第11話 父の居ぬ間に色々強化 前編
SIDE:高畑 里桜
STEP:1 無詠唱魔法
今日は弐集院先生と練習です。
「よし、じゃあやってみて」
弐集院先生の合図を受け、気合いを入れる。
「はい。……戦いの歌!」
ボワッと身体が魔力で覆われる感じが分かる。
「う~ん。結構サマになってきたけど、まだまだ効率が悪いね」
うう、確かに魔力はガンガン減っていくのに、身体の強化はそれほどでもないのが分かります。
「でも前回よりは良くなっているから、このまま要精進だね」
「はい」
弐集院先生は必ず最後褒めて締めてくれるのでうれしいですね。
神多羅木先生の場合はたいてい気絶するか、私の口が聞けなくなるなるレベルまでグッタリしちゃいますし
ガンドルフィーニ先生は大抵最後は小言で終わります。
皆さん私の事を考えてくれてるのは分かるので、文句などあるはずもありませんが。
「それはそうと里桜ちゃんは魔法剣士を目指すことでいいのかな?」
「はい。一応一人で色々出来るようになりたいので」
チューチューとスポーツドリンクを飲みながら答える。
慣れないと戦いの歌だけで汗をかくのだ。
「そっか、なら無詠唱魔法は使えるようにしたほうが良いね。魔法剣士の必須スキルだよ」
「い、いえ、必須スキルなのは分かっているんですが、まだ魔法の射手は詠唱ありで一矢でる程度なんですよ」
正確には炎が二矢、風が一矢、他はまだ出ません。
「いやいや、とりあえずやってみることが大事なんだよ。得意な属性で良いからやってみて」
む、そうですか?
出来るとは思いませんがとりあえずやってみましょう。
心の中で詠唱してみる
”フラム・プロクス・イーグニス 魔法の射手 炎の一矢!!”
ビキィッ
「うぎゃああぁぁぁっっ!! 痛いイタイいたい~~っっ!!」
脳が、頭が、何かビキッって言ったあ~。
ゴロゴロゴロゴロ
「あう~~。うあ~~~」
転げまわってみても、ちっとも痛みは晴れない。
「里桜ちゃん、大丈夫かい?」
「だい、じょぶじゃない、です。何、ですか? これ」
「無理やり無詠唱魔法を使おうとすると、放出するはずだった魔力が体内でオーバーヒート状態になるんだよ」
「だから無詠唱魔法を使う場合は十分に注意しましょうって事だね」
「う、あ、なんで、あう」
その事を教えるためにわざわざこんな事を?
そう言いたかったけど、うまく言葉に出来ない。
「とりあえず今日は家に運んであげるよ。ゆっくり休むといい」
そう言って弐集院先生は私を抱きかかえると、おじいちゃんの家に連れて帰られた。
やっぱり弐集院先生のあの笑顔の裏には文字通り裏が有ったんだ。
「お、おそろしい……」
「ん、何か言ったかい?」
「何でもないれすぅ……」
やっぱり恐ろしい。
STEP:2 槍術
今日も今日とて修行です。
本日はガンドルフィーニ先生とCQCとか体術とか。
「はっ」
突き出されたガンドルフィーニ先生の左手を右手で捌いて、懐に入りこむ。
飛び込む勢いをそのままに、右肘を打ち込む。
「甘いっ」
決まったと思った瞬間、右手の掌によって肘を抑えられていた
ならばと、空いた右脇腹に左フックを入れようとした瞬間、
足を二枚蹴りで駆られて、気が付けば地面に抑え込まれていた。
自分の右手が自分の首に絡まるように押さえつけられていて、身動きが取れない。
「チェックメイトだね」
そう言ってガンドルフィーニ先生は私の上からどいてくれた。
「う~、また連敗記録が伸びました……」
服に次いだ汚れを払いながら、独りごちる。
おとーさんとおじいちゃんの女の子教育はまだ続いていて、
スカート系以外の服は履かせてもらえません。
修行の時はスパッツを履いてるからいいけど、いい加減ズボンが恋しいです。
「ははは、まだまだ里桜ちゃんに負けるわけにはいかないよ」
ガンドルフィーニ先生は朗らかに笑ってますが、さすがに150戦150敗は堪えます。
「そもそもリーチが違いすぎるんですよね」
まあ5歳の手足なんてたかが知れるけれど。
「ああそうだ、その事で一つ話が有ったんだっけ」
「何ですか」
「リーチ不足の話は、おそらく里桜ちゃんに一生ついて回る問題だ」
「里桜ちゃんは日本人で女の子だから、これから大きくなるといっても多分小柄と呼ばれる体格に収まると思う」
「むぐっ、た……確かに」
今だけの問題だと思ってましたが、将来的にも体格の問題は出るでしょう。
将来会うであろう、巫女スナイパーや忍者のことを思うと、意外と180cmオーバーの可能性も否定は出来ないけど。
「それでだ、それらの問題を解決するために何かしらの武器を使う練習もしておくのはどうだろう?」
武器、武器か……。
悪くない選択だと思う。リーチ的な意味でも、攻撃力の増加の意味でも。
少し考えてみる。
剣……無理だ。明日菜と刹那の二大巨頭に勝てる絵が浮かばない。
太刀……同様に無理。やっぱり刹那に勝てるわけ無し。
もっと距離をとる物で考えると。
弓……装填の手間や威力を考えると却下。むしろ無詠唱魔法で良い。
ライフル……メインの武器にはならない。でも一応使えるようには練習しておこう。
ちょっと目先を変えてみる。
重火器……持ち運ぶのに結局体格が問題になってくる。却下。
バイクとか……今度は魔力的に無理。ここまでデカイ物を使いまわす魔力は無い。
と、なると
「槍……かなぁ」
私的には良いかと思うのだが、ガンドルフィーニ先生はどうだろう。
「槍か。……悪くは無いと思うよ」
悪くない反応だ。
「槍なら長さもあるし、両手で扱うから力負けもしない。それに槍は神話でも有名な使い手が何人もいるし、魔法の儀礼的にも何の問題もない」
確かに、槍って意外と有名なのが有る。
グングニルとかロンギヌスとかゲイボルグとか。
まあ別に儀礼云々に興味は無いけど。
結局、トントン拍子に槍術も勉強することが決まって、この日の修行は終わった。
今度の修行のときには、ちょうど良い長さの棒を持ってきてくれるらしい。
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後書き
読んで頂いてありがとうございます。青人です。
今回と次の回は主人公の特訓風景なんかをお送りします。
それに今後の主人公強化の方向性何かを明確にしようかと思います。
せっかくガンドル先生にCQCを習ってるので魔法剣士タイプにします。
そしてメイン武器は槍にする予定。
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