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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918] 10
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/11 14:29

 ……………………あ、滑った。

「ううおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!?」

 上手く避けたと思ったらこれか。踏んだ死体が腐ってやがった。
 馬鹿げたサイズの毒キノコが乱立する死体の山から転げ落ち、受け身を取って大の字に。
 分かりきってた事で今更だが、この広間は持久戦にゃあ向いてねえな。足場は悪すぎるわ、鼻は曲がりそうだわで逃げ回るのにも一苦労。ネズミも邪魔してきやがるし、本当にロクでもねえ所だよ。
 中でも一番頭が痛いのは、せっかくの一張羅がクソ汚れちまったって事だ。
 黒い服でよかったぜ。ブランデーで洗っても目立った染みにゃならねえだろうからな。

「はい、残念!」

 同じく山から転げ落ちるようにして俺に飛び掛かってきたネズミの胴を両足で挟み止めては、クルリと一転。マウントの姿勢から垂直に振るった神ボトルの底で叩き潰す。
 うむ、我ながら8歳児とは思えん力だ。
 余韻を残さず即座に離れ、転がり転がり四つん這いに。一瞬たりとも停滞する事なく、走りながら二本足へと進化する。
 そしてすかさず横っ飛び。
 背中に感じる寒気が増大したからなんだが、、間一髪ってところだったな。
 変幻自在、生きた濃霧のようなシニガミの一端が命を求めて揺らいで伸びる。

『…………さむい、さむい……いたい、くるしいさみしいさむいさむいさむい……』

「そうかいそうかい。そりゃ大変だ。聖書の一節でも聞かせてやろうか? それとも念仏の方がお好みかい!?」

 跳び退った俺は新しい松明に点火し、寄ってくる気持ちの悪いモヤモヤを火炎ファイヤーで焼き払った。
 ……そういやアレだな。こういうのをエクトプラズムって言うのかね?
 視覚化した霊を構成する半物質、もしくは何らかのエネルギー状態のもの。それが確かエクトプラズムだったはずだ。
 心霊主義の本は流し読みにする程度だったんだが、この辺に関する知識は意外と残ってるな。発見者が有名人だったせいか?
 まあ、目の前でウダウダ言ってるドロドログチャグチャが何で出来ているのかなんて判明したところで、対策に繋がるわけじゃないんだがな。ついつい考えちまうんだよ。
 敵を知り、己を知れば何とやらって言うだろ?
 俺はそういう合理的な意味での考察大好き人間なのだ。
 身内からも敵からも『三度の飯より暴れるのが好き。超好き』って感じの狂犬みたいに思われていた節があったけど、それはアレだ。

『……さむいさむいさむいさむい……シは、エイエンのコドクだ…………さみしくてくるしい、いたい、たすけて、だれかだれかだれかだれか……』

「だからって寄ってくるんじゃねェェェ!! テメェらの都合で俺まで原生生物未満にされてたまるかってんだ!!」

 きっと俺が、全力で暴れ回りながら猛回転で思考できるタイプの人間だからだな。
 そうすると自然と口も滑らかに動く。段々と調子が出てくるんだよ。

「悪霊退散! 南無阿弥陀仏! オラオラ消えろ、燃えちまえ! 生者に手間暇掛けさせんな!!」

『……あ、あ、あああ、あ、あ……おおお、おお、お、お、お、おおおおお…………』

「おーい、誰かゴーストバスターズに電話してくれ! 自由の女神が必要だってな!!」

 特に今回は五割り増しでも足りないくらいだ。怒声を絶やさず発憤してねえと確実にやばい事になる。
 ん? 何がやばいのかって?
 ああ、別に難しい理由があるわけじゃない。至極真っ当で単純な話だ。

「リザード! リザァァ────ッド!! なにボーッと突っ立ってやがる!」

 精神がな、破壊されちまうんだよ。
 あのシニガミに練り込まれた何十何百もの口から垂れ流される言葉を聞いていると、ペヨーテでも服用したみたいに頭の働きがおかしくなっちまうんだ。
 霊能力者なんかが素人による霊との接触を危ぶむ理由がよく分かる。ありゃあ呪詛の声だ。耳を打つ言葉はてんでバラバラ、内容もそれぞれで違うはずなのに、俺の精神にもたらす影響は一つだけ。不快極まる幻覚症状だけと来てる。
 どんなに声を張り上げても、対話なんざ成立しねえ。
 これが一個人の独立した霊だったら、また話は違ったのかもしれんがな。
 すでに一つの塊、死者の本能に突き動かされるだけの哀れな集合体と化した今となっては、一緒に苦しんでくれるお仲間を増やす事しかできねえんだろう。
 各々の霊が何を考え、何を訴えようと関係ない。言葉はすべて生者を惑わすものにしかならない。
 取り込まれたが最後、巨大な悪霊の一部としておぞましく機能し続けるしかないのだ。
 ……俺みたいな悪党の末路としちゃあ妥当なところかねえ?
 もちろん、抗わせてもらうけどな。

「ボケェェェ――――ッ!! 死にてえのか、お前は!」

 というわけで目を覚ませ、阿呆。
 シニガミの毒気に当てられて朦朧状態だったリザードの傍へと駆け寄った俺は、躊躇う事なく、その尻尾に松明の火を押し付けた。
 下手に殴って怪我でもされたら困るしな。この方法が一番手っ取り早いと思ったんだよ。

「………………………………へ……? うわ、熱ッ!? あぢあちあぢ、熱ィィィッ!!?」

 ほら、効果覿面だ。

「何すんですか!? 俺っちとっても敏感肌なんですよ!!」
「うるせえ! 今度寝ぼけやがったら、そこの菌類を植え付けてやるからそう思え!」
「そんなぁ! せめて食べられるやつにしてくださいよ!」

『……さむい、ひもじい、なにもみえない……だれか、だれかだれかだれか…………』

「ああああああ!! また来たァァ! ちくしょー! お願いだから少し黙って!」
「しっかりしろ! 素っ裸のイモリ原人のままで死にたかねぇだろ!
 俺も一緒に頼んでやるから、生き延びて姉さんに服を作ってもらおうぜ!!」
「ほ、本当ですかい!? 約束ですよ!」
「おうよ、任せとけ!」

 少しでも精神に掛かる負担を軽減しようと、お互いを盛り上げながら逃げ回る俺とリザード。
 耳を塞いでも鮮明に聞こえてきやがるからな。シニガミのネガティブ怨声爆弾を堪え忍ぶには。これくらいしか手がねえんだよ。
 更に言うと、この広間に到着にしてから見つけ出せた唯一の対抗手段でもある。クソッタレ!
 散々苦労して得られた成果が、これっぽっちたぁ情けねえ話だぜ。

「リザード! 何か手はねえのか!? そろそろ腹に据えかねてきたぞ!」
「あるわきゃねーでしょ! 坊ちゃんこそ、あの雄叫びはもう打ち止めなんですかい!?」
「あと二発しかねえんだよ! 百発残ってたって、あの大きさは無理だろ!」

 ダメージ計算に一役買ってるSTRボーナスとやらの算出方法は分からんが、蟻の力の秘薬と【激怒】で底上げしても、せいぜい倍の威力になるくらいが関の山だろうしな。急所でも狙わんと話にならん。
 …………急所か。あっても不思議じゃねえやな。
 悪霊共がグチャグチャグチャと忙しすぎて、ちっとも判別付かねえけど。
 時には細くねちっこく、時には包み込むように、手を易え品を易え襲ってくるシニガミの野郎から走って跳んで偶に転け、必死の思いで時間を稼ぐ。

「あ! そっちのキノコ、モンスターですから気を付けて!」
「おおぅ! こんな小さいのまでそうなのか」

 毎度お馴染みのネズミや、懐かしきキノコモドキ虫なんかを巻き込んだりしながらな。
 俺が目を覚ました部屋よりも広くて沢山居たから、危ない目にも遭わされたけど、結果的には随分と助けられたよ。どいつもこいつも見境なしの悪食で本当に助かった。
 だが、そういった小細工の数々にも限りがある。
 すでに広間は死屍累々の惨状で、俺達以外に生きている奴は見当たらない。最悪の瞬間が訪れるのも時間の問題だった。

 具体的にはどれくらいかって? ……そうだな。持ってあと一時間ってところか。
 それ以上粘ると一酸化炭素中毒になる恐れがあるからな。さすがにこの歳で諸々の後遺症は勘弁願いたい。

「…………ふと思ったんですが、これって傍から見ると間抜けすぎやしやせんかね?」
「嫌ならやめてもいいんだぞ」
「いえいえいえいえいえ! もちろん喜び勇んでお供させていただきやすよ!」

 中央に出来上がった巨大な焚き火の周りを緩い駆け足で旋回しながら、俺はリザードがぼやく虚しい現状の客観視を聞き流した。
 ……確かに、ブランデーを染み込ませた死体の山に火を付けて、そいつを盾にグルグルと距離を取るだけってのは無様だとは思うがな。
 でもほら、フィギュアスケートは美しいけどジャンプしてる選手の顔だけ撮ったら滑稽に映るだろ? それと似たようなモンだよ。
 現場の人間が頭捻って炸裂させた効果的な戦術も、その全体像を把握できる安全地帯に居る素人には格好悪く見えたりするものなのだ。
 何でこんな手しか思い付かないんだよーとか、相手も何で引っ掛かるんだよーとか、ちょっと考えりゃ分かるだろーとかいう感じでな。
 実際に命を懸けて戦ってみるとよく分かるんだが、戦闘中に高度な戦術を練って披露するなんてのは不可能に近い。人より多少経験豊富だと自負している俺にしてみたところで、誰でも考え付けて実行に移せるような手段しか講じられないわけだからな。大変なんだよ。
 しかし、そういう幼稚な作戦こそが得てして功を奏する事になる。
 戦いに絶対はないからな。状況と相手によって二転三転は当たり前。どんな子供騙しでも100%あらゆる局面において通用しないって事はないんだよ。
 そこら辺の見極めに物を言うのが経験とセンスである事は……言うまでもないよな?
 俺みたいな凡人がいくら凄い努力をしても、発想の貧困さは覆せない。
 だがそれでも、積み重ねた経験は伊達じゃないってわけだ。

 まあ要するに、人が見てどう思うかなんて気にしていられる内はアレだ。その勝負に負けてもいいやと心の何処かで思っているに違いない。
 客観性は大事だが、羞恥心は要らないのだ。
 ここが観客の居る舞台の上で、俺達がプロの競技者だってんなら話はまた別だがな。

『…………さむい、さむい、さむいさむいさむい、さむいさむいさむい……』

 あーうるせー。そんなに寒けりゃ勝手に焼かれろ。誰も止めやしねえから。
 焚き火を大きく迂回して何度も何度も俺達を狙ってくるシニガミの執拗さに溜息をつく。
 時間稼ぎにゃ持ってこいの状態なんだがな。頭の悪いワンパターンの相手をし続けるのは、緊張感の維持という意味で中々に厳しいものがあった。

「なあ、ここに来てから何分くらい経ったと思う?」
「ん~~……15、6分? 随分長く居るような気がしやすけど、20分はまだ過ぎてねえと思いやすね」
「だなあ。俺の感覚でもそのくらいだ」

 いやまったく。単調な作業ってのは疲れるねえ。
 大体、火が苦手にしても程があるだろ。大回りしすぎなんだよ。もしかして熱気か? 火じゃなくて熱そのものに弱いのか? 真夏日に熱中症でダウンする動物園の白熊じゃねえんだから、少しは根性見せやがれ。

 ……………………ん? 待てよ?
 真夏日?
 益体もなく渦巻いていた思考の中で、突如芽生える新たな閃き。
 その答えに行き着いた瞬間、俺は我が身不甲斐なさから壁に突進したい衝動に駆られた。
 思い込みって恐ろしいな……。何で今まで気付かなかったんだろ?
 俺って奴ぁとんだ間抜け野郎だぜ。

「リザード君、幽霊ってさ、どうして昼間に出て来ないのかな?」
「何ですか、いきなり?」
「いいから答えろ。ガキでも分かる簡単な問題だ」
「はあ…………えーと、お天道様が出てるからですかね? きっと陽の光が苦手なんじゃねえですかい?」
「そうだよな。やっぱり陽の〝光〟だよな……」

 何のこたぁない。最初からあったのだ。
 火炎ファイヤーや【咆哮】よりも、ずっとお手軽で安全で有効な手が……。



 ◆ 陽光のカンテラ 〈Cグレード〉 〈エネルギー残量 172685〉

   詳細: 集めた太陽の光を灯りとして利用する事ができる、魔法のカンテラ。
        日中に光を補充する手間さえ惜しまなければ、半永久的な使用が可能である。
        その便利さに比例して製法は非常に困難、かつ多大な費用を要するため、
        現在では作る者の限られた、貴重な高級品となっている。








「うあはははははははははははは!!! 待て待て待て待てぇ~~~ッ!!」

『……あああ、ああ、ああ、あ、あ、あ……うぅぅぅううう、う、う、う、うう…………』

「灰は灰に、塵は塵に。霊魂は天に昇るか地に堕ちよ! 彷徨う奴らは消毒だァ――――ッッ!!!」

 数分後には、カンテラの明かりを全開にしてシニガミを追い散らす、俺の元気一杯な姿があった。
 あんなどうしようもないと思っていた化け物が、軽く照らしただけで朝露みたいに消えてなくなっていくのだから気分爽快。面白くて面白くて仕方がないのだ。
 まさか、ここまで楽勝に事が運ぶとは予想だにしなかったぞ。
 日光に弱いとは思ったんだがな。いくら何でも弱すぎだ。
 光量最大、サハラの日差しよりもきつい光を浴びせているからという些細な事実を差し引いても目に余る。訪れた反撃の機会を前に、俺は初日以来の盛り上がりを発揮していた。

「エクセレンテッ! 坊ちゃんスゲー! カッコイー! 相手が抵抗できないと見るや容赦なく追い立てていく、攻めの姿勢が怖すぎるぅー!!」

 唯一の不満は応援に華がない事だな。アレならカーネル・サンダースの方がマシだ。誰でもいいから交換してくれ。
 掃討作業自体は、この上なく順調だった。
 そりゃあもう、駆け付けた救援が安心して見ていられるくらいにな。

「やあ、姉さん! すまねえな! 無駄な心配掛けちまったみたいだ!」

 一体いつから観戦していたのやら。通路口には呆れ顔のシャンディー姉さんと、俺の知らない黒髪の子供が佇んでいた。
 男か女かも分からない、整いきった細面。光を放つ切れ長の瞳は鋭く、まるでククリのような重厚さ。だけども金属的な冷たさは一切なし。むしろ内なる炎に滾っているといったところか。
 華奢な体つきにも関わらず、生命力と存在感は溢れんばかり。一目で分かる超大物だった。
 有り体に言うと人の形をした赤色巨星だな。高純度のエネルギーの塊だ。
 統率者としても、戦士としても、恐らくほぼパーフェクトに近いはず。
 何でそう思うかって? 俺が知っている最強の個人に印象が似てるからだよ。絶対に敵に回したくないタイプの人間だ。
 …………まさか、本人じゃねえよな? ……ねえよな? 元日本人だって話だし。
 って事は、あんなのが二人以上も居る可能性があるのか……。
 まったくもって世の中ってのはよく出来ていやがるぜ。途方もなく広い上に恐ろしいと来たもんだ。
 とにかく、あいつがアヤトラで間違いないだろう。
 違ったらシニガミにキスしてやる。

「よかったら参加してくかい!? そこの兄さんも歓迎するぜ!」
「いや、遠慮しておこう。某は此処で見守っている故、心置きなく悪霊退治に励まれよ」

 うわあ、涼やかな声。良く通るソプラノだ。
 ……けど、随分と古風な言い回しをする奴だな。ソレガシってどういう意味だ?

「言ったでしょう? 昔の人だって。これでも随分とソフトになった方なのよ」

 面食らう俺を見て、姉さんが苦笑混じりのフォローを入れる。
 ……何だか苦労が偲ばれる笑顔だな。事情は知らんが、さぞかし大変だったんだろう。
 まあ、敢えて気にする程の事でもねえやな。意思疎通に問題さえなければどうでもいいし。慣れりゃ個性ってやつかもしれねえし。
 挨拶も済ませた事だし。

『……きえるきえるきえる、きえるきえる…………さむいさむいさむいさむい、さむい…………』

 お言葉通り、始末に励むと致しましょうか。

「ウォォォォォォォォララララララァァァァァ――――ッッ!!!」

 今や直径5メートル前後と残り少なくなったシニガミに向け、俺は渾身の【咆哮】をぶちかました。
 集束させた単体用とやらの方の具合も確かめておきたかったからな。試し撃ちには絶好の機会だったってわけだ。
 …………ふむ、あのサイズの全体に衝撃が行き渡ったか。結構曖昧な認識で単体扱いになってるみたいだな。
 だが、相手が相手だけに威力の程は分かりづらい。これなら回数に制限のない火炎ファイヤーを連発した方が良さそうだ。
 人間や他の生き物相手にも試してみない事には何とも言えんが、レベルが上がったら強化されるそうだし、現時点では将来に期待ってところかね。

 そして俺は更にコツを掴むためにと最後の一発を放ち、シニガミにトドメを刺した。
 残り滓のエクトプラズムが未練がましく漂っていたが、カンテラの光でそれも完全消滅だ。
 消えちまったら断末魔もクソもない。静かなもんだよ。呆気ない最期だったな。
 訪れた後味の悪い静寂を大欠伸で掻き乱し、リザードに手招き。大仰に肩をすくめながらアヤトラと姉さんの傍に行く。

「見事であった。鞍馬山に住まう天狗の子とは、きっと其方のような童を指して云うに違いない」

 へえ……言ってる事はよく分からんが、良い顔で笑うじゃねえか。
 もっと鉄面皮な奴かと思ったんだがな。どうやら随分と成熟した人格の持ち主のようだ。

「あーそりゃどうも。お褒めに与り光栄ですわ。──で、あんたが噂のアヤトラさんでいいのかい?」
「うむ。どのような噂かは知らぬが、某がその綾虎で間違いなかろう。
 生憎と昔の名を忘れてしまったものでな。それならばと敬愛する母と姉より名を賜る事にしたのだ」
「そうかい。俺の方はまだ名無しだが、よろしく頼むぜ」
「左様であるか。……では、牛若という名は如何かな? 秀でた武勇を誇る美童の其方に相応しいと思うのだが」
「え? いや、遠慮しとくよ。自分でじっくり考えて決めるからさ」

 ウシワカって名前は如何にも日本的で、俺の好みじゃねえしな。日本食は大好物なんだが。

「ならば、九朗という名ではどうか?」
「…………」

 ……日本人形みたいな見た目に反して、押しの強い奴だな。
 ああ、もちろん断ったさ。
 その後の戻る道すがらにも色々と話をしたんだけどな。事あるごとに俺の名前を付けようとしてきやがる。本当に女じゃないのかと疑っちまったよ。
 まったく何処のオバちゃんだ、お前は。
 そんなに子供好きなのか?
 聞けば享年49歳だったそうで、本当の意味で俺よりも少しばかり年上だった。
 だからってわけじゃないんだが……お節介じみた押しの強さも自然な感じで……やっぱり鬱陶しかったな。
 けど、俺が声を荒げる前に見かねた姉さんがアヤトラを引っ張ってってくれたから。不愉快になる事はなかった。
 何だかんだで有意義な道のりだったと思うよ。








 案内されて辿り着いた部屋でには、100人以上もの老若男女がひしめいていた。
 いや、老は居ないな。みんな若い。多分、前世がどうであれ一定以上の年齢にはならないように出来てるんだろう。
 人員のほとんどが女子供で、男の数は20人足らず。こんな場所じゃあ男女比に関係なく乱れまくってそうなもんだが、思っていたより規律の方は行き届いている様子だった。
 女子供の表情に漠然とした不安や恐怖の色はあっても、後ろ暗い影はなかったからな。集団として上手く機能している証だ。みんなそれなりにお行儀良くやってるんだろう。
 これで裸だったり食料不足だったりしたら、目も当てられない惨状だったんだろうけどな。
 そして衣食共に足りていたところで、一致団結するのは絶対に不可能だ。
 人間誰しも、結局は自分が一番。これが真理だからな。強力なリーダーシップの持ち主でも居なけりゃあ、窮地で弱者を助けるなんて真似はできねえんだよ。
 こいつらの最大の幸運は、アヤトラとシャンディーという優しい怪物に出会えた事。兎にも角にも、それに尽きる。
 ザッと面を見た限りじゃあ、あの二人に並ぶ奴は居そうになかったからな。

「あ、お兄さん! こっちこっち! 心配しましたよ。……大丈夫でしたか?」
「ああ、見ての通りだ。ピンピンしてるよ」
「そうそう。物の見事に返り討ちでさぁ。坊ちゃんがあんたの毛髪の仇を討ってくれたんですぜ」
「えぇ!? アレをやっつけた!? 本当ですか!?」

 俺とリザードは隅の方で独りそわそわとしていたウェッジの所に腰を落ち着け、別れてからの短い顛末を語った。
 そしたらこのハゲ頭、何でか知らんが泣き出しやがってな。
 別に髪の毛の仇を討ったつもりはないんだが……筋違いの感謝というわけでもないので、しばらくは情動の赴くがままにさせてやった。
 …………そんな感激するような事かねえ?

「そういや、モド……カーリャは何処行ったんだ? 一緒じゃないのか?」
「カーリャちゃんなら、あっちで他の子達と遊んでますよ」

 はい?
 おお、マジだ。
 何だが知らんが、えらく楽しそうじゃねえか。
 やっぱりガキの相手はガキに任せるのが一番なんだな。遂に俺の肩の荷が完全に下りる時が来たようで、感無量だぞ。
 リザードの奴も同じような事を思ったのか、ひっそりと安堵の息をついていた。

「ここに居る子達はみんな年相応みたいですね。前の年齢も同じくらいだったのかな?」
「どうだかな。大人と子供じゃホルモンの作用が違う。案外、精神が肉体に翻弄されているだけってオチかもしれんぞ」
「……お兄さんは違うんですか?」
「当たり前だ。……と言いたいところだが、昔と比べて感情的になったような気もするな」

 他愛もない世間話を交えながら、今後の事を詰めていく。
 結論は三人一致で、このままアヤトラ一行と共に迷宮を攻略していくという事になった。
 アヤトラのマップと合わせてみて分かったんだが、残りはほぼ一本道みたいなもんだし。上のフロアにはシャイターンとかいうシニガミ以上に得体の知れない連中が居て、モドキの母親を始めとした大勢の人間が捕まっているそうだし。人手は多いに越した事はないだろう。
 非戦闘員でも囚人の解放やケアには役に立つだろうからな。
 全体のフットワークが重くなるのは厄介だが、今のところは一緒に行動するメリットの方が大きいのである。
 第一にリーダーはアヤトラだからな。俺じゃない。
 連中の面倒を見る必要が一切ないってのが良いんだよ。


 一寸先は闇、どう転ぶかは誰にも分からない道行きだ。
 利用できそうな人間とは、せいぜい仲良くしとかねえとな。

















 あとがき

 シニガミあっさりと退場。
 遂にアヤトラ登場です。
 これでようやく、上へ行く展開が見えてきました。

 ああ、主人公の「ニューヨークへ帰りやがれ」の元ネタは、お察しの通り映画『ゴースト』で間違いありません。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 名前: ????

 種族: ????  性別: 男性  年齢: 8

 LV 1  クラス: バーサーカー  称号: なし

 DP 0

 HP 26/26(+20%)  MP 27/27  CP 23/23

 STR 20(+5)  END 10  DEX 13(+2)  AGI 12(+3)  WIL 8  INT 4

 アイテム枠: 17/17

 装備: スパイダーシルクの子供用胴衣  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用下穿き  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用手袋  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用ブーツ  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用肌着  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用下着  〈Eグレード〉〈超軽量級〉
      スパイダーシルクの子供用靴下  〈Eグレード〉〈超軽量級〉

 防護点: 4(基本+1 特性+1 装備+2)

 習得技能枠: 17/17

 戦闘技能: 長柄武器 31.0(+10) 打撃武器 20.8(+10) 蹴打 17.4  回避 3.7  投擲 1.6

 一般技能: アイテム鑑定 21.5  生存術/雪原 13.0  書道 26.0  事務 10.0  跳躍 28 1
         観察 11.4  忍び 7.5  大道芸 14.6(+5) 探知 1.7  聞き耳 5.8
         気配感知 8.9  行進 2.3

 習得特技・魔法枠: 6/7(+5)

 特技: 激怒  [咆哮]  『覚悟Lv 1』  『突進Lv 1』  『早駆けLv 1』
      『力任せLv 1』

 魔法: なし

 特性; 怒りの化身  美形  理想的骨格  多元素の血筋  活力の泉


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 10話終了時の主人公のステータスです。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  14/17

 パーソナル マップ  (72)
 フォーチュン ダイス  (504)
 豊穣神の永遠のボトル

 丈夫で軽くて滑らかで愛が込められた高品質の スパイダーシルク製の背負い袋

 入)ケタの干し肉  (38)
 入)他の袋4枚

 丁寧な作りの軽くて丈夫な スパイダーシルク製の背負い袋

 入)スマイリーキャベツ  (5)
 入)オミカン  (10)

 丈夫な革製の背負い袋
 入)ヒール ストーン
 入)ヒール ストーン
 入)リフレッシュ ストーン (5)
 入)陽光のカンテラ
 入)水筒 〈空〉
 入)丸い水筒 〈湧き水〉
 入)大きめの水筒 〈井戸水〉

 拳大の石  (347)
 冒険者の松明  (239) シニガミ戦で4消費
 火の付いた冒険者の松明
 麻製のロープ  (186)
 蜘蛛の歩みの秘薬  (6)
 蟻の力の秘薬  (6)
 ケタ肉の塊  (25) 
 月光鱒の切り身  (58)


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 そういえば、やっと10話目になりましたね。
 この10倍の100話目指して頑張りますので、応援よろしくお願い致します。




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