海鳴市は今日も平和です。
忙しかったクリスマスから、はや4ヶ月ぐらい。
そうそう、クリスマスと言えば、なのははクリスマス以降、少し俺と間合いをあけていた。
理由はよく知らないが、なのはいわく、
「た、竜也君と一緒いると、危ないの……」
とのことだった。
全く何が危ないと言うんだ。俺は別に危険なことはしてないと言うのに。
むしろ危険なのは、なのはだろと言い返してやったところ、
「そ、そうかもだけど……本能が抑えられらないというか……もう! 自分でもよく分からないの!」
理性が本能を抑えられない。
それを、本能で悟ってるなのはは、色々と野生的だな。いや、猫的というか。
猫は本能で動く生き物だっけ? まぁよくは知らないけど、なのは猫を見てるとそう思えるね。
冬の間のなのはずっとそんな感じで、家に来ることも拒否って、俺は寂しかったので、そんな時ははやてと遊んだ。
はやての方も喜んで遊び相手になってくれた上に、よく家に泊めてくれた。
「竜也君ならいつでも歓迎や」
とは、はやてのセリフ。
泊まることが歓迎なのか、遊ぶことが歓迎なのか、それとも一緒にお風呂が入りたいためにとか、そんな考えがあるんじゃないかと思うと、
多々怖かったが、考えないようにした。現実逃避って便利だよね。
冬があけるころになると、なのはも普通に戻ったので、再びよく遊ぶようになった。
なんというか、今まで遠ざかってた分を取り戻すかのように、毎日遊んだ。
時にはゲームで、時には猫でという感じに。
そして、なのはは自分の家に帰らずに俺の家に泊まることが多くなった。
俺としては別にいいんだが、はて? あの高町家の一家はいいのだろうか。
自分の家のかわいい娘が、よくは知ってるもの友達の家に泊まるのだ。自分の家と同じ割合、つまりは5対5の確率で。
そう思ったので、実際に聞いたところ。
「え? 竜也君なら別にいいんじゃないかしら?」
「竜也君なら問題は無いと思うぞ」
「むしろ、なのはが羨ましいよぅ」
「なのはが望むなら……」
と、親公認、兄妹公認のようだった。
まぁそれでいいなら俺も、特に言うことはないが。それでも、なのはに一言だけ言いたい。
寝ている間に俺の布団に入り込むのだけは止めなさいと。それじゃあ、本当に猫じゃないか。
いや、ね。俺は別いいんだよ? 冬の寒い時期、布団一枚でも肌寒さを感じるから、ぽかぽかのなのはが入ってくると、俺は身も心も温かくなるから。
でも、よく考えてみようよ。朝起きて隣に見知りの女の子がいるんだよ。
しかも、「ふにゃ~」なんて言いながら目をこすりながら、「おはよう」と、さも当然のように言うんだよ。
なのはに違和感はないのかと。
何が言いたいかというとね、もしこんなのが恭也さんや士郎さんに知られたらと思うと、
夜寝付けなくなるんだよ! 恐怖で!
今のところは知られた様子はない、というよりお咎めなしだけどさ。
まぁそんな冬を送り、今はすでに春を向かえ、花粉症に苦しむ人々、上から目線で楽しく微笑む毎日。
俺は花粉症じゃなくてよかったと、心のそこから日々思う。
桜は絶頂期を向かえ、学校で、または通学路でピンク色の鮮やかな道なりが目に写る。
桜はやはり春というイメージをより強くする。そして、その桜と同じほどに張るというイメージを強くするのは、入学や進学。
そう、俺たち4人プラス5人仲良く3年生に進学した今日この頃。
なんだかんだ言っても、この9人、また同じクラスである。
毎回の如くそう思うのだが、やはり、後ろに強烈なアプローチをした人がいるのだろう。まぁさすがにもう驚いたりはしないが。いい加減慣れた。
たぶんこの調子で、来年もその数年後も一緒になるんだろうなぁ。
あ、でも、中学校からは共学じゃないな……その時はどうするんだろう。ある意味みものかもしれない。
それも、まだまだ先のこと、とりあえず俺は今をありのままに生きていくとしようかな。先のことを考えるのなんて、俺らしくないからね。
そして、今、母さんと魔法の練習中です。
母さんの四方から飛んでくる光の剣と、バインドをどうやってかわすか考えながら、またかわしながら、今日会ったことを振り替えってみる。
この、複数のことを同時に考えることを、約2年、毎日俺はやり続けてきたおかげか、今では練習中でも苦もなく、考えることができる。
それを含め、母さんのスパルタ的な練習のおかげなのだが、あえて感謝はしないでおく。
感謝すれば、この母のことだ余計に気合が入るというか、調子にのるだろう。
そして、さらに厳しい修行へと……そんなことは考えたくもない。
考えること自体はさっきも言ったとおり、苦もないが、今の現状、かわすこと自体は未だに非常に厳しい。
シールドやバリアで防いだり、一時的にバインドで動きを止めたりと工夫するのだが、結局は母のほうが力は上だ。
苦しい状況には変わりないため、今で一杯一杯だ。
「最近は剣術の方の鍛錬はどうかしら? これでどう!」
「くっ!非常に充実してるよ」
光の剣をかわしたところに、設置型のバインドが発動する。
バインドの発動をすぐに感じ、普段かわすよりも大き目の動作をすることで、バインドで動きを止めれること避ける。
最近の剣術の鍛錬。
走る、素振りなどの基礎鍛錬はいつも行うことだが、今は実践を重視した内容になっている。
どういうものかというと、簡単に言えば模擬戦だ。
御神は‘神速’という、流派の奥義? 的なものを使って戦う。
俺はまだ使えない、というよりはこの年で使うと体が壊れてしまう為に、教えてはもらえない。
しかし、俺はその‘神速’に勝てるようにしなくてはならない。模擬戦は単に経験を積むというだけでなく、結果というものも含まれているからだ。
そんな、人外とも言うべき剣術を使う恭也さんと勝負をしなくてはならないのだが、今の段階としては慣れることが何より大切だった。
自分より強い相手と戦うことになれること。‘神速’と言うスピードに慣れること。これが第一のようだ。
そして、俺はまだ第一段階。今から大体この段階を半年以上行っているのだが、難しい。
なんとか、目で捉えたりすることはできようにあった。単純な攻撃なら反応も出来ようになった。
しかし、一度フェイントや予想外のことをされてしまうと反応が出来ない。
何もかもが違うのだ、力が早さが技術が。
それでも恭也さんが言うには、この年では十分、むしろ上出来とのことだった。
自分が竜也君ぐらいのころは……と言ったふうに、自分の体験談まで話して励ましてくれるのだが、
それでも、俺からすれば悔しい。
どういう理由があろうと、やはり負けるのは性に合わない。
小学校卒業するまでには必ず勝つ!
これがいつの間にか俺の目標になっていた。
剣術とは打って変わって、魔法の練習。
大分前から、練習内容自体に変化はない。激しさや難易度こそ上がったものの、やることはかわりない。
反撃なし、防御あり、相手の動きを止めるのあり。撃墜されるまでひたすら避ける。怪我したら自分で治癒。
これの繰り返しだ。
最近はなのはが泊まることが多くなったので、練習の機会こそ減ったもの、密度は濃いものになった。
そして、今までの練習にプラスして最近やっていることがある、攻撃魔法の練習。
約2年、練習してきている防御や補助系の魔法に比べればお粗末なものだが、母曰く、この年齢では十分にやっていけるとのこと。
もともと、剣の鍛錬をしているので、運動能力は高い、よって近距離戦においては、特にやることがない。
基本的には身体強化ととっさの防御で事足りるからだ。
それこそ、ゼロ距離砲撃などを必要としなければ、これからさきもやらなくていいだろう。
なので、課題としては中距離~遠距離魔法だった。魔力による、魔法の攻撃になる為である。
この距離での攻撃といえば、メジャーなのが砲撃や射撃、広域攻撃らしい。
母さんが言うには俺の才能的には、どれもやってやれないこともない。だから、一点強化型より万能型を目指すべきだとのことだった。
俺は最初こそ、どれでもいいだろうと思っていたのだが、これが以外にも以外スッキリする。
砲撃魔法には相手をなぎ払うという爽快感。射撃魔法にはピンポイントに倒せるという達成感。広域攻撃魔法には相手を一掃する殲滅感があった。
どれも、まるでゲームの世界の攻撃みたいでやっていて楽しかった。
とはいっても、いまはこの練習場で母が一時的に出す仮想の敵しか倒せないのだが、それでも十分すぎるほどだった。
俺はこの結果、どれも手放しがたいので、万能型を目指すことにした。
実践に使えるようになるまではそこそこの時間がかかるらしいが、俺なら1年あればある程度は使えるようになるだろうと言っていた。
今から地道に練習をして、1年後が楽しみだった。
唯一、残念だと思うのが、これを実際に使うことができないことだろか。
この練習場からでて使うことはまず出来ないし、また魔法の世界に行けば使えるのだろうが、せっかくの交友関係が無くなってしまう。
何より、母が言うには魔法を使うには普通は管理局に入るらしい。
そして、管理局に入ってしまうと、優秀な魔導師ほど自由がなくなってしまうとのこと。
俺が優秀かはともかくとして、縛られるのは嫌だ。
なので、管理局にも入れないため、魔法の世界で魔法も使えない。
これらにより、俺が魔法を使う機会は失ってしまう。
母さんは前に、魔法によって将来の選択肢に幅が出ると言っていたが、これでは魔法が無意味に終わってしまいそうだ。
まぁそれでもいい。
魔法によって、厄介ごとや、面倒なことに巻き込まれるぐらいなら、いっそのこと、魔法は趣味の範囲にとどめるぐらいでも。
俺にとってはなのはたちがいる、日常のほうが大切だから。
何よりそっちのほうが数百倍楽しいしね。
そんなことを最近思っていたのだが、変化が起きた。
今日は5兄弟と遊ぶ予定があったため、なのはたちとは一緒に帰らず、兄じゃの家で遊んでいたときのことだった。
<……たす……けて>
助けを呼ぶ念話が聞こえた。
この世界、つまりは魔法のないこの世界において念話など普通は聞こえるはずもないものだ。
それが聞こえたということは、俺や母さんのほかに魔導師がいることを意味する。
他の魔導師の存在。
大抵の魔導師は管理局に入ってることから、管理局の魔導師と簡単に推測できる。
つまり、そこからでる結論は……
厄介ごとがこの町に絡んできたやがった!
厄介ごとは嫌だ。ああ、俺の日常を壊さないでくれ。心のそこからそう思うよ。
助けを呼ぶとか、いきなり危険度が高すぎだしね。
絶対に厄介ごとだよね、念話の声も今にも死にそうな虫の息だったし。
だから、俺の行動は必然と決まる。こんな念話は完全スルーに決まってる。
そして、以後魔力反応があっても関わらないようにしよう。
ああ、それがいい。
無駄な争いはよくないからね! うん!
俺は平和主義者なのだよ、ははは。
「どうしたの、竜也? 何か悩み事かしら?」
「ううん、なんでもない。大丈夫だよ、母さん」
「そう? 今日の念話のことでも気にしてるの?」
「え? やっぱり聞こえたの?」
やはり、母さんにも聞こえたらしい。
母さんもやや面倒くさそうな顔をしながら、少し遠いところみつめた。
なにか、思うところでもあるのだろうか。
「聞こえたわよ……それに見えるわよ、厄介ごとの兆しがね」
母さんは昔一悶着合ったようだから、余計なのかもしれないし、今までの人生の経験からかもしれない。
その点から見ても、
母さんにとっても今回のこの一件は非常に厄介なものに感じているのかもしれない。
だからら、たぶん、今お互いに思ってるだろう。
巻き込まないでくれ、と。
家は親子揃って事なかれ主義だから仕方ないね。
俺もよっぽどのことがない限り、巻き込まれようとも思わないしね。
必死に回避して見せるさ。
いざと言うときはあの5兄弟も利用しよう。
うん、きっと喜んで動いてくれるはずだ。
あとがき
魔法少女リリカルなのは……始まります。
作者のタピです。
本編突入です。
それにあたって、今までのおさらいとか、竜也の修行の状況のなどの確認。これからの、方向を指し示す回でした。
いわば、プロローグみたいなものですね。
ギャグ要素は皆無だった気がします。
文も説明的になって、ほのぼの感があんまりありませんね;
しかし、ここからが本番です。
色々と頑張っていくので、応援があればよろしくお願いしますね。
最後に
今日は投稿できないかもしれないといいましたが、今後の展開にパッと思いつくものがあったので、
何とか書けました。
さて、どのような展開になるかが、作者自身も楽しみです^^