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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918] 13
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/12 10:50

 俺は機械バッタの周囲を駆け足で巡りながらロープを取り出し、あれこれと目分量で憶測する作業に入った。

 意気込み勇んで大見得を切ってみせたはいいものの、残り時間は3分足らず。
 その短い間と手持ちの道具で、どうやってこの化け物を片付ける?
 まず誰もが真っ先に思い付くであろう、両側面から生えた六本の脚を縛って動きを封じるという手は通用しそうにない。
 いくら何でも時間が掛かりすぎるし、麻製のロープじゃ強度的にも不安たっぷりだからな。極太のワイヤーロープでも用いない限り完全な拘束は不可能だろう。
 いや、俺としても希望的観測を持ちたいところなんだがな。あの脚部各所に走る、ギザギザとした鋸状の突起を見ていると嫌でもそう思っちまうんだよ。
 次に目が行くのはセンサー類だが、破壊という一番手っ取り早い方法が適わない以上、現時点での無力化は不可能だ。
 速乾性のセメントみたいな物が大量にあるならともかく、どうにもならん。
 同じ理由でガトリング・ガンの暴発を誘うってのも無理な話だな。映画じゃあるまいし、銃口にちょっと詰め物をしたくらいでお釈迦になるような柔な造りはしてないだろう。
 銃身がシリンダーに収まっているタイプじゃなけりゃあ、ロープで縛って回転を止めるなんて真似もできたんだが……そもそも、アレをぶっ壊したところで俺達が生き延びる確率を上げる程度の効果しかねえんだよな。
 機械バッタ本体には何の痛手にもならない。
 牙がなくても爪が有る。爪がなくても足は残る。
 戦車にも言える事だが、ボディさえ無事なら生身の人間なんぞ恐るるに足らん。撥ねて轢いて押し潰してで殺し放題。対戦車兵器の一つでもなけりゃお手上げってなもんなのだ。

 ……………………ん? お手上げ?
 つまり……お手上げか?
 名人、長考に入りましたが、結局打つ手は有りませんでしたってか?
 情けねェェーッ!!
 クソッタレ! 贅沢は言わん! 誰か俺にRPG-7を寄越せ! 一発で仕留めてやる!

「坊ちゃーん! 無理なら無理で構いやせんから、とっとと先を急ぎやしょうやー!!」
「うるせー! まだ考え中だ! 行きたいならお前一人で行きやがれ!」

 先へと向かう通路口から声を張り上げるリザードに啖呵を切りつつ、助走を付けての大ジャンプ。

「ううむ、正に此の世の物成らざるが如し……。
 もしや、遙か古に天竺への道を阻んだとされる悪鬼羅刹の類成るか?
 それとも、伴天連共が広めし南蛮の教えに伝わる悪魔と云う名の神敵か?
 何れにせよ、畏れと興味の尽きぬ禍々しき異形である事よな」
 
 いつの間にやら腕を組んで唸っていた先客の存在に対する驚きを意地で呑み込み、機械バッタの背によじ登る。
 …………搭乗口らしき部分はなし、と。
 やっぱり見た目通りのSF風味な無人兵器か。
 せめて、人が乗っててくれりゃあなあ……。こっちが素っ裸でも付け入る隙はあるんだが。

「……スイッチは……付いてるわけないか」
「是色よ、策が浮かばぬのであれば無理をする必要は無い。某が切り札を用いれば済む話ぞ」
「スイッチ、すいっち……電源電源……水で濡らせばショートする…………ふむ、もしかしたら……」

 アヤトラの申し出を手だけで断り、俺は機械バッタの腹の大部分を占める冷却ファンを覗き込んだ。
 動きを止めた三重のファンの奥を垣間見るに、どうやら吸い込んだ空気をパイプ内に循環させて冷やす仕組みになっているようである。
 防水対策は完璧。水を流し込んでも、すぐに吸排気で吹き飛ばされてしまうだろう。
 しかもこれ、水中だったらスクリューに転換できるんじゃねえか?
 つまり、冷却器であると同時に推進器でもあるというわけだ。
 そうすると、この巨大さにも納得がいくな。
 おかげで助かった。
 ……残り1分半ってところか? まったく焦らせてくれたもんだぜ。

 俺は取り出した神ボトルにロープを巻き付け、蓋を開けっ放しの状態に固定すると、冷却ファンの間を通して丁度良い所にまで滑り込ませた。
 次はロープと松明を適当に。突っ込んだ腕の先から放出するような感じで投げ入れる。
 そして拳大の石を目一杯。アイテム欄にある347個全部を出し切ってお終いだ。
 ……さてさて、一体全体どうなる事やら。
 幸い機械バッタの腹は斜め上を向いていたからな。物を詰め込むには格好の状態だった。

「よし、離れるぞ! 撃たれねえように向こうの角に隠れて様子見だ!」
「相分かった。其方の手腕の結果、楽しみに待つ事にしようぞ」

 素早く飛び降り、アヤトラと一緒にリザードの横を過ぎて通路の奥へ。

「ちょっとー!? あんなんで本当に上手く行くんですかい!?」
「多分な! 少なくとも直接ぶん殴るよりかは遙かに効果的だろうよ!」
 
 最終的には三人揃って安全圏へと退避する。
 アイスブルーに凍り付いていた景色が本来の色を取り戻し、時間が正常に流れるようになったのは、その数秒後の事だった。
 後は野となれ山となれだ。とくと結果をご覧じろ。

 銃弾が石畳を穿つ音が響き、機械バッタが再起動する。
 あの様子からすると完全に俺達を見失ってるみたいだな。これで時間が止まっている間は意識も停止するという事が分かった。目の前で落とし穴を掘っても気付かれないってわけだ。
 ……ああ、時間が止まっていると穴は掘れないのか。
 だが、その程度の欠点なんぞ有って無いようなもの。とにかく理不尽とも言える不意打ちが可能な、超理不尽魔法なわけだよ。
 気軽に使えるようなもんじゃねえんだろうけどな。
 対抗手段は、やっぱり他の魔法なのかね?

「おっ? 何だか調子が悪そうですよ。こりゃあ期待できやすかね?」
「ふむ、此の音は腹に詰められた石が原因なのか? しゃいたーんとは、よくよく奇妙な身体の造りをしておるのだな」

 力強い高速回転を始めた機械バッタの腹の中で、俺の仕込んだ異物の山が跳ねて弾かれ不協和音を轟かせる。
 敢えて例えるなら、冷却ファンのベアリングが外れたパソコンといったところだろうか? それの何百何千倍もの喧しさだ。
 進行している事態の方も、似たようなもんだな。
 といっても別に、機械バッタの冷却ファンを壊すのが目的ってわけじゃない。第一あんなクソ硬そうなの、鉄骨でも噛ましてやらんと傷みすらしねえだろ。
 俺の狙いは同じくらいに単純で、少しだけ大胆なものだった。
 想像してみてくれ。大量の石と火種を詰め込んだミキサーのスイッチを入れたらどうなるか? 回転を続けるその中に燃料を注ぎ続けたらどうなるか?

「……煙が出てきやしたね」

 まあ、とりあえず火が熾るかもしれねえやな。
 それもただの火じゃない。風の勢いと尽きぬ燃料の助けを借りて荒れ狂う、熱量の塊だ。
 電子制御された高度な機械にとって、熱ってのは大敵だよな?
 そう。俺の狙いはつまり、機械バッタの熱暴走──オーバーヒートなのである。
 問題は例え話のような密閉されたミキサーではなく、常に吸排気を繰り返す冷却器が相手だという事だな、火種が燃え尽きたら、すぐに排出されて元通りになっちまうだろう。
 俺自身、半分以上を直感に任せて打った手だから絶対に成功するとは言い切れない。
 これであのボケナスが参るかどうかは時間との勝負で、分の悪い賭けみたいなもんだった。
 
 余談だが、俺は自分から仕掛けた分の悪い賭けで負けた事がない。
 逆に大丈夫だと思えるような局面で足下を掬われたりする事が間々あるんだが……そいつは何というか、どうにもならん事だからどうでもいい。
 とにかく、結果は俺の勝ち。
 俺の運が、俺の閃きを勝利へと導いたのだ。

 循環する熱気によって暴発した弾丸が機械バッタの内部で跳ね回り、六本脚に破滅のダンスを踊らせる。
 装甲の分厚さが命取りだったな。対人用の7.62ミリ弾じゃあ外に抜けようがない。発射された片っ端から跳弾に次ぐ跳弾の嵐だ。
 その数、優に1万発超。
 その猛威、推して知るべし。
 自らの弾薬で内部機構をズタズタにされたシャイターンが右に左に揺れ動き、悪魔の呼称に相応しい断末魔を上げて崩れ落ちる。
 強敵の呆気ない最期に、俺達三人は感嘆と安堵の入り混じった息をついた。
 うん……まあ、意図していた結果とは少々違ったが、充分に想定の範囲内であった事は言うまでもないだろう。

「よぉーし! 思い知ったか、ざまーみろ!! 俺を怒らせるからこうなるんだ! 馬鹿野郎めがァァァ!!」

 早速駆け寄り、沈黙した機械バッタの頭部を足蹴にしながら触角を引き千切る。
 特に意味はないんだが、何となく戦利品が欲しかったんだろうな。振り回すと中々楽しい気分になれた。

「ぃやった! 坊ちゃん、男前!! そのモロ出しが霞んじまう程の勇姿に俺っち感動しやしたぜ! ──って、ぎゃん!?」

 うーむ、さすがに武器にはならんか。釣り竿で殴ってるみたいで収まりが悪い。

「いやはや、真に以て天晴れと云う他ない。いと面白き顛末であった」
「俺もここまで見事に嵌るとは思わなかったよ。あ、そっち引っ張ってくれ」

 口の減らないリザードの奴を適度に打ちのめした俺は、アヤトラを促して中に詰まったままの神ボトルを回収する作業に移った。
 今なら結構ガタが来てるから時間を掛ければ何とかなるだろ。
 使い捨てていくのは論外だしな。勿体なさすぎる。

「ほほう、中身はまた一段と面妖な……。眼はぎやまん、流れているのは血ではなく油か。
 それ以外は殆ど金物のようだが、鉄や銅等と云った某の既知の物では無さそうだ。
 是色は此奴の正体を知っておるのか? でなければ、あのような手際には及べぬであろう」

「ん、まあ、生憎と曰くまでは分からねえけどな。これがどういう物かってのは知ってるよ」
「ふむ?」
「一度しか言わねえから、よく覚えとけ。これは機械だ。生き物じゃあない。
 目的を持って作られた物だ。目的を果たすために造られた装置だ。もちろん悪魔でも悪鬼羅刹でもないぞ」

「成る程……押し並べて云えば、絡繰り仕掛けで動く人形のような物……と云う訳か」
「そうそう、からくりからくり。あと、ドールじゃなくてロボットな。
 人の手を借りずに、ある程度勝手に動く機械の事をロボットって言うんだよ」

 本当に、何でこんなのが居るんだかねえ……?
 これまでゾンビにネズミにゼリーお化け、悪霊レギオンと相手をしてきて、今日いきなりの改造ゾンビ軍団。でもって一気に近代兵器で武装したロボットを倒さなくちゃならんと来やがった。
 どう考えても荷が重すぎるだろ。
 やっつけておいてから言うのも何だが、知恵と勇気で攻略し切れる相手とは思えん。
 SWATやレンジャー部隊を敵に回して暴れている方がまだマシだ。連中は人間だからな。素手で殺せて装備も奪えてと、お得感たっぷりにステップアップしていける。
 だが、シャイターンは違う。
 外部動力で動くガトリング・ガンなんぞ引っ剥がしても、粗大ゴミにしかなりゃしねえのだ。
 前の世界だったら利用価値はいくらでもあったんだけどな。解析する人員も解体する設備もないこっちじゃあ、ハイテク器機の何もかもが宝の持ち腐れってやつだ。
 使えそうなのは弾薬くらいかね? それにしたって全部弾けちまったし、失うばかりで何の実入りもない戦いだったな。


「あ、居た居た! お兄さーん!」

 そんな虚しい思いを抱えつつ機械バッタの解体に勤しんでいると、ウェッジの奴がモドキを連れてやって来た。

「おぅわ!? これもモンスターですか!? また随分と建築様式にそぐわないデザインをしてますねえ……」
「確かに、今までのホラーテイストはぶち壊しだぁな。──で、どうした? 向こうで何かあったのか?」
「いえ、こっちは全然問題ありません。ただカーリャちゃんが…………そういえば、何で裸に戻ってるんです?」
「放っとけ。モドキの奴が何だって?」
「もどき?」
「それも放っとけ」

 上だけ着てたり手袋だけ着けてたりってのは、ゲイ向けのアダルト作品並みに不自然極まりないからな。
 何よりも俺の感性が許さん。
 というわけで、まぁ~た裸に逆戻りだよ。クソッタレめ!

「はあ……。えー、カーリャちゃんがですね。
 みなさんが先に上の様子を見てくるという話を聞いてから、自分も一緒に行くと言い出しましてね。
 その時はシャンディーさんに宥められて収まったかと思ったんですけど……気が付くと居なくなっちゃってたんですよ」

「そこに居るように見えるが?」
「はい。それで、きっとみなさんの後を追い掛けていったに違いないと思いまして。
 シャンディーさんに言ってオレが連れ戻しにきたってわけなんですよ。発見したのは、ついさっきです」

 連れ戻しにって……独りで来たのか。その方が身軽だってのは分かるが、意外な無茶をする奴だな。
 シニガミから逃げ延びたおかげで自信が付いたのかね? まあ、油断さえしなけりゃ良い傾向と言えなくもないか。

「カーリャもうえいく! うえいって、かあさまたすける! だからつれてけ! ……おう、おまえフクどうした?」
「……気にするな。それより本気か? シャイターンが怖いんじゃなかったのか?」
「おう、こわいぞ! でもおまえ、シニガミたおした! シャイターンたおした!
 カーリャもまけていられない! かあさまたすけて、いっしょにたたかう! キシダンサイコー!」

 そしてどうやらウェッジと同じく、モドキの奴にも心境の変化があったようだ。
 最初に出会った時は飢えた野獣そのものだったからな。比べるとえらい違いだよ。今じゃすっかり人間の眼をしてやがる。
 言ってる事は相変わらずで分かりづらいが、前向きな熱意だけは存分に伝わってきていた。

「そうか……。なら、俺は構わねえけどよ。お前らはどうだ? 二人とも生き残る事に掛けてはちょっとしたもんだぞ」
「俺っちは賛成ですぜ。妹さんの恐ろしさは骨身に染みて知っていやすからね。心配なんざいらねえでしょ」
「うむ、某も同意見だ。是色が云うのならば間違いはあるまい」

 考える素振りすら見せずに賛同する、アヤトラとリザード。
 こっちも短い間で随分と信用されたもんだ。背中がむず痒いったらありゃしねえ。

「あの……二人ともってことは、オレも一緒に行っていいんですかね?」
「何だ、そのつもりで来たんじゃないのか?」
「あ……えと、はい! あははははは! じゃあ、シャンディーさんに報告だけしてきますね! すぐ戻ってきます!」
「あいよ、調子に乗って転けんじゃねえぞー」

 はしゃぐ子犬の尻尾みたいに手を振りながら遠ざかっていくウェッジの背中を見送り、神ボトルの回収を済ませておく。

「某が生きていた乱世においては希少と云って良い程に裏表のない、健やかな男子である事よな。見ているこちらが晴れがましく成ってくる」
「俺達の時代にも滅多に居ねえよ。多分、早死にするタイプだから珍しいんだろうな」
「ハハッ! そいつぁ言えてやさぁね! 確かにファヴェーラじゃあ長生きできねえタイプですわ」

 ……にしてもあいつ、靴を履いてから益々速くなったな。あっと言う間に視界から消えちまったぞ。
 機会があったら計ってみるか。もしかしたら、100メートル9秒を切っているかもしれん。

「おい、カーリャ。シャイターンってのは、このスクラップだけじゃねえんだろ? 他にどんなのが居るか分かるか?」

 俺は現実逃避気味な物思いを振り払い、何やら生肉らしき物を咀嚼しているモドキから情報を得ておく事にした。
 今更ながら念のためってやつだ。
 シャイターンの具体像が分かった今なら、俺の想像力も少しはマシに働くだろうからな。頭を切り換え固定観念を捨てて、方策を練り直す必要があるんだよ。

「んぅ~? ほかのやつか? いろいろいるぞ。でかいのもいる」
「でかいってどれくらいだ? こいつよりもか?」
「もっと! もっとでかいぞ! やまくらいある!」
「なにぃーッ!?」
「おうおう! でもそいつ、うごかないからこわくない」

 …………うん、前言撤回だ。
 こいつから話を聞き出すのは疲れる。俺には向かん。
 やっぱり直接拝んでいくしかないのかね? 正直、見取り図もなしに挑むのはハイリスクすぎて嫌なんだが……さすがにリザードも安請け合いはしねえだろうし、前途多難にも程があるな。
 いざとなったら、時間を止めての強行突入しかないか。

「アヤトラ、時間停止の魔法はあと何回使えるんだ?」
「今宵はもう打ち止めぞ。あれは最大値の半分のえむぴーを消費するのでな」
「すると、どんなに節約しても2回……は実質無理だろうから一日1回か。
 進むのは回復を待ってからにしとくのが無難だな。さっきみたいな場面でガス欠でしたじゃ洒落にならん」
「うむ、尤もな話だ。では休息と参ろうか」

 とりあえず、殲滅は後回しで行こう。
 あんなのを一々相手にしていたら身が持たん。対抗手段が見つかるまで極力戦闘は避けた方がいい。
 つまり、ここから先は潜入捜査。
 何としてでも五体満足で上に行き、連中の弱点や他の脱出ルートを探る事が当面の目標となるのだ。
 俺はウェッジが戻り次第、全員にこの方針変更の旨を伝える事にした。

「おうおう、なんだ? もうやすむのか? カーリャ、まだねむくないぞ!」
「人間、疲れてなくても休まにゃならん時があるんだよ。寝なくてもいいから、うろちょろすんな。一緒に居ろ」
「おう、わかった! カーリャ、いっしょにいてやる!」

 口周りを血で汚しながら小気味の良い返事をするモドキの姿に、思わず苦笑してしまう。
 子供は素直が一番だってのは、何処の誰が言い出しやがったセリフなんだろうな?

「……ところで、お前、さっきから何食ってんだ?」
「おう、そこでひろった! ブタよりうめー!」
「ほう…………そこで……ね」

 モドキの指差した血溜まりに視線をやり、俺は人知れず冷や汗を流した。

 どう見ても吹っ飛ばされた俺の足じゃねーか! 今食い付いてんのは脹ら脛の部分だ!
 もう新しいのが生えたから抗議しても意味なんざねえがよ……。原型が残ってるってのが、また堪らんな。

「なんだ、ほしいのか? おまえもくうか?」
「……ああ、ありがとよ」

 だがまあ、そんなのぁ細かい事だと気を取り直して、後学のためにも是非いただくとしようかね。
 こんな経験、普通に生きてちゃあまず有り得ねえだろうし。

「どうだ? うまいか?」

 ……………………感想は、我ながら上等だったとだけ言っておこうか。








 翌日の道行きは、比較的順調だった。
 シャイターンとの遭遇がなかったからな。改造グール大行進なんてガトリング・ガンの掃射に比べりゃあ安すぎて欠伸が出るってなもんよ。

「アレがそうか……?」

 そうして遂に俺達は、念願の上への道を発見する事に成功したのである。
 ちょっとばかり予想外だったがな。

「おう、そうだ! カーリャ、あそこからおちてきたぞ!」

 階段でも坂でもエレベーターでもなく、広間の天井にぽっかりと空いた穴こそが、その探し求めていた道であったのだ。
 天井まで50メートル、上層の床までは20メートルで、計70メートルの高さといったところか。落ちたモドキが無事なのは積み重なった死体の山がクッションになったからだろう。落下の衝撃で痛んだと思しき改造ゾンビが何体か居たから、連中もあそこから下りてきたに違いない。
 明らかに正規のルートじゃねえやな。
 けれども、すでにマップは埋め尽くしたと言っていい状態だ。他に上へ通じるような道が見当たらなかった事を考えると、何らかの仕掛けがあると睨むべきだろう。

「あの大穴が出来た原因は分かるか?」
「おうおう! カーリャ、みてない。けどわかるぞ! シャイターンのせいだ! でかいオトしたからな!」

 ……だとすると、シャイターンはそれに気付いていない?
 ウェッジの指摘した通り、この古式ゆかしい造りの迷宮とサイバネティックな奴らの雰囲気はそぐわないなんてもんじゃねえからな。元々は別の連中が所有していた建物だったとしてもおかしくはない。むしろ、大いに有り得る話だ。
 こりゃあ別ルートで脱出の線が濃厚になってきたかね?
 探すのは上からの方がいいか。

「そんじゃまあ、他に道もない事だし、早速上ると致しますか」
「えいえいおー!」
「でも、高さがちょっと半端じゃないですね……」
「どうしやす? 俺っちが先に行ってロープを垂らしゃあいいんですかい?」
「いや、それだと腕力のないウェッジにはつらいだろ。俺達が引き上げるにしても時間が掛かる。だから、ここは大事を取って──」
「蜘蛛の歩みの秘薬、だな」

 お、話が早いねえ。
 目を細めて、俺のセリフを引き継いだアヤトラに頷く。

「何ですか、それ?」
「一言で言うと魔法の薬だ。飲むと蜘蛛みたいに壁や天井を移動できるようになる。
 ……説明するより実際に試してみた方が早いな。飲んでみろ」
「え……でもちょっとこれ、凄い紫でドロっとしてるんですけど……?」
「飲んでみろ」
「はあ……。いただきます」
「んぉ~~! まずずずず!」

 前説もそこそこに、俺を含めたリザード以外の四人が蜘蛛の歩みの秘薬を服用する。
 ちなみに今回はアヤトラが所有していたのを使わせてもらう事にした。他にも沢山持ってるみたいだったからな。事前に色々と分けてもらったよ。

 その後は5分ほどで戸惑うウェッジとモドキの奴を慣れさせて、潜入開始の本番だ。
 壁を走り、天井を歩き、上層の床へと繋がる大穴の中を四つん這いで慎重に進んでいく。
 もちろん声を出すなんて真似は厳禁だ。誰にでも分かる簡単なハンドサインで合図を送り、五人共に息を揃えて穴の縁の真下に付ける。

 よしリザード、お前行って様子を見てこい。
 え、なに? 嫌だって? 阿呆、一番捷いお前が斥候にならねえで誰が行くってんだ。
 ほれほれ、そら行け。行って故郷に錦を飾れ。
 …………あん? 多数決で決めようってか?
 分かった分かった、分かったよ。まったく往生際の悪い両生類だぜ。
 んじゃ、一斉に指差しで決めようか。

 そして結果は言うまでもなく…………とはいかず、意外な事に俺が行く羽目になっちまった。
 全員一致とは夢にも思わなかったぞ。あいつら、そんなに俺を捨て駒にしたいのか。
 畜生共め、覚えてやがれよ。

 長い長い溜息一つで思い切り、いざ上へ。
 といっても、自身に掛かる重力からしてみれば下に行くような感覚だな。
 顔半分だけ出して周囲の安全を確認し、変化する重力を確かめながらゆっくりと、上層の床に足を着ける。
 造りからして倉庫か何かかね? 中は空っぽ、内装は剥き出しのコンクリートか。薄汚れた石畳の迷宮から打って変わって無機質な印象だな。
 ……まあ、ただの倉庫に赴きを置く方がどうかしてるか。とっとと先へ進もう。
 俺は四人に上がって待つように伝えると、シャイターンに破壊されたであろう巨大な扉の残骸を踏み越え、下と変わらない広さを誇る通路へと躍り出た。
 素早く床に耳を着け、辺りに動く者の気配がない事を確かめる。
 こっちの床はリノリウム張りみたいな質感だな。壁にも陰気な塗装が行き届いてやがる。
 無機質な事には変わりないが、如何にも研究施設の内部って感じになってきたぞ。
 まったく、やり甲斐があって困るぜ。
 幸い、今は秘薬の効果で足音を立てる心配がない。ちゃっちゃと調べさせてもらうとしようか。


 俺は天井へと移動し、我ながら大胆不敵とも言える駆け足で駒を進める事にした。
 …………とりあえずは、セーフティーゾーンの確保が最優先だな。

















 あとがき

 やっと上層に辿り着きました。
 あと三話くらいで脱出まで持っていきたいところですね。

 ご感想、どうも有り難うございます。
 何だか戸惑うほどにPVも増えてきて嬉しい限り。
 周一ペースで申し訳ありませんが、これからもコツコツと続けて行きたいと思います。



  ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  18/20

 パーソナル マップ  (72)
 フォーチュン ダイス  (483)
 豊穣神の永遠のボトル

 丈夫で軽くて滑らかで愛が込められた高品質の スパイダーシルク製の背負い袋

 入)スパイダーシルクの子供用胴衣 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉
 入)スパイダーシルクの子供用手袋 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉
 入)スパイダーシルクの子供用肌着 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉 みっともないんで脱ぎました。再び全裸です。
 入)ケタの干し肉  (38)
 入)他の袋4枚

 丁寧な作りの軽くて丈夫な スパイダーシルク製の背負い袋

 入)スマイリーキャベツ  (5)
 入)オミカン  (10)

 丈夫な革製の背負い袋

 入)陽光のカンテラ
 入)水筒 〈空〉
 入)丸い水筒 〈湧き水〉
 入)大きめの水筒 〈井戸水〉

 ヒール ストーン
 ヒール ストーン
 リフレッシュ ストーン (4)
 冒険者の松明  (33) バッタに詰め込むのに206消費
 火の付いた冒険者の松明
 麻製のロープ  (71) 神ボトルを縛るのに1消費 バッタに詰め込むのに114消費
 蜘蛛の歩みの秘薬  (9)
 蟻の力の秘薬  (9)
 蜂の一刺しの秘薬  (3)
 蝗の躍動の秘薬  (3) 秘薬はアヤトラにもらって3ずつ入手
 ケタ肉の塊  (24) 休憩の際に焼いて食べて1消費
 月光鱒の切り身  (58)


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 拳大の石は全部使用しました。
 今回は無駄に余っていたアイテムを盛大に消費しましたね。

 ステータスから所持金の項目を削除する事にしました。
 金銭はアイテム扱いの方がいいかな、と思いましたので。
 よって全員一文無しです。
 まあ、現時点では無意味としか言い様のない変更なんですけどね。




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