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No.15932の一覧
[0] 時をかけるドクター[梅干しコーヒー](2010/06/21 22:13)
[1] 第1話 アンリミテッド・デザイア[梅干しコーヒー](2010/07/03 18:29)
[2] 第2話 素晴らしき新世界[梅干しコーヒー](2010/01/31 01:37)
[3] 第3話 少女に契約を、夜に翼を[梅干しコーヒー](2010/02/01 22:52)
[4] 第4話 不屈の魔導師と狂気の科学者[梅干しコーヒー](2010/03/06 13:01)
[5] 第5話 生じるズレ――合成魔獣キマイラ[梅干しコーヒー](2010/03/06 13:02)
[6] 第6話 生じる歪み――亀裂、逡巡――純[梅干しコーヒー](2010/03/06 13:02)
[7] 第7話 生じる答え――矛盾邂逅[梅干しコーヒー](2010/03/03 17:59)
[8] 第8話 歪曲した未来――無知と誤解[梅干しコーヒー](2010/03/06 13:10)
[9] 第9話 歪曲した明日――迷い蜘蛛、暮れる夜天[梅干しコーヒー](2010/03/18 00:02)
[10] 第10話 歪曲した人為――善悪の天秤[梅干しコーヒー](2010/03/20 23:03)
[12] 第10・5話 幕間 開戦前夜――狂々くるくる空回り[梅干しコーヒー](2010/03/25 20:26)
[13] 第11話 始まる終結――擦違いの戦場へ[梅干しコーヒー](2010/03/29 05:50)
[14] 第12話 始まる集結――蠢く夜の巣へ[梅干しコーヒー](2010/04/02 22:42)
[15] 第13話 始まる終決――時の庭園へ[梅干しコーヒー](2010/04/08 21:47)
[16] 第14話 絡み合う糸――交錯の中心座[梅干しコーヒー](2010/06/16 22:28)
[17] 第15話 空見合うカンタービレ――過去と未来のプレリュード[梅干しコーヒー](2010/06/21 23:13)
[18] 第16話 空見合い雨音――歩くような早さで。始まりの終わりへ[梅干しコーヒー](2010/07/03 18:34)
[19] 第17話 変わる未来[梅干しコーヒー](2011/05/02 00:20)
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[15932] 第15話 空見合うカンタービレ――過去と未来のプレリュード
Name: 梅干しコーヒー◆8b2f2121 ID:5daf610c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/21 23:13



ズキりと鈍く痛んだ胸に、無理矢理意識を覚醒させられる。
天井を見上げ、寝汗で気持ち悪くなった衣服に気づくと、クロノはゆっくりとベッドから起き上がった。
起きてすぐ。現在時刻を確認したのは、先日の事件からどれくらい経過しているか確認する為だ。見てみれば、もう少しで正午に差し掛かろうとしている。
随分な時間寝てしまった自分に、だらしない、と小さく嘆息。ベッドに腰掛け、着替え始めた。


「っ……」


大仰な包帯が巻かれている胸部。切り裂かれた傷は、縫合し終わっているにも関わらず、熱を孕んでいるような錯覚がある。
無理に動かなくとも、些細な切欠でも開くだろう。着替えの最中にも感じる痛みに、ふとそう思いながら、クロノは普段通り執務官服のズボンを履いた。。

自分に出された命令は、待機。不満は或るが、理屈も理由も分かる為、従うしかない。今の自分は、役に立たないのだから。
だが、起こしてくれてもいいじゃないか、と思うのも本音だ。
気遣ってくれたのだろうとは分かっていたが、クロノは少々やるせない気持ちになってしまう。


「…………。あいつ……」


自分の胸部に触れ、呟く。
完全にしてやられた自分を情けなく思いながら浮かんでくるのは、この傷を負わせた張本人、ジェイルと名乗った少年のことだ。
正直な話。一晩隔てた今でも、何が如何なっているのか分からない。現地住民の少女から得た情報が、余計にクロノを混乱させていく。

当初、彼は高町なのはと一緒に居て、ジュエルシードの回収を手伝っていた。
筈なのだが、敵に回り、あまつさえ自分達時空管理局と敵対。おまけに、態々自分がジェイル・スカリエッティだと臭わせてきた。
しかも、高町なのはを倒し、ジュエルシードを奪えた状況だったにも関わらず、しなかった。
目的が何なのか。と言うより、目的が或るのか。今となっては、そこから疑ってしまう。


「あ、良かった。クロノ君、起きてたんだ」


パシュ、と音を伴ってドアが開く。クロノが目を向ければ、そこにはエイミィが居た。
入る前にノックくらいしろよ、と一言物申そうと考えたが、これも今までも何度かあったことで。
今は別にいいか。そう胸中で呟くと、クロノは口を開く。


「もう昼だからね。まぁ、自然と起きるさ」

「ま、そうだよねー。でもまぁ、こんな時くらいゆっくり寝てもいいのに」

「まったく……こんな時だから、ゆっくり寝てなんかいられないだろうに。
で、何の用――」

「――くーろーすーけーっ!」


言葉を遮り、エイミィの後ろから声と共に飛び出す影。
聞き覚えの或りすぎる声と見覚えの或る姿を見てクロノは嫌な汗を流し、その場から弾かれるように退いた。
クロノが避けた為ベッドに突っ込む形となった人影は起き上がると、今頃抱きついていた筈だった少年をジト目で見つめた。


「……避けなくていいじゃんかー。折角久し振りに会ったのに」

「と、時と場所と僕の状態を考えろ!
…………ん? ていうか何でロッテがここに居るんだ!?」


叫んだことで響いた傷に悶えながら、ベッドの上を指差すクロノ。
銀髪に特徴的な猫耳をした女性、ロッテはクロノの態度が不満だったのか、むくっと起き上がり不貞腐れた様子で胡坐をかいている。
エイミィはそんな二人の様子に苦笑すると、足を室内へと進めた。


「そのことも説明しときたくて。まぁあと、もう昼だしそろそろ起こしてもいいかな、って思ってね。
ついでに、ロッテもクロノ君に早く会いたそうだったから、連れてきちゃった」

「ああ……もうこれ以上ないくらい目が覚めたよ」

「そりゃ良かった良かった。あたしのお陰だね」

「ロッテの所為だ。……ていうか、ロッテが増援ってどういうことなんだ?
増援が来るのは早くて明日……じゃなかったのか? 物理的にも、本局の内情的にも」


得意げに尻尾を振っている猫の使い魔を横目で流し見ながら、エイミィへと説明を求める。
管理外世界の為、物理的に時間が掛かってしまうことに加え、他所の部署から人員を引っ張ってくるしかない。
他にも事情はあったらしいが、どれだけ早くても、自分の記憶に間違いがなければ、先程口にした通り増援が到着するのは早くて明日だった筈だ。


「その件なんだけど、ロッテってば、偶然だけど地球に居たらしいんだよ。
だから、こんなに早く合流出来たってわけ。って言っても、ついさっきの話なんだけど」

「……いや、だから何で居るんだ? 地球って、管理外世界だぞ?」


そう、時空管理局の地上部隊が駐屯する管理世界ならば、偶然居合わせたとしても説明は付く。
魔法文明の存在しない世界に管理局は存在しないどころか、名さえ知られてはいない。
よって、ロッテが地球に居たというのは、如何考えても在り得ないし、不自然だ。短く考えて、クロノは訝しげにロッテを見やった。


「ほら、父さまの故郷が地球だってのはクロスケも知ってるだろ? まぁ、日本じゃなくてイギリスだけどさ。
仕事の方も一段落してたし、丁度時間あったから、別荘の掃除とか整理とかしてたんだよ。ま、休暇中だったってこと。
で、父さまから連絡受けて大急ぎでアースラに増援に来た。簡単に纏めると、こんな感じだよ」

「……ああ、そういうことか。全く、都合の良い偶然もあったもんだ」

「まねー」


この状況に一応の得心が及んだクロノだったが、ロッテの暢気そうな声を聞いて小さく溜息を吐いた。
嘆息こそしたが、猫の手でも借りたい状況で、この戦力増強は在り難いと思えた。考えてみれば、本当に猫だったわけだが。

リーゼアリア、リーゼロッテ。
本局でも指折りの実力者であり、自分の師匠でもある二人の力は、身に染みて知っている。
これ以上ない増援だ。昔からの流れで、今だにじゃれついてくるのを抜きにすれば、だが。


「……アリアはどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」

「あっちはあっちで別件。それに地球に来てたのはあたしだけだからね」


……まぁ、これ以上贅沢は言えないか。
そうクロノは胸中で呟きながら、突然の来客ですっかり着るのを忘れていた上着を羽織ると、エイミィの脇を抜け部屋の出口へと向かう。


「クロノ君?」

「ブリッジに行く。艦長とも少し話し合いたい」

「無理しないでってば。怪我人なんだよ? 今のクロノ君」

「頭は動かせるさ。それに、只待機してられる状況でもない。
ロッテ、君も来てくれ。僕の方からも伝えておきたいことがある」

「はいはーいっと」


そう言って部屋を出て行くクロノに、ベッドから飛び降りたロッテが続く。
仕方ないなぁ、とエイミィは一人呟くと、肩を竦めて二人の後を追った。


「っ!?」


クロノが部屋の出口に差し掛かったと同時、アースラ艦内全てにけたたましい警報音が鳴り響く。
緊急事態を告げるアラームを受け、三人は一度その場で立ち止まった。


(まさか、またあいつか!?)


余りにも早すぎる再襲来にクロノは顔を苦々しく歪める。
数瞬、戸惑いこそしたものの、逸早く我に帰ると背後の二人に振り返り――そこで、止まった。


「……ロッテ?」


ロッテは天井を見やったまま、その場を動こうとしない。不審に思ったクロノが声を掛けるが、反応は無い。
エイミィも同じく突然の事態に戸惑っていたようだが、見る限り、二人の様子は明らかに異なっている。
驚きだけでなく、敵意を滲ませた眼光。幼い頃から親交の深いクロノにとっても、ロッテのこの顔は初めて見る類のものだった。


「……ん? ああ、ごめんごめん。ちょっとボーッとしてた。
さてと。行こっかねぇ」


ロッテは漸く声に反応すると、クロノの横を足早に抜けて去っていく。
慌ててエイミィもそれに続いていった。既にロッテから先程の剣呑染みた雰囲気は消え去っている。
……気のせいか?
クロノは訝しげに首を傾げたまま、二人の後を追った。









































学校中に、授業終了を告げるチャイムが鳴り響く。次いで、教室に居る全員が号令を合図に立ち上がり、一礼した。
心ここにあらず。授業中もずっと上の空だったなのはが、周囲と同じように行動したのは、半ば惰性だろう。
授業が終了する間際、担任の教員が何か大事な連絡事項を言っていたが、良く思い出せない。
疲れているのだろうか。多分、その通りだ、と考えて、なのはは微かに顔を伏せた。
表情を曇らせたまま、机の上に広げていた教材を中に仕舞う。気づけば、ノートはほぼ白紙。何も、書かれてはいなかった。


「…………はぁ」


休み時間に切り替わり、教室には楽しげな声が上がり始めている。なのはが洩らした小さな溜息は、喧騒に上書きされすぐに消えていった。
だが、自分の耳には嫌に残ったそれが、周囲の光景を、何処か別の世界の出来事のように感じさせてしまう。
自然と、俯く。片付け終わった机の上には、何も置かれていない。色の薄くなった瞳で、なのはは只それを眺めていた。


「……なのはちゃん?」


声が聞こえてから数拍置いて、はっとなり、顔を上げるなのは。そこに居たのは、紫髪の少女、月村すずかだった。
掛けられたすずかの声には、心配げな色が滲んでいた。それを感じ取ると、心中は兎も角、なのはは小さく笑った。


「あ……うん。ごめんね。ちょっと考えごとしちゃってた」

「……あんた、最近そればっかりね」


すずかの隣に居た金髪の少女、アリサ・バニングスが、何処か呆れたような、苛立っているような声をなのはに向ける。
声に釣られて、アリサへと振り返り、なのはは目を伏せる。違うとは分かっていても、それが責められている気がして、直視出来なかった。
そんな自分が嫌で、だが、そうせずにはいられなくて。「何でもないよ」と口にしたかった筈のなのはの表情は、余計に曇掛かっていくばかりだった。


「……すずか、行きましょ」

「え? ア、アリサちゃん?」


なのはのそんな態度が余計に勘に触ったのか、すずかの戸惑いを無視し、アリサは踵を帰してその場から離れていく。
どうしたらいいんだろうか。そう逡巡し、すずかはその場で二人の親友へと瞳を右往左往させる。


「……すずかちゃん、私のことは気にしないでいいよ。お昼ご飯、食べてきて」

「で、でも……」

「本当に、なんでもないから。本当に、ちょっと考えごとしてただけだよ」

「なのはちゃん……」


中身を感じさせない空笑いを浮かべながらそう言ったなのはを見て、すずかは表情を微かに曇らせる。
すずかとて、それが嘘だとは分かっていた。聞かせてくれれば、何か力になれるかもしれない。
そう思うが、自分達に相談してくれないのは、何か理由が或るのだろう、と考えてしまうのも事実だ。

本人が言い出すまで待ってあげよう。
ここ最近、今日だけではなく以前から様子のおかしかったなのはに、すずかとアリサは互いに相談し合って、そう決めていた。
当初は反対だったアリサも渋々ながら了承したのだが、温泉旅行に行った際どこかギスギスしていたのも手伝い、もうそろそろ我慢の限界なのだろう。

友達のことを心配しているから、あんな態度を取ってしまう。
それが分かっているから、自分もこうやって右往左往してしまう。どうしたらいいのか、分からなくなってしまう。
何せ、正直な話、なのはが何を悩んでいるのか、待とうと提案したすずかも、そろそろ打ち明けて欲しいのだ。
もはや、今の親友は悩んでいるどころではなく、苦しんでいるとさえ思えてしまう。


「その……なのはちゃん、何を悩んでるのか、そろそろ話してくれないかな? 私達でも、力になれること、あるかもしれないよ?
それに、誰かに話したら少しは楽になるかもしれないし……」

「……うん。ありがとう。
でも……うん、大丈夫、だから」


二の句を告げさせないなのはの答えに、すずかは制服の裾を握り、小さく俯いた。
教室の出口を見てみれば、アリサがドアに背を預け、急かすように此方を見ている。
なのはを放ってはおけないが、アリサとももう一度話をしたい。でなければ、溝は深まるばかりだ。


「あの……いつもの場所でお昼ご飯食べてるから。なのはちゃんもその……来てね。
先、行くね」


それだけ言い残し、アリサの後を追って、すずかが立ち去っていく。
そうすることしか出来ない自分に歯噛みしながら、なのはを数度振り返る。アリサと合流すると、煮え切らない表情のまま昼食を取る為屋上へと向かった。


(…………)


只無言のまま、二人の親友を見送った自分に引け目を感じ、なのはは首元の赤い球を細く握り締める。
何もかも、上手くいかない。何をしても、悪い方向に転落する。
頑張ろうと決めた。今でも、気持ちと決意は折れていない。けれども、その先が怖くて、足が竦んでしまう。
もう、何もしない方がいいんじゃないか、と。浮かんで欲しくない考えが、過ぎっては心を締め付ける。
でも、何もしないでいるなんて出来ない、と。相反する二つの感情に板ばさみにされ、堂々巡りに陥っていく。

……辛いなぁ。なのはは、ずっと吐かなかった弱音を胸の内で呟いた。
そうやって、苦悩に埋没していた為か、いつの間にか自分の机の上に、誰かの弁当箱が置かれていることに気づく。
アリサとすずかが戻ってきたのだろうか。そう思い、また一言断りを入れようと、顔を上げた。


「…………え」


なのはは、瞳を見開いて絶句した。
漸く現実に帰還した頭が、教室のあらゆる場所から奇異の視線が向けられていることに気づく。
だが、何が起こっているのかは、全く分からなかった。
予想していなかった、遥か斜め上をいく来訪者に、なのはは驚くことしか出来ない。


「やぁ、久し振りだね。なのは君」


聖祥大付属小学校、男子用の制服に身を包み、肩に見覚えの或るフェレットを乗せたジェイル。
隣に、同じく制服で。肩にバッグを担いだフェイトが、そこに居た。




















【第15話 空見合うカンタービレ――過去と未来のプレリュード】





















昼休みに移り変わった学校に、楽しげな声が広がっていく。快晴とまではいかない空だが、適度な陽気に誘われ、校庭には徐々に人影が増え始めている。
遠巻きに聞こえてくる喧騒から離れ、この時間帯は誰も寄りつかない校舎裏では現在、荒い息切れが小さく木霊していた。

余程必死で走ってきたのか、なのはは人目を避ける為この場に連れてきた二人に背を向けたまま肩で息をしている。
それはジェイルも同じようで、普段の運動不足が祟り、愉快げに破顔こそしているが微かに苦しそうに。
常日頃から魔導師としての訓練を積んでいる為か、フェイトだけは平然としていた。肩に大きめの鞄を担いだまま、心配そうに、ジェイルとなのはを見やっている。


「……ふぅ。
まさかいきなり走ることになるとは思っていなかったよ」


数度深呼吸し、幾分か息を整え終わったジェイルが、なのはに向かって歩を進める。
声を掛けられハッとなり、振り返ったなのはの前まで来ると、骨折していない左手にぶら下げていた大きめの弁当箱を差し出した。


「さて。先程は言いそびれてしまったが、今日は一緒に昼食でも、と思ってね。
手ぶらのようだが、なのは君の分も勿論用意してある為、心配は要らないよ。
因みに、私のお手製だ。桃子君の味を再現しようとはしたのだが……いやはや、料理と言うものは中々難しいものだね。
あれは一朝一夕で真似出来るものではないらしい」


弁当箱を突き出したままそう言ったジェイルを、なのははしばし呆然と見つめる。
教室で自分の目の前に現れた当初こそ、錯乱していた為か、本人だと確信が持てなかった。
だが、この口調に声、話し方は間違いなくジェイルだ。頭部に怪我が増えていることを除けば、一週間と少し前までの彼と、何も変わっていない。

公園で発見した血痕からして、もしかすると――……とは思っていた為、こうして直に無事が確認出来たことに安堵は或る。
一週間と半。久し振りにこうして会えた。安心している。それは確かだ。
だけれども今は。手放しではもう、喜べない。


「……何で……」

「…………む?」


瞳の奥深くを揺らがせながら、なのはは小さく呟く。
そんな様子を不思議に思ったのか。ジェイルは伸ばしていた左手を降ろし、楽しげな顔を一旦鞘に収めた。

聞きたいことが、話したいことがあった。それが言葉にならない。口に出来ない。多分、見て、知ってしまったからだろう。
多くの人間に怪我を負わせ、ジュエルシードを奪い去った。一緒に過ごした日々の中、いつも楽しそうだった少年は――そうやって笑いながら、誰かを傷つけた。
アースラで見せられた映像を思い出し、なのははジェイルを見つめたまま表情を曇らせる。

許せないとは思わなかった。ただ、信じられなかった。
ジェイルが何の躊躇いもなくあんなことをする人間だとは、どうしても思いたくない。今でもそうだ。そんなことをして欲しくなかった。
だから、言葉が出ない。なのはは纏まってくれない思考と感情に振り回されてしまう。こうして、黙ったまま立ち尽くすことしか出来ない程に。
ずっと、伝えたかった言葉が、或った筈なのに――。

そうして、視線を交差させたまま数拍。
「ふむ」とジェイルは呟き、無言で肩に乗っていたユーノへと目配せする。
それを受け、ユーノはどこか不満そうに口を尖らせる。少しだけ迷うような動作を見せると、ジェイルの肩から飛び降りた。


「……あ」

「その……ごめん、なのは。勝手に飛び出したりして」

「……ううん。元はといえば、私が無茶したからだし……私こそ、ごめんね」


申し訳なさそうに頭を垂れるユーノに、なのはは少しだけ苦笑しながら、同じように謝る。
ユーノがジェイルに連れ去られたと知った時、戸惑いはあった。憤りが無かったと言えば、嘘になる。だが、不思議と心配はしていなかった。

……何だかんだで二人とも仲良いから。
自分がそう思っているのだと。それが分かった時、なのはの中で、スッと胸に落ちてきてくれる感覚があった。
多くの人間に怪我を負わせたジェイルと、短い間だったが、一緒に頑張ったジェイル。まだ、自分は後者を信じているのだろう、と。
肩へと登って来たユーノを見やりながら、なのはは自分の胸の内を噛み締め、口を開いた。


「……ねぇ、ジェイル君。
何でその……家から出て行ったの?」


なのはは声色を段々と落としながら真っ先に聞きたかった問いを吐き終わると、返事を待ち、口を閉ざす。
多くの管理局の人間を傷つけた。理由が有っても無くとも、それはやってはいけないことだ。
だが、その理由を知りたい。自分達の元から去り、いつの間にか管理局と戦っていた――出て行ったから、あんなことになってしまった。
何も知らずに言い合いになってしまい、ジェイルは次の日、姿を消した。もしも隣に居れば、止められたかもしれない。
だから、元はと問えば自分の所為なのかもしれない――あんな顔をさせてしまった自分の所為なのかもしれない。考え過ぎかもしれないとも思うが、否定は出来ない。
なのはは、スカートの裾をきつく握り締めながら、ジェイルの言葉を、答えを待った。


「まぁ、他にやっておきたいことが或ったからね」


内心、次の言葉を怖がりながら返事を待っていたなのはを他所に、ジェイルは何の逡巡も覗かせずに、呆気なくそう口にする。
言っていることは分かるが、なのはが予想していた答えとは随分と異なっている。[嘘]をついているとは思わない。
けれども――。


「……本当に?」

「君に嘘は吐かない。難しく考える必要は無いさ。言葉通りの意味だよ。
そうだね……その理由というのも二つ或るが、最たるものとしては、フェイト君と会いたかった為会いに行った、だよ」

「……んっと、そういうことじゃなくて……。
……何て聞いたらいいんだろ。えーと……ちなみにフェイト君って?」

「ああ、そういえばまだ君らは互いに知り合ってはいないのだったね。いやはや、失念していたよ。
フェイト君とは、彼女のことさ」


言いながら、ジェイルは視線を促す。
それを受け、遠巻きに二人と一匹を眺めていたフェイトはずっと担いだままだったバッグを降ろし、数拍置いて意を決すると、なのはに向かって歩き出した。
つい数十時間前に、戦ったばかりの相手。そして、許せないと唇を噛み締めた少女。段々と。近づいてくるフェイトに対して、なのはは複雑な心境で息を呑む。
何せ、昨日の今日なのだ。心の整理や準備など、全く出来ていない。それに、ジェイルから[本当]のことを聞き終わっていない。


「……ごめんなさい」


突然目の前で頭を下げたフェイトを見たまま、ポカン、と思考毎固まるなのは。
声色や行動からして、本当に申し訳なく思っている様子だったが、なのはには全く意味が分からない。
「えと、え?」などと口にしながら狼狽している間も、フェイトは一向に顔を上げようとしなかった。


「あの……なのは。
この子とジェイルからちょっとだけ事情聞いたんだけど……んっと、凄く言いにくいんだけどさ……。
簡単に言うと……僕達の勘違いだったみたい」

「な、何が?」

「ジェイルを襲ったのって……この子じゃなかったみたいなんだ……」


居た堪れなくなったのか、なのはの肩の上に乗ったままユーノは視線を外し、重い縦線が入った影を落とした。

……………………?

本気で言い辛そうに口にしたユーノの言葉を、なのはは少し遅れて繰り返し始める。
考えて。漸く意味を理解して。ギギギッと。ゆっくりと。まるで出来の悪い人形のように、少年を見やった。
視線で、ジェイルが肯定した時、


「――……………え、ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
ちょ、ちょっと待って……えっと………えぇぇぇぇっ!?」


キーン、と耳に残るほどの大音量で、叫んだ。
何故謝られているのかは未だに良く分からなかったが、それが本当ならば、冗談では済まされないことを仕出かしてしまっている。
勘違い先行で全く話を聞かずに戦ってしまった自分は実はアブナイ子なのかもしれないでもジュエルシード一つ奪われたしていうかこの子凄く綺麗だ。
そんな感じで自分でも良く分からない大混乱に陥り、半泣きになるなのはだったが兎も角真っ先に。風切り音を伴うくらいの勢いで頭を下げた。


「ご、ごごごごごめんなさいっ!!」

「えっ?
えっと……?」

「お話聞かないで戦ったりして…………あれ?
でもあの時、襲ったって……」

「あ、うん。それはそうなんだけど……。
襲ったのは襲ったんだけど……違うけど合ってるって言うか……。
とにかくごめんなさいは私の方で……えーと……」

「え、えっと違う、違うよ。
私が勘違いしたからなんだし謝るのは私の方……え? 襲ったのは本当なの?」


頭を下げたまま、互いに顔を見合わせ、なのはとフェイトは首を傾げる。
なのはの体制的に自然と地面に降りる形になったユーノは「……まぁ、そうなるよねぇ」と二人を見上げながら小さく困り顔で呟き、助舟を出させようとジェイルを見やった。


「……何してるんだ?」


そんなユーノの声に気づいた素振りも返事も無く。
ジェイルはいつの間にか少女二人が顔を互いを見ながら戸惑っている場から少し離れ、何やら超笑顔でビニールシートを広げ始めていた。
ジェイルの突拍子も脈絡の無い行動に少しは慣れたつもりだったが、この時ばかりは、只空気読めないだけなんじゃないかな、と思ってユーノは大きな溜息を。

やがて、ジェイルはご機嫌な様子で左手だけを使い器用にシートを敷き終わると、フェイトが先程担いでいたバッグの中身を物色。
一拍考え込み、振り返った。


「拒否権は無いよ。そこのフェレット、少々手伝ってくれたまえ」

「……頼み方絶対おかしいよな」

「命令だからね」


相変わらずのマイペースさで鞄を漁り続けるジェイルを見ながら、最近溜息ばかりだなぁ、と思いユーノは再び嘆息。
やがて、ジェイルが取り出した品、折り畳みパラソルを見て、頬を引き攣らせた。


「……さすがにそれは……無理だろ。
持てないってばそんなの。元の僕ならまだしも」

「ならば元に戻ればいいじゃないか。
まぁ、一生フェレットで過ごすと言うのならば話は別だが」

「だから僕はまだ……あれ?」

「自分の体の状態くらい把握しておきたまえ。
打撲などの損傷は兎も角、本来の姿に戻る程度の魔力くらいは回復しているのだろう?」

「あ」


言われて。ふと、自分の体を隈なく観察し始めるユーノ。確認を取るように数度瞳を閉じる。
ジェイルがどこか呆れた様子でそれを眺めながら余り興味の無さそうな顔を浮かべると同時、ユーノの体が翠色の魔力光に包まれていく。
異変に気づいたなのはとフェイトは、眩い光彩に少し目を顰めながら、伏せ気味だった顔を上げた。

段々と晴れていく光。
その全てが霧散すると、中から一人の少年が姿を現す。
ハニーブロンドの髪を携え、物腰の柔らかさを感じさせるその人物は、ユーノ・スクライアその人であった。


「……ってえぇぇぇぇっ!? ユ、ユーノ君なのっ!?」


ユーノを見るなり、なのはは今日二度目になる驚愕を。
フェイトはポカーンと口を開けたまま硬直し「……あ」と何故かバツの悪そうな顔を浮かべる。


「やっ……たっ……っ!」


これで足手まといにならないで済む。これでジェイルに茶化されずに済む。
嬉しさと目頭が熱くなる想いで、感激の余りユーノは思わずガッツポーズ。そんなユーノの感動に、小さな溜息が水を刺した。


「全く、君はユーモアセンスに欠けるね。
頭部のみフェレットのまま。腕足がフェレットのまま。など、選択肢は山ほどあっただろうに。
それでは芸人として失格だろうに」

「今後一切、僕は絶対にジェイルの前であの姿にはならない……っ!」


「まぁ、別にどうでもいいがね」とジェイルは大して興味の無さそうに、パラソル毎ユーノへと放り投げる。
ジェイルは片腕しか使えず、女の子に頼むのも少し情けない。口を尖らせながら、仕方無いなぁ、とユーノは渋々パラソルを立て始めた。



その後、流されるままなのはとユーノはビニールシートに座らされ、何が如何なっているのか分からぬまま、なし崩し的に四人で昼食へと。
しかし、ジェイルがユーノの分まで弁当を用意している筈もなく。
ユーノはフェイトが作ってくれていた弁当を食べることになったが、ユーノを使い魔だと勘違いしていた為、用意していたのは所謂イタチ科の好物で。
余りに申し訳無さそうなフェイトの様子を見て、ユーノは涙を堪えて早くもフェレットに戻った。





















ジェイル達が昼休みを利用し、再邂逅を果たしているのと時を同じくして。
海に面している海鳴市から遠く離れ、内陸へと進んだ山間部では現在、様々な光彩が飛び交っていた。
鬱蒼と生い茂る木々を包み込むサークルは、山を丸ごと覆い隠す程に巨大だ。内部で光が奔る度、けたたましい爆発音が地を揺らしている。


『……うっわぁ』


激しい戦闘が繰り広げられている封時結界内の一画――森林から一本突き出た背の高い木。
その天辺で、今はスタンドアロン状態――3cm程度の小型蜘蛛に変形しているコガネマルは、一人声を上げた。
声色には恐れが混じっており、暗に早くこの場を去りたいという主張が滲んでいる。それもその筈。何せ、遠方で戦っているのは9名の局員と巨大過ぎるスズメバチ。
前者は特に問題無かったのだが、コガネマルにとっては、後者が途轍もない意味を持っていた。

黄金蜘蛛の生態をそのままデバイスAIへと転写されている為、全てに至るまで蜘蛛そのもの。デバイスに分類するより、機械で構成された生命体の方が近いだろうか。
拠って、本能レベルでの天敵には当然の如く真っ先に恐怖を抱いてしまう。蜘蛛にとってのそれは、蜂。
加え、数メートルもの巨躯を誇っている。コガネマルにとってその異様は、悪夢以外の何物でもなく、初見した時は『あばばばば』と震えることしか出来なかった。

……学校行きたかったなぁ。
そう何度も愚痴を零し踵を返そうとするが、その度に脳裏でジェイルの吊り上った笑みが思い浮び、コガネマルは嫌々ながらもその場に留まり続ける。
自分へ出された命令は、偵察と報告の二つ。戦わなくても構わないだけマシとは思うが、それを抜きにしても兎に角蜂が怖い。正直に言わなくとも早く帰りたかった。


『あーあ……代わってくれないかなーバルディッシュ』


器用に八つの単眼でそれぞれ別の光景を切り抜き、戦場の全体を捉えたまま、ブツブツと独り言を洩らして暇を潰すコガネマル。
文句を口にしながらも、ジェイルの言い付け通り映像データを取るのは、お仕置きされるのが恐いからだ。
フェイトがマスターの方が良かったなぁ、と自分の電力残量を確認しながら、コガネマルは再び愚痴る。


『……んん?』


ふと、録っていた映像に引っ掛かる箇所を覚え、全ての単眼をズーム補正、その場所へと向ける。
ピントを完全に合わせ、明瞭になった視点の中心に捉えたのは一人の女性だ。よく見てみれば、揺れる銀髪の間からは猫のような耳が生えている。
……化け猫? コガネマルがそんな感想を洩らした相手はその時丁度、巨大スズメバチの腹部へと蹴りを入れているところだった。


『あれ……?』


あたかも踊るように。蹴り飛ばし、拳を叩き込み、地に落とす。
女性が前面に突出しだした途端、展開は一方的に移り変わり始めている。コガネマルはそれを見て、不思議そうに首を傾げた。

思い返すのは、ジェイルの口にしていた見解だ。
これ以上、エース級は出てこない。と言うより、居ない。出て来るとしても、先日仕留め損ねた黒い執務官。
そうジェイルは言っていた筈なのだが、それがどうも腑に落ちない。ならば、あの女性は何なのか、と。

昨日回収したジュエルシードを、海鳴市から離れた場所でワザと暴走させ陽動に。その間にジェイル及びフェイトはユーノの返還となのはに接触。
次いで、この場へと執務官が再度出撃してきたのならば、黒い衣服に過敏反応を示す蜂の習性を利用して、攻撃の自然集中というか嫌がらせを。あわよくば損傷を拡大させる。
……執務官じゃなくて化け猫出てきちゃってるんだけど。ドクターでも間違えることあるんだ、と広がっている光景を見ながら、意外そうにコガネマルは呟く。

それは兎も角として。
変事があった場合、すぐさま撤退。そう指示を受けている以上、これならば帰っても大丈夫な筈。
コガネマルはそう判断し、バルディッシュへとメッセージを送信し始めた。


『……これでオーケー、っと。よし、帰ろうかな。
風向きよーし。風量よーし』


中央の胴体部分に連接している後部――出糸突起に当たる部位から赤い魔力糸を上空へと伸ばし、そのまま数秒。風を受け、コガネマルの体がふわりと浮かぶ。
蜘蛛特有のバルーニングと呼ばれる飛行技術を駆使すると、高く舞い上がり封時結界の壁面へ。内壁を齧(かじ)り穴を空けると、海鳴市に向かって飛んで行った。






















校舎一つ隔てた場所、校庭から聞こえてくる歓声にも似た喧騒は、時間の経過と共に活気が強くなっていく。
それに伴い、日傘で遮っていた筈の陽光が洩れ出し始める。眩しさを感じたなのはは、微かに目を細め、持っていた箸を置いた。

昼休みは丁度折り返し地点に差し掛かったくらいだろうか。
この場に時計は無いが、感覚で分かる。体内時計にも似たそれを感じ取り、なのはは表情を曇らせる。
常日頃ならば、まだ半分もある。だが今は、後半分しかない。どうしてもそう言い代えてしまうのは、こころのどこか悟っているからだろう。
確証はない。しかし、予感はある。目の前の少年は多分、またどこかに行ってしまうのだろう、と。

ずるずると。何も分からないまま引き摺られるようにシートに座り、本人は自信満々だったが、正直に言えばあまり美味しくなかった昼御飯へと。
隣を見てみれば、煤(すす)けた影を纏ったユーノが居る。そんな様子に苦笑こそしたが、内心では上手く笑えてはいなかった。それは、自分でも分かる。
ジェイルの隣に座っている金髪の少女、フェイトへと抱いていた憤りは既に消えている。と言うより、勘違いだったのだから、こうして事情を知れば失せて当然だろう。

食事中も、食べ終わった今でも。
終始楽しそうに、嬉々としながら笑うジェイルを見ながら、なのはは思う。重ならない、と。
少年と彼――変な男の子とS級次元犯罪者――ジェイルとジェイル・スカリエッティ。
つい最近まで全く魔法と接点の無かったなのはにとっては、次元犯罪者と言われてもいまいちピンとこない。
それは、今も変わらない。と言うより先ず、そのことを自分に伝えた管理局という組織からしてまだ良く分かっていないのだ。

考えないようにしていた。ではなく、そこまで巡らせる余裕が無かったとでも言えばいいだろうか。
連れ去られたユーノ。多くの人を傷つけたジェイル。ぶつかり合ったフェイト。
ほんの少し前まで普通の小学生だった少女の頭は、これだけで充分パンクしていた。
しかしながら、今こうして目の前に捉えてみると、頭の隅に追いやられていたアースラで見せられた顔写真が、ぼんやりとジェイルの横に浮かんでくる。


「――――の速度といいコントロールといい中々のものだったね。
いやはや、あれほど興奮したのは実に久し振りだったよ。加え、飛行速力、慣性制御力――」

(……ジェイル君の苗字ってスカリエッティさん……なのかな?)

「――少し前までの君ならば、あの速度で降下すれば地面に激突していた筈だ。
この短期間で到達するとは……――」

(でも、そうだとしたら何で教えてくれなかったんだろ……。
ジェイル、ただのジェイルだ……だったっけ?
……聞かれたくないことなのかな?)

「――…………なのは君?」

「は、はいっ!? な、何でしょうかっ!?」


急に名を呼ばれた為か、思考内容がそのまま口に出てしまい慌てて口を閉ざすなのは。
「……聞いていなかったのかね?」と、ジェイルはどこか残念そうに言うと、気を取りなおし再度話を続ける。


「で、話の続きだが……ふむ。どこから再開していいものかな。
まぁ、もう一度最初から話せばいいか」

「あー……ジェイル。一人でそれだけ喋り続けられるのは感心するけどさ。
結局何が言いたいのか分かんないし、もう少し掻い摘んで話した方がいいんじゃないか?
なのはもちょっと分かってないみたいだし。僕もだけど」


どこかウンザリした顔でユーノがそう提案すると、ジェイルは少し考え込む素振りを見せ始める。
ていうか、最初からあんまり聞いてませんでした、となのはは胸の内で空笑い。
助舟を出してくれたユーノに内心感謝しながら、思考に耽っていた頭を現実に戻した。


『sir.』

「……バルディッシュ?」


突然話に入ってきた機械音声。それをフェイトは疑問に思いながら、手をポケットへと。
中からバルディッシュを取り出すと、その場に居る全員が見える位置で掌に乗せた。


『From koganemaru to message. [It withdraws. Please withdraw that.]
(コガネマルからメッセージです。[撤退。そっちも撤退]) 』


余りにも完結な報告だったが、それを聞いた途端、フェイトは目付きを険しくし、顔色を一変。ジェイルも表情を一転させたが、此方は剣呑さに加え不機嫌さがブレンドされている。
一方、蚊帳の外に置かれ、何のことか分かっていないなのはとユーノは、急に様子の変わった二人を不思議そうに眺め、首を傾げるばかりだった。


「……やれやれ。もう少し掛かると踏んでいたのだがね。
先日もそうだったが……いやはや、謀(はかりごと)とは実際に巡らせてみると存外難しいものだ。
どうやら私ではクアットロのようにはいかないらしい。いや、彼らを少々見くびり過ぎていたのかもしれないねぇ……くくっ」

「……どうするの?」

「まぁ、予定に変更はないさ。少々癪だがね」


――さて。
フェイトに短く答えると、ジェイルは余り面白くなさそうに歪めていた顔をその一言で切り替わらせ、立ち上がる。


「もう少しなのは君が通っている学校を見て回りたかったのだが……無粋な邪魔が入ってしまったようだ。
尤も、先に横槍を入れたのは此方の方だが、ね。
では、私も当初の目的を果たすとしようか」


言い終わりと同時。ジェイルがパチンッと指を鳴らすと、着用していた制服が光に包まれ、弾けるように霧散していく。
それに倣い、フェイトも制服型バリアジャケットを解除。フェイトは黒を基調とした普段から着用している私服に。
ジェイルはサイズの合っていない大きめの白衣へと着替え終えると、簡易的に使っていたデバイスを掌で遊ばせながら、なのはへ金の瞳を向けた。


「一応言っておくと、先程までの話は前提のつもりでね。
先に私の見解を知ってもらった方が君も答えやすいと考えたわけだ。
うむ。では時間も押している為、単刀直入に聞こうか。
なのは君。君の強さ――その起源は、何だい?」

「……えと?」


突拍子の無い話だった為か、聞かれている内容がよく分からず、なのはは首を傾げる。
ジェイルはそんななのはの困ったような様子に一度頷くと、話を続けた。


「私を助けようとした。それは聞いている。
難しく考える必要は……いや、そうではないね。ありのまま。そう、ありのままを口にして欲しい。
私を助けようとしたから、強くなろうとした。うむ、意味は理解出来る。そう、理解は出来るのだよ。
加え、私は君がそういう人間だと[知っている]からね。ああ、この場合は問いを変えた方がいいか。
何故、私を助けようと、そう思ったのだね?」

「……当事者のお前がそれ聞くのって……結構最低だよな」


ボソッ、とユーノがジト目で見ながら洩らした言葉を無視し、ジェイルはなのはへと視線を注ぐ。
そう。口にした通りジェイルは、[知っている]。知識でしか持っていなかったPT事件、闇の書事件の記憶はほぼ白紙でも、JS事件は別だ。
それもそうだろう。主犯はジェイル本人だったのだから。そもそも、そこを覚えていなければ今でも三人の強さを知りたいと渇望しない。
最終局面で彼が実際に対峙したのはフェイトだったが、それと時を同じくして、なのはが何をしていたかは確かに覚えている。

聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトを母体とした、新たな聖王――ヴィヴィオを救出する為、ゆりかご内に突入。辛くも勝利し、助け出した。
そこを鑑みる限り、ジェイルとてなのはが危険を顧みずにそういうことをやってのける人間だとは理解している。
だが、自分を助けようとした理由が分からない。母が娘を助けようとした。それならばある程度分かるが、自分の場合、当て嵌まらない。

しかし、だ。友達を助けようとした。はやてと邂逅し実際にそれを知ったジェイルは、ユーノから事情を聞き出し一晩隔て、その可能性へと至っていた。
だが結局、そう考え付くだけで、それ以上は及び付かなかった。
何せ、過去の未来において、三人から憎悪に似た視線を送られていたジェイルには、如何せん理解し難い、繋がらないことなのだから。

だからこそ、もしも、なのはが自分を友と思っているのならば、その理由を。
明確な答えが得られるとは思っていないが、はやてが何故、自分を友と呼んだのか、そのヒントも得られるかもしれない。
これも、一里塚のさらに一里塚。だがしかし、確実に自分の理想への導(しるべ)、第一歩に繋がってくれるだろう。
ジェイルはそう思惟しながら、なのはの口が開くその時を待ち続ける。


「…………」


ジェイルの視線を受けながら、なのはは答えに窮していた。絶句、かもしれない。
何故助けたかったのか。なのはは迷いなく答えられる。それに、伝えたいことがある――友達だから、と口にしたかった。
だが、こうして聞かれている。その事実が、ジェイルは自分のことを友達だと思ってはいなかったのだ、と。そう思えてしまい、言葉が出てくれなかった。
纏まらない思考のまま、どこか陰りを垣間見せる瞳で、なのはは躊躇いながら口を開いた。


「……理由なんて無いよ。
目の前で誰かが困ってるなら助けたい。
理由なんて、無い。ううん。要らないと思うから」

「それが答えかい?」

「……うん」


返答を聞くなり、ジェイルは考え込み始める。
……なんで、言えなかったんだろう。そう、伏目がちになりながら、なのはは制服を握り締めた。
今口にしたことは、まぎれもない本心だ。だが、ずっと伝えたかったことは別の場所にあった筈なのに、と。


「ふむ。よろしい」


ジェイルはそう言って、踵を返す。
くつくつと忍び笑いを洩らしながら、一歩、二歩。
白衣を翻し、再びなのはへと向き直った。


「理由がない。要らない。誰かが困っているから、助けたい。
ふむ。君の口からその言葉を聞くのは二度目になるが……よろしい。再び肯定しよう。
雑多な言葉を並び立てるより、その方が受け入れるに値するからね。今日のところはそれで満足しようじゃあないか」


戻ってきたのではなく、会いに来ただけ。
ジェイルの様子を見て、言葉を聞いて。どこかで否定していたその予感が当たっていたことに、なのはは「あ……」と声を洩らしてしまう。
目の前で、少年が背中を向けた。
以前と何も変わらぬ様子で――それが、あの時と同じように見えて――。


「では、なのは君。いずれ戦地にて会――」

「――ま、待って!!」


そう悟った時、なのはは思わず声を張り上げ、立ち上がっていた。
その場に居る全員がなのはの突然の行動に驚き、視線を注ぐ中、胸の前でぎゅっと手を握り締める。
一度瞳を閉じ、そのまま数拍。ゆっくりと、瞼を上げた。


「なのは君?」


眼差しの先には、不思議そうに覗きこんでくるジェイルが居る。
いてもたってもいられなかった。兎に角、このまま行かせてはいけない。また同じ、何も伝えられないままでは、駄目だ。
だが、言葉にならない。何を伝えたいのかが分かっていても、出掛かった言葉が胸の内で行ったり来たり、右往左往することしか出来ない。
なのはは揺れ動く瞳のまま、立ち尽くして――ジェイルを見て――、










――ああ、そういえばそうだったね。
ジェイル――ジェイルだよ。


――ジェイルだよ。ただのジェイルだ。










――だからやっと、本当の答えが、出てくれた。















「――……そっか。そうだったんだ……こんなに簡単なことだったんだ」

「む? 話が見えないが」

「違う。違うんだよジェイル君。そうじゃないの。
ずっと……ずっと考えてたんだ。
どうしたらいいんだろう。どうしたらよかったんだろうって。でも、分からなかった。
それに今は、色々知っちゃったから。ジェイル君がしたことも……まだよく分かってないけど、ジェイル君のことも」

「何の話をしているかは察しがつかないが……。
私のこと、とは……ふむ。まぁ、聞くまでもないか。知らされて当然だからね」

「うん……正直、まだ全然整理出来てない。私、まだよく分かってない。
でもね、ジェイル君。一つだけ、分かったことがあるの。
ジェイル君は嘘つかない。それだけは、分かるんだ」

「ああ、吐かないよ。
君ら限――」

「――でも、本当のことも、言わないよね?」


語気を荒げたわけではなく、口調は強いが怒るでもなく。
なのはは言いながら、子を叱る母に似た瞳を向けたままジェイルへと一歩踏み出す。
突然のその豹変振りを考えてもいなかった為か、問いを投げ掛けた先程とは真逆に。珍しく虚をつかれたような顔を浮かべ、今度はジェイルが窮する側へと移り変わった。


「……ジェイル君は何か考えがあってそうしてるのかもしれない。
けど、けどね、ジェイル君。それってきっと、嘘をつかれるより悲しいことだと思う。
嘘をつかれれば、辛いよ。でも、何でそうしたんだろう、どうして本当のことを言ってくれないんだろうって、考えられるんだ。
でも、ジェイル君は違う。最初から背中を向けて、ずっと顔だけでこっちを見てる。
だから私は、嘘でもいい。ジェイル君が本気で、本当にぶつかってきてくれるのなら、その方がずっといい」


そう、嘘をつかない。だが、つかないだけで本当のことを教えてくれない。
きっと、彼が本当を見せてくれたのは、あの時――寂しそうだと自分が感じた顔をした時だけだった。
心のどこかでそう思っていたから、迷っていた。自分でも気づかないところで、また拒絶されるんじゃないかと怖がっていた。
でも、やっと分かった――強い意志を滲ませる眼差しで、なのははジェイルに向かって一歩一歩、踏み出していく。


「……ふむ。肯定しよう。確かに私は本当のことは言っていない。
しかし、だ。今なのは君が口にした内容には異を唱えさせてもらう。
私は紛れも無く、誰よりも本気で君にぶつかっている」

「だったら教えて。何であの時、何も言ってくれなかったの?
……聞かれて困る話だったのかもしれない。言いたくないことだったのかもしれない。
でも、最初から背中向けられてたら、それも分かんない。
何も言ってくれないまま出て行っちゃうなんて……私も、ユーノ君も寂しいよ」

「……まぁ、うん」


なのはの話に小さく同意するユーノ。
なのはは変わらず、ジェイルへと視線を向けたままだ。


「……それは」


なのはの射抜くような瞳に気圧され、ジェイルの言葉は、そこから続かない。
同時に、在り得無いと問答する。これでは、自分らしくない、と。この世界に降り立ってから、何度目になるだろうか。
本来の自分ならば――嘗てのジェイル・スカリエッティならば、誰かの言葉で押し黙ることなど考えられない。
生命操作、創造技術を追い求め、他の存在を塵芥と切り捨てる。人の形をとった欲望そのもの。それが、自分だ。

幼く退行してしまった肉体に引き摺られ、精神まで脆弱になってしまったのか。
それも否定は出来ない。その反面、自分は何も変わっていないと肯定も出来る。
しかし、今でも覚えている。
目の前で、正面から悲しげな瞳を向けてくる少女と、はやての家から去り、仮面の男と対峙する少し前――、

――……私は、寂しいのかもしれないね――、

――ウーノが脳裏に過ぎった時、そう思ってしまった自分は、同じ顔をしていたのではないだろうか。
それを偽ることなど、出来はしなかった。


「――私、なのは。高町なのは」


その声に、ジェイルはいつの間にか没入していた思考から、眠りから覚めたように引き起こされる。
何故、今更名乗っているのか。そう疑問に思ったが、口を開けることはせず、黙って耳を傾ける。


「あなたは? あなたの本当のお名前、教えてくれるかな?
きっとそれが、さっきジェイル君が聞いたこと、今ジェイル君が思ったこと、それに私の本当の、答えだよ。
本当を出し合って、本気でぶつかり合って。でもきっとその分、いつの日か笑って話せる日が来るって、そう思うから。
だから、ここからちゃんと始めたい。私はジェイル君と――、」


――友達に、なりたいんだ。


強く見据えながら、そう言うなのは。ジェイルは言葉を発さずに、只その顔を見返す。
少女は答えと口にした。それが、自分の求めている答えだ、と。
どこから導き出されたのかは、見えてこない。だが確かに、少女は答えと云った。
まだ本当に、それが求めていたものなのか如何か分からない。
だが今は――そんな君に、


――手を、伸ばしてみたくなるじゃあないか。


「全く……君はどれだけ私の興味を惹けば気が済むのだね?
嗚呼、本当に……くくっ」

「な、何で笑うのっ!? 私凄く凄く考えたんだよっ!?
凄く真面目に悩んで……もおっ、もおっ! 何なのっ!? ジェイル君の馬鹿っ! スカポンタンっ!
レイジングハート! 馬鹿ジェイル君にスターライトブレイカーなのっ!」

『All,right. Let's do by the bloodshed setting.
(了解。殺傷設定でいきましょう)』

「ははっ。違うよ、なのは君。そうではない。これでも私は至極真面目なのだよ。そう、怒らないで欲しい。
と言うより、今星の極光など喰らえば、私の体の状態的に本当に死んでしまう。それは勘弁願いたい。
しかし……嗚呼、そうだ――そうだね。私は君の答えに礼を尽くさなければならない。
いいや、尽くしておかなければ私ではなくなってしまう」


顔を真っ赤にしながら激昂するなのはを手で制し、ジェイルはそう言って笑う。
もう少し先になる筈だった、この世界でこうして正面から名乗るのは初めてになる。
だが嗚呼、そんなことはもうどうでもいい、と。大切なのはそこではない、と
そう放り投げると、今にも踊り出しそうな足取りでなのはに背を向け、そのまま数歩進めたところで、振り返った。


「ジェイル――ジェイル・スカリエッティ。それが私の本当の名だ。
何とでも呼んでいいが、親愛を込めてくれたまえよ。
全身全霊で、余すことなく受け止めるからね」

「むぅ……まだ全然納得出来てないけど……。
前もそうだったけど……ジェイル君ってばちょっと大げさだよ?
んー……やっぱり親愛とかはよく分かんないけど、私も……あ」

「くくっ、もう少し、付き合ってくれたまえよ。
さて。
それは君を好きにしてもいいということかね?」


どこかで聞き覚えのあるやり取りに、なのははクスッと笑う。
ああ、そっか、と小さく呟くと、ワザとらしくしかめっ面を作り、話を続けた。


「……何でそうなるのかな?
とっても失礼だと思うけど、ジェイル君って、よく変って言われない?」

「ああ――、変態、変人、狂人は私の代名詞――そう言えば、名前の枕か尻に必ずと言っていい程付随していたね
ふむ……何故だろう? 私は至って普通に振舞っているのだが。
変態ドクターと言われた事もあったかな」

「うわぁ……そこまで言われてるっては思ってなかったけど、ちょっとだけ気持ち分かる、かな。
……ううん。今なら凄く、分かるかな」


もしかしたら遊び半分かもしれないが、きっと、やり直したかったのだろう。ここからちゃんと始めたい、と。
なのははそう感じ取ると、素直じゃないなぁ、と小さく苦笑する。
そんななのはの様子に満足したのか、ジェイルは今度こそ白衣を翻し、踵を返した。


「にゃはは……。
……ねぇ、ジェイル君」

「何だい?」

「ジェイル君の答えはジェイル君に出して欲しい。
出たら、私にも教えて欲しいんだ」

「ははっ、これは手厳しい。
君は意外といじわるらしいね」

「うーん……ジェイル君には言われたくないかなー。
……じゃあ、最後にもう一つだけ。
私が、止めるから。だからジェイル君の答えはその時に、聞かせて」

「ふむ。だが断るよ」

「…………え? え、何でっ!?
そこは素直に頷くところだと思うんだけどっ!?」

「最初から負ける気で臨むつもりはない、ということだ。
その時が来るのか如何かは言えない。まだ、分からない。だが、そうだね……もしもだ。
私を止めるつもりならば、全力で叩き潰しにきたまえ。その時は、答えさせてもらおう。
但し、私も本気で叩き落としに掛からせてもらうよ」

「…………。
私、もしかして凄く大きな地雷踏んじゃったんじゃ……?」

「踏んだと気づいた時には遅い類かもしれないねぇ……くくっ」

「あ、あはは……」


冷や汗を頬に伝わせながら渇いた笑いを浮かべるなのは。
ジェイルはくつくつと忍び笑いを洩らしながら「さて」、と言うと、押し殺したそれを引き攣れたまま、やり取りを静観していたフェイトを伴ってその場から離れていく。


「うん」


なのははその言葉を自分自身に向け、一歩踏み出す。
ジェイルとフェイト、二人の背中を眺めながら、強く拳を握り締め、


「……絶対に止めるから。ジェイル君も、フェイトちゃんも」


今度こそ、迷いなくそう、言い放った。
それはジェイルが、過去の未来において恋焦がれ、夢にまで見たエース・オブ・エースに、限りなく近い姿だった。











「……あの子、いい子だね」

「フェイト君、それは違う」

「?」

「あの子、ではなく、高町なのは君だよ」


隣で首を傾げているフェイトにそう言うと、ジェイルは心底愉快そうに、笑った。




















◇おまけ◇




















「では、今日のホームルームはこれで終わりましょうか。
皆さん、気を付けて帰って下さいね。
――それと、高町なのはさん」

「あ、はい」

「昼休み、何をしていましたか?」

「?
えっと……校舎裏で……」

「はぁ……やっぱりそうでしたか……。
高町さんがそこに行ったのを見た、と言う人がたくさん居たので、もしかしたらとは思っていたんですが……。
……高町さん」

「は、はい。その、何が……あれ?
…………あ、ああっ!」

「……ビニールシートとパラソル。それにお弁当箱とバッグ。
職員室で預かっているので、帰る前に取りに行ってくださいね?
それと、見覚えの無い、この学校の生徒じゃないらしい二人と一緒に居たそうですね?
そのことについても少し、話があります」


すっかり忘れていたなのはが勢いよく机に突っ伏したり、


「……ねぇジェイル。何で高いのばっかり買ってるの? それに、何でこんなにたくさん?」

「今日は実に良き日だからね。前途を祝う意味でも豪勢にいきたいのだよ。
おっと、その牛肉も入れておいてくれたまえ」

「……こんなに食べられないと思うんだけど……」

「その辺りは心配無いさ。余った材料は今後活用するよ。
それになのは君の顔を見る限り、余り美味しくなかったようだった為練習しておきたくてね。
桃子君に師事を受けるのが一番だとは思うが、今の状況的に――」

「――あら、呼んだかしら?」

「む?」

「久し振りだな、ジェイル」


帰りの道中に寄ったスーパーで出くわした桃子と士郎から、
「何で用事があるなんて嘘ついたのかしら?」
「何で怪我増えてるんだ? 何があったんだ?」
「何で女の子にこんな重い荷物持たせてるの?」
「なのはがずっと塞ぎ込んでるんだ……ああ、そういえば丁度ジェイルが居なくなってからだったな。
ジェイル、何か知ってるか? いや、知ってるんだよな?」
など問い詰められながら、ジェイルとフェイトが高町家に強制連行されそうになったのは、また別の話。







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