今日の朝のことだった。
それは運命的な、いや、何か必然的な神様的な出会いだったかもしれない。
朝……。
それはいつも通りに、朝の剣術の鍛錬の一環として町内ダッシュをしていた。
その、折り返し地点と休憩地点である、とある神社において俺は出会った。
「な、何これ?」
「どうかしたのか? 竜也」
「んん? どれどれ~、お! すごい綺麗な石だね」
運命なんて言い方は大げさだと思ったが、それを言うに値するほどの綺麗な石だった。
その色、見事というほどの綺麗な青。
形までもがしっかり整っていて、自然のものとは思えないものだった。
「まるでサファイアのようだね」
「サファイア?」
「うん、宝石の一種だよ」
「へぇ」
美由希さんが言ったように、もしかしたら宝石の類なのかもしれない。
いや、別に宝石じゃなくても十分に素晴らしいものではあるとは思うけど……
ただ俺がこういうのを集めるというのは、どうにも、抵抗があるというか、キャラじゃないというか、そんな感じがする。
だからといって捨てるのはもったいないし……
宝石といえば、女の人のプレゼントとか趣味だよな……
ん? プレゼント?
ああ、そうか。いいこと思いついたぞ。ふふふ、これは一石二鳥じゃないか?
「ど、どうしたの? 顔がにやけてるけど?」
「え? いや、なんでもないです」
どうやら、顔に出てしまったようだ。
あまりの、自分の妙案に笑みがというがまさにその通りに状況というところか。
しかし、ふふっ。今日の俺は冴えてるな。そして、運もいい。
「このことは、なのはとかには内緒にしててくれます?」
「え? それは別にいいけど、どうして?」
「それは……秘密です」
俺の思いついた、アイディアそれは……プレゼントだ。
はやてがこの間遊んだ帰りに誕生日がいつかを教えてもらった……というよりは、教えられたのだが。
まさに、ちょうどいいじゃないか。
拾った小石が、はやてへの誕生日プレゼント。
綺麗だから、まさか拾ったとは思わないだろうしね。
せっかくの発見を無駄にせず、なおかつ、はやてへの誕生日にもなる。
一石二鳥の最高のアイディアだね!
俺はこの後の鍛錬も、この小石の発見と自分の素晴らしいアイディアのおかげで、興奮収まらず、かなりハイなテンションで、充実した鍛錬になった。
そのせいか、かなり疲れた……いつも以上に頑張りすぎたかもしれない。
「お疲れ様。あのね、竜也君」
鍛練が終わり、高町家のリビングに戻ってくると、なのはが待ち伏せをしていた。
しかし、今の俺にはなのはに構う体力、気力がない。
「すまん、なのは」
「にゃ?」
「すこし、黙っててくれ」
「にゃん」
よし、これでひとまず、厄介なのは沈めた。
非常に疲れたので、しょうがない。
なのはの部屋で一度寝てから、学校行くとするか。
今日の学校はやばいかもしれないな、というよりこれは下手したらずっと眠いかもしれない……
まぁいいや、今はとりあえず、ね……よう。
俺はなのはの部屋につくなり、自分の身体をベッドに委ねた。
なんか、部屋に入ってから眠りにつく間際に、キャンキャンうるさかったような気がするけど、
たぶん、眠いせいで幻聴でも聞こえたのだろう。
もしくは、下の階でなのはが騒いでいたのかもしれない……。
そんなことを思うのも考えるのもなんだか面倒くさくなったので、俺は意識を手放す。
なのはのベッド、至極なり……なんか、いい香り、もするし……。
「竜也君おきてなの!」
どこか遠いところから声がしたので、聞こえたので、面倒だなぁと思いつつも、
少し起きようと試みる。
「こいつ、今日学校にきてからずっとこの調子よね」
目を開ければがらんがらんのクラスに、3人ほどが俺を囲んでいる。
囲んでいるのは、なのはとアリサ、すずかのお決まりのメンバーだった。
様子を見る限り、俺待ちのようだ。
待たせたようで、若干罪悪感があるが……その程度でへこたれる心は持ち合わせていない。
「ええっと、ここはどこ? なのはは猫だよね?」
「ここは学校なの! なのはは猫じゃないの!」
「お手」
「にゃん」
「……猫じゃん」
俺の言うことをしっかり聞き、「にゃん」といいながら、お手をする時点で誰が猫じゃないというのだ。
なのはには自覚というものが足りないようだ。
自分が飼い猫だという自覚が。
「ち、違うの!!」
「なのはちゃん、説得力ないよ?」
「す、すずかちゃんに突っ込まれたの!?」
珍しいすずかの突込みだった。
その切れ味はまさにジャックナイフ。親友を滅多切─
「竜也君、いま変なこと考えた?」
「いいえ、何も」
親友を褒め称え、神のごとき自愛……まさに、聖人君子のようだった。
すずか様ほど、素晴らしい人はいないね!この世界に。
全く、なのはも見習いたまえ。
にしても、今の一瞬の殺気はどうやって説明すればいいのだろうか。
すっごく怖かったよ。
最近すずかの出番少なかったのが原因なのだろうか?
「竜也……変なことを考えてたかしら?」
アリサに余計なこと勘付かれてしまった。
俺の素晴らしい条件反射が逆に仇となったらしい。
「違うの……なのはは猫じゃないの……。竜也君のペットじゃないの。竜也君はなのはの飼い主じゃない。
竜也君は友達、竜也君は親友。ご主人様じゃない……なのはは猫じゃない。なのはは人間!」
「ほれ、猫じゃらしだぞー」
「にゃにゃ!? にゃーん……はっ! やっちゃったの……た、竜也君のいじわるぅ」
「あんた、いい加減止めてあげなさいよ」
アリサがそんな俺となのはに呆れながら言う。
なのはは若干涙目で、俺のことをにらんで……見つめてくる。
というより、本人は睨んでいる様だけど、
だって、面白いからしょうがないじゃないか。
なのは猫見てるとすごく和むんだよ? 寝起きにはとても優しいんだよ?
そう、とっても寝起きには……あれ?
慌てて脳を起こしフル回転させる。
時間を確認する為、黒板の時計を見ると授業が終わってる時間になっていた。
いつの間にやら……全く記憶がない。
なのはの部屋で寝て、そのあと、学校行くときになのはに引きづられた、までは記憶にあるのだが、
学校にきてからのはサッパリだった。
「何慌ててるのよ?」
「いや、いつの間にやらこんな時間に……」
「今更何言ってるのかしら」
アリサは心底呆れたというような口調だった。
俺でもそう思うのは無理は無いと思う。
さすがにここまで寝たのは初めてだった。
「でも、先生に当てられたときはしっかり答えてたよね?」
「え? 本当?」
「うん……え!? 無意識だったの!?」
寝ている間に俺を当てる先生も意地汚いと思うが、
それに寝ながら答えた俺って……自分で自分が恐ろしいです。
いや、これが本当の睡眠学習?
「まぁね、俺ぐらいになるとそれぐらいできるんだよ」
「うぅ、なんか人外っぽいの……」
「猫に言われたくないな!」
「猫って言われたくないの!」
いや、もう無理でしょ? 猫以外のキャラで独立しようとするの。
なのはを猫以外で見るとしたら……いや、やっぱり猫にしか見えない。
ちなみに俺から、動物マスターというのを抜くと……皇帝?
それこそないだろ。
「ああ、そういえば、なのはの家でフェレット飼うんだってな」
「あんた、寝ながら話聞いてたのね……」
「なのはちゃんの人外っていうのも、意外と合ってるかもね」
今日のすずかはなんだか毒舌だな。
なんか、嫌な事でもあったのだろうか……それともここぞとばっかしにアピール?
「うん、ユーノ君っていうんだけど」
「猫がフェレットを……フェレット食べられるんじゃないか?」
「な、なのはは動物は食べないの!」
でも、昆虫は食べようとしたような……
この間、なのはを猫状態で散歩させてたら、獲物をみつけた目をして、蝶々を追いかけてたじゃないか。ぴょんぴょん跳ねながら。
「まぁいいけどさ、確かフェレットって飼うときは必ず予防接種が必要だったと思うぞ」
「そう……なの?」
「ああ、前に読んだ、『フェレットとねずみのイタチゴッコについて』に書いてあった」
「相変わらず、すごいの読んでるわね」
「竜也君らしいけどね」
この本が中々難しかったんだよ。
厚さ的には広辞苑並だけど、書いてあることが生態とか、飼い方とか、歴史とかそんなんばっかしで……
読んでてあまり面白くなかったけど、近い将来動物園をとなると頑張らねばと思って頑張った。
「どうなんだろう……今日家に帰って早速相談してみる、竜也君も一緒にね」
「え? ああ、俺は……」
今日の予定を思い出してみる。
この教室に5兄弟がいない、俺を待っていないことを考えると、遊ぶ約束はしてない。
そして、今日は午後の鍛錬はなし……だった気がする。
ふむ、これは早速、恭也さんに連絡を取って確認するしかないな。
そう思い、携帯電話を見ると、そこにはいつも通りに占いが出ていた。
そういつも通りに……
「ええっと、今日の占いは」
「占い……はっ! み、見ちゃ駄目なの!」
なのはの必死の呼びかけだ。
たぶん、今までの経験上俺がこうやって占いを見る日は自分たちをすっぽかしたのを思い出したからだろう。
しかし、なのは! すでに遅し、俺はもう占いを見てしまったのだ。
そして、その占いの結果は……
「なのは……」
「ど、どうしたの、改まって?」
「すまん!」
「あ、逃げた! す、すずかちゃんお願い」
「うん、分かった。」
なのはの声に一瞬で反応して、すぐさま出入り口、つまりは教室の前のドアを閉める。
しかし、教室には必ず二つドアがあるのをお忘れかな?
「甘いわよ! 後ろは確保したわ!」
「ちっ!」
さすがにここぞという場面においてこの二人の連携はすごい。
俺の切り替えの動きも決して遅くはなかったはずだが、退路をふさがれてしまった。
まさに、孤立無援。四面楚歌である。
「さぁ竜也君! 逃げ場はないの!」
確かに、この教室はこの二人によって密閉空間。
逃げ道はない。
残るは、窓のみだが……そう思い、ふと外を見ると、なにやら人影がある。
そして、その人影が……
「ふっ」
「な、何がおかしいの!」
「残念だったな、俺の勝ちだ!」
「「「え!?」」」
3人の驚きは当然のことだ。
俺はそれを言うが早いか、窓から外に飛び出したのだから。
「嘘!? ここは一階じゃないのよ!」
アリサの叫び声が上から聞こえる。
確かにその通り、こんな行動自殺行為、もとい自殺にしか見えないだろう、普通なら、しかし!
「お前達、俺を受け取れ!」
「「「「「イエス! マイロード!」」」」」
下で受け取ったのは、何を隠そう5兄弟だった。
俺がチラッと見た人影はちょうど5つあり、すぐに彼らのものだとわかった。
そのため、この行動を行った。
5人はしっかり俺を受け取る、そして、上を見上げてみれば、なのはたちの、してやられたの顔。
「ご無事ですか?」
「ああ、大丈夫。ありがとうな」
「いえいえ、我らも光栄です」
こいつらもドンドン悪化しているような気がしなくもないが、まぁ今回はそれに助けられたので、気にしないでおこう。
「また、よろしくな」
「「もちろんです!」」
「残念だったな、なのは!」
「にゃー! 今度こそは今度こそはと思ったのに!」
「やるわね、竜也」
「窓からは予想外だったかな」
「俺の勝ちだ!」と悔しがる3人を一瞥し、彼女らを背に俺は駅へ向かった。
駅へ行く理由は決まっている、例の占いであれが出たからだった。
『駅で素敵な動物とのふれあいが』
もう何度目か分からない、この占いの結果に俺は期待をしながら駅へ走る。
あとがき
よし、この暴走感が戻ってきた!
作者のタピです。
ということで第32話です。
いい感じに壊れてきましたか? どうでしょうか?
相変わらず勢いの作品ですが、はて? これでいいのだろうかw
色々と伏線張ってない気もしなくはないのですが、う~ん。
まぁなんとかなりますよね。
最後に
この作品はギャグです!
深く考えたら負けなのですよ!