不審者、もっと大きくいえば犯罪者と言うのにはいくつかのパターンに別れていると思う。
大まかに言うならば、二つに絞られる。
一つ、それは自分の為に人様に迷惑をかけてしまう者。これは極めて単純にして明解である。
自らが喜びたいから、楽しみたいからという非常に自己願望、欲望まみれの自己中な発想だ。
この場合は悪意と言うものがあるわけではなく、たまたまその行為が他の人にとっての悪意へと繋がってしまったと考えるべきだろう。
もう一つは、人に迷惑をかける為に行為を行うもの。
これこそ、不審者や露出狂とかが当てはまるのではないだろうか?
いや、露出狂の場合は自分が良かれとやってる場合があるが……「生まれたままの姿が当然なんだ!」とかいいながら。
まぁ何が言いたいかというと、
「おい、そこの不審者」
「なんやて! 私は不審者やな─竜也君!」
自分の家の前でうろうろ、また、キョロキョロしている人物がいたらそれは確実に不審者かストーカーだろ。
まぁいい、それは置いとくとして俺には一つ疑問がある。
「なぜ、お前は俺の家を知ってる」
俺ははやてに家を教えてことはないんだけどね。
教える機会もなかったし、教える必要もないかなとも思ってたし。
何より、さすがに車椅子を家に入れられるほど大きくもないしね。
「なぜって、それは教えてもらったからに決まってるやろ?」
「は? 誰に教えてもらったんだ?」
「え? 竜也君に決まってるやないか!」
だから、俺は教えてないとあれほど……
一体どういうことなんだ?
俺が無意識に教えたとかそんなファンタジーなことはないだろうし……
それとも、警察まがいな探索能力でもあるんだろうか?
「ええっとなぁ。正確には偶然、ほんま偶然やで? たまたま竜也君が学校から帰る姿を見かけたから、
こっそりと後ろから着いて行ってな、家までご案内してもらったんよ」
捕まえる方ではなく、捕まるほうの行為だった。
しかも、不審者じゃなくてストーカーだった。
「はやて……それはす─」
「ストーカーや、言うんやろ? ほんまあっさいな、竜也君」
やれやれと言った表情したうえに、やれやれのポーズまでとる、はやて。
やれやれのポーズと言うのは、8×8のゲームのあのゴリラのアピールみたいなやつだ。
一つ間違えば、アピールと言うよりも挑発にしか見えないけどね!
「いやいや、浅いも何もこれ以上に適切な言葉ないだろ?」
「いや、竜也君は勘違いしてるで。これはなぁ、ちょっと人との付き合い方が不器用でねっちこくて根暗になってしまう乙女な心なんや!」
「それがストーカーの原型だよ!」
しかも、このはやてのセリフの雰囲気がどこかの漫画で読んだことあるような感じだよ。
あ、思い出した。タイトルで一文字間違える下ネタになってしまう、あの漫画か。
シリアスの後のギャグが最高なんだよね……ってそうじゃなくて!
「やっぱりストーカーじゃないか……」
「ええやないか、別に。それほど愛されてるってことやで」
「重い思いってことか?」
「……ああ、それでなぁ」
「俺の渾身のギャグをスルーするな!」
「いや、あれはあかんで、拾ったらこっちが火傷や」
せっかく駄洒落、もとし駄目なシャレを言ったというのに、スルーとは……
一番芸人が傷つくパターンですよ!
俺は芸人じゃないけどさ。
「いやいや、そこは拾って関西人の意地を見せてくれよ」
「あ……なるほど、そういう手があった! じゃあ、もう一回頼むわ」
滑ったギャグをもう一回やれとな?
はやては案外鬼畜なんだな……てか、もしかして怒ってるのか?
「怒ってないで、決して怒ってないよ? こんな美少女をほったらからして、ほかの女の子の友達と遊ぶような、竜也君に嫉妬もせぇへんし、
竜也君は今頃楽しんでるやろうなぁって思って少し悲しくなって涙流したり、そんなんやったら、家に直接殴りこんだろうか! なんて思ったりもしてへんよ?
ほな、続きを早くやってや、渾身の突っ込みをしたるで!」
怒りがところどころ……でもなく、思いっきりぶつけられてるし、隠す気もないようだ。
そんなはやての背中には黒いオーラが……
あれ? 俺ってはやてに会うたびにこのオーラを見ているような……気のせいですよね?
まぁいい、とりあえずはやての要望どおりもう一回同じギャグをやろう。
どんでんは漫才の基本だしね!
「はやての思いが重たいよ!」
少し変化をつけてみた。頑張ってちょっと工夫を凝らしてみた。
さっきより上手く言えたと思う。
「…………」
しかし、突っ込みが返ってこない。無言である。
あれ? 渾身の突っ込みがくるんじゃないの?
かなり期待したのに、はやては結局無言ですか?
無反応ですか? この後の収集はどうつければいいんですか!?
そんなことを思っている、はやてと目が合った。
はやては口も動かさずじっと俺の目を見て、目で語ってきた。
「で、この後はどうするんや?」と。
え、何?
俺のボケ待ちなの!? 俺が悪いんですか、そうなんですか!?
さっきの駄洒落はスルー!? というよりそのシーンすらもなかったような扱い!?
「はぁ、まぁええわ」
何でそこまで深い為息するの!
そして、どうしようもない奴といった目で俺を見ないでくれよ。
俺は普段突っ込みなんだから……いや、突っ込みでもないような気がするけど。
なんか、なのはの気持ちが分かったこの瞬間。
もっと優しくしてやるべきなのかな。
「それで、今日はクリスマスやで」
「え……そうだな、本当に今更だけどね」
「それでなぁ、竜也君が来るのが今か今かと準備した料理の数々が家にあるんやけど……」
何で俺が来るのが前提で作ったんだ、はやてよ。
誰も会う約束はしてないじゃないか。
しかも、この言い回しは明らかに、来いっと言ってるよね?
「だから、ほな早く行くで。それとも、まさか料理まで作らせといて来ない……何で言う気やあらへんよな?」
有無を言わさぬ、その気迫。
もはや言葉で来いって言ったしまったはやては、脅迫とか拉致に近いものがある気がしますよ?
俺に拒否権はないのでしょうか?
「常任理事国やないから、ないで」
「また、心読まれてるし」
それにそうなんだよね!
日本は常任理事国じゃないから拒否権ないんだよね!
ああ、いい社会の勉強になった……じゃなくてさ。
俺ってはやてに言い様に……まぁいいや。
うん、深くは考えないようにしよう。たぶん、考えたら傷つくし。自分が!
「じゃあ、家に行くで」
「ちょっと待った!」
「え?」
「家にちょっと忘れ物があるから」
「ほんまにか? そのまま家に引きこもるつもりやないんやろうな?」
「違うから安心して。本当に忘れ物だから」
「う~ん、分かった。じゃあ、待ってるで」
「ああ、悪いね」
俺はい家に置いといた、忘れ物を翠屋からもらったケーキ‘専用’の箱に入れ、それを大き目のバッグに入れて、はやての元に戻った。
「待たせたね」
「ほな、家にレッツゴーや!」
と、意気揚々に言うはやてだが、車椅子だから押していくのは俺のため、全くしまらない。
しまらないが、俺も結構ノリ気なので「よっしゃー」とか言いながら、全力全快ではやての家に向かった。
「お……思ったより……距離があった」
「だから言ったやろ? こんなに飛ばして大丈夫なんか?って」
俺の家から走って約1時間。
最初は猛ダッシュで走った為途中で燃料切れ。よって、俺は冬なのに汗を掻きまくりです。
「にしても、すごい料理だな、これ」
「そうやろ? すごい頑張ったんやで」
クリスマスと言うことで、張り切ったのか。
それとも、俺が来るから頑張ったのかは分からないが、とにかくすごい料理の数々。
七面鳥も当然の如くテーブルの中央にある。
明らかに二人で食べきれる料理の量じゃない。
これを一体誰が食べると言うのだろうか……
「そんなん決まってるやろ、竜也君や」
「ははは、食えるか!」
「え……私に作った料理が食べれへんと言うのかいなぁ、竜也君は」
「そう言う訳じゃなくてだな」
「あの日誓った、約束は嘘やったと! そう言うんか!」
「いつ誓った!? 誰と誰が何で、何を誓ったんだ!」
「私と竜也君が神父様の前で永遠の愛を誓ったんや!」
「いつだよ!?」
「前世で!」
前世かよ……前世と言う言葉でこじつけて、運命と言うつもりなのか?
そ、そんな都合のいい運命なぞ信じるか! 何より納得できない!
「まぁええわ、これは私の記憶やから」
「お前は転生者とでも言うつもりなのか!?」
「違うわ、前世持ちや! 都合のいい記憶もちとも言うかも知れへんが」
はなはだ迷惑の話だった。
しかも、都合のいい記憶もちって、それはただの捏造じゃないか。
「SSの世界ではご都合主義も転生者も捏造もあって当然の世界やで!」
「ここは現実です!」
まったくどこにこんなリリカルな発想を持つんだよ。
あ、リリカルって言うのは滅茶苦茶なって意味ね。
漢字にすると文字数が一緒だからわざわざ文字を変える必要ないね。
「もう付き合いきれない……いい加減飯食べようぜ」
「あ、そうやな。ごめんなぁ。竜也君としゃべるのが面白くてっついつい」
そういってもらえると嬉しいんだけど、しゃべって疲れたんだよね。
それにお腹も減ったきたし、ここについた時点ですでに6時回ってたからね。
高町家で少しのんびりしすぎたかも。
写真の予約に時間がかかったからなぁ。
「よし、じゃあ」
「うん、そうやな」
「「いただきます!」」
はやての手料理をご馳走になりました。
どれも、見た目に違わぬ美味しい味でした。うん、こんな豪勢なものをを食べるのもはじめてかも。
そんなことを思いながら、くだらない話をしながら食べたら、あっという間になくなってしまいました。
食べきれないと思ったんだけどな。はやての料理の腕は天晴れと言うことかな。
「「ご馳走様でした」」
「ぷはぁ、食べたで、もう何も食べられへんよ」
「そうか、じゃあ俺のとっておきも無理だな」
「え? とっておき?」
そう、とっておき。
前もってははやてにはクリスマスプレゼントを用意しようと思って作った、特性ケーキだ。
何が特性かって、ケーキの形が狸の顔の形だからね!
でも、残念だな。
はやてはもう食べられないと言う。
こうなったら、家にもって帰って一人寂しく食べるか。
「なんで、それをもっと早く言ってくれへんの!?」
「あれ? また心が?」
「もちろん、喜んで食べさせてもらうで」
「そうか? じゃあ」
俺は袋から箱を取り出し、ケーキをテーブルの上に置く。
「ほ、ほんまに狸の形やなぁ。しかも、かなり私に似てるし……これは皮肉のつもりなんか?」
はやても、俺に文句を言いながらも、喜びが隠せないようだ。
その証拠に目からは涙が……
「流してへんよ! 勝手に捏造すな!」
これだから、心を読む奴は。
せっかくいいシーンに見せようと思ったのに、俺の心の中だけでも。
「でも、嬉しいのは本当や。ありがとうな」
そんな、はやての目には涙が……
いや、今度は本当だよ?
マジで泣いてるんだって!
「あ、あのなぁ。私、ほらこんなんやん。学校は行けへんし、親には死なれるし。
だからなぁ、こういう機会はもう無いと思ってたんや、だから……だからなぁ」
「そうか、そうか、俺のやさしさにころっときたか」
「ははは、なんやそれ、せっかくの私のいいセリフが台無しや」
「いいんだよ、俺には軽いノリでさ。おまえもいつも通りの軽いノリでやろうぜ。
しんみりとか、シリアスとかもうお互いに、うんざりだろ?」
「ほんま……ほんまにその通りやな! よし、そうと決まったら泣くのはもう無しや!」
全く性格に似合わずに泣きやがって。
そんなキャラじゃないだろ? もう、一人じゃないんだしさ。
「よし、今夜は命一杯遊ぶか、はやて!」
「おう!! って、え? 今夜ってまだ平気なんか?」
「ああ、今日は泊まっていってもいいか? 家に誰もいないし寂しいんだよ」
「そ、それは別にかまへんけど……ほんまにええのか!?」
「いやいや、俺が泊まってもいいか聞いてるんだけど?」
「そ……そんなのあたりまえやんか! そうか、そうか竜也君は今日は私の家でお泊り」
「そうそう」
なんか、予想外にすんなりというより、はやてはむしろ喜んでいるみたいだが……まぁ泣かれるよりはいいか。
「ふふふ、一緒にお泊り。お風呂一緒に入って。一緒にお布団入って、一緒に寝て、一緒に……」
「ま、まて! 一緒にお風呂とか、一緒に寝るとかないぞ!」
おかしいだろ途中から発想が!
なんで、一緒にお風呂はいるんだよ……一緒に寝るとかも……
「え? 駄目やんか?」
「な、何でそれだけで泣きそうな顔になるんだよ!」
「駄目……かな?」
「うぅ……泣き落としなんて」
泣き落としなんて卑怯だ!
で、でも……くそ! お、男の子としての本能が拒否することを拒絶してる。
「わ、分かったよ。今日だけだぞ!」
「やったー! 友達とそうやって過ごすのが夢やったんよ」
どんな浅い夢ですか?
いや、はやてだからこそなのかもしれないけど……でも、それでもだよ!
俺にそんな夢を託すなよ。俺で叶えようとするなよ! いくら俺でもお風呂とか羞恥心あるわ!
まぁ布団は……たまになのはが潜り込んだりしてくるから、慣れてるけどさ。
「しょうがない、じゃあ、まずはケーキを食べよう」
「そうやな」
俺とはやてはその夜、一緒にお風呂を入り、一緒の布団で寝た。
なんやかんやで楽しい1日だったかもしれない。
去年とは違う、人の温かみと言うか、クリスマスの過ごし方と言うか、まぁそんな感じだ。
今年のクリスマスも楽しく過ごせたのでよしとしよう。
後日談。
竜也が家に帰ると、家のドアの前には5つのプレゼントとクリスマスカードが置いてあり、こう書いてあった。
「来年こそは閣下と一緒に過ごしたいです。5兄弟より」
すっかり忘れていた、彼らの存在。
ちなみにプレゼントは、新作ゲームカセット5本と言う、なんとも思いやりのある、真面目なプレゼントだった。
あとがき
ツイッター始めてみました。
暇なときに呟いてますが、反応がないと寂しいですよねorz
作者のタピです。
ちなみに、ユーザー名は作者名の @ を _ にしてくださいね。
フォローしてくれるとありがたいです。
まぁそんなことはさておきw
作品がマンネリ化してるような気がしたので、テンポよくを目標に書きました。
作者の渾身のギャグパートです。
笑ってもらえればこれ光栄
面白いと思っていただければ最高の栄誉
そんなわけで第30話です。
こんな作品ですが、もう30話ですよ。一ヶ月ぐらいですね、初投稿から。
こんな時になんですが、初投稿のときはもうそれは本当に適当と言うか、勢いだけで書いて、これでもかーと言う感じだったんです。今も近いものがありますがw
そのころから読んでくださってる人はいるのでしょうか?
もしいたら、本当に感謝感激です>< ありがとうございます。
皆さんのおかげで第30話、まだまだ続きます。今のところ全部オリジナルストーリーですけどね。
次回はようやく春が来ますよー!
最後に
皆さんに支えられて第30話。ブログで知っている方もいると思いますが、
こうやって執筆が継続できるのはひとえに読んでくれる方、感想を書いてくれる方のおかげです。ありがとうございます。
そして、これからもよろしくお願いしますね^^
相も変わらず自由奔放なあとがきでした。
P.S
次回の投稿はもかしたら明後日の可能性がありますのでご注意を