還ファンタジーものの代表格の、あの使い魔か!?
使い魔の飼い主が、奇遇にもアリサの声に非常に似ているという。
って、違いますよね。
知ってますよ、使い魔。
そりゃあ、魔法の勉強をすれば、使い魔の存在は知っている。
そう、魔法ということは……
「フェイトも魔導師なのか?」
「‘も’っていうことは竜也もなんだね」
「あ、ああ。一応ね」
この反応からすると、フェイトは俺が魔導師って気付いていたみたいだった。
俺はどうも、そっちというか、探索の類が苦手なんだよね。
いや、練習をすれば出来るんだろうけど、あの特訓内容は大して意味を成さないからね。
今後はそういうのも大切になるのかな。
話は逸れたが、フェイトが魔導師……ということは、あのときの声は、フェイト?
いやいや、違うな。
あれはあくまで男のものだったし。
そもそも、フェイトなら占いで分かる。……この理屈ってすごいな。
でも、魔導師ということは……
「管理局?」
「え? 竜也は管理局なの?」
「ん?」
「え?」
なんか微妙にすれ違ってるぞ?
もう一回、もう一回聞いてみるか。
「フェイトは管理局に入ってるの?」
「ううん、それは私が聞こうと思ったんだけど」
「俺も入ってないよ」
「そっか、よかった」
何が、よかったのだろうか?
むしろ、よかったと思ったのは俺のほうなのだが。
もしフェイトが管理局だったらって考えると……いや、よそう。実際に違ったのだし、もしを考えてもしょうがない。
にしても、そうか……魔導師だったのか。
これは新しい発見というか、俺と母さん以外の魔導師は初めて会ったからな。
なんというかとても新鮮というか……
「どうしたの?」
「いや、なんでも、ところで今、何時かな」
ふと時間が気になった。
駅を出た時間から、ここにつく時間まではそうとう時間が経ったはずだ。
駅を出るころは夕日すら出てなかったのに、今はすでに暗くなり始めている。
時間を確認する意図を含め、時計を見ると、午後6時を回っていた。
ちょっと長居しすぎたかもしれないな。
今日は遅く帰る予定もないし、家に帰れば魔法の練習が待っているので、帰らなくてはな。
「じゃあ、フェイトそろそろ帰るよ」
「え? ……もう、帰っちゃうの?」
そ、そんなさびそうな目で俺を見ないでくれよ。
決心が鈍る、というより揺らぐじゃないか。なんだよ、かまってほしい子犬のようじゃないか……
「ま、また今度遊びに来るからさ」
「本当に?」
「ああ、絶対に」
「そう、分かった。じゃあ、アルフ途中まで送ってあげて」
「あいよ」
俺はフェイトに「またね」と、また会う約束をしてこの部屋を出た。
アルフに見送られる途中、ちょっと気になったから、アルフに聞いてみる。
「アルフってさ、何が素体の使い魔?」
「当ててみな?」
ふむ、そうきたか。
この動物マスターを目指す俺に挑戦状とは……
アルフを観察してみる。
尻尾に耳がある。この特徴は猫や犬などの動物に見受けられる特徴だ。
しかし、そんなに珍しい動物とは思えないので、おそらく犬であろう。
猫……というには、ちょっと強すぎる感じがする。
じゃあ、答えは犬そう思ったが。
何か引っかかるものを感じる。ありきたりすぎないかと。
もう少し、観察をしてみると、普通の犬より鋭い牙があるように見える。
ほほう、ピンときた!
犬と同じ特徴で、犬より鋭い牙があるとすれば!
「狼だ!」
「あ……あんた天才だよ!」
まぁこの俺にかかればこの程度朝飯前である。
「ところであんたには使い魔はいるのかい?」
「使い魔……ね」
考えたこともない。
しかし、どうだろう。自分に忠実な……ああ、心当たりが居るな。
「栗色の毛の猫……かな?」
「へぇ、いるんだ。一度会ってみたいねぇ」
「そのうちな」
うん、あれは一種の使い魔だろう。
間違ってない、たぶん本人に言っても問題ないと思う。
そんな平凡な会話をして、アルフとは途中で別れた。
その話の中で再三、「フェイトはあんたのおかげで」とか、「フェイトをお願い」などといわれた。
まぁ言われなくても、あんな子を見放すわけがないけどね。
あとがき
昨日のうpしたとき上下に神作品があって、もう駄目かと思った。
見劣り半端なかったww
作者のタピです。
第33話です。
相変わらずこんなんでいいのか? と思いますが、はたしてw
フェイトの回でした。そして、アルフの初登場。
犬化はなかったですが……まぁそれはまた今度にね。
魔法がばれた!
そんな内容でしたが、なんていうか相変わらず軽いですねw
最後に
もしかしら、明日明後日はうpできないかもしれません。
自分の高校の卒業式なもんでねw
あくまで、かもですが。