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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/04 11:49

 それから更に8体の亡骸を漁り、俺は少なくない数のアイテムを手に入れた。

 サバイバルにおいてまったく全然役に立たないような物はないと思う。
 できれば、向こう側の通路の方に転がっているご同輩達からも寄付を募りたいところなんだが……まあ、身の安全が第一だしな。欲を掻いて見つかるような危険を冒す必要はないだろう。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  12/17

 パーソナル マップ  (10)
 フォーチュン ダイス  (95)
 豊穣神の永遠のボトル
 ヒール ストーン
 ヒール ストーン
 リフレッシュ ストーン
 陽光のカンテラ
 拳大の石  (29)
 冒険者の松明  (31)
 麻製のロープ  (17)
 水筒 〈湧き水〉
 蜘蛛の歩みの秘薬  (5)


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 本音を言えば何かしらの武器か、衣服が欲しかったんだがなあ。
 そういうのは最初から勘定に入ってないのかね?
 ここも大概だが、人里に放り出された奴らなんかにゃまた別の苦労がありそうだな。こちらの法律や常識が前世での社会と似通ったものだとは限らない以上、下手したらストリーキングの罪で火炙りってお裁きも有り得るわけだし。
 ……笑えねえ話だが、俺がその立場だったら爆笑するだろうな。人間、笑うしかない最期ってのはあるもんだ。ツキに見放されたなら、笑うしかねえ。
 頭の中でとりあえずの算段を付けて、再び移動開始。今度は通路ではなくネズミの居ない壁の方に向かう。
 肝心要の脱出に使えそうな物が手に入ったのは、我ながら大した悪運の強さ。試してみるまで確実だとは言えないが、駄目なら駄目でちゃんと別の手も考えてある。――からまあ、ここが死に場所にはならんだろ、多分。
 楽観視してるわけじゃねえぞ。気を楽に持ってるだけだ。



 ◆ 蜘蛛の歩みの秘薬 〈使用回数 1〉〈効果時間 1時間〉

   詳細: 昆虫の体液を思わせる、ドロリとした質感の飲み薬。
        服用すれば立ち所に足音と落下の衝撃が数十分の一にまで軽減され、
        壁や天井を自在に動き回れるようになる。



 取り出した小瓶の中身を胃に流し込んで、息をつく。
 何だか摺り下ろしたアロエみたいな喉越しだな。味もよく似ている。
 本当にアイテム鑑定技能があって助かったぜ。なきゃあ絶対に毒だと勘違いしてただろうしな。正体不明の紫色の粘液なんて飲めるわけがねえ。
 ……さて、効果の程はどんなもんかな?
 俺は荒く積まれた石造りの壁に手を付け、そのまま貼り付くような形で体重を預けていった。

 ん~~? 特に変化は……。

「っどわ!? うええぇぇえ!??」

 驚き叫び、そんな自分の声に衝撃を受けて更に叫ぶ。
 何てこったー。俺の口から小娘みたいな声が出るなんてよー……。堪んねえな、こりゃ。歳の事を前もって知っててもショックだわ。恥ずかしすぎる。
 後で発声練習だな。人前で喋る時はなるべく低くしねえと。
 ……で、忘れちゃいけない薬の効き目なんだがな。蜘蛛の歩みって名前だったから、俺はてっきりスパイダーマンみたいになれるのかと思ってたんだよ。四つん這いでサクサクと壁を登っていく自分を想像してたわけだ。
 俺に限らず、健全な男子の八割方はそう思い込んでしまうのではないだろうか?

 なのにまさか、壁が下になっちまうなんてなあ……。
 うん、そう。壁が床になった。つまり、さっきまでの床が壁になったわけだ。
 何を言っているのかよく分からねえと思うが、俺も理解に苦しんでいる。やばいやばい。壁から垂直に積み上げられた死体の山が不気味でシュールで目が離せねえ。重力を無視した眺めに混乱しちまってる。明らかに脳が処理し切れていない。
 自分じゃ強い方だと思ってたんだがなあ……予想外の事態には。
 さすがに世界が様変わりしちまうような予想外は駄目だったか。原始的な恐怖を感じるぞ。
 身体の震えが止まらん。

 …………………………………………あ、ネズミ。

「おおおおおおっ!!」

 群がってきたァ────ッ!!!

 前歯が届く寸手のところで横向きに転がり、その勢いに任せて目一杯の距離を取る。
 ……危ねー。狼狽えてる場合じゃねえぞ、まったく。
 一斉に壁を駆け下りてきて、しかし床には下りられずにマゴマゴしているネズミ共の姿に苦笑い。恐る恐る身を起こし、両の足で立ち上がる。
 落ちない…よな? 死体とか今にも降ってきそうで怖いんだが。
 まあ、客観視したら俺の方が異常に見えるんだろうけどな。何せ壁を転がり上がって垂直に立っている状態なわけだし。
 ……何て言うか魔法だな。不思議や奇妙なんて言葉じゃあ腹の底に響かない。なんつーか、魔法だ。一言で言うと魔法だ。
 こちらを見上げてはキィキィと鳴くネズミ共を尻目に、俺は今の状態に慣れるため、そして何よりもまず乱れた心を鎮めるために壁の上を歩き回った。

 おお、天井も歩ける。分かってたけど心臓に悪いな。部屋が広いと尚更だわ。
 アイテム欄から取り出した拳大の石を手に持って、色々と具合を確かめてみる。



 ◆ 拳大の石

   詳細: 正真正銘ただの石。
        さりとて侮る事なかれ。
        持って殴るも良し。投げてぶつけるも良し。
        使い捨ての凶器としては理想的な代物と言えるだろう。



 ……うん、普通だ。
 いや、石の事じゃなくて。持った時の重さとかがな。
 どうやら俺だけじゃなく、俺が触れている物に掛かる重力までもが変化しているようだ。今の俺と石にとっちゃあ天井が地面なんだよ。
 試しに軽く放ってみたら、下じゃなくて上に落ちていった。ややこしいが正確にはちゃんと下に落ちていったって事だ。思った通り、身体から離れると重力が正常に働くようになるらしい。
 じゃあこれ、俺が接地面から完全に離れたりしても落ちるのか? ……落ちるんだろうな。気を付けよう。
 という事でジャンプは厳禁。けど、石が落ちるまでに半秒程度のタイムラグがあったから……まあ、走るくらいなら大丈夫か。OK。把握したぞ。
 このまま通路に行けば問題なく逃げられそうではあるが……それじゃ面白くねえやな。
 せっかくの安全圏だ。一方的に嬲らせてもらおうか。

 俺は先程の、未だにネズミが殺到している壁へ戻り、豊穣神の永遠のボトル――略して神ボトルを取り出した。
 曰く付きの品だけあって中々洒落たデザインだな。
 1リットルサイズのボトルの隅々にまで精緻な彫刻が行き届いている。それなのに、まったく華美や豪奢といった印象を感じさせない。あくまでも自然体で、一つの嫌みもなく神聖にして荘厳なのだ。
 簡単に言うと一種の芸術品ってやつなんだが……何て言うのかね? 飾ってあるのを目にした途端に思わず背筋を伸ばしてしまう。姿勢を正してしまう。そんな雰囲気を発しているんだよ。
 たかが酒瓶だってのに。こりゃあルーブル級の美術館でも目玉になれるぞ。モナリザの傍に置いたら動くんじゃねえか? あの眉無し女の目玉が。
 蓋はコルクでもスクリューキャップでもなく本体との一体型か。なくす心配が無くていいやね。

 ……………………すげー。こんなゲロ以下の臭いが充満した部屋で、何て清廉さを醸し出しやがるんだ。酒好きじゃなくても香りだけで虜になっちまうぞ。
 では早速――って、横に零れてくし。壁に立ってたのをすっかり忘れちまってたよ。液体は容器から出すと俺の身体から離れたって事になるんだな。
 名残惜しいがしょうがねえ。一口だけで我慢しとくか。

「ん~~~~~~~~~~~……っ!!!!」

 美味い! その一言に尽きる。
 柄にもなく仰け反っちまったよ。良い物もらっちまったなあ。

「さあ、てめぇらも味わいやがれ! 畜生にゃもったいねえ酒だ!!」

 飲ませた俺はきっと罰当たり。もう罰は当たってるはずだから怖くねえがな。
 ボトルを傾け、丁度良く一カ所に固まっていたネズミ共へと満遍なく注いでやる。
 しかし、こんな極上の酒が本当にいくらでも出てくるってのはとんでもないな。爽快すぎるぞ。せっかくだから溺れるくらいに飲ませてやろう。

「そぉ~ら、そらそらそら!! お~ぅ! 目に入ったか!? ハハハハハ、痛かろう!!」

 我ながらハイでならんね。酔っちまったかな~? たった一口だってのに。

「よーし、よぉーし! たらふく飲んだか~!? もう腹ぁ一杯か~!?
 だが、まだ序の口! そいつぁほんの食前酒だ! メインディッシュが待ってるぜぇ!!」



 ◆ 冒険者の松明  〈使用回数 1〉〈効果時間 6時間〉

   詳細: 不安な夜道に、孤独な旅路に、暗くて狭いダンジョンのお供に。
        あらゆる所の闇を照らす、冒険者生活の必需品。
        先を擦るだけで点火が可能な優れ物である。



「はい、今取り出しましたるこの松明! 種も仕掛けもございます! 種火いらずの優れ物!
 こうして岩肌に擦りつけただけでぇぇぇぇ……おおっ! 付いた付いた!! 馬鹿でかいマッチ棒か、これは!」

 左手に神ボトル、右手にオレンジ色の灯のともった松明を持ち、ご機嫌なステップを踏む俺。
 何と言おうか、ほろ酔い気分の時に火とか見ると盛り上がるだろ? キャンプファイヤーを囲んで騒いだりする、あの心理だよ。
 調子に乗ってブランデーを口に含み、プーッと一吹き。お得意の宴会芸だった火炎放射を披露する。
 んー、横に流れる炎が綺麗だねえ。
 どれ、もう一発──。



 ◆ 習得条件達成 複数の対象の前で該当するパフォーマンスを成功させた事により 《大道芸》技能を習得しました。



「ぶほッ──?!」

 うおっ!? 噎せちまったじゃねえか。
 こんな技能までカウントされるのかよ。不意打ちにも程があるだろ。あー苦しい。
 おっと、いけねえ。遊んでる場合じゃなかった。きっちり仕上げねえと、ただのバカで終わってしまう。

「さあ、お待ちかねのメインディッシュは、みんな大好きバーベキューだ!!」

 位置よーし。角度よーし。

「ただし、お前らのだがなっ!!!」

 俺がぶん投げた松明は狙い通りの放物線を描き、ネズミ共の塊のド真ん中へと落着した。
 轟と音を立てて炎が猛り、死の狂騒が幕を開ける。
 壁に立つ俺からしてみれば、その光景はさながら生きたタペストリ。悪趣味極まりない地獄絵図のようだった。
 焼死したネズミは数匹といったところだが、残りの奴らも大なり小なりの火傷を負っている。野生動物ってのは動きに支障を来すような怪我をしたら、まずお終いだからな。ここの連中は近い内に全滅すると見ていいだろう。
 そうじゃなくてもまあ、すぐに獲物を探しに行くような気概は残っちゃいねえだろ。
 後顧の憂いも断てた事だし、そろそろお暇致しますか。

 ……あ、そうだ。
 残りのご同輩のアイテム、今なら全部いただけるんじゃ……。

「え…………?」

 何だ、今の?

 広間を見回していた俺は、ちょっとびっくりな瞬間を目にして固まってしまった。
 見間違いじゃなけりゃあ……食ったんだよな? その、キノコがネズミを。パクッてあっさり。
 あの一番でかい3メートルのやつ。混乱したネズミがアレに近付いたと思ったら、毒々しい斑模様の傘が四つくらいに裂けて、あっと言う間に呑み込んじまったわけだ。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 ミミック マッシュルーム  LV ??

 HP ??/??  MP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 確認のために石を落とすと、どうやらキノコに擬態した多足亜門の節足動物らしき生き物である事が分かった。
 要するに、ムカデやヤスデなんかの親戚ってわけだな。

 気持ち悪りぃ────────ッ!!

 近付かなくてよかったー! アレの陰に隠れようかどうか、迷ったんだよ俺! ネズミ以外にあんな化け物が居たなんて怖すぎる。悪魔の玩具箱か、ここは? 今更ながら寒気がしてきたぞ。
 しかも、あのキノコ虫、その気になれば天井まで俺を追い掛けてこれるんだよな? 多分。
 …………先が思いやられるな。
 一層気を引き締めねえと。少しの油断で死にそうだ。

 とにかく、アイテムを回収し次第脱出だ。幸いにも近くに寄りさえしなけりゃ安全なようだしな。



 ◆ 習得条件達成 該当するアイテムを投擲で対象に命中させた事により 《投擲》技能を習得しました。

 ◆ 習得条件達成 偽装状態にある対象を識別した事により 《探知》技能を習得しました。

 ◆ 習得条件達成 該当する武器で対象を倒した事により 《打撃武器》技能を習得しました。














 スタート地点の餌箱を出て、およそ十数分後。
 俺は極上のブランデーを惜しげもなく使って身体を洗っていた。

 臭いも落ちるし、度数の高いアルコールだから上手いこと殺菌洗浄にもなってるし、残りを気にしないで思いっきり洗えるし。まったく良い事ずくめで便利すぎるだろ。この神ボトルは。
 おまけに武器にもなるしな。
 出くわしたネズミの一匹を血祭りに上げてみて、確信した。
 手応え抜群。
 今の俺の体格だと片手でも両手でも振り回すのに丁度良い具合なんだよ。鈍器に必要な条件は全てクリアしていると言っていい。しかも高水準で。
 どんなに酷使しても壊れる心配がない武器ってのは、素晴らしく心強い物なのだ。
 松明との組み合わせで即席の火炎放射器にもなるしな。それに壁歩きという絶好のポジショニングを駆使すれば、ネズミの二、三匹は楽に始末できるだろう。
 機会があったら豊穣神の神殿に参拝に行きたいもんだねえ。メイファ様と聖ジョドーとやらには感謝してもしきれんくらいだ。

 ああ、あと分かった事だが、この身体、意外と力が強い。
 STR 15って数値のおかげなんだろうが、昔とそう大差ない感覚でネズミの頭を砕く事ができた。その代わりと言っちゃあ何だが、フットワークの方はかなり鈍く感じたかな? こっちはAGI 5が影響してるのかね?
 まあ、どちらの能力も8歳にしちゃあ破格……というか、常識で考えて有り得ない強さだ。
 この世界の住人はガキの頃からこうなのだろうか? だとしたら、末恐ろしい話である。
 ……別に筋肉質ってわけでもねえのになあ。スタイルは良い方だと思うけど。

 それから数分は酒瓶を持った8歳の子供が天井の上を音もなく歩いていくという、我ながら不気味極まりない道のりが続いた。
 お、初の分かれ道だ。見事に四つに分岐してやがるな。
 しかし、案内板があるわけでもなし。迷うところだねえ。もうすでに迷ってるわけだけど。
 ……ん、今のは悲鳴か? 左の通路からかな?



 ◆ 習得条件達成 聴覚判定に成功した事により 《聞き耳》技能を習得しました。

 ◆ 習得条件達成 見えない対象の位置を判別した事により 《気配感知》技能を習得しました。

 ◆ 習得技能枠が限界に達しました。
    新たな技能を習得したい場合は既存の技能に対して上書きを選択してください。
    またはDP振り分けによる技能枠の増加を行ってください。



 はあ、左様でございますか……。
 勝手にポンポン覚えさせられた挙げ句に、もう限界だって言われてもなあ。今のところ、アイテム鑑定と観察以外は習得の実感も何もないんだが。
 上書き云々ってのはひとまず保留にしておくか。
 悲鳴が近付いてきたので、天井に伏せて気配を殺す。
 何か光ってるな? あ、松明の明かりか。

「嫌だあああああああああああああああああ!!!!!」

 そして現れたのは、松明片手に全裸で全力疾走する男の姿だった。
 その顔は涙と涎でグチャグチャになった必死の形相。開きっ放しの口からは泣き言、悪態、懺悔の言葉といったものが渾然一体となって吐き出され続けている。
 正直、見るに堪えないが……男の後を追う連中の存在を考えれば仕方のない事だろう。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 グール  LV 3

 HP ??/??  MP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 一言で言うとアレだ。生ける屍、走るゾンビ。
 よくある、フィクションの悪夢が現実にってやつだな。
 ゾンビが出演するパニックホラー物を観た人間の大半は、こんな感じのスリリングな夢見に寝汗を掻かされた経験があるんじゃないだろうか? そういう俺も例外ではない。少なくとも100回は見たな。バット大活躍だった。

「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!!!!」

 そんなくだらない事を思い返している内に聖火ランナーが通過。通路の向こうに消えていく。
 もちろんゾンビの応援団も、足並み揃えてさようなら。
 20体は居たか……どうにもならんな。
 見なかった事にしよう。




 結局、俺は正面の通路を進む事にした。
 男が走ってきた左側はゾンビ天国の可能性があるし、走っていった右側は言わずもがなだったからだ。
 それからの分かれ道は、すべて真っ直ぐ。
 何度か遭遇したネズミやゾンビを撲殺したり火達磨にしたり、手に負えない数だった時はやり過ごしたりと、
特に目新しい事もなく神経を磨り減らすだけの時間が過ぎていった。
 出口に近付いているのか、遠ざかっているのか、それすらも分からない。身体の方はまだ元気だが精神的な疲労が溜まってきている。そろそろ休憩が欲しいところだ。
 でも、落ち着けそうな場所がねえんだよなあ。
 スパイダーマン・タイムはとっくの昔に終了しちまったし。先の不安を思うと無駄遣いは絶対にできねえし。それでも、いざとなったら天井で寝るしかねえんだろうけど。

「…………これは、牢屋か?」

 ただ警戒だけに努めた無心になって歩いていると、左右の壁に鉄格子の並ぶ幅広い通路に辿り着いた。
 退屈な道行きに訪れた、ようやくの変化である。
 もっとも、俺にとっちゃあ馴染み深い眺めだったりするんだが。
 気を引き締めての忍び足でこっそり近付き、手前のいくつかを確認する。ゾンビが入ってる牢もあったが、しっかりと鍵が掛かっていたので心配ないだろう。
 俺は空いているの牢の中で一眠りする事に決めた。
 多分、ここで休んでおかないと後に響く。そう思ったからだ。
 休める時にしっかりと休む。サバイバルの鉄則である。決して『念のためだ。もう少し奥まで調べてみよう』なんて思ってはいけない。
 ……お、ここが良さそうだな。ベッドが綺麗だ。……心持ち。

 出入り口は鍵がないのでロープで何重にも縛って固定。一応の安全を確保する。出る時は燃やせばいいだけだから楽なもんだ。
 気を緩めた俺は壁に備え付けられた簡易ベッドの上にゴロンと寝そべり、長い長い息を吐いた。
 取り出したマップを眺め、ぼんやりと今後についてのプランを練る。
 このパーソナルマップ、薄茶色の如何にもそれらしい趣に溢れた見た目に反して、とんでもない高性能。拡大、縮小、スクロールといった事をタッチパネルみたいな感覚で操作できるのだ。
 更にマーカーで現在地まで教えてくれる、超親切機能付き。ここまで来ると紙で出来たカーナビだな。
 …………自分の足で更新していくしかないってのが、唯一にして最大の欠点ではあるが。
 せめて食料があればな……。水も酒も地図もある事だし、地道に探索していけるんだが。
 あと鏡。あと服。あとアサルトライフル。三つ目以外はない物ねだりってわけじゃねえだろ。贅沢は言わん。逆行した股間だけでも隠させてくれ。
 まあ、牢屋があるって事はそれを管理していた人間が居たはずだし。もう少し探れば何かしらの発見は望めるだろう。――と、希望的観測を抱いたまま眠るとしようか。

 目を閉じると直前まで眺めていたせいか、マップの隅に記載されていた文字の事が頭に浮かんだ。
 恐らくは……いや、確実にこの迷宮の名前なんだろうが、まったくロクでもない。名付けた奴は皮肉を利かせたつもりなのか?
 笑えねーぞ。ちくしょー。





 ……………………〝スカベンジャーズ・マンション〟なんてよ。












 あとがき


 二話目です。中々進みません。
 ペースは遅いですが、皆様の感想を励みにコツコツと書いていきたいと思います。
 ありがとうございましたああああ!!!

 技能習得の上限は初期の7つに2D6ゾロ目加算で決めました。計15になります。
 他にも色々隠しパラメーターが存在しますが、一々記載するのも面倒ですので、いつの日かのまとめにでも載せようかと思います。

 主人公のキャラクターは作成した時に大体出来上がっていましたが、話が進む内においおいと固まったり変化していったりするでしょう。
 どんな奴だったかは想像にお任せします。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  15/17

 パーソナル マップ  (17) スタックできるんです
 フォーチュン ダイス  (151)
 豊穣神の永遠のボトル  まさか、メイン武器になるとは……
 ヒール ストーン
 ヒール ストーン
 リフレッシュ ストーン
 陽光のカンテラ
 拳大の石  (56) 天井から落として1消費、天井からキノコ虫にぶつけて3消費
 冒険者の松明  (74) ネズミのバーベキューで1消費、その後の火遁轟火球の術で1消費
 火の付いた冒険者の松明  目立つから普段は収納しています アイテム欄にあると劣化しません
 麻製のロープ  (44) 牢の入り口を縛るのに1消費
 油の入った小瓶  (8) 出る確率を低めに設定したものの、神ボトルのおかげでほぼいらない子に
 水筒 〈湧き水〉
 蜘蛛の歩みの秘薬  (9) 色々するのに1消費  他に定番の透明化薬なんてのもありましたが、敢えてこっちに
 空き瓶 〈極小〉  秘薬の入っていた瓶です。大きさは眠々打破くらい


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 入手アイテムですが、同胞達の亡骸からは武器、防具、衣類、装飾品の類は出ないようにしてあります。
 ランダム表で当たると、石や松明やロープになっちゃうわけですね。




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