「やめ、やめてくれ……」
ツェルニの第5小隊隊長、ゴルネオ・ルッケンス。
彼の張り裂けそうなほどに悲痛な願いは、しかし受け入れられることはなかった。
「かはっ……」
「あははは、さっきまでの威勢はどうしたんだい? 少しは抵抗してみなよ」
第5小隊副隊長、シャンテの小さな体が宙を舞う。
ゴルネオの兄、サヴァリスによって蹴り上げられ、ズタボロになりながら地面を転がっていた。
「もう、やめてくれ兄さん! なんで、なんでこんなことを……!?」
当然、ゴルネオはサヴァリスを止めようとした。だが、ツェルニではトップクラスの実力を持つ小隊長とはいえ、グレンダンのトップクラス、天剣授受者を務める兄とでは、天と地ほどの実力差がある。
サヴァリスが素直に言って聞く性格ならまだしも、そうでないなら力に訴えるしかないわけだが……当然止められるわけがなく、ゴルネオ自身もサヴァリスの手によってボロボロのズタボロに痛めつけられているのだった。
「いや、僕もさ、本来ならこんな弱い者いじめみたいな真似はしたくないんだよ。けどね、どうやら彼女の中に、僕の目的のモノがいるらしくてさ」
サヴァリスは芝居がかった口調で両手を広げ、ゴルネオの疑問には答えてくれた。
「シャンテの中に……? いったい、何が?」
「廃貴族さ」
だが、シャンテをなぶることはやめない。
その発言と共に、再びシャンテを蹴り上げる。
「そんなもの、こいつの中には……」
「ゴル、君に何がわかるんだい? また僕の邪魔をして、痛めつけられたいのかい? いいから、黙ってそこで見ていなよ」
もはや説得など、意味をなさないことはわかりきっていた。ゴルネオは、歯をギリッっと噛みしめる。
だが、ゴルネオに箱の兄と言う暴君を止める術を、力を持ってはいない。
もはやこうして、シャンテがいたぶられている様をじっと見ていることしかできないのか。悔しさで、今にも気が狂いそうな最中、サヴァリスの暴挙を一時中断させたのは、皮肉にもゴルネオではなく、1人の部外者だった。
「おや、君は……」
「悪いな、そいつは俺のだ!」
この男、確か学園都市で会った。
狼面衆と敵対しているようだが、そんなことはサヴァリスにとってはどうでもいい。
一本の鉄鞭を振り回し、ディックと言う男は大胆不敵な笑みを浮かべていた。
「如何に天剣授受者様とはいえ、こいつはやれないな。ヴァルゼンハイムは俺のものだ!」
「確かにもともとは君のものらしいね。だが、たった今から僕のものだ!」
刹那、サヴァリスとディックが激しくぶつかり合う。
ほとばしる剄と剄。研ぎ澄まされた刃のような一撃。命を削り合うような必殺の攻防。
「っ!?」
ゴルネオは、この男が何者なのかは知らない。だがサヴァリスを、天剣授受者と知って尚も挑み、勇猛果敢にも攻める男に感嘆を覚えずにはいられなかった。
だが、悲しいかな。天剣授受者と言う存在は、規格外そのもの。ディック自身もかなりの使い手のようだが、次第に押され始め、旗色が悪くなり始める。
「ぐがっ……」
「いいね、君と遊ぶのもなかなかに楽しいけど。悪いね、僕はこの後も、いろいろと予定が押しているんだよ」
言うな否や、サヴァリスの一撃がディックを捕らえた。
胸元をえぐるように叩き込まれた一撃。バキボキと、あばらが折れたような鈍い音と完食が響く。
ディックは口元から血を吹きこぼし、勢いそのままに背後の建物に叩きつけられ、それどころ賭けべを突き破り、瓦礫の中へと埋もれてしまった。
「どうだい? これで彼よりも、僕の方がふさわしいって、わかってくれたんじゃないかな?」
ディックを叩きのめしたサヴァリスはシャンテへと、いや、シャンテの中へいるナニかへと語りかけ、ニヤついた表情を浮かべていた。
そして、ゴルネオは絶句する。
『………』
そこには、一匹の狼がいた。不可思議に発光し、悠然とたたずむその姿。
話には聞いたことがある。実物が存在するとは知っていた。だが、直にこうしてみるのは、初めてのことだった。
これが……
「廃……貴族?」
廃貴族。狂いし、滅びた都市の電子精霊。汚染獣へ対する憎しみを糧にし、都市に滅びをもたらすものの、宿した武芸者には絶対的な力を与える存在。
「僕と共に来い、廃貴族。僕ならばそこで寝ている奴よりも、有意義にお前の力を使ってやるよ」
『………』
サヴァリスの言葉に対し、廃貴族は無言。
だが、次第にその姿が薄くなり、発光した光の粒子が、吸い込まれるようにサヴァリスの中へと消えていく。
「に、兄さ……」
「ふふ、ふはははは! ふーはっはっはっは!!
ゴルネオの呼びかけも耳に入らず、サヴァリスは盛大に笑い出した。
眼前で広げた両手を見つめ、サヴァリスの全身からは膨大な剄が溢れ出している。
「手に入れた、手に入れたぞ廃貴族! これでレイフォンと戦える! ついについについに! レイフォンと、互角以上の勝負が繰り広げられる!!」
サヴァリスは狂ったように笑い続けた。
もはや兄を、兄として見れなくなったゴルネオの存在すら気にも留めず、そして叩きのめしたはずなのに、いつの間にか姿の消えていたディックのことすらも気にも留めず、膨大な力を手にし、サヴァリスは笑い続ける。
これでした準備は整った。あとはレイフォンを誘き寄せるだけだ。
その後、サヴァリスはフェリの身柄を確保し、レイフォンを待ち構えた。サヴァリスの、そしてレイフォンの故郷。武芸の本場、グレンダンにて。
†††
(ふざけるなふざけるなふざけるな!!)
訳が分からない。わからないことだらけで、気が変になりそうだった。
本来なら決して交わることなどなかった、学園都市ツェルニ。そして槍殻都市グレンダン。それが何の因果か会合した。
本来、都市同士が会合するのはセルニウム鉱山を奪い合う戦争のみ。だが、この会合はそれが目的ではない。
突如、ツェルニに襲い掛かる異形の存在。汚染獣のようだが、汚染獣ではない、驚異的な何か。
それらの撃退に四苦八苦するツェルニの学生武芸者達だったが、それをグレンダンの武芸者が助けてくれた。しかも、最強と謡われる12本の剣……いや、今はレイフォンとサヴァリスがいないので10本だが、その最強の10人が立ち上がったのだ。
脅威なんてものは、瞬く間に制圧されたと言っても過言ではない。では、何故レイフォンは苛立っているのか?
「フェリイイイイイイイ!!」
フェリが攫われた。サヴァリスの手によって攫われた。
汚染獣の討伐から戻ったレイフォンは、その後すぐさま、フェリを取り戻すためにグレンダンへと殴り込みをかける。
グレンダンには11人の天剣授受者がいる。そのどれもが、並外れた実力を持つ強者だ。更にはその頂点には、女王、アルシェイラが君臨する。だが、それがどうした!?
フェリを取り戻すためならば、グレンダンの全てを敵に回したってかまわない。そう決意し、迷わずグレンダンへと突撃。
かつて自分が暮らしていた街並みを疾走し、フェリの元を目指す。目指すは王宮か?それともサヴァリスの実家、ルッケンスの総本山か!?
どちらだって構わない。しらみつぶしに、徹底的にやるつもりだったレイフォンだが、そんなレイフォンの出鼻をくじかせる人物が、レイフォンの行く手を阻んでいた。
「ここから先へは行かせんぞ、レイフォン!」
「養父さん……」
かつて、レイフォンに刀技を教え、かつて、レイフォンの暮らした孤児院の父親だったデルク。
レイフォンは、デルクを心より尊敬していた。フェリのことでいっぱいな頭に、迷いが生まれてしまうほどに、デルクを尊敬していて、童子に感謝していた。
何故なら、今のレイフォンがあるのはまごうことなく、デルクのおかげなのだから。彼がいなければ、今の自分はいなかった。そして同時に、自分は彼のことを裏切ってしまった。後悔がないと言えば、嘘になる。
「養父さん、そこをどいてくれ! 僕を行かせてくれ!」
だが、だからと言ってこればかしは譲れない。レイフォンはフェリを取り戻すためにも、この先を押し通ろうとする。
「通さぬと言った! どうしても通りたいと言うのなら、この私を倒してゆけ、レイフォン!!」
対して、デルクもこの道を譲る気はなかった。
血はつながっていなくとも、互いに不器用で、自分の気持ちを他者に伝えるのが苦手な、似た者同士の困った親子。
この先を通りたいレイフォンと、この先へと通したくないデルク。言葉は通じない。ならば、刀で語ることしかできない。
「養父さん!!」
「レイフォン!!」
刀技がぶつかり合い、せめぎ合う。そして共に、膨大な剄がぶつかり合う。そう、共にだ。
確かに、デルクは刀技の達人だった。技量だけなら、レイフォンにも劣らない。いや、それ以上かもしれない。レイフォンにはない、熟練と、経験の差がある。
それを覆すのが、剄という、武芸者にとって絶対的な力。剄が多ければ多いほど、活剄で強化される身体能力は跳ね上がり、衝剄などの技の一撃も強力になる。
剄量は素質に左右され、例外的なことがない限り、爆発的に伸びるなんてことはない。デルクはもともと、剄量は平均的であり、高い技量を持ちながらも、それがレイフォンに劣る理由だった。
だが、今はどうだ?何があったのかはわからない。だが、デルクの剄量はレイフォンが知る時よりも格段に跳ね上がり、天剣授受者と同等か、それ以上の出力を叩き出していた。
デルクの熟練された刀技、そして膨大な剄による身体強化と、重い一撃の数々。これには敵対していると言うのに、レイフォンも思わず舌を巻かずにはいられない。
(一体、何があったんだ……?)
かつての父が、最強の刺客となってレイフォンの行く手を阻む。そのことにレイフォンは苛立ちを感じながらも、極めて冷静に対処する。
確かにデルクは厄介だ。卓越した刀技と、膨大な剄によるコンビネーションはレイフォンを苦しめる。
何よりレイフォンは、養父であるデルクを斬ることなどしたくはなかった。出来れば穏便に、無傷で押さえつけることが好ましい。
それ自体は、可能だ。今のデルクは、天剣授受者並みの剄を持っている。そして、今デルクが使っている刀は、錬金鋼は、デルクが昔から愛用しているものだった。
そう、剄量はともかく、錬金鋼はそのままなのだ。
ガギィィン! 刀と刀が鬩ぎ合う。デルクの刀が次第に赤く染まって行く。
天剣授受者とは、超人的な実力を持つとともに、膨大な剄を持つ、武芸者の極みの集まり。その力を100%引き出すことのできる錬金鋼こそが、天剣。
逆に言えば、天剣でなければ、武芸者の力を完全に引き出すことはできないと言うことだ。
通常の錬金鋼では、天剣授受者の膨大な剄には耐えることができない。それでも使用を続けていくと、剄に耐えられずに熱を持ち、自壊し、最終的には爆発してしまう。
今のデルクがまさにそれだ。レイフォンとの斬り合いで膨大な剄を使用し続け、錬金鋼が耐えきれなくなっている。熱がたまりすぎて、紅く発行。既に自壊を始めていた。
こうなってしまえば、勝負がつくのも時間の問題。レイフォンの口元が緩む。デルクの刀が、レイフォンに迫る。それを弾く。打ち合う。鬩ぎ合う。
「っう!!」
「レイフォン!!」
本気で斬りかかってくるデルクと、その攻撃をことごとく防ぐレイフォン。レイフォンの目的は時間稼ぎ。そしてついに、その時が来る。
デルクの錬金鋼が耐えきれず、崩壊を始めていた。
「ぐおっ!?」
デルクはたまらず、錬金鋼を投げ捨てる。レイフォンも後ろに飛びのき、爆発の範囲から逃れる。
錬金鋼の爆発。そして武器を失ったデルク。
レイフォンは刀をデルクへと向け、淡々と言葉を発した。
「僕の勝ちだ、父さん。通してもらうよ」
「……………」
デルクは武器を失った。本来ならこれで勝負がついた……はずだった。
不意に感じる違和感。レイフォンはその気配につられ、後ろを振り向く。
「嘘だろ……」
その正体は光だ。一筋の光。
それは、一本の剣だった。見間違えるはずがない。かつてのレイフォンの愛剣……天剣、ヴォルフシュテイン。
それが何故だか、こちらへと向け、ひとりでに飛んでくる。
「ぬあああああ!!」
「父さん!?」
デルクは、その剣に向け、飛びついた。レイフォンが抑止しようとするも、それは聞き入れられない。
飛んできた天剣をつかみ、デルクはまたもレイフォンに向き直り、天剣を構えて、レイフォンへ行った。
「ここを通りたければ、私を超えてゆくことだ」
「なんだよ、それ……」
傷つけたくなかった。本来なら戦いたくすらなかった。
だからレイフォンは、デルクを無力化し、出来るだけ穏便に済ませようとしていた。だが……
「なんだよ、なんだよそれ!! 養父さんはそこまでして、僕の邪魔をしたいの!?」
「ああ、そうだな。お前をこの先へ行かせるわけには行かない」
何故邪魔をする? 何故行く手を阻む?
いくら義理の父とはいえ、そこまでしてレイフォンの目的を阻む権利があるのか!?
「そう、わかったよ……」
わかった……ならば殺す。 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
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殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
[僕はフェリを取り戻したいだけなのに!!」
「フェリ? レイフォン、お前は何を言って……」
邪魔をするなら殺す! 行く手を阻むならば殺す!
もう我慢の限界だった。レイフォンの中の何かが、プツリと音を立てて切れる。
剄と怒り交じりのレイフォンの叫びが、刀の切っ先に集中する。
「死んでよ……いや、死ねよ! デルク!!」
「くっ!?」
先ほどまでの、傷つけないための防御ではない。殺意を持ち、殺す気でデルクの顔に刺突を放つレイフォン。
デルクはそれを受け止めるが……
「うらああああ!!」
「ぐはっ!?」
刺突に、顔に注意の向いたデルク。それで警戒心の薄れた腹部に向け、レイフォンの蹴りが叩き込まれる。
元より天剣級だったレイフォンの剄。それが廃貴族と言うブーストがかかっており、更にとんでもないものへとなっている。
本来なら剄量にしたって、レイフォンとデルクでは勝負にならなかったのだ。その強力な力によって蹴り飛ばされ、デルクは背後の壁に叩きつけられる。
「かはっ……」
背中を叩きつけられ、苦悶の表情を浮かべる。思わず天剣を手放してしまい、地面へと転がっていた。
起き上がり、体勢を立て直そうとしたデルクだが……
「死ね!」
その視界の先には、レイフォンの持つ刀の切っ先が向けられていた。
ザクッ
レイフォンの刀が、デルクの頭部を貫く。確認するまでもない。即死だ。
だが……
「死ね、死ね死ね! 死んでよ、養父さん! いや、デルク! 死ね、死ねよ! 死ね死ね死ね死ね!!」
更に斬る。斬って斬って、斬りまくる!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
とりあえずレイフォンは斬りまくった。もはやデルクだったものは赤い染みと肉塊になり果て、物言わぬどころか生ごみへとなり果ててしまった。
レイフォンは全身を買えり地で真っ赤に染めながら、うつろな瞳で空を仰いだ。分厚い雲に覆われ、最低最悪の空模様だった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そして叫ぶ! 壊れたように、狂ったように叫ぶ!
もう、何が何だかわからない。自分はただ、幸せになりたかった。フェリと一緒に、フェリと共に、ただ笑って過ごせればよかった。
それ以上は望まない。望まないのに……
「なんで! なんでなんで!? なんでなんだよデルク! なんでお前が! お前があああ!! 僕は僕は、ただフェリと一緒にいたいだけなのに!!」
バリバリと頭をかきむしる。だが、デルクだったものは何も答えない。答えられるわけがない。
レイフォンは叫び続け、泣きわめき、発狂しつつも、それがふと、せき止められたように止まる。
「僕には……フェリしかいないんだ。フェリを、取り戻すんだ。フェリを、フェリをフェリを……:
ぶつぶつとつぶやき、歩みを再開する。
そもそもここへ来たのは、そのためだった。フェリを取り戻すため。
大切な何かを失ったレイフォンは、虚ろな瞳のままその足を進める……
あとがき
このお話は、レイフォンとフェリの物語ですが、テーマとしてはヤンデレでした。
なので、こんな展開を、実はけっこう初期から考えていました。
これをじっくりやれなかったのが、凄く悔やまれます。しかしこのシーンは、原作レイフォン、本当にかわいそうだなと思いました。原作レイフォンも、本来はデルクを傷つけたくなく、このように無力化を図ってたんですけどねえ……